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眠れる王  作者: 慧瑠
見えてくる意思

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子供

「のぞむにーちゃーん!!」


「おぉ、やっぱ今日も居んな。俺と僚太が話を聞いたのはこいつ等だ」


「こいつ等って…子供?」


「子供だ」


翌日、佐々木に案内された鴻ノ森の目の前には、四、五歳ぐらいの男の子と女の子数名に群がられる佐々木の姿が。


「ねぇねぇ、りょーにーちゃんは?」


「後で来るぞ」


「そっちのおねーちゃんは?のぞむ兄ちゃんの彼女!!」


「じゃねぇよ」


嫌な顔をせずに子供達をあしらっている佐々木の姿に、内心は少し感心しながら眺めていた。その事に気付いた佐々木は、何故か無性に恥ずかしくなり、遊ぶ内容を相談している子供達に呼びかけて本題へ入る事にする。


「なぁ、昨日話してくれたヤツ、この姉ちゃんにも聞かせてやってくんねぇか?」


「森の怪物さん?」


「それそれ」


「「「いいよー!!」」」


佐々木にお願いされた子供達は、わらわらと鴻ノ森の周りへ集まり'森の怪物'について話してくれている。


朝食後、鴻ノ森が佐々木に案内を頼んだ目的は、今子供達が一生懸命に話してくれている'森の怪物'についてだ。一応佐々木と田中から詳細は聞いたものの、念のために話を持っていた本人に聞こうと思って案内を頼んだのだが……子供だとは聞いていたけれど、ここまで子供だとは思っていなかった。


予想では十は越えてくるだろうと考えていたのだ。

それが、いざ案内されてみれば、数名の四、五歳ぐらいの子供達が一生懸命にアレやコレやと鴻ノ森に教えている。


元より子供が得意ではない鴻ノ森は、適当に相槌を打ちながら聞いていくと、大体は佐々木と田中が話していた内容と同じではあった。


曰く、悪さをすると夜に攫いに来る。

子供の肉が大好きで、攫われたら食べられる。

その怪物の家は森の中にあり、勝手に森に入るとエサだと思われて食べられてしまう。など、まぁ…ありきたりと言えばありきたりな小話。


あまり有益な情報にはならないかな?と聞いた情報をまとめていた鴻ノ森は、ふと一人の女の子に目が止まる。

もじもじとしているその子は、他の子が何か言うと、小さな声で何かを言っているのだ。当然、あまりにも小さな声は他の子供達の声に掻き消されるのだが、明らかに何か言いたげ……いや、言ってはいる。


「貴女の話しも教えてもらっていい?」


あれやこれやと関係ない話しまで出始めた事をキッカケに、鴻ノ森はもじもじしていた子の前まで移動して視線を合せる様にしゃがむ。


「そんなに…こわくない…」


「まーた言ってるよ」


「ホントだもん!」


「会ったことあるとか言ってるんだぜ?こいつー」


「だったら食べられてるはずなのにな!」


いつの間にか、そのもじもじしていた子が責められる形になってしまった。だが、子供達の会話を聞いていた鴻ノ森は、興味を惹かれる言葉があった。


「嘘はいけないんだぞ!」「森の怪物に食べられるぜ!」「いけないんだー」


「う、嘘じゃ「佐々木君、ちょっとこの子、借りますね」ふぇ!?」


詳しい事を聞きたいと思った鴻ノ森は、ここで聞いても邪魔が入るだろうと察して、もじもじしていた子の手を握りその場を離れていく。


「おい!鴻ノ森!」


「お昼前には戻ってきます」


ぽかんとする子供達と、困った表情の佐々木を放置して、鴻ノ森ともじもじした子は街中へと歩き離れていく。


手を引かれて、あうあうと焦った様子のもじもじした子に鴻ノ森は聞く。


「急にごめんなさい。私は鴻ノ森 清華といいます。貴女は?」


「セ、セナです」


「そうですか。よろしくお願いしますね、セナさん」


「は、はい」


軽い自己紹介を交わした鴻ノ森は、その間にも足を進めて目的の場所へと向かい、セナは鴻ノ森に手を引かれるまま歩く。数十分もすれば目的地へと着いた二人は、目をキラキラとさせているセナと共にギルドへと足を踏み入れた。


「わぁ…」


「ギルドは初めてなんですか?」


「こ、子供だけじゃ来ちゃダメなんです!パパもママも冒険者さんじゃなくて、来ることなんて」


「なら今日は、少しだけ特別な日ですね」


「は、はい…」


感情が籠もっていない様に淡々を告げられた言葉に、セナは同意することしかできず、身を竦めてしまう。とは言うものの、やはり初めてのギルドは真新しいモノや目を引くモノが多く、キョロキョロと忙しないセナを図書館側の椅子に座らせ鴻ノ森は少しその場を離れた。


数分後……喫茶店へと足を運び、セナと自分用の飲み物を購入後、リュシオン国中央周辺の地図が載っている本を持ってきた鴻ノ森が目にしたのは、何やら大人達に囲まれて泣き出しそうなセナの姿。


「何かありましたか?」


「いや、あの子が一人みたいでな。迷子かと思って声を掛けたんだが……」



「あのえっとき、きよかおねえちゃんと一緒で」「お姉ちゃんが一緒なのかい?」

「は、はい。ここで待つようにって…」「そのお姉ちゃんは?」

「えっとその…どこかに…」「迷子とかじゃないんだね?」

「ああう…」「一緒に探そうか?」



「あんな感じなんだ」


「そうでしたか」


鴻ノ森が見た感じでは、恐らくセナの周りで声を掛けている大人達も子供の扱いに慣れている様子ではなく、セナの返答が詰まる度に頭や頬を掻いたりと困った様子だ。


あまり目立ちたくはない。だが、このままでは人が追加で集まって大事になりかねない。そう考えた鴻ノ森は、渋々人の間を抜けてセナの元へと歩いていく。


「お待たせしました。……どうやら、ご心配を掛けたようですみません」


「きよかお姉ちゃん!」


「あんたがお姉ちゃんかい?

リュシオンのギルドは比較的安全だが、あんまり子供を一人にするもんじゃねぇよ?」


「あまり利用しないもので…すみません」


駆け足気味で椅子から降りて抱きついてきたセナの頭を撫でると、セナに声を掛けていたおじさんに鴻ノ森は注意を受けて謝罪をする。


「確かに見ねぇ顔…?いや、どっかで見た気もするんだが……。ギルドに連れて来るのは構わねぇけど、ちゃんと一緒に居てやんなよ?」


「はい」


「本当に分かってんのかね…」


リュシオン国に来た際、ロバーソンが騒ぎ立てたせいで人々に顔は見られている。もっとも、その時は殆どが聖女として、東郷が注目を集めていたが、少なからず自分達の顔を見て覚えている人物も居る可能性は高い。

別にバレる事には問題があるわけではない……しかし、今バレるのは聖女の関係者と言うことで人が集まって面倒になる。


「皆様も、ご迷惑をおかけしました」


鴻ノ森は適当に謝罪を述べてセナを連れて、人気の少ない場所へと移動する。鴻ノ森の態度と表情を不審に思いながらも、セナが素直に従っている様子から一応彼等は少しずつ離れていき、程なくして彼等の興味は鴻ノ森から外れていく。


「ご、ごめんなさいでした」


「何が?」


「私が、ちゃんといえてれば…」


「気にしなくていいですよ。それよりも、貴女が知る'森の怪物'について聞かせてください」


目の前に置かれたジュースを遠慮がちに受け取り、両手で大事そうに抱えながらセナは'森の怪物'について話し始めた。


去年の事である。なんでもセナは、森の怪物に会ったというのだ。

先程の子供達とココより少し離れた郊外で一緒にかくれんぼをして遊んでいた時、セナは気がつけば森に迷い込んでしまっていたらしい。


初めは、こんな場所が近くにあったのか…と興味本位で隠れながら移動していたらしいのだが、日も暮れた辺りから、自分が迷子になっていると自覚しはじめ、出口を求めてずっと森の中を歩いていた。

完全に日も沈み、心細さと疲れから全く動けなくなったセナは泣いていたらしい。もう、帰れないかもしれない…パパとママに会えないかもしれない。死んじゃうかもしれない。と思考が泥沼にハマっていたセナの前に、ソレは現れた。


「それが森の怪物ですか?」


「フ、フードをしてたから、はっきりそうかは…」


「ごめんなさい。続けて。

それで、森の怪物はどうしたの?」


「森の外まで連れて行ってくれて、そしたらかくれんぼしてた所より遠くて。ちょっと歩くと聖騎士さんがいて」


「帰れたんですね?」


「はい」


なるほど…。と目を閉じて鴻ノ森は考える。

セナの言うことが正しければ、森の怪物うんぬんは抜きに何故か森に居て、そこで誰かに会い、外まで案内をされた。そこから少し歩けば、聖騎士が居る場所であり、セナを案内した者は近場に聖騎士が居る事を知っていた可能性がある。


ある程度予想と考えがまとまった所で、持ってきていた本を開き地図をセナに見せた。


「場所が分かりますか?」


「え?えっと……うーんと…」


鴻ノ森が持ってきたのは、ヒナが見たこともない様な細かい地図であり、分かる場所を一生懸命探してから、多分……と一つの場所を指差す。


「ここ…だと思います」


「かくれんぼをして遊んでいた場所は?」


「それはこっちです」


今度は迷うこと無く指をさす。

最初に指した一箇所は、中央の街を囲む壁の外にある進入禁止区域の森であり、もう一箇所はあまり人の手が入っていない場所とは言え、壁の内側。

セナが指さした迷った森とかくれんぼをした場所の二箇所は、確かに離れている。気がつけば…なんて言葉で片付けられる距離ではない。


「あの…」


「はい?」


その場所を頭の中に記憶していると、ちゅーっとジュースを飲みながら申し訳なさそうにセナが聞いた。


「どうして森の怪物さんを…?それに、なんで私を…」


しっかりと聞こえたわけではない。だが、セナの言いたい事をなんとなく察した鴻ノ森は、本を閉じてセナの目を見る。


「っ…」


冷たいわけではない。それでも感情の読み取れない目で見られたセナは、身を小さくしてしまう。そんな様子を気にする事なく鴻ノ森は口を開いた。


「セナさんだけ違う事を言おうとしてましたが、あの場だと他の子を気遣って言えないかと思いまして。

私も私で、色々と集めている情報があったので、森の怪物が何か関係あるかもと思っただけです」


「情報?」


「はい。でも、おそらくは関係ないでしょう」


森の怪物が帰還方法に関して情報を持っているとは思っていないし、魔王の可能性を少しばかり考えていたけれど、子供相手に道案内をしたり、進入禁止にするだけでリュシオン国が放置するというのもおかしい話。

気になる所は確かにあるが森の怪物に関しては、何かあるのならばリュシオン国の問題ではあるだろうけど、自分達に関係する様なことではない…。


そう結論を出した鴻ノ森は、それ以上深くセナに聞くことは無く、喫茶店へと移動して協力のお礼にとデザートを一つ奢り佐々木が待つ場所へと戻った。


「お、帰ってきた」


「あれ?田中君と奇冴さんも来たんですね」


「今日は昼飯終わったら訓練漬けの予定だったからな」


「そうですか」


鴻ノ森が戻ると、木陰で腰を下ろしている佐々木の視線の先では、田中と艮が子供達と遊んでいる。鴻ノ森と佐々木の会話をおろおろとした様子で聞いていたセナの背中を鴻ノ森が押してあげると、ぺこっと頭を下げてセナも子供達の中へと混ざり、聞こえる会話からはギルドの話をしているようだ。


「んで、知りたいことは知れたのか?」


「有益……とは言い難いですが、まぁそれなりに」


「王様は満足しなさそうか」


「何のことですか?」


「お前が王様と念話をしたってのは聞いた。なんか頼まれてんだろ?」


「……頼まれた。というよりは、忠告をされた程度です。情が湧かない程度の関わりにして、帰還に集中するようにと。それにしても驚きました、よく分かりましたね」


鴻ノ森の言葉に、佐々木はチッと面倒臭そうな表情を浮かべて答える。


「驚いた様には見えねぇよ。それにだ、王様――常峰がそういう奴なのは皆が知ってやがる。何でもかんでも見透かした様にモノを言ってくる。

的確な予防線で、そのとおりなのが腹立つぐらいにはな。常峰の行動を否定はしねぇし、できねぇけど……気に食わねぇのは確かだよ」


「何の話ですか?」


「何の話だろうな。俺は感情的になりすぎる時があるからよ……単に常峰が羨ましいってだけかもしれねぇ。お前も大概冷静な奴だから、時折常峰が過ぎんだよ」


「? そうですか。感情的になれるのは羨ましいと私は思います」


「はぁ…王様にも似たような事を昔言われたよ。感情的になれるのは、相手を理解できる証拠なんだと。人とぶつかる事も多いだろうが、それは悪いことじゃなくて、相手と正面からぶつかれる勇気があるとかなんとか…。

自分の意思が無いより何倍も良い事で、それに惹かれる者は少なくない。新道や市羽とは違う視点を持てる貴重な人物だ。なんて言われた事もある」


不機嫌そうに話す様子に鴻ノ森には、佐々木が何を言いたいのか全く分からないが、そういえば佐々木の事で昔は暴走族がどうのと言う噂を耳にした記憶はあった。

興味が全く無く、いつの間にか聞かなくなった噂だが、聞かなくなった頃からか……田中と佐々木が一緒に居る事が多くなったのは…。


「つまり、王様が嫌いだと?」


「嫌いだった。今は、色々と納得させられてる。だが好きにはなれねぇタイプなのは確かだ。損得勘定で俺は割り切れねぇからな」


「それをなんで今、話したんですか?」


鴻ノ森は結局の所、別に佐々木が常峰をどう思っているのか興味はない。どちらかと言えば、何故その話しを今されたのかが気になった。


「俺は帰還派だから帰る事には賛成だ。だが、多分俺はそれを最優先にはできねぇ。ダチができて、それが困ってたら手を出す。そういう辺りの事を王様に言ってて欲しいと思ってよ」


「自分で言ったほうがいいのでは?東郷先生に言えば、アレは貸してもらえると思いますよ」


「誰が言っても同じだ。お前だって分かってんだろ……王様にとって、事前に知れていればいい。優先するぞって、分かってりゃいいんだよ」


「だから伝えておいて欲しいと?」


「ムカつくけど、それで十分だからな」


「信頼はしてるんですね」


「互いにな」


互いに……鴻ノ森も、その言葉を否定はしない。

以前に市羽が言ったように、常峰は自分達を信頼している。どのような根拠の元でそうできているのかは、全くもって理解できないが、確かにその言葉が当てはめられる。


誰かが裏切る様な事をした場合、それはきっと常峰にとって裏切りではなく、裏切るだろうと信頼の元に置かれた結果でしかない。まるでその様に彼は振る舞う。

だからこそ鴻ノ森は思う。


怖い人。



その夜、鴻ノ森は東郷先生からイヤリングを借りて常峰に念話をした。


《まるで神隠しだな》


《そうですね。元の世界なら天狗の仕業とかでしょうか》


《ファンタジーなら天狗とか居てもアリなのか?》


《どうでしょう》


《まぁ、分かった。多分あんまり帰還方法には関係ないだろうから、放置したかったらしていいと思うぞ。その辺は好きにすればいい。

今の所どの組も、帰還についての痕跡は無い。程度しか分かってないからな……探すのも大変だろう》


今日の事を軽く報告した結果、常峰は分かっていたように言葉を返す。

本腰を入れようにも、ここまで何も情報が無いと逆に深く探る事に危険性すら感じている常峰は、もう少し情報が集まるまでは深入りさせようともしない。


《そういえば、佐々木君から王様に。

感情的になるかもしれない。との事でした》


《は?》


あまりにも短く伝えられた言葉に、常峰が困惑したように返すと、鴻ノ森は今日あった事を短くではあるが伝えた。

すると常峰は軽く笑い、なるほどと納得したように言葉を漏らす。


《佐々木らしいと言えば佐々木らしいな。

まぁ、俺が言える事は……好きにしたらいいとしか言えない。そこまで拘束する権限は俺には無いからな》


《随分と寛容ですね。言ってはなんですが、感情的に動かれると王様も困るんじゃないんですか?》


《困るかもなぁ。でも別に困るだけだ。必要なら手を考えるが、行動を起こしたその感情は俺のものじゃないからな。俺がどうこうはできないだろ》


《それが王様と敵対する事であっても?》


《そうだ。その時は、対立して互いが納得する正解を探すとするだけだ。それに今の所、帰るって目標は同じだろ?そうそう対立なんてしないさ》


そう……皆の目標として常峰は帰還を置いている。

少なからず、それは思考の片隅で個人の意思を制限している。自分の行動で、他者にどう影響するか……下手な行動で対立するのは常峰だけではない。それにやはり…。


《私や佐々木君が敵対行動を起こしても、問題は無いという事ですか?》


《大問題だよ。敵対行動ならな》


敵対行動にする気はない。

鴻ノ森は思う。

きっとココで問題を起こしたとして、私達の行動にアレやコレやと理由を付けて正当化する。そう周囲を納得させる。全てが収まった時、問題を起こした方は常峰に恩を売られている。

常峰が見る先には、きっとそこまで含まれている。


《なんでもお見通しですか?》


《んなわけ無いさ。どうしようもできない時は、皆を巻き込んで悩むことにしてるよ》


本当にそのつもりなのだろう。

だからこそ、やっぱり鴻ノ森の常峰の評価は変わらない。聡明にも思う、尊敬にも値するのかもしれない…でもやはり……常峰 夜継という男は。


怖い人。


----

--


その日、リュシオン国の一角は少し騒がしかった。


「ジョアン!ジョアーーン!返事をしてくれ!」「居たか?」「ダメだ見当たらねぇ」「聖騎士には?」「事件性が無いって動いてくれねぇ」「帰ってこねぇのは事件だろうがよ!」


数名の大人達が街を徘徊しながら子供の名前を呼んでいる。

だが、一向に見つかる気配はなく、声に気付いた大人達が何事かと集まっては手伝い探している。


「セナ、本当にジョアンは帰ったんだな?」


「う、うん…。日が沈むからって皆で帰ったよ?」


母親と手を繋いで一緒に探していたセナは、父に問われて答える。


ジョアンはセナとよく遊んでいる子供で、今日も佐々木達と遊んでいた中に居た。昼時になり佐々木達と別れた後も遊び、夕方には解散したはずなのだ。だが、夜になってもジョアンは家に戻っていなかった。


ジョアンの両親は、セナ達と一緒に遊んでいる事も知っており、良く泊まりがけで遊んでいた事も知っていた。だからセナや他の子供達の家を回ってジョアンを探したのだが……その姿は無かった。


「ゆっくりでいいから思い出して?ジョアンと別れたのはどこ?」


「私のお家の前だよ?」


「そこまでは一緒だったのね?」


「うん」


今度は母に聞かれ、セナはすぐに答える。

他の子供達の親も自分の子に聞くか、大体がセナの家の前で別れたと話した。


「ジョアン…ジョアン…」


「大丈夫だ。必ず見つかる…大丈夫だ」


捜索から何時間も経ち、付近の者達と探し続けたのにも関わらず一向にジョアンの姿はなく、その痕跡すらない。

ジョアンの両親も、最悪の状況が頭を何度も過るが、必死に振り払い我が子の名を叫び探す。


「ぬっ!これは何の騒ぎだ!」


夜も老け、それでも探し続けていた者達の前に、一人の男が騒動を聞いて駆けつけてきた。


「こ、子供が居なくなったんだ!」


「何故我々に伝えんのだ!いつ頃、場所は!」


「事件性が無いって取り合わなかったのは、お前等じゃないか!」


「なっ!……ッ…そうか、それはすまないことをした。今の時間帯では私の部隊しか使えんが、手伝わせてくれないか」


白い甲冑に身を包んだ男は、話を聞き目を見開くと、その場の者達に向けて頭を下げる。


「いいのか?」


「聖女様に誓って、尽力しよう」


この国において、聖女という存在は絶対であり、その名に誓うと言うことは命をかけるも同義。聖騎士は特にその意思が強い事を、国の者達は知っている。

だから、聖女に誓った男を信用して両親も頭を下げた。


「……助かる、子供の名前はジョアンだ。五歳で茶色の髪に、嫁譲りの綺麗な青い瞳だ。今日の夕方までは友達のセナちゃんと一緒に居たはずなんだが、家に帰ってこないんだ」


「なるほど。ジョアン君だな!部下にも伝え、探させよう!」


情報を聞いた男は、路地で待機していた部下に要件を伝えると、部下はその場から走り部隊へ情報を共有しにいった。

その事を確認した男は、ジョアンの両親への元へと戻り、ある事を提案する。


「人手は多いほうがいい。ギルドへ依頼もしましょう」


「し、しかし冒険者を雇えるほどの蓄えは…」


「なるほど…では、私が掛け合ってきます!ご両親は探索を続けてください!」


「い、いいんですか!?」


「子は宝。聖女様であれば、きっとそうしたでしょう!」


「私達も出せるだけは出します!ですから!」


「必ずや依頼は出しましょう!このロバーソンにお任せを!」


白い甲冑の男――ロバーソンは、深々と頭を下げる両親達の前で敬礼をすると、ギルドへと向かい走り出した。


未だに投稿速度が戻らす、本当にすみません。



ブクマありがとうございます。

感謝で一杯です!どうぞ、これからもよろしくお願いします。

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