表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
眠れる王  作者: 慧瑠
見えてくる意思

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/236

相部屋……ですか?

途中から柿島視点で書いています。

「うわ……これ、どうするつもりなのさ」


翌日。

今後の話しを軽く済ませ、一足早めに寝ていた城ヶ崎は、誰よりも早く起きていた。自分の他に寝ている姿は三人。

どうやらニャニャムは、昨日出ていってから帰ってきていない様子。その事にも気付いている城ヶ崎だが、それよりも何よりも見上げた先の光景が衝撃的過ぎた。


その日、ギナビア国王都の上空は曇天模様だった。そう……だったのだ。


空を見上げている者は城ヶ崎だけではない。

外を歩いていた者も、室内で起きていた者も、寝ている所を起こされた者も、例外無く曇天模様であったはずの空を見上げている。


「んー。おは月衣。どうかしたの?」


「おはよう彩。外、見てみなよ」


藤井と同じベッドで寝ていた漆は、まだベッドに潜っていたい気持ちを抑え外を見た。城ヶ崎からの説明など要らず、自然と視線は空に向く。


「夜継の奴、なにしてんの…」


漆は思わず言葉を漏らす。


曇天を照らし輝く巨大な魔法陣から、周囲の雲を上から押し退け姿を見せるソレ。


初めは船かと誰かが声を漏らした。だが、ソレはドラゴンの鱗を纏っている。

次に、それはドラゴンだと誰かが呟いた。しかし、姿を見せたソレは、蛇が絡みつく尾ヒレで雲を掻き分け吹き飛ばした。

そして誰かが魚か…?と言葉を零す。それに対して、巨大なソレは地を揺るがす様な重たい声で鳴く。


最後に、誰が呟くでも無く見上げていると、ソレから巨大な垂れ幕が下がる。そこに描かれている模様を知る者は少ない。

それでも見上げている者達の中で、その模様を知っている者達も少なからず居る。


「ねぇ、月衣……あれ鯨でいいの?」


「空を泳ぐ鯨なんて知らないけど、パッと見は鯨っぽいよね」


「まぁ少なからず、あの旗があるって事は夜継が言ってたルアールって人?なのかしらねぇ」


そう。漆達は知っていた。その模様が自分達の通っていた学校の校章であり、今では一国を象徴する国旗である事を。

つまり、あの魔法陣から現れた巨大な鯨の様な何かは、昨夜常峰が言っていた使者のルアールであるはずだと漆は考える。


そうこうしていると、空に変化が訪れた。

ソレの上に、新たに展開された巨大な魔法陣がゆっくりと降りてくる。


わざと時間を掛けるようにゆっくりと降りてくる魔法陣がその巨体を通過すると、合わせるかの様にその姿は消えていく。完全に旗まで魔法陣に飲まれ消えると、空には小さく二つの人影が残り、次第に影は降下し、その足を地に着けた。


「あのローブ誰?」


当然、見上げていた者達の視線は二つの人影に集まるが、同じ様に人影に視線を移した城ヶ崎は、顔を見せているルアールにではなく、顔を隠している自分達が持つモノと同じ、白く神聖な空気があるローブを纏った人物に意識が向いた。


「ん?あれ、永愛ちゃんじゃん」


「彩、分かるの?」


「もちろん。あのぽよよん感は永愛ちゃんに間違いない」


「ローブの上からでも分かるものなの…それ」


謎の自信と確信を持って告げる漆に呆れるが、校章が縫い描かれたローブを纏っている人物がフードを外すことで、すぐにそれが当たっている事は分かった。


漆の言ったとおり、同じクラスで、現在は常峰のダンジョンに居るはずの柿島(かきしま) 永愛(とあ)がソコに居た。


--


目立つ登場で注目を浴びて、その流れで自国の象徴を覚えさせる。


漆さん達の尻拭いをする事になった王様さん……常峰君の目論見は多分できたはず。少し、ルアールさんの方が印象強く残りそうだったけど、私がこのローブを纏って歩く事で、その辺りは大丈夫かな。


「ルアールさん、この後は」


「我等が王の仰ったとおりに…だな。このまま、あそこに見えてる王城に向かって歩いときゃ、迎えが来るだろう。

さっきので俺が来ている事は、ニャニャムにも伝わっているだろうし」


私の隣に立つルアールさんは燕尾服に身を包み、顔だけを動かして軽く周囲を見渡している。周りの人達は警戒しているようで、ルアールさんの一挙手一投足に反応を見せて……というのは語弊で、私もルアールさんと変わらず警戒されているみたい。


あんな登場の仕方をすれば当然だとは思うけど、やっぱり注目され続けるのは居心地のいいものじゃない。


「我等が王からの御言葉は忘れていないな?」


「大丈夫です」


「なら行こう。どうやら、迎えもこっちに向かってきているっぽいしな」


そういうと、ルアールさんは軽く私の背中を押して歩くようにと急かす。


私は緊張を抑えながら、人混みが割れて歩くのには問題のない道を進みつつ、常峰君から言われた言葉を整理していく。


常峰君から言われたのは、たった一つ。


私の顔と名前をレゴリア王に覚えてもらってくる事。


これだけ。

その為に、今回ルアールさんと一緒に私が来た。


漆さん達が起こした問題を解決する為……というのは建前で、この機を利用して常峰君は色々牽制をしておきたいんだとか。

詳しい事は分からないけど、一応これも問題解決に必要な手順だと教えられている。


そして、私が今回しなきゃいけないこと。

顔と名前を覚えてもらうついでに、私は常峰君から頼み事をされている。


一つ、漆さん達が直面している問題解決のきっかけ作り。

二つ、人材確保。

三つ、ギナビア国の派閥調査。


この三つを常峰君から頼まれた。


「我が王が仰っていただろう?肩の力を抜いて、気楽にやればいい。失敗しても良いように、俺が同伴している」


「はい。ありがとうございます」


緊張している事がバレたのか、ルアールさんが優しく言葉を掛けてくれる。

私は深呼吸をして緊張を解す様に務めなきゃ。


ルアールさんの言う通り、常峰君からは気楽に練習してくればいいと言われている。実際の所、漆さんの件も人材確保の方も、市羽さんと常峰君の二人である程度は解決への手順を立てているらしい。

だから、私がするのは市羽さんが戻ってきた時に円滑に解決出来るように下準備をするだけ。


派閥調査に関しては、難しいようなら無理はしなくてもいいと言われているし……。


本当に私がしなきゃいけないのは、私の顔と名前をレゴリア王に覚えてもらうだけでいい。そう考えると、少しだけ気分は楽になる。なるけども……練習という事は本番の予定があるという事で、深く考えすぎてしまい、また気分が……。


「止まれ!」


「はい?」


考える事に没頭していて周りが見えていなかった私は、突然聞こえた声に足を止める。そして、私とルアールさんに向けて武器を構えている兵士の方々を見て驚いた。


「貴様等は何者だ!先程のも貴様等の仕業か!」


一歩分だけ前に立つ兵士さんの言葉を、私はユニークスキルを使って視た。


困惑と怯えのせいか、言葉は発せられた声より弱くて……私もどう対応するのが良いのか分からなずにルアールさんに視線を送る。


「俺達は「ギナビア国陸軍第三部隊隊長ルコ・ペトリネです!すみませんが、道を開けてください!この方たちはレゴリア王の御客人です!武器を引きなさい!」


私の視線に気付いたルアールさんが答える前に、慌てたように走ってきた女性が兵士達を掻き分けて前に出てきた。

ルコと名乗ったその人は、私と兵士の間に割って入り、問いかけてきていた兵士に事情を説明している。


「これはルコ隊長!全員武器を引け!」


「情報共有が遅れてしまいすみません」


「いえ!お気になさらず。第三部隊は王直轄も兼ねていると聞いています。お忙しいにも関わらず……まさか、隊長直々にとは。御二方にも大変失礼な事をしました」


「この方達は、中立国家の使者の方々です」


「なっ!」


ルコさんの言葉に兵士の方々は驚き、周りで聞き耳を立てていた人達もざわつき始めた。


「私達も突然で失礼しました。よろしければ、案内をお願いしてもいいですか?」


「もちろんです。では、こちらへ」


先導する為にルコさんが一歩踏み出せば、兵士の方々も道を開け敬礼の姿勢を取る。私は、さっきの兵士の方々に軽く頭を下げてからルコさんの後をついて行き、ルアールさんも私の一歩後ろを堂々とした態度で歩く。


私もそんなルアールさんを見習い、少しだけ胸を張りルコさんの後をついていった。



ルコさんに先導されること数十分。私とルアールさんは、中央に聳え立つ城へ入り、更に案内されて、重厚な扉の前で待機する様に言われた。


部屋には先にルコさんが入り、私達の到着を伝えている。というのが、扉を抜けてくる言の葉をユニークスキルの'言霊'で見れば分かる。

その間に私は呼吸を整え、気持ちを切り替えていく。


大丈夫。家のお手伝いで巫女をした時と同じ。甘酒を取りに来て、少し長話をするおじいさんの相手をする感覚で、相手言葉を汲み取り、上手く話しを巻けばいい……はず…です。


なんて自分に言い聞かせて。


「どうぞお入りください」


ルコさんの言葉で、スイッチが切り替わった。


-


「失礼します」


ルコさんが開けてくれている扉を越え、深く一礼をして頭を上げる。室内には、二回ぐらい見たことがあるレゴリア王。そして、初めて見る人が二人。


「遠路遥々よく来た……と言いたいが、もう少しこっちにも準備をする時間が欲しかったものだな」


入ってきた私にレゴリア王が嫌味を投げかけてくるけど、言葉の中には寧ろ好感を持てる気持ちが含まれている。


「大変申し訳ありません。失礼ついでに、先に自己紹介をさせていただきます。

私、この度、眠王が治める国より使者として参りました'柿島 永愛'と言います。三大国それぞれに担当はいますが、今回の様に担当が不在であり、急事の際は私が赴く事になりますので、以後お見知り置きください」


私は空いている椅子には座らず、先に自己紹介をする。ルアールさんは、そんな私の後ろで待機して一言も発そうとはしない。

分かっていたこと。今回ルアールさんは私の護衛で、ここから交渉するのも私。

だから念話用の子機を、私は渡されていない。


「なるほど。ではこちらも挨拶をしようか」


そう言い、レゴリア王から簡単な自己紹介が始まり、次に初めて見る二人へと移る。


「ギナビア国軍元帥の'ヴァジア・ベンルベド'と申します。以後お見知りおきを」


纏う威圧感と、その風貌からは少し違和感を覚える丁寧な言葉遣い。なるほど、これが常峰君が言っていたレゴリア王と同等の権力者。

発した言葉にも、絶対的な自信と私への感心が含まれている。


私とヴァジアさんは互いに軽く会釈を交わし、紹介は次に。


「ギナビア国陸軍に所属している'ナールズ・グレンド'だ。階級は将軍、よろしく頼む」


ギナビア国の軍の階級に関して、私は大した知識を持ってはいないけど……発言の順番と、この場に呼ばれた事を考えて、それなりの地位の人のはずですよね。

言葉には、落ち着いて堂々としている割に、かなり警戒心が含まれて、少し緊張と焦りも見える。


「悪いな。急だったから、呼べたのはこの二人だけだ。

何分、こっちもこっちで忙しい。事情は……当然知っているか」


「はい。そのために私が派遣されたので」


「立ち話もなんだ、とりあえずは座れ」


「ありがとうございます」


レゴリア王の言葉に従って椅子に座る。ルアールさんは、変わらず私の後ろに立って待機。


「さて、まずはそっちの要件を聞こうか。柿島」


三人もそのつもりの様で、空気が少しだけ重くなる。

今からが本番。


「ではお先に。

この度、眠王よりレゴリア王へ'頼み事'を預かっています」


「ほぉ……アイツは俺に何を頼みたいと?」


「人材を派遣して欲しいと。数は十五、六程で」


「なるほど」


これは常峰君が提示している数字。この数の意味は、私も説明されている。

レゴリア王が溜息と共に漏らした言葉の裏には、'やはりか'と含まれてる所を見ると……向こうも向こうで予想していたみたい。


ヴァジアさんとナールズさんは、話しの流れを見ているだけみたいだし、続けていいかな?


「眠王は、派遣するのは奴隷でも良いとの事です。ただ、その場合は隷属権限を有した者も共にと」


「柿島、眠王は何処まで知っている」


急に重たくなるレゴリア王の言葉に、私は少し気圧されてしまう。

言葉の裏に含まれた'まどろっこしい'という圧が、私の口を重たく固くする。でも、気圧されて弱気になるわけにはいかない。


大丈夫、もし話しちゃダメならルアールさんが止めるはず。常峰君は人材確保としか言わなかったけど、その数字の意味はそういう事。


「市羽さんが魔族の進軍を阻止しに行ったことは知っています。そして、王都で起きた死神による事件も。

率直に申し上げますと、逃走した奴隷を派遣しては頂けませんか?」


「全員か」


「全員です。一人も漏らす事無く」


「それは「黙っていろナールズ」……ハッ」


私の言葉に何か言おうとしたナールズさんは、レゴリア王に止められるけど、言葉を発した時点でその行為は私に対して意味を持たない。


色々な気持ちが籠もっているけど、簡単に言えば'気に食わない'と言いたかった様子。私が奴隷となっている人達を連れて行く事が余程嫌なようで……。


「続けろ柿島。眠王は、何を提示した」


その言葉は、求めるモノではなく、それを呑んだ場合にこっちが提供するモノを指している。もちろん、これに対する返答は常峰君から聞いている。


「今回の事件を起こした死神の捕縛と、これなんてどうでしょう」


私がそう言うと、ルアールさんが一枚の紙を取り出してルコさんへと渡す。レゴリア王は、ルコさんからその紙を受け取り目を通し始め、読み終えると次はヴァジアさんへと渡る。


「これが本当ならば、相当の利益は見込めそうだが……ヴァジア、どう思う」


「疑わしいと言うのが本音ですな」


読み終えたヴァジアさんは、その紙をナールズさんへ渡しながら答えた。そして、その内容に目を通したナールズさんは驚きに目を見開く。


「国内のダンジョンで得た物品への関税免除……だと!?

馬鹿な!ダンジョンを所有していると言うのか」


「そもそも、ソコが問題です。制圧しきっているダンジョンを所有しているかどうか。

ギナビア国でも古くに制圧したダンジョンが二つ。軍の訓練用にしか使えない状態。


相当な魔力を所持していても、ダンジョンの力を振るう事は難しい。ましてや、武具などを生み出すなんて事はダンジョンコアを完全に掌握しなければ」


「それは俺が保証してやろう。コイツ等は、ダンジョンを所有している」


「レゴリア王…知っていたのですかな?」


「あぁ知っていた。そして、そのダンジョンのマスターが眠王である事も知っている。

俺達がする様な、魔法を行使しての制御ではなく……眠王がダンジョンマスターとしてコアを行使している」


問いに返ってきた答えに、ヴァジアさんも聞いていたナールズさんも驚きの表情を浮かべた。

そこで付け加える様に私は言葉を被せる。


「眠王は今後、国内に一つのダンジョンに対し複数の入り口を用意して運営する予定です。

その一つをギナビア国専用のダンジョンとし、そこで得た武具などの所有権、そして国外に持ち出す際の関税を免除する事を約束しましょう。


武具の配置などは、こちらで決めさせていただきますが……何を配置するかは、派遣していただいた方と相談し決めるつもりです。

もちろん、特殊な武器である場合は、持ち手を考え、相応の階層を用意して置かせていただきます。質に問題が出た場合は、高品質のモノと交換をします。


後では問題が出てくると思うので先にお伝えしておきますが、ダンジョン内に配置するモノに関して、あまりにも無茶なモノの場合は拒否をします。高価過ぎるモノである場合は、買い取りという形を取り、金銭をいただく手筈を取る予定ですが……当然、通常よりは割安で売らせていただくつもりです」


異論が出る前に全てを告げた。

ただ告げるのではなく、ユニークスキルを利用して私の言葉を重くし、信憑性を高め、そこに嘘はない事を刻んで聞き手に送って。


「普通に物品提供ではダメだったのか?」


「その場合は、数に限りができますが?

この条件を呑んで頂ければ、ある程度の品質ならば、ギナビア国と協力関係である限りは際限無く。と眠王から許可を頂いています」


「眠王の考えは読めないが、それなりの好条件ではある。むしろ、長期的に見ればこちらが明らかに得をする話だ」


レゴリア王の言葉には承諾の意思が含まれていた。

常峰君への疑念は抜けていないけど、正直私にも全部は把握できないし分からない。こんな遠回しな条件に何の意味があるのか。


まぁ、でもレゴリア王は大丈夫そう。後は……この二人。


「確かに国を考えれば良い条件です。ですが、すぐすぐは呑めませんな。

私からすれば、眠王を知らないので信用ができません。ですので、もし死神の捕縛ができた場合は承諾をするという形でどうでしょう?」


「もちろんそれで構いません」


一応は、これでヴァジアさんもクリアですね。残りは――


「自分は反対です」


ナールズさんだけなのだけど…。


「なぜだ?ナールズ」


「コヌチルが所有していた奴隷の中には、フラウエースも居た可能性があります。その条件ではフラウエースも含まれているかと。

その場合、フラウエースを利用してリュシオン国と交渉した方が、信用もあり好条件も見込めます」


「ナールズの言い分も一理あるな。だが、確かにフラウエースの件は聞いているが、正直そっちの方が信用できない。

数百年も前に絶滅をしたはずの種が生存していたと考えるよりは、この条件を呑むほうが利口に思える」


「……では、自分からも条件を提示したい。

死神の捕縛に加え、フラウエースが奴隷内に居なかった場合ではいかがだろうか」


レゴリア王とナールズさんの会話を視ていたけれど、どうしてナールズさんはフラウエースが居る事を確信しているんだろう。

それに、私達が死神を捕まえきれないと確信もしているみたいだし……。


「俺としては眠王を知っているから承諾をしても構わないが、こう言っている奴も居る。判断はお前に任せるぞ柿島」


まぁ、その辺りを埋めるのは後でで大丈夫。今は、常峰君に頼まれたように、しっかりと好条件で結べる兆しが見えた。


「構いません。では、私達が死神を捕まえた場合は、奴隷の方々を引き取ります。そして、その時にダンジョンに関しての書面もご用意しておきます」


「ヴァジアとナールズも異論は無いな?」


「ありませんな」


「ありません……」


「では、これでお開きだ。期待しているぞ柿島」


「ありがとうございました。ではまた……次は、死神を捕らえた際に」


私は席を立ち上がり一礼をして部屋を出た。その後はルコさんに見送られ、ルコさんが手配してくれた宿に着き、身体の緊張の糸が切れる。


「はぁぁ……」


「とりあえずお疲れ様。初めてにしては上出来だったが、もっと堂々とすればいい。だが、良く我等が王の御意志を通した」


「ありがとうございます」


部屋に入ると、身体から力が抜けてベッドに倒れ込んでしまった。そんな私に、ルアールさんの裏表の無い言葉が私を労ってくれる。


……ん?あれ?


案内された部屋は一室だけ。用意されているのも一室だけ。でも、ここには二人いる。……あれ?


「ル、ルアールさん?」


「どうした?」


「相部屋……ですか?」


「そうだけど?」


そんな当然の様に言わないで欲しいです。なんて思っている私の気持ちを察して、ルアールさんは軽く手を鳴らし、あぁ!と言葉を続けた。


「気にしなくていいぞ。だって「あ、ほら、やっぱり永愛ちゃんだ」――こういうことだから」


気にしなくていいと言われて、少しドキドキしてしまった私の耳と目には、開きっぱなしだった扉から顔を出す漆さんの声と姿が入り込んできた。

三人のおっさんから圧迫されるJKの図。


まだ更新ペースが戻れそうにありません。本当すみません……。



ブクマありがとうございます!

励みにがんばります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ