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エルフの森へ向かいます

魔力操作編スタートです

 ガイラルをお星さまにし、【宝玉】を探す新興宗教集団【女神の雫】の地下施設を壊滅させることに成功した私。

 けれど、ガイラルが【彷徨える都市 リワンダー】の魔法陣を使い、私の体に変化が起こってしまった。


 ――封印が解けたのだ。


 魔力暴走を起こし、父と生きるために人間になりたいと願った母。そして、宝玉はそれを叶えた。

 私はそれを受け継ぎ、生まれたときから【宝玉】を持っており、さらに封印状態だったと考えられる。

 封印が解けた私は、エルフの見た目となり、【魔力操作】もできるようになったのだが、突然、増えた魔力に身体がついてこなかった。


 ――魔力暴走。


 エルフだった母と同じ症状。

 私としては、いつもより眠くなりやすく、体が熱っぽいという感じだが、サミューちゃんの心配そうな目を見れば、あまり良くない状態なのだとわかった。

 それに……。


「レニ、絶対に無理をしてはダメですわ」

「ああ。レニ君は自分のことに無頓着すぎる。もっと慎重に、体を大事にしてほしい」


 ガイラルを吹き飛ばしたあと、すぐに眠ってしまった私は、豪華なベッドで横になっていた。

 ここは領都を外から見たときに見えた、あの白いお城の一室のようだ。

 ベッドの横にはキャリエスちゃんとピオちゃんが来て、私にゆっくりと声をかけてくれた。


「わたくしはガイラル領都に残り、混乱が起きないよう、これまで通りに領民が暮らせるようにしますわ」

「うん」

「僕もここで護衛を続ける」

「うん」


 私が眠る前にみんなで決めたこと。

 キャリエスちゃんは家族と協力し、これ以上の混乱が起きないようにしていく。そして、ピオちゃんはそんなキャリエスちゃんを支えていく。

 なので、二人とはここでお別れだ。

 頷いて答えると、二人の隣に立っていたサミューちゃんが話を引き継いだ。


「レニ様、体調はどうですか?」

「うん。ねたら、ちょっとげんき」


 熱っぽさは変わらないけれど、眠気はかなり引いた。

 これだけで、体は楽だ。


「レニ様がお休みになられたのは、昨日の昼前です。今はもう翌朝になっています」

「……そんなに」


 思ったよりも寝ていた。

 領都全体を浄化しようとした魔力が多すぎたのか、封印が解けた反動かはわからないが、あの眠気と丸一日の睡眠時間はちょっと困る。

 そして、魔力暴走が続くと、亡くなってしまう……んだよね?


「レニ様の魔力ですが、眠る前と比べると少し安定しているようです。今のうちに移動をしたいと思いますが、よろしいですか?」

「えるふのもり、いく?」

「はい。女王様に連絡を取りました。女王様の守護者には女王様のお姉様が就かれています。そして、エルフの現女王様がお姉様です。急ぎ、エルフの森へと向かうように伝えられています」

「わかった」


 母はエルフの森を出て、父と生きることを選択した。

 出奔していて、父はエルフの女王を誘拐したということで、お尋ね者になっているはず。なので、母はエルフの秘密である【守護者の契約】で行える【精神感応】(テレパシー)をずっと使っていなかった。

 けれど、私のためにサミューちゃんと連絡を取ったり、エルフの森とも連絡を取ったりしてくれたようだ。


「ぱぱ、まま、だいじょうぶ?」


 母が連絡を取ったことで、エルフがそちらに意識を向けて、父と母の暮らしをやめさせようとしないだろうか。

 心配になって聞けば、サミューちゃんは困ったように眉尻を下げた。


「レニ様の不安ももっともです。私たちエルフは人間の男……レニ様のお父様に対していい感情は持っていません」


 そして、まっすぐに前を向き、手には拳を握った。


「エルフにとっては蛇蝎と同じです」

「さみゅーちゃん……」


 そんなはっきり……。


「しかし、女王様の気持ちは十分にわかっているつもりです。……自らの愚かさも。ですので、今はただレニ様のお身体を治したい。それが全エルフの願いです」

「そっか」


 どうやら父と母の暮らしに波風を立てるような展開にはなっていないようだ。ほっと胸を撫でおろす。


「ところで、エルフの森へはどうやって行くんですの? レニの体を考えれば、やはり馬車がいいのでしょうか」

「領都へ来たときと同じように馬車で向かうのが良いと思う。その場合は僕が馭者になり、またジュリアーナたちに蹄鉄をつければどうだろう」


 キャリエスちゃんとピオちゃんが行き方について提案してくれる。

 しかし、サミューちゃんは首を横に振った。


「馬車は使えません。エルフの森へは人間を案内することは禁忌なのです。ですので馭者は私自身がする必要がありますが、その場合、馬車や馬を返すことで二度手間になってしまいます」

「そうか……」

「僭越ながら――私が抱き上げます」


 サミューちゃんは決意のこもった瞳で頷いた。

 というわけで。


「レニ、これが最後ではありません。わたくしはまたレニと会いたいと思います。必ず。……必ずっ!!」

「うん。ぜったい、だね」

「僕はまたレニ君に料理を食べてほしい」

「うん。ぴおちゃんのごはん、すき」


 ガイラル領都の門前。

 キャリエスちゃんとピオちゃん、そして護衛の騎士たちはわざわざ見送りに来てくれていた。

 キャリエスちゃんはぎゅうっとスカートを握りしめ、必死に私を見上げている。そして、ピオちゃんは心配そうに私を見つめていた。

 私はというと、サミューちゃんに抱っこされている。

 フードはしていないけれど、サミューちゃんは倒れることはなく、その場にとどまっていた。


「がんばれ私。がんばれ私。……がん、ばれ。できる……私はできる……エルフッ!」


 ……うん。頭上から呟きは聞こえる。

 サミューちゃんが耐えてくれているのはわかるので、私は決してそちらを見上げない。目が合うと絶対に危ない。危険。


「またね」


 きっと、また会える。……また会いたい。

 だから、悲しい別れじゃない。

 抱っこされたまま、キャリエスちゃんとピオちゃんに手を伸ばす。

 二人は私の手をぎゅっと握ってくれた。


「では、行きます」


 二人の手の温かさと、抱きしめてくれるサミューちゃんの温かさと。

 胸がぽかぽかとあたたかくなるのを感じながら、私はそっと手を離した。


「レニッ! 体を大事にしてください!」

「レニ君、無理は禁物だぞ……っ!」


 二人は最後まで私のことを案じてくれる。

 サミューちゃんは二人の声を聞きながら、思いっきり前方に向かってジャンプした。


「わぁ……!」


 すごい。世界が一気に駆けていく。


「レニ様っ、大丈夫ですか?」

「うん。たのしい」


 体は相変わらず熱っぽいけれど。

 でも、頬に当たる爽やかな風と、一瞬で過ぎていく景色。それがサミューちゃんの一足一足で生まれていく。

 【魔力操作】ってすごい。

 これまでもサミューちゃんの能力はすごいなぁと思っていたけれど、速さでいえば今が一番だ。


「はやいね」

「はい。これが私の最速です!」

「むりしないでね」

「問題ありません! このままエルフの森まで駆け抜けます!」

「うん」

「エルフ一同、レニ様のことをお待ちしています」

「うん」

「とてもとてもきれいな森です」

「うん。たのしみ」


 さあ! 向かうはエルフの森です!

9/21にコミックスの発売します。

漫画は吉元ますめ先生に描いていただいています。あの、くまみこの…!

とっても面白くて最高のコミカライズになっていますので、ぜひお手にとっていただければうれしいです。

詳細は↓の書影か、活動報告へ。

小説もがんばっていきますので、よろしくお願いします。

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