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教団が怪しいです

 リビングメイルに光を放つと、ただの鎧に戻った。 

 この現象を赤い髪の騎士は『浄化』と言い、サミューちゃんはそれを私がしたことを隠したいようだった。

 サミューちゃんは領主であるガイラル伯爵と、レオリガ市のトーマス市長を警戒していたようだし、バレないほうが良かったのだろう。

 結果、赤い髪の騎士が、意味深に私を見る回数が増えたものの、他の人が私を気にしている様子はない。たぶん、大丈夫。


 私が光を出したことを、サミューちゃんは魔法ではないか、と言っていた。

 今の私は封印されているため、魔法が使えない。エルフに流れているはずの魔力が循環していないからだ。

 しかし、ドラゴンを倒したときに、サミューちゃんは私から魔力を感じたという。そして、今回もやはり魔力を感じたらしい。

 なにもないときに、再現しようとしてもできないのだが、きっかけがあると使えることがあるようだ。

 魔力を使える条件については、また考えていくとして、気になることが一つ。それは――


「よげん、みんなしってる?」


 ――予言について。


『神の宝を持ったものが現れる』


 女神信仰をしている新興の教団がそのお告げを受けたらしい。

 キャリエスちゃんはその予言された者ではないかと考えられていて、いろいろと苦労しているようだった。

 キャリエスちゃんは予言があったのは、ちょうど生まれたころだと言っていた。キャリエスちゃんと私は同じぐらい。

 だから、私は思ったのだ。予言されたのは――


 ――私ではないのか。


 お茶会が終わったあと、泊まることになったトーマス市長の屋敷。その一室で私とサミューちゃんはソファに座っていた。

 私の質問にサミューちゃんは、困ったように眉を少し寄せる。

 なにを言うべきか考えているのだろう。少し間があってから、ゆっくりと言葉が紡がれた。 


「……その予言は一種の流行りのようなものです。レニ様が生まれる前にその教団が流布しました。人間たちはみな、自分の子どもがそうであればいいと少し期待して……。その年に生まれた子どもはこれまでよりも大切に育てられたようです」


 サミューちゃんは誤魔化さない。

 そこまで話したあと、一度、目を閉じた。


「そして、今……。その子どもたちが各地で売られ、攫われ、行方不明になる事件が増えています。……スラニタの街のように」


 スラニタの街の街長シュルテムは権力を盾に、女性を集めていた。その女性たちは解放したものの、一緒に集められていた子どもたちはすでにシュルテムの屋敷にはいなかった。そして、こう言っていた。


・依頼されて、子どもを集めていた

・ちょうど私ぐらいの年齢

・とくに外見に特徴があるものや才能に秀でたものがよい

・依頼主はわからない

・だが、他の大きな街の街長からの紹介だった

・売れば金になるし、顔も広くなる


 そのことと、今回の予言の話を合わせて考えれば、おのずと答えは見えてくる。

 子どもを集めていた理由は――


 ――『神の宝を持つもの』を探すため。


「女王様と人間の男……レニ様のお父さまとお母さまも予言について知り、レニ様を隠すように育てたのだと思います」

「うん」

「女王様は宝玉の力で人間となりました。もしかしたら……と考えていたのだ、と」

「うん」


 きっと母は私を身ごもったときに感じたものがあったのだろう。父もああ見えて勘が鋭い。二人で相談して、私の出生を村には届けず、死んだことにした。だから、私には証明書がないのだ。

 そのおかげで、私はほかの子どもたちのように売られたり、攫われたりすることなく元気に過ごすことができた。

 サミューちゃんがゆっくりと目を開く。その碧色の目はつらそうに揺れていた。


「これまで伝えずにいたこと、申し訳ありません」


 サミューちゃんの謝罪。

 きっと、サミューちゃんはすべてがわかった上で……。私が『神の宝を持つもの』であると考えた上で、こうして旅に出てくれたのだろう。

 今まで、私にたくさんのことを教えてくれたサミューちゃん。子どもだからと誤魔化すことはなかった。そのサミューちゃんがこのことを黙っていたのは……。


「さみゅーちゃんのりゆう、わかる」


 きっと、迷って……。


「れにのこと、かんがえてくれた」


 私が不安にならないように。私が自分を責めないようにしてくれたのだと思う。

 だから――


「だいじょうぶ」


 予言の子どもが私だとして。

 そのせいで、子どもたちが行方不明になっているのだとしたら――


「れににおまかせあれ!」


 胸に手を置いて、ふふんと胸を張る。

 最強四歳児なので!


「ぜんぶ、たおす。みんなたすける」

「っはい!」


 私の言葉に、サミューちゃんが目を柔らかく細める。

 そして、しっかりと頷いてくれた。


「子どもたちの行方について、情報を集めました。やはり教団が怪しい。ただ、表向きは慈善事業を施す団体です。そして――どうやら、この国の中枢ともつながっているかもしれません」

「……きゃりえすちゃんをねらっているのも?」

「まだ確証はありませんが……」


 サミューちゃんはそう言うと、ソファから降り、私の前で片膝を立てて屈んだ。


「レニ様の助けとなれるよう、今後も精進していきます」

「うん。……でも、さみゅーちゃん、いつもかっこいいよ?」

「んぐっ……ぐうっ……レニ様にそう言っていただけること、本当に光栄ですっ」


 サミューちゃんは一度深呼吸をして、落ち着いてから私を見上げた。


「これから、この市長宅を家探ししてきます」

「やさがし?」

「はい。これだけ大きい市ですから情報も集まっているはずです。こうして屋敷に堂々と入れたのは僥倖でした。この市の周りで子どもは行方不明になっていないか、どこか不自然な場所はないか。……そして、市長がシュルテムのように、どこかと繋がっていないか、調べます」

「うん。おねがい」


 さあ、子どもたちを助け、キャリエスちゃんを守るため、教団を調べましょう!

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