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『幽霊を信じますか?』

作者: 矢松きのな

 あなたは幽霊を信じますか?

 信じようと信じまいと、この世のどこかで『説明のつかない事象』というのは常に起こっているものです。それが幽霊の仕業だと断言できるかと言われればそうではないのですが……。

 あぁ、ちなみに信じている方は、幽霊と言われてどんな姿を思い浮かべるでしょうか。

 赤いワンピースの長い黒髪の女?

 頭に矢の刺さった落ち武者?

 真っ白な顔の子ども?

 きっとあなたにとって、一番怖い姿を想像しているのでしょうね。だって『幽霊』ですから。

 

 ここでひとつ、面白い話をお話ししましょう。ありふれた怪談話ですが、聞いていってくれると幸いです。


 ある日、私立高校に通うAさんという女子生徒は、休憩中に友人から『この学校に伝わる怪談話』を聞かされたそうです。


『南校舎3階の屋上に続く階段を、誰も居ない時に数えながら登ると、十三段しかないはずが十四段目が現れ、そしてその十四段目を登ったら死んでしまう』


「あはは! そんなのよく聞く話じゃん。芸がなくない? もう少しヒネってほしいなぁ」

 Aさんはそう言って笑い飛ばしました。でも、友人は不安げな表情で「本当だったら怖い……」と呟きます。

「もう、怖がりなんだから! だいたい考えてみてよ。誰も居ない時ってのが条件なのに、なんでそれが原因で死んだって伝わってるわけ? 変でしょ?」

「それはほら……今日、確かめに行くとか、事前に友達に言ってたんじゃない? あ~どうしよう、私あのあたり通るの怖いよぉ」

「わかったわかった、なら私が今日、確かめてきてあげるよ」

 Aさんは気丈にそう言いました。友人は首を振って止めます。

「それ、死亡フラグだって! 私が言った通りの宣言じゃん!」

「フラグなんてぶっ壊すものよ! 怪談とか幽霊とか、私信じないタチだからさ。証明してきてあげる、私にまかせなさーい!」

 不安そうな友人の言うことも聞かず、Aさんは放課後一人で学校に残ったそうです。


 そして、翌朝Aさんの遺体が発見されました。

 屋上に続く階段から転げ落ち、頭部強打が原因の脳挫傷による死亡。


 他に誰かがいた形跡がないことから事故死ということで処理されましたが、事件当初は彼女について不可解な証言をクラスメイトがしていたそうで。

「Aさん、……なんていうか、少し前から変だったよね」

「もともとよく一人でいるタイプだったんだけど、最近はちょっと、近づけない感じだった」

「わかる、なんかずーっと独り言喋ってたよね!」

「そうそう、誰かと話してるみたいな独り言で」

「そういえば……事故のあった日も、私にまかせて! とか大声でいきなり言い出したから、教室もシンってなっちゃったよねぇ」

 

 今ではその階段は『友達の居ない生徒を狙って呪い殺す幽霊が出る階段』として怖がられているそうですよ。

 そう、幽霊って、映画みたいに血を流したり、怖い顔で追いかけてきたりしないんですよ。真っ黒な長い髪を前に垂らしたり、血まみれの姿で目をひんむいたりしないのです。


 いつのまにか……そう、気づかないうちにそばにいる。


 え?

 なんでAさんが死んだのに会話の内容まで知ってるのかって? ふふ、それを聞くのは野暮ってもんです。


 それよりあなたは、友達が多いほうですか? 少ないほうですか?

 家族はいますか? 大事な人は?

 その人たちはちゃんと、他の人にも見えているでしょうか? その確信はもてますか?


 あなたが仲良くしている人たちは、本当に、生きた人間でしょうか?

 

 あぁ、脅してしまったようで申し訳ない。ただ、気を付けてほしかっただけなのですよ。

 『幽霊』を信じるあなたも、信じないあなたも、見知った人物だからとゆめゆめ……油断なされませんよう。

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