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眠れる王  作者: 慧瑠
見えてくる意思

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一方その頃:眠王と王の使い

やっぱり少し短めです。

「お父様、王は?」


「現在、寝室にてDMルームに赴いていますよ。何か御用でしたか?」


「レーヴィよりルアールとジーズィから報告を預かって来たのですが。そうですか、初代の所に…」


「一時間程でお戻りになるそうです」


「私は今日は第二空街にてリピアと共に見回りと、ギナビアからルアールが連れてくる者達のためにマニュアル作成をする予定なので、報告の方はお父様に頼んでよろしいですか?」


「構いませんよ」


昼時、食料庫で在庫確認をしていたセバリアスの元に来たラフィは、レーヴィから聞いたルアールとジーズィの報告を伝えた。


ルアールからは、漆と市羽が子爵同等の扱いを受ける権利を得たこと。同時にコヌチルの兄であるジェンルの図らいにより、一時的にファンディル家の屋敷を市羽へ貸し出し、市羽がレゴリア王より譲り受けたスラムの一角に屋敷を建てるまでは、漆達とスラムの子供達がそこで暮らすとのこと。

加えて、ギナビア中央都市で起こったコヌチル殺害事件は、死神ではなく魔族の犯行であると公布し、収拾をつけた。


そして最後に、フラウエースのフラセオについて。

今回ギナビア国で起きた事件の犯人ナールズ・グレンドから押収した証拠から、カジェラなどがフラウエースの存在を確信している様子があり、表立って回収するか手を回して回収するかの判断を仰ぎたい。と連絡してきていた。


次に、ジーズィからの連絡は短いもので、三度あった襲撃報告とリュシオンの王都付近までは来ているが、まだ到着はしていないという報告だった。


「分かりました。確かにお伝えしておきましょう……ところでラフィ」


「はい?」


ラフィからの言伝を聞き終えたセバリアスは、チェックを入れ終えた書類を脇へ抱えると、真剣な顔でラフィへと向き直る。

その様子に、何か不手際があったのか。それとも何か大きな問題が起きたのか……心当たりが無いラフィは首をかしげる。


数秒の沈黙後、セバリアスが口を開いた。


「料理は上達しましたか?」


「え。あー……それは、現在シーキーに教わっているところです」


突然料理の事をふられ、ピタリを表情が固まったラフィは、軽く泳ぐ目を必死に制御しながら答えた。


「シーキーにですか。確かにシーキーならば腕も確かでしょう……ですが、シーキーは些か優しい所がありますから近々私が教えましょう」


「……シーキーが優しい?お父様、何を言っているんですか?そんなわけありませんし、お父様の手解きも勘弁願いたい所なのですが」


セバリアスの提案にラフィは一歩後ずさり、少しだけ距離を取る。


それも当然だ。

セバリアスは優しいと言うが、ラフィにとってシーキーの手解きは優しくはない。

手伝いと称して何度かシーキーと共に料理をしているが、いざ手伝ってみると手際の悪さを細かに注意され、一つテンポが遅れると準備を終えた後に特訓が待っている。

作るのは構わない……構わないのだが、作った物を食すまでが特訓なので、失敗を重ねればそれだけ食べる事にもなる。


おかげか、せいか、その為に体重が少し増えてしまっているが、以前より手際は良くなっているからラフィも文句が言い辛い。


だが、そこに父親であるセバリアスの手解きが重なるとなると……。

シーキーよりも厳しく、エマスやルアールの大食漢組が居ない今、練習の為に作り終えた料理の行き先を考えるだけで、きっと料理する手も止まり手解きが長引く悪循環が生まれる所まで予想できた。


「それは残念。ラフィの手料理を、我等が王はお待ちになっていると言うのに、まだ待たせると」


セバリアスからの一言。


「お父様。よろしくおねがいします」


条件反射の様に返される手のひら。


「では、今晩にでも始めましょうか」


こうしてラフィは地獄の門を自分でくぐった。


--

-


「つまり、魔物の繁殖を両方利用したほうがコスパが良いのか」


「うんうん。雌雄の交尾で生まれるだけを利用すると、ダンジョンとしては数が間に合わないからね。

ダンジョンマスターが生み続けるのも一つの手だけどねぇ……相応の魔力も必要だし、生まれたばかりの所を突かれると脆いんだよ。ダンジョンマスターが呼んだ時、本能や生きていく知恵ではなく、真っ先に得るのはマスターへの忠誠心。

それに応えようとしてしまって、結構無茶ばかりするんだよ」


「だから必要最低限だけ召喚を行い、後は繁殖と自然発生で数を増やしていくなり補うなりしていくのがテンプレってか」


「まぁ、常峰君の考えるダンジョンだと、それぐらいで全然間に合いそうだしね。自然発生や繁殖で増やしたほうが、間引きするにも栄養価とかが召喚したときより高いから。

それにしても、これぐらいの数のローバープラントだと余裕そうだね」


DMルームに来ると暗黙の了解で用意されるローバープラントの攻撃を捌いていると、俺の余裕が気に食わなかったのか、眼前の二体のローバープラント以外に背後に二つ気配が増えた。


「常峰君は視野が広いからね。もう少し視覚情報以外にも磨いていこー!」


「くそったれが!」


爽やかな笑みで気色悪いモノを増殖させたコア君に悪態をつきつつ、俺はローバープラントの攻撃を捌いていく。

四体を視界に入れようとすると、二体が邪魔をする様に攻撃して、残りの二体は必ず背後に回り込む様に行動している。俺から手が出せれば打開策もあるようなもんだが、これは攻撃を裁く訓練で、俺からの攻撃は禁止されている。


故に防ぐしかない。仮に足止めして、それをコア君が俺の攻撃だと判断しようものなら……多分、更に倍ドン!って軽く言って手に負えなくなりそうだ。元より寝ている状態だから、スキル補正もつかねぇし…魔力が回復し続ける分、まだましか。


「食料目的だと召喚した魔物は不向きなんだよ。

その昔、僕のダンジョンも少し食糧難になっちゃってね。食料の為に召喚してみたんだけど、どうも野生の魔物より栄養価に差があるみたいで窶れちゃって……結局、ダンジョンの領域を広げてダンジョン下での繁殖地域を拡大した方がコスパがいい事が分かったんだ。


もちろん、全く無い訳じゃないよ?ある程度はあるって感じで、数ヶ月単位で凌ぐのは難しくてねぇ。幾ら常峰君でも、今のダンジョン内に居る全員分を補うのは……少しすればできそうではあるけど、続けるとなれば話は別でしょ?」


返事もできなくなった俺をよそに、コア君は俺の思考を読んで答えていく。


まぁ、確かにそれは面倒だ。

少食な奴から死に絶えそうな環境である事には違いないだろうし、コア君の言い分ではいつまでも凌ぐのは無理なのだろう。

緊急事態の時、時間稼ぎとしては候補に入れてもいいが、継続するべきではないんだろうな。


それに圧倒的に供給量が必要になってしまっている現状で、全てを補うのは難しい。俺もある程度は動けるようにしておきたい。そうなれば、やはり魔物を意図的に繁殖させる方が良いだろう。


作物や家畜なんかが安定するまでは食料にもできるし、ダンジョン運営用としても申し分ない。リピアさんに聞けば、魔物を食すのは別におかしい事ではないし、中には高級食材になっている魔物もしばしば。

畑に聞いても、調理に問題もないらしいしな。となれば、俺はそれを使いたい。というより俺が用意できそうなのがソコだ。そうなりゃ数を揃えなければいけない。


その方法として、普通に雌雄で繁殖。次に、自然発生。


繁殖は当たり前と言えば当たり前なんだが、この自然発生というものが曲者だった。


コア君の説明の受けおりになるが。

魔物は魔力によって生まれる。ダンジョンの機能で召喚するのも、元を辿ればコレに近いのだろうと言うのがコア君の見解。


その内容というのも、一定以上の魔力が溜まり、時間を掛けて魔物を生む。と一見シンプルなものなんだが、基本的に魔力は世界を漂い生物やら何やらが吸収して、溜まる事無くなんやかんやで循環している。

ただダンジョンでは魔力溜まりができやすいらしい。……ただね、これね、魔力の純度が云々とか絡み始めて面倒なんだ。


ダンジョン内でも魔力は生物達に吸収されて循環する。それでも溜まる魔力は、漂い下層へ、その下層に行くに連れて簡単に言えば濾過っぽいのがダンジョンの性質で行われ、純度の高い魔力溜まりだ出来上がる。


これの問題が、純度の低い魔力溜まりは数を生み、純度の高い魔力溜まりは単体でありながら強力な魔物を生むと言う。


「うんうん、バッチリだね。だから下層へ行くに連れてダンジョンの魔物は強くなる傾向があるんだよ。

もちろん階層ボスなんて名目でダンジョンマスターが生んだ魔物は当てはまらないけど、基本的にダンジョンマスターをやってると、下層は勝手に強くなりがちなるんだ。


まぁ、元々このダンジョンは僕のせいで攻略対象とした時、かなり高難易度のダンジョンになっちゃってるんだけどね」


セバリアス達が居るからな。普通に攻略側だったら、セバリアス達の強さを知らなくて攻略しようとするだろうけど、知った瞬間…俺なら帰るわ。


っと、あぶねぇ。今攻撃カスッた。人体に影響がないとは言え、やっぱりあのヌルヌル触手に触れるのは精神にクる。

えっと、それで……あぁ、そうそう。魔力溜まりだ。

俺のダンジョンは深くはないから問題が無い。とか考えてたんだが……。


「浅いと中々溜まらないっていうのと、逆に増え過ぎちゃうのが問題になるね。それに、一応空中街もダンジョン内だから、魔力溜まりができそうなら散らしていた方が良いよ。

まぁ、魔族が住んだりしてるから、あんまり関係は無いと思うけどね」


それでも警戒はしておくべきだ。

自然発生を利用するにしても、ある程度上限を決めて魔力溜まりを散らさないといけない。とか考えたんだが、よくよく考えればダンジョンである以上は逃れられない問題なのでは?


「あ、気付いちゃった?」


ダンジョンだから頻度高めで起こりうる問題だぞ…考えて気付かないとかあるのか。いや、仮に気付かなくても、時間が経てば気付いてしまうだろ。


「常峰君がどのタイミングで気付くかなぁって思ったけど、やっぱり今気づいちゃうかー」


気づいちゃうかーじゃないんだが。


「あはは、そんなに怒らないでよ。

こうしておちょくったり、話せたりできるのも、常峰君が来てくれないとできないんだから」


ぐっ…そう言われては……なんて思わねぇよ。


「余裕あるね?もう倍ぐらい行っとく?」


思うわぁー。超思う。

コア君、話すの好きそうだもんな。相手が居ないと寂しいよな。いやー、これぐらい許しちゃう。


「ふふっ、僕は自分に素直な常峰君が好きだよ」


コア君が軽く指を鳴らすと同時に、四体のローバープラントは姿を消した。

最初の方で一時間ぐらいって言ったから、おそらくは時間なのだろうが……俺は少しだけコア君から距離を取る事を優先した。


「冗談に聞こえねぇからやめてくれ」


「冗談だよ」


「だから聞こえないんだって」


その後、少しだけコア君と話してからDMルームを後にした。起きる時、ふと思い出したようにコア君が口を開く。


「そうだ。多分、次からは一人増えると思うよ」


「だか――」


ほぼ覚醒状態にあった俺は、全てを言う前に目が覚めた。


「――ら、そういう事は」


「おはようございます。我が王よ」


「……おはよう、セバリアス」


「ルアールとジーズィより報告があります」


「わかった。その前に、少し風呂に入ってくるわ」


「かしこまりました。お背中は?」


「大丈夫」


ローバープラントを相手にした日は、大体寝汗が酷い。だから寝起きに風呂に入る事が、DMルームに行かずとも日課になってしまっている。

そして……。


「コア君や、そろそろ起きる瞬間に重要そうな事を言うのはやめてくれ」


風呂場で湯に浸かりながら、ダンジョンコアを手元に呼び出し文句を言う事も癖になり始めていた。


---

--


静寂が包み、日の感覚を失いそうな程に薄暗い部屋。唯一の光は、天井から垂れ下がっている細かいガラスの束が、僅かな光りを反射しているモノぐらい。

その下には椅子が一つ。


そこには、整いすぎている顔立ちに白いローブを纏った者が、目を閉じ、微動だにせず座っていた。


「お客様を御呼びした記憶は無いのですが」


「貴様の用など知りません。優先すべきは我等が王のみ。

眠王様の使いであるケノンです」


座っていたリュシオン国皇女――コニュア・L(リュシオン)・エンピアが虚空に問うと、そこからカツ…カツ…と足音を立てて現れたのはケノン。

レゴリアからの助言を聞いてか、自己紹介をしつつコニュアへ近寄ると、懐から手紙を一枚差し出した。


「これは?」


「眠王様より貴様に届ける様にと預かった文ですが?」


「そうでしたか」


ケノンから手紙を受け取ったコニュアは、細い指を滑らせ中を確認していく。その様子を確認したケノンがその場を後にしようとすると、コニュアがケノンを呼び止める。


「待ちなさい。眠王からの使いという事は分かりましたが、ここは簡単に侵入できる場所では無いはずですが?貴女はどの様に入ってきたのでしょう」


「確かに少々手間は掛かりましたが、闇がある場に私が行けない所はありません」


「……なるほど、闇の精霊でしたか」


「理解できたのならばこれで。私は我が王の元へ戻らなくてはなりません。貴様が面倒な場所に居るせいで、予想していたより時間が掛かったので」


「お返事は'わかりました'と眠王にはお伝え下さい」


「ほぉ…我等が王をお待たせしないその精神は、評価しますよ」


コニュアの言葉を聞いて関心したケノンは、それだけ言い残すと闇に溶ける様に消えていく。ケノンが完全に居なくなったことを確認したコニュアは、もう一度常峰からの手紙に目を落とした。


内容は、リュシオン国の者を派遣して欲しい。と書かれていて、その理由と条件が幾つか記されている。


理由として、この度、国を持って政治に身をおくことになり、今度は魔族だけではなく様々な種族や人間側の住人も増えていく事を考え、現在の大国のやり方などを取り入れる。または、参考にしたい旨が書かれている。


そして条件として。

戦闘の強弱は問わず、政治などに強い者。

コニュア皇女が信頼を置ける者。

比較的魔族を敵視しない者。


敵視に関しては、厳しい場合もあるだろうからできれば…。と書かれており、続いて派遣してくれた場合の事も書いてある。


「できる限りの高待遇の用意、そして聖女様の滞在期間の延長ですか」


条件としては不釣り合いなようにも見えるが、リュシオン国として聖女という存在は大きい。その事を常峰は知っている。そして、常峰がそこを理解して条件を出してきている事をコニュアは分かっていた。


「恐らくは、ログストアとギナビアにも派遣を依頼しているでしょう……ここでリュシオンだけ乗り遅れるというのは痛手。何より、聖女様が滞在してくださると言うのであれば…」


飲まない訳がない。

ログストアとギナビアがどういう条件で依頼されているかは分からないが、均衡をギリギリ保っている状況で出し抜かれる可能性は控えたいものであり、阻止する事柄でもある。

そして、仮に他の国が受けなかった場合は、一足先に異界の者と親交を深められる絶好の機会。魔王討伐後の事を考慮すれば、相手の懐に自国の者を送り込める機会を逃す方が後々の損になる。


「……しかし、残念ながら私が信頼する相手などリュシオンには居ません。飲まない選択肢は切り捨てましたが、どうしたものでしょう」


ケノンを送ってきた事を考えると、恐らく内密に派遣をして欲しいのだろう。だが、書かれた条件に値する人物がコニュアの中には存在しなかった。


薄暗く静寂が包む部屋で一人。コニュアは、まぶたを下ろし静かに考えた。

私が分かりやすくする為、区切りの一方その頃です。

次から、リュシオン。東郷先生達に視点を持っていこうと思います。


後、前回普通に名前を間違えていた所がありました。修正はしましたが、混乱を招いてしまっていたと思うので申し訳ありません。



ブクマ・評価ありがとうございます!

今後もどうか、何卒、よろしくおねがいします。

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