表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
眠れる王  作者: 慧瑠
見えてくる意思

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/236

瓶の中は

常峰視点です。

《蒸気機関?

そんなもんがギナビア国で使われているのか》


《えぇ。今はポポモリスとギナビア中央都市の中間にある'ファーパス'という街に居るのだけど、移動に蒸気機関車を使っているのよ》


《ログストア国では見なかったぞ……》


《根本的な技術情報はログストア国が保管しているそうよ。ただ、ポポモリスを作るにあたって、情報と物資提供を互いに出し合った中に、この技術をギナビア国が要求したらしいわ》


エマスから奴隷制度の事を聞かれた翌日の明朝、珍しく早起きをした俺を見計らったかのように市羽から念話が来て、報告を受けていた。


少しずつではあるが、減ってきた書類の山を処理しながら念話をしていると、市羽は思い出したかのように蒸気機関の話を持ち出した。


《よく調べたな》


《預かったお金を使いたくなくて、私だけ身分証明の為に大国制作のローブを見せているの。宿泊場所なんかは、軍の駐屯所でお世話になっているわ》


《それでも、よくまぁ契約内容をポロポロと。勇者に聞かれたら言わなくていい事も答えちゃう病なのか?》


《あら、それなら、今の私は勝手に壺やタンスを物色しても怒られないのかしら?》


《いらん問題を起こそうとしないでください。仮に許されたとしても、嫌味は俺にまで飛んでくる》


《冗談よ》


本気でも困る。冗談だと分かっていても、たまに本気に聞こえてくるから、反応にも困る。

それにしても蒸気機関か。随分とノスタルジックなモノが出てきたな。


しかし、なんでまた技術はログストアなんだ。ログストア国の様子を見る限りでは産業革命や工業化の傾向がある訳でもないし、技術はあったけど有効活用策が見いだせなくてギナビア国に売ったのか?……なんかありえそうだ。


《話は戻すけど、蒸気機関の仕組みってどうなっているんだ?石炭焚べてるのか?》


《いいえ、魔力よ。

最初は少量の魔力で効率良く軍の大量輸送を目的として、蒸気機関車を作り上げたらしいわ。結果的には、街と街を繋ぐ移動手段としても優秀だから一般化して現在に至って、それでも特定の属性に必要魔力は多いものだから、運転士は高給取りとも聞いたわ》


根本のエネルギーが魔力である事には変わりない。個人が排出するエネルギーで、効率良く運用できる蒸気機関車か。随分と頭のいいヤツが居たもんだな。


だけどあれだな、知れば知るほどログストア国が分からなくなる。どこの国も他に何かやってはいそうなんだけど、今一番関わりがあるログストア国の事すら一向に見えてこない。

流石に、これ以上動かないまま考えると泥沼になりそうだ。


「おはよう御座います。我が王よ」


俺が頭を悩ませていると部屋の扉がノックされ、ルアールの声が聞こえた。ふと時計に目をやれば、朝食の時間になっている。


「入っていいぞ」


「失礼します。

本日は朝食をお召し上がりになりますか?」


「貰うよ」


「かしこまりました。厨房の方に伝えておきます。


それで今朝方、エマスから報告がありました。

例のモノと接触し、戦闘後に一体を回収。ポポモリスに入り、宿が決まり次第、一度エマスだけ戻ってくるそうです」


「もう接触できたのか」


エマスから奴隷達の話は聞いていた。その謎の視線が、俺達の魔力に反応する事もちゃんと。

奴隷の事情に口出しをする気はなかったのだが、エマスでも良く分からない相手という事と、奴隷の出身地がリュシオン国である事は興味が湧いた。


だからエマスに、接触できたら詳しく知りたいと言ったけど、まさか捕まえてくるとは……。優秀というか何というか、驚かされる。


「それと、王のご指示通りエマスが致命傷だった奴隷を助けたようです」


「致命傷になった人が居たんだな。

まぁ、助けられたのなら幸いだ。新道達が関わって死人が出るより、致命傷でも助けられたという事実の方が、印象は良いだろう」


「王のご指示があってこそですけどね」


「エマスが優秀だからだ。俺は本当に何もしていない」


まぁ、知らない奴が知らない所で死のうが俺は何も思わないんだが、噂は馬鹿にできない。ログストア国に向けての顔である新道達の印象が悪くなるのはな……良い意味でも悪い意味でも目立っている俺達だ。自ずと俺にも、他のクラスメイト達にも問題は出てくるだろう。


《王様、そろそろ私達は移動するわ》


《そうか。とりあえずは、中央都市か?》


《予定ではそのつもりよ。レゴリア王に謁見する時にでも、また連絡するわ》


《了解。この前、伝えてはあると思うけど、中央の方に着いたらルコさんって案内役の人が居ると思うから。謁見はスムーズにいけるはずだ》


《用意周到ね。

着いたら探してみるわ。あぁ、それと、あまり関係ないとは思うけど、ギナビア国で最近'死神'なんて呼ばれている義賊が居るみたいよ。接触する様な事になったら、その時にでもまた教えるわね》


その市羽の声を最後に、念話は切られた。俺から繋げばいいだけなのだが、その'死神'とやらの事は、多分市羽の方でも詳しくは知らないんだろう。


俺も聞いただけじゃ分からん。呼ばれ方からして、バリバリ人を殺していそうなもんだが、義賊ってそういうもんだったっけ?不殺の泥棒みたいなイメージがあるんだが。


「ルアール、死神って分かるか?」


「魂狩りのことですか?以前に一度だけ目にしたことはあります」


「あるのか」


「我等が初代の王のダンジョンを攻略しようと、不当な神聖召喚を行った者が居ました。その際に、魂狩りを喚び出しましたが……まぁ、勝手に自滅した愚か者達ですね。

神などと大層な肩書を持っていますが、そういう類では無いように思えました。事が済めば、魂狩りの方も勝手に帰ったので詳しくは知りません」


初代って事は、かなり昔だよな。

その神聖召喚で喚ばれた死神と、今回ギナビア国で噂になってる義賊とは別もんだろう。


俺の予想としてはそうだな……ギナビア国が内々で処理したい権力者を殺している暗殺者辺りってのが、不謹慎ながらロマンがある。

最も、普通に義賊的活動をしていて、ギナビアも捕まえきれずに手をこまねいてる。と考えるのが妥当だろうけどな。


「ありがとうルアール。

とりあえず、死神の事とかは保留だ。飯にしよう」


「では、先に厨房の方に行ってまいります」


「一緒に行くよ。待つのに問題は無いから」


「かしこまりました」


俺は自室の扉を食堂へと繋ぎ、ルアールと一緒に扉をくぐる。するとその先では、俺が来る事が分かっていたのか、食堂に居た者達が一様に頭を下げて待っていた。


「「「おはよう御座います。我等が王よ」」」


「あい、おはようさん」


流石に慣れたよ。

俺が挨拶を返せば、皆は普通に食事へ戻ったり移動したりと行動を再開するし、これでも気分的に楽になったほうだ。最初の頃なんて、俺が食事中はずっと立っておこうとしていたぐらいだし……ん?


「よっ」


挨拶を終えて、空いている席へ行こうとすると、軽く手を上げて声を掛けてくる安藤が居た。


「おう。

戻ってくるの今日だったか。事情聴取は?」


「ゼスさんには昨日話したけど、ギルドの方も事情聴取をしたいとかで、そっちは明後日だ。んで今日はフリー。

あぁ、それとシェイドって人から伝言で、刺青に関して少し心当たりがあるから確認してから戻るってよ」


「シェイドに会ったんだな」


「こっちの来ようとした時に、扉があるログストア城内の常峰の部屋に居てな。戻るなら伝えて欲しいって。

なんでも、他の精霊が知ってるっぽくて、精霊の気が変わらない内に調べに行きたいんだと」


なるほど。まぁ、精霊は気まぐれだかなら。

教えてくれるって時に聞いとかないと、その内忘れるのは精霊……ましてや、ターニアを知ってれば容易に予想できる。


「岸達はどうしてるんだ?近くには居ないようだが」


「岸はログストア国周辺で魔物探ししてるぞ。橋倉はそれについて行ってる。

並木と古河は武宮の所へ、佐藤と長野は城の書物庫で他のダンジョンの情報収集してる」


「それで安藤だけ帰ってきたと」


「おう。……んで常峰、実はその、明日な」


安藤の歯切れが悪い。

明日何かあんのか?事情聴取は明後日ってさっき言ったし、他に何か…。


何やらソワソワと落ち着きがなくなり、周囲の様子を確認している安藤を見て、何が言いたいか察した。


「シーキー呼ぼうか?」


「頼めるか…?」


「お呼びですか?」


「「おおぅ」」


探そうとした瞬間に、いきなりシーキーの声がして驚いた。

横を向くと、両手に料理を持ったシーキーとルアールが待機して、俺と安藤が驚く様子を見ている。どうやら朝食を運んできてくれたタイミングと被ったらしい。


「我が王?」


「あ、あぁ、前に頼んでいた安藤の服はできてるか?明日着たいらしいんだ」


「既にご用意できております。後、最終的に安藤様がお決めになれるよう、先日のとは別に数着ご用意しております」


流石だなシーキー。安藤の方を見れば、安藤もおぉ…と声を漏らしている。


「んじゃ、飯食ったらシーキーは安藤の服選びを手伝ってやってくれ」


「お任せください」


「常峰は一緒に来ないのか」


そんな心配そうな顔をするな。俺のセンスなんて不純物にしかならんぞ。それに、かき乱しに行きたくても行けないんだ。


「俺はこの後、セバリアスとラフィと一緒に、移住してきた魔族や魔物と顔合わせに行くんだ。んで、今は数日掛けて空中街を散策してる畑達と合流して、意見のすり合わせとか管轄はどこにするかとか……はぁ…」


「忙しそうだな」


「皆のおかげで、だいぶ余裕は出てきた方さ」


本当にセバリアス達の手伝いのおかげもあって、書類の山は減ってきてますから。寝て起きた時、山が高くなっているのではなく、低くなっている事がこんなにも心を穏やかにするとは思わなかったよ。


二度目が漏れそうになった溜息を堪え、手を合わせて朝食を口に運び飲み込む。

あっさりとしたスープが喉を通り、堪えた溜息も一緒に流れていく。実に美味、何より朝の一時とゆっくりと過ごせる味だ。


なんて思いながら皿を空にすると、俺の皿を引くルアールが、申し訳無さそうな顔をして俺に報告をした。


「エマスの方で、先にログストア領主との話しする事になったようなのですが、その謁見自体が三日後。その間は自由行動という事で、今夜にでもエマスが一度戻るそうです」


「なら、ダンジョン領地内に入ったら連絡くれれば、俺が扉を繋げるよ」


「ありがとうございます。本人にも、その様に伝えておきます。

それともう一つ、エマスから王へご確認があるそうで……奴隷を連れてきてもいいかと」


「奴隷?なんでまた」


「現在、二人の奴隷と共に行動をしているそうなのですが、その二人がエマスに救われたものらしく、我等が王へお礼を言いたいとの事です。尚、エマスの報告では、二人とも元リュシオン国の者だそうです」


さては、エマスが礼の言葉を素直に受け取らなかったな。後は奴隷の二人が単純に、エマスの近くに居たいかとか、そんな所かな。


今の状況で、あんまり人を招き入れたくはないんだが、リュシオン国の事も少しは知りたい気持ちもある。俺が向かうべきかもしれんが、ダンジョン領地を広げる事も、まだ落ち着かない今はしたくない。下手に広げて他のダンジョンに引っかかりたくもないし、気付かれて侵略行為なんてイチャモンも面倒だ。……まぁ、二人ぐらいなら問題はないか。


「分かった。連れてくるのはいいけど、二人には俺から幾つか質問をするってことを伝えておくようエマスに言っておいてくれ」


「では、その様に」


一礼をしたルアールは、俺と安藤の食器を持って厨房へ足を運ぶ。その背中を見ながら、漏れそうになる溜息を堪えていると、安藤が苦笑いを浮かべて俺を見ていた。


「一難去ってまた一難だな」


「難とは違うさ。どちらかと言えば、情報源が向こうから歩いてきてる。視野と予想できる範囲が広がるから、あげるべきは嬉しい悲鳴なんだけどねぇ……。睡眠時間削られると、悲鳴をあげる体力と気力がね」


「焦んなくていいんじゃねぇか?」


「これでも色々と後回しに、先送りにってしてんだよ。

多分、これから目標に関係のある情報は次々と来る。ゆっくり本腰入れられる様に、皆が本格的に行動を始める前に、俺も俺の基盤は作っておきたいのさ」


「なんか、わりぃな」


「安藤が謝る事じゃねぇよ。これは俺の問題だからな……まぁ心配するな、安藤にもその内お願い事をたっくさんする予定だから期待しててくれ」


「程々に頼む」


そろそろ時間か。

準備して、セバリアスと合流しないとな。


「行くのか?」


「あぁ。時間は相手側に合わせてるから、そろそろ準備しねぇと。

洗い物が終わったら、シーキーが案内してくれると思うから待っとけ。リピアさんも呼んどくか?モクナさんとは一応仕事仲間だった訳だし、好みとか色々聞けるかもしれんぞ」


「…頼むわ」


「あいあい」


んじゃリピアさんと先に会って、安藤の事を頼んでからセバリアスとラフィと合流するか。


---------

------


「あんたは飲まねぇのか!眠王様!」


「ハハハ、俺はこの後も少し予定があるので」


「そうかいそうかい!いやー、メニアル様から話しを聞いた時はどうなるかと思ったが、今では感謝してるぜ!

環境はいいし、酒もうめぇ!それに、俺達の腕が鈍らねぇ様に狩場も貸してくれるんだろ?太っ腹だぜおい!」


「まだ部下の者と意見を出し合っている最中ですけどね」


「おぉ!俺ぁ昔は、でっけぇドラゴンも両断したんだ!」「豆粒みてぇな下級のリザードだろ!何勝手にでっかくしてんだよ!」「うるせぇ!てめぇこそ、人の思い出を豆粒にすんじゃねぇ!」


「皆さん、まだまだ現役の様なので、これは攻略難易度も少し高めで良いかもしれないですね」


「任せろよ眠王様!どんな敵でも問題ねぇぜ!」


三回目にもなる似たような内容の会話を聞き流しながら、時間を確認する。朝から始めた顔合わせも、気が付けばもう夜だ。


魔族と顔を合わせて、途中で畑達と合流がてら昼飯を食べ、今はメニアルが連れてきた魔族の兵士達との顔合わせ中。

俺が考えていたよりも、魔族側は移住に関して何か言う事もなく。むしろ、礼を言ってくるとは俺も予想はしていなかった。兵士さん達は、酒も入っているせいかお祭り騒ぎで、さっき顔合わせに行った魔族もどんどん参加して増えてきている。


ん、エマスが着いたみたいだな。


《エマスか》


《我が王よ、ダンジョン領地内に到着しました》


《今から扉を繋げるから、少し待っててくれ》


エマスが飛ばしてきた信号を辿ると、本当にダンジョン領地内ギリギリの森で待機しているようだ。早く扉を繋げてやろうとは思うんだが、流石にココに繋げるわけにはいかんよな。

食堂では岸達も帰ってきて、畑達も集まって騒いでるみたいだし……地下のダンジョンマスター用の謁見の間でも使うか。


「すみません、そろそろ次の予定の時間なので、俺はこれで。後で酒の追加を持ってこさせるので、良かったら飲んでください」


「お?眠王様は忙しいな!ガハハハ!

酒は有り難く頂くぜ、何かあったら俺達を頼ってくれよ!」


「その時はお願いします」


その後も軽く挨拶をしながら扉を繋ぎ、絡まれていたセバリアスとラフィを呼んで、俺も謁見の間へと移動する。

久々に来た謁見の間は、埃が…なんて事もなく、掃除が行き届いていた。


「ラフィ、客人が二人だ。何か軽くつまめる物と、飲み物を頼めるか?」


「はい、すぐにご用意してまいります」


軽く頭を下げて、食堂直通の扉を開けて行くラフィを見送り、俺は人数分のテーブルと椅子を用意してからエマス達が待つ場所とココを繋げた扉を喚び出す。


するとセバリアスが扉を開け、エマス達が入ってきた。


「お手数をお掛けして申し訳ありません」


「気にするな。この早さって事は、やっぱり地中を移動してきたのか」


「急ぎお届けに上がりたく、潜り、距離を縮めて参りました」


どういう原理かは知らないけど、エマスは地中なら距離を短縮して移動できるらしい。転移とは違い、地面が繋がっていないといけない制約はあるらしいが、それでも便利な能力だ。

明らかに異常な能力だから、基本的に使わないようには言ってある。今回は事前に使うと報告は受けていた。もちろん、お連れさんと一緒に。


エマスから視線を外して少し奥にやると、二人のケモミミがおどおどとした様子で周りを見渡している。あれがウォレさんとキョウさんか。

うちのダンジョンにも獣人はいるけど、猫の獣人だったから、二人は初めて見るタイプだな。


「まぁ、色々とあって疲れただろう。座ると良い。

もちろん、お客さんも遠慮せず座ってくれ」


「は、はい!」「では、失礼します…」


答えたものの、どうしたらいいか困惑している二人に、エマスが先導する形で座らせたのを確認して俺も座る。同時に、用意を終えたラフィが紅茶とクッキーを持ってきて、セバリアスと一緒にテーブルに並べ始めた。


それが終わるのを待ち、セバリアスとラフィも座らせて改めて二人を少し観察する。


灰犬の獣人と朱尾の獣人。もっと大雑把に言えば、犬と狐の獣人。緊張はしているようだが、エマスが居るおかげか警戒は薄いな。


「どうぞ。せっかく用意したんだ、飲み食いしてくれ」


俺の言葉を聞いた二人は、エマスやラフィ達の様子を見ながらも小さく頭を下げた後、紅茶を口に。問題がないと分かったのか、クッキーにも手が伸びる。

話しは、もう少し緊張が解けてからでいいか。


「エマス、その捕まえたのは何処に居るんだ?」


「こちらです」


ダンジョンでも反応は三人だけで、他に誰かが居る様な感じはなかったが、エマスはテーブルに一つの瓶を置いた。

中には、黒い液体が入っていて、動くことも無いし……とても生物には見えない。だが、長時間起きている俺は、それに明確な生体反応を感じる。

直感にも近い何かが、ソレは生きていると語りかけてくる。


「儂でも姿が見えるまで、正確な探知が出来ませんでした。おそらくは、寄生した対象と同化する(すべ)を持っていて、気配まで溶け込むかと思われます」


「寄生しなくても、身近な気配に溶け込む事ができる。そう考える方が良いだろう。現に、ダンジョンの力でも俺でも見るまでは気付かなかった。

セバリアスとラフィはどう思う」


「王のお考えの通りかと。しかし、魔力で判別は可能なようです。私が知らない変わった感じの魔力ですが、探知するだけであれば問題はありません」


「ラフィの言葉に付け加えますと、この生物は魔力を吸収する性質を持っているようですね。微かにお客様方と同じ魔力を感じます。

他にも、複数別々の魔力を吸収しているようです。ただ、この生物自体の魔力と混ざり合い始めているので、数十分後には完全に一体化するかと」


つまり、吸収して自分の力に変換する事ができると。厄介なのは良く分かった。

エマスが瓶を出してから、ウォレさん達は怯えてるし。どうしたもんかコレ……流石に瓶から出す訳にもいかんよな。


俺が瓶を小突いたりして観察していると、いきなり謁見の間の扉が叩き開かれた。凄い音にウォレさん達は更に怯えてるし、セバリアス達の空気が一気に張り詰める。


まぁ、俺も驚いたけど少し考えれば誰かは分かった。

謁見の間に来れる人物は、攻略者以外で限られている。加えてうちのダンジョンに住む中から、こんな乱暴な開け方をしそうなのと言えば、一人しか浮かばない。


「酒が切れたのか?メニアル」


「ここにおったか夜継。酒は十分、皆も喜んでおったよ。

我が来たのは、何やら面白い魔力を感じて来たのだが……本当に随分と面白いモノを捕まえておるではないか」


赤ワインの瓶を片手に入ってきたメニアルは、他に目をくれる事もなく一直線で瓶まで歩み寄り持ち上げた。


「やはり、ショトルの残骸か」


「は?」

次も予定では常峰視点です。



ブクマがついに200を越えました!

評価もいただきました!

感想もいただきました!


皆様、ありがとうございます。嬉しさに涙がっ…。

今後とも励むので、どうぞよろしくおねがいします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ