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レニちゃんは天才

 レニの【魔力鑑定】をした、現エルフの女王ハサノとサミュー。二人は相談の上、レニを一度、寝室へと運んだ。レニに休息を取ってもらうためだ。

 そして、レニがベッドで眠ったのを確認したあと、二人は部屋を移し、話を始めた。内容は――レニの魔力について。


「レニ様の【魔力鑑定】の結果はどうだったのですか?」


 サミューは不安げな表情でハサノを見た。

 【魔力鑑定】を行ったあとのハサノの言葉。それがずっと気になっていたのだ。

 ハサノは一度目を閉じ、息を吐いてから話を始めた。


「レニちゃんが【魔力暴走】の状態であろうことは予想がついていたわ。ソニヤから話を聞いていたから。そして、実際に鑑定してわかったの」


「レニちゃんは自身の魔力とソニヤの魔力。両方を一人で持っているわ」

「そんな……っ」


 そんなことが可能なのか。サミューは自分の耳を疑った。

 一人で二人分の魔力を持っているなんて……。


「そもそもソニヤは魔力が強かった」

「はい。歴代エルフの中でも一番であろうと聞いています。そのため、通常のエルフとは違う色を持って生まれたと」

「そうよ。ソニヤは……特別な子だったの。普通のエルフは金髪にグリーンの目。けれど、ソニヤは銀色の髪に青い瞳を持っていた。これは伝説の始祖のエルフの持つ色」


 ソニヤはエルフの中でも魔力が強かった。生まれてすぐにその色から力がわかり、次代の女王になるだろうと言われていたのだ。


「ソニヤが女王になるまでは良かった。けれど、その強い魔力が制御できなくなったとき、私は……しかたがないことだと思ったの」


 ハサノは当時のことを思い出していた。

 すばらしい魔力を持った自慢の妹。次代の女王として育ち、心も優しかった。

 ……少し、特別待遇で育ったため、エルフの中でもかなりおっとりとした、世間ズレしていない子に成長したのだが。しかし、それもまた魅力的だった。

 【魔力暴走】を聞いたとき、ハサノはとても悲しかったし、なんとかならないかと思った。が、どこかで、それはしかたがないと思ってしまったのだ。

 強い魔力を持って生まれた特別な子。だからこそ、そういう悲しみもあるのかもしれない、と……。


「エルフは長生きし過ぎるのかもしれないわね。……個々での生き方よりも、大きな流れの中での生き方を考えてしまう」

「私は女王様……ソニヤ様の【魔力暴走】を聞いたとき、絶望しました。力がない自分を責めるばかりで、結果なにもできず……」


 ソニヤの運命を変えたのはウォードだ。

 ソニヤの特別性などなにも気にしていなかった。大きな流れの中ではなく、個としてソニヤとともに生きたいと願い、そのために行動した。だから――


「レニちゃんは決して、死なせない。しかたないと諦めたくない」

「はい。レニ様とともにずっと過ごしたいと思います」


 二人はそれぞれの決意を瞳に込め、頷き合う。


「【魔力暴走】を起こしてしまったソニヤの魔力に足して、さらにレニちゃん自身の魔力も大きい。どうして二人分の魔力を持ってしまったかわからないけれど、必ず魔力を制御できるようにしましょう」

「はい!」

「実は、私はソニヤのときにも、いろいろと調べてはいたの」

「……ハサノ様は研究を主にしていたのですよね」

「ええ。ソニヤのときには間に合わなかったけれど、あのときの反省を生かし、今はもっと効率よく調べられるようにし、研究も続けていたのよ。もう二度と【魔力暴走】で亡くなる仲間を見ることがないように」


 ハサノがふふっと笑う。

 サミューはその表情を見て、視線を下に落とした。


「ハサノ様……。ソニヤ様の際、諦めていただけではないではないですか……。それに比べて私は……」

「サミューは人間の男と一緒に【宝玉】を手に入れてきたでしょう?」


 ハサノはサミューの肩にポンと手を置いた。


「レニちゃんは幼い体に大きな魔力源を持っている。それも二つも。だから、体を巡る【魔力路】がどんどん太くなり、それが体に負担がかかっている状態だと私は考えているの」

「【魔力路】の膨張がレニ様の体の負担に……」

「発熱、体力の低下、眠気の増加、気怠さ。ソニヤにも出た症状は【魔力路】の膨張だと私は研究の末にたどり着いたわ」


 ハサノはサミューを勇気づけるように頷く。


「まずはレニちゃんが起きたら、体内の【魔力路】を細くする術をかけましょう」

「細くするのですか?」

「根本的な解決にはならないけれど、レニちゃんが今、苦しんでいる症状は少しは楽になるはず」

「わかりました!」


 サミューが顔を上げる。

 ハサノはそっと目を閉じた。


「レニちゃんは天からの才能に恵まれている。……それが悲劇にならないように」

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔力路の膨張、、、脳梗塞かな? 源泉の根元の弁が魔力を解放した際に壊れて垂れ流しなのかな 源泉が二つあるってことは魔力回復も二倍な訳で 一旦全部吐き出してから弁を再生成するのが機械的には一番…
[一言] ハサノ様の研究ってレニの母親以前の悲しいことがきっかけで血に滲む研究したんだろうね。
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