認めぬ限界
「最後の試練だ。
再度問う。貴様は何のために力を求め、何故努力を止めず、何処を目指す」
リーファ王女達の視線が俺に向けられている中、エマスさんだけは振り返る事無く俺に問う。
「自分の為に力を求めて、手を差し伸べる為に努力を止めず、目指す理想は……常に数歩先に立つ自分を目指します」
これが俺が出した答えで、'俺'が納得した答え。
あの'俺'は、あのままで止まっていた。越えられる理想でしかなかった。
きっと負けず嫌いである俺は、あの理想の場に立ってしまうと止まってしまう。これから先、いつまでも常峰や市羽が理想や目標として居るわけじゃないんだ。
理想とした自分に勝ってしまったら、俺も'俺'の様に勝手に決めた限界で立ち止まり見上げていた。
「果て無き理想を求めるとは、己を蝕み耐え難い苦痛の道になりうる事もある。それでも求めるか」
「俺にとっては、辿り着いて何もせずに見上げる方が耐え難いモノなんです」
「そうか」
もしこれで試練失敗でも、俺は別にいいと思っている。自分とあんな風に向き合える機会なんて、元の世界に居たらあったかも分からない。
振り返り俺を視るエマスさんと、布越しでもしっかりと目が合っている事が分かる俺は、結果を待つ。
「ならば今後も励み、己が我を通すと良い。
新道 清次郎よ、貴様の征く末は儂が認めてやろう。
餞別だ。貴様の信念が折れぬ限りは、儂の刃が貴様に手を貸す。儂の期待を裏切らず、果て無き理想を求め、我が王の役に立て」
すれ違いざまに軽く背を叩かれて少し驚いていると、目の前の地面から純白の牙が生えてきて、それに触れると……
「ありがとうございます」
牙は削られる様に形を変えて、鞘に収まる一本の白い剣が俺の手に握られていた。
「時間が無い。来るならば馬車に乗れ」
-
俺が時間を取らせてしまったせいで、リーファ王女達は答えるよりも先に馬車に慌てて乗るハメになってしまった。
当然、一番最初に行くと言った俺も馬車に乗っているので、結局全員で奴隷商を助けに行くことに。
「つまり、そのモールさんと解放奴隷達が襲われていると」
「エマス様が仰るには、そうなります。私では何一つ感じる事は出来ないので、詳しい事は分かりません」
エマスさんの指示に従って、目的地に向け秋末が全速力で馬車を走らせている最中に、俺が寝ていた数日の事と、今何が起こっているかをリーファ王女から簡単に聞いた。
どうやら寝ている間は、リーファ王女が面倒を見ていてくれていた様で、少し恥ずかしさがこみ上げてくる。
「エマスさん、目標を捕らえました」
「上出来だ。このまま潜る。
秋末、貴様は馬をそのまま走らせろ。残りは何処かに捕まっておけ、そして江口……これは貴様にも出来る事だ。しかと見ておくと良い」
おっと、恥ずかしがっている場合じゃなかった。
江口はエマスさんに言われてスキルを使っていたけど、それが終わったみたいで、俺達はエマスさんの言う通り馬車の中で掴まれる場所に掴まった。
それを確認したエマスさんが、軽く指を鳴らした瞬間、天地が逆転した。
比喩表現なんかじゃなくて、本当に視界も感覚も逆さまになって俺達は空を走っている。足元を見れば、ずっと奥まで伸びるような夜空が広がっているんだけど……荷物がひっくり返っているなんて事はない。
不思議な感覚に脳の処理が上手く行かず困惑していると、エマスさんが秋末に馬車を止める様に言い、俺達の方を見た。
「今から地上に出る。既に戦闘が始まっているようだが、準備はいいか?」
「「「「はい」」」」
俺達の返事を聞いたエマスさんが、さっきと同じ様に指を鳴らせば、一瞬視界が暗転して夜空は頭上に戻ってきている。
そして目の前には、厚みの無い人影が無数に蠢いていた。
なんだアレ。形は人なのは確かなんだけど、顔が無い。
真っ黒のはずなのに、何かモヤモヤと蠢いている様にも見えるソレは、ログストア国の騎士団の紋様が入った鎧の人達と戦っている。
背後には薄い透明な膜に覆われた大きな馬車があり、膜の内側には人間の他に、頭の上に耳が生えて尻尾が揺れている女性や、身長がかなり小さい女の子などが怯えた様子で俺達を見ていた。
「エ、エマスさん!」
「我が王より命があり、助太刀に来た。簡潔に状況を教えろ」
怯えている女性達より一歩前に立っていた男の人が、エマスさんを見つけると声を上げて駆け寄ってくる。
その時、いつの間にか男の人の横へ移動してきてた影が、振り上げた腕の形状を刃物に変えて振り下ろそうとしていた。
「コレは何だ」
だけど、振り下ろすよりも早くエマスさんの手が影の頭部を掴み、動きの止まった影は数秒後に膨張して破裂した。
「分かりません、突然現れて襲われはじめて、今は朝方に連絡を入れていた騎士団の方々が到着して交戦を……そうだ!エマスさんのお連れの中に回復魔法を使える方が居ますか?ウォレが」
「怪我をしているのか。であれば儂が診よう。
そなた等は彼奴等の相手を、だが儂でも正体が見破れん。警戒をして戦え。
重傷者が居た場合は連れてこい」
指示を終えたエマスさんは男の人に連れられて、人が集まっている所へと歩いていく。
残された俺達もぼーっとしている暇はない。エマスさんの様子を見るに、あの男の人がモールさんで、集まっていた人達が解放奴隷なんだろう。
詳しい事も聞きたいけど、今はエマスさんに頼まれたんだ。アレの相手をしようか。
影の数はザッと見ただけでも百以上……。騎士団の人達は四人程で、数に圧倒されている。
まずは、少し数を減らそう。
「'瘢痕は光の導
―フォルレイズ― '」
前に翳した指先に光が集まり、一瞬の間の後、拡散する光のレーザーが枝分かれして進み、影の群れを貫いて消えていく。
そして光に触れた影の動きは止まり、貫かれた場所から音もなく罅が広がって砕け崩れた。
防御魔法を使う気配も無く、魔力で抵抗する様子もなかった。仲間が倒されても慌てる様子すら見えない。影は一瞥する事も無く騎士団の人達を襲っているし……倒された事に気付いていない?理解していないのか。
「随分と不気味な敵だ」
「そうだね。新道君が攻撃したのにも関わらず、こっちに気付いている様子もないよ」
「見えて無いんじゃねアレ」
俺の言葉に、江口と秋末も同意して影の様子を見ている。二人の言う通り、影は俺達が見えていないのか、気付く様子も攻撃を仕掛けてくる様子も無い。
「まぁ、だからと言って俺達も動かない訳にも行かない。俺は騎士団の人達の方に行くから、秋末と江口とリーファ王女は、馬車に近付こうとした影の相手をよろしく」
「新道様は試練明けでお疲れではありませんか?お一人で無理をなされるのは」
「大丈夫。不思議と今は、好調なんです」
嘘じゃない。本当に調子が良い。これだけ数に差があっても、怖い気持ちはないし、今ならイメージ通りに身体が動かせそう。
「分かりました。では、こちらはお任せください。
'侵略を許さぬ盤石な壁 干渉を認めぬ堅牢な守り'」
「新道!来るぞ!」
優しい笑顔を見せたリーファが詠唱を始めると、影が一斉にコッチを見る。そして明らかに敵意を持った影は、俺達というよりリーファ王女を目掛けて襲いかかってきた。
「なっ!?王女!何故ここに!
ええいっ!……"フレイムボール"」
影の挙動が変わったことに気付いた騎士団の一人が、慌てた様に魔法を唱えると、魔法を使った騎士団に近い影は方向を変えて騎士団達へを駆けていく。
まさか魔法に反応している?でも、俺の魔法には反応しなかった事を考えると……魔力か!
エマスさんの話では、俺達の魔力を嫌っていたらしいし、俺の魔法には反応していないんじゃなくて無視をしたと考えれば。
「江口、秋末!」
「魔力だね。秋末君、多分僕達じゃ囮になれないから」
「全力で王女様をお守りすりゃいいわけだ」
「'廃れる枯れる事なき永久の守護 平穏を揺るぎなきモノへ
それらを守るのは王の義務である
―高貴なる王の守護壁―'」
理解が早い。リーファ王女も、俺達を信用してくれているのか、詠唱を止める事なく魔法を発動した。それと同じタイミングで影の群れも飛びかかるが、触れるたびに現れる半透明な煉瓦調の壁に遮られ、リーファ王女に触れる事は叶わない。
影は、リーファ王女の魔法に弾かれて地に落ちる寸前で、江口が地面から生やした棘に貫かれ、それを回避した先では秋末が短剣を投げて地面に影を縫い付けている。
俺も負けてはいられない。
エマスさんから貰った剣を鞘から抜き肉体強化をして、剣に魔力も込めていく。
そして自分の認識すら越え、瞬く間に三度剣を振るう。
「'炎斬・三撃'」
燃える三つの斬撃は、少し進むと九つに分かれ、大地を削りながら影を切り裂いて進み、騎士団の人達までの道が出来る。
出来上がった道はすぐに影で埋まろうとするが、駆け抜けるには十分だ。
俺が一番簡単に使える魔法を連発しながら、影の数を減らして騎士団の人達と合流した。
「助太刀に来ました。
さっきは、魔力を使ってしまいすみません」
「いや、助かる。しかしリーファ王女殿下が何故ここに、それに貴殿は……なるほど貴殿が我が国に残った勇者殿か」
「鑑定持ちですか」
「無礼をしてしまったな。どうしても警戒をすると癖で見てしまう。
私はログストア国騎士団第二部隊団長を務める'ポーディア・コミニク'だ」
「新道 清次郎です」
俺とポーディアさんは、迫る影を斬り伏せながら会話をしていく。
「交流は後に、今は切り抜ける事に集中をしよう」
「はい!」
そこからは無言で、一振り一振りに意識を向けて影を倒し始めた。
右から来た影を切り捨てると同時に、後ろに回った影に光球を放つ。一体一体は大して強くは無いけど、やっぱり数が多い。
剣術の技を使い、魔法を使い、確実に数は減らしているはずなのに、周りを囲む影の数が一向に減っている様に感じない。寧ろ増えている様な気がしてくる。
「新道!コイツ等、普通に斬り殺せない!増えるぞ!」
遠くから秋末の声が聞こえ、さっき斬った影へ視線を向けると……影は消滅していく。増えている様子はない。だが、吹き飛ばれされて視界を横切った影の腕を目で追った時、俺は確認した。
切り口から生える様に影が人型を取り戻していく。
その再生した影に向けて魔法を放つと、直撃した影は再生をする事無く消滅した。魔法なら倒せる……本当か?
「ポーディアさん!コイツ等、初めからこの数だったんですか?」
「初めは一体だったらしい!奴隷の者達が攻撃をしたら増えたと聞いた!さっきまでは私達でも殺せたんだがな……どうやら、今は増えてしまうらしい!」
そう返答をするポーディアさんは、確かに斬ることはせずに受け流している。
他の騎士団の人達も倒す事から受け流して、何とか自滅や同士討ちを誘発させるような戦い方にシフトしている事が分かった。
その戦い方で同士討ちや自滅を誘発できているって事は、知能が高い訳ではなさそう。だけど、上手く流せず、仕方なく両断してしまうと数が増えてしまうのは厄介そうだ。
俺は様子を見るために、影を切り飛ばしてみる。結果は再生する事無く消滅した。
次は、魔法で倒してみると、同じ様に再生はしない。でも秋末達の方では再生を分裂をして数が増えているのが見える。
だけど、江口のスキルや魔法で倒すと増えてはいない事も見えている。
「秋末!攻撃を魔法中心に変更してくれ!
江口は各個撃破は秋末に任せて、範囲でまとめて倒すのを意識!時間を掛けると、俺達でも倒せなくなるかもしれない!」
二人が頷いた事を確認した俺は、近くに居た影を三体まとめて斬りながら考えを整理する。
おそらくは魔力の違いだ。ポーディアさん達も肉体強化はしているし、最初は剣に流れる魔力と魔法で倒せた。だけど戦いながら、影はその魔力に慣れたか吸収したか……。
とりあえず、今じゃ有効打にならない。むしろ、数を増やすだけ。
普通に剣で斬るだけだと、元々倒せない。だから解放奴隷が攻撃した時に増え始めてしまった。
試しに肉体強化を少しの間止めて、二、三体影を斬ってみたけど俺は倒せる。そこから考えられるのは、エマスさんに貰った剣だからが一番しっくり来る。
エマスさんが用意してくれたって言うだけで、特別な力が宿っていてもおかしくはない。
色々と倒せない理由は浮かぶけど、これ以上考えるのは後でにしよう。結果としては今の所、この影を倒せるのは俺達だけだ。
俺はもう一度肉体強化をして、周囲にも魔力を広げていく。
時間をかければ、俺達も対策を対策をされてしまうかもしれない。だから一気に殲滅をする為に、試練を終える寸前で'俺'に教えて貰った力を使う事にする。
新しく'勇者'のスキルに付属したスキル。
「'認めぬ限界'」
スキルの発動と同時に自分の中の魔力が爆発的に増え、周囲の影が怯えたように動きが止まった。それでも俺の魔力の放出が止まることはない。
認めぬ限界は限界の蓋を外して、身体能力から魔力量、その操作や他のスキルに至るまで一時的に強化する新しいスキル。
俺はそのまま放出し続ける魔力に意識を向けて詠唱を始める。
「'時に流れを任せ 世界を揺蕩う風よ
暫し流れを我に任せ 牙を立て裂刃と成れ
―テンペスト― '」
周囲の魔力が渦巻いていくのが分かる。
ポーディアさん達を巻き込まないように意識しつつ、更に魔力を消費すると、肌を撫でていた風は次第に強さを増し続け、程なくして嵐の様に音を立て始め、動きを止めていた影達は巻き上げられ細々に切り裂かれていく。
俺を中心に吹き荒れていた嵐は、影達を飲み込むと黒く染まり、再生する事のない影達が減っていくと黒色は薄くなリ始めた。
「これぐらいでいいかな」
嵐の黒みがある程度薄くなった辺りで魔力の放出を止めると、ゆっくりと風は緩やかになり数十秒程で視界が戻ってくる。
唖然としているポーディアさん達は、俺の魔法に巻き込まれた様子はない。少し残っていた不安が消えた事で、周囲を見渡すと影はほぼ消滅していて、残るは江口達の所に居る数体だけ。
その数体も、秋末が魔法で動きを止めて江口が串刺しにする事で消滅していく。
もう一度周囲を見渡して全滅した事を確認した俺は、ポーディアさん達と一緒に江口達の所へと戻った。
「リーファ王女殿下、ご挨拶が遅れてしまい申し訳ありません」
「緊急事態でした。不問に付すので、顔をあげなさい」
「ハッ!」
戻ったポーディアさん達は、真っ先にリーファ王女の前に片膝をつき頭を下げ、リーファ王女はポーディアさんの肩を軽く叩き頭を上げさせる。
「何故、王女殿下がこの様な場所にいらっしゃるか聞いてもよろしいですか?」
頭を上げたポーディアさんの問いに、リーファ王女から軽い説明が行われている間に、俺達は先にエマスさんの居る方へ向かう。
解放奴隷達の間を抜けて中心へ向かうと、そこではエマスさんが灰色の耳と尻尾を持つ獣人の女の子の腹部に手を突き立てていた。
予想していなかった光景に驚いて固まっていると、獣人の女の子は何度か咳き込み、血の塊を口から吐き出す。エマスさんは、女の子の血で染まる口元を軽く拭いながら更に腕を深く沈め、ゴポッと溢れ出すという表現が合う程に女の子が血を吐き出すと、ゆっくりを腕は引き抜かれ、完全に腕が引き抜かれると、ぽっかりと穴が空いていたはずの腹部は傷一つ無い綺麗な状態へ戻っている。
「エマス様!ウォレは!」
「問題ない。
だが、血を消費しすぎている。目が覚めても貧血で、二日は安静にさせておけ」
「あぁ……ありがとうございます。ありがとうございます」
「礼は我が王に向け祈れ。
儂は我が王の命に従ったまでだ。
さて、そなた等の方も終わったようだな」
泣いて頭を下げている朱色の耳と狐みたいな尻尾の獣人を一瞥したエマスさんは、腕を滴る血を払い拭き取りながら俺達の方へ歩いてきた。
「あ、あの…今、完全に腕が」
「腹部を内側から裂かれていたからな。内部から復元していた。
どうやらアレは彼奴の内側に巣食い、儂が用意した守りから逃げる為に強硬手段に出たようだ。そなた等の方で見たアレはどうだった」
いや、そういう事を聞いたわけじゃないんですが……。と言いたかったが、当然のように話を進めるエマスさんに押されて言い出すことはできなかった。
俺達はエマスさんの問いに、戦って分かった事とそこから予想している事を話した。するとエマスさんは一度だけ頷いて口を閉じる。
多分常峰に連絡をしているのだろう。
エマスさんが連絡をする為に黙ったことで、俺達の会話が一段落ついたと思ったのか、周りを囲んでいた解放奴隷の人達から一人一人お礼を言われ始めた。
泣きながらお礼を言ってくる人も居て、少し困惑しているとエマスさんは俺達が戦っていた場所を見てくると言って離れ、入れ替わりでポーディアさん達と一緒にリーファ王女が戻ってくる。
「モールは居ますか」
「はい?…!これは、リーファ王女殿下!ま、まさかエマスさんのお連れの方とは…」
「極秘裏に視察としてポポモリスも訪れる為に、エマス様達には護衛を頼んでいます。なので、この事は内密に。そして、今後のことですが、ここからならポポモリスまで四時間程で着くでしょう。
その間、私達が同行しようと思うのですがよろしいですか?」
「当然です!皆様が同行してくださるなら、奴隷達も安心するでしょう。
しかし、それこそよろしいですか?内密という事であれば、私達と一緒でない方が良いかと…」
「検問の方は、ポーディアに処理をしてもらい別で入るので問題はありません。
これ以上問題がなければ、エマス様がお戻り次第出発するので、そのつもりで」
「かしこまりました。早急に奴隷達を馬車へ戻します」
「私達と騎士団の馬車も利用して構いません。負傷者が他に居るのならば、手当もします。
こちらの馬車に乗せた者達は私達と共に別で入り、後程騎士団に本店まで送らせるので、安心してください」
「は、はい」
モールさんは、もう少し聞きたいことがありそうだったけど、リーファ王女の指示を優先してポーディアさん達と一緒に解放奴隷の人達を馬車へ乗せていく。
利用していいとは言われても流石に遠慮をしたモールさんの判断で、俺達の馬車には未だ目を覚まさない灰色の獣人――ウォレさんと朱色の獣人――キョウさんが乗る事になった。
この二人が一番最初に影に襲われ、キョウさんの方もウォレさん程ではなかったが重症だったらしい。
「準備はできたか?」
戻ってきたエマスさんに声を掛けられ振り向くと……エマスさんは、何か液状の黒いモノが詰まった瓶を片手に戻ってきた。
いや、'何か'とは言ったけど、このタイミングでソレの予想は簡単にできる。まさかとは思うけど、多分そうだ。
「エマスさん、それってもしかしてっすけど…」
「そなた等が戦っていたヤツの残骸だ。まだ生きている」
秋末が苦笑いを浮かべて聞くと、これまた当然のようにエマスさんは答える。
やっぱり、あの瓶の中身は、俺達が戦った影だ。でもどうやって……確かに全滅は確認した。倒したら塵も残らず消滅してたはずなのに…。と考えていると、すぐに答えは分かった。
「指示通りに良くやった」
「僕一人じゃ無理でしたよ。加護を通してエマスさんが力を貸してくれたおかげで、僕でも地中に拘束する事ができました」
「その内、儂の手出し無く貴様でも出来る。励むと良い」
犯人は江口だった。
どうやら、戦いの最中か事前にかエマスさんから捕縛を頼まれていたみたいだ。正直、まだ生きていると聞いて不安が残るけど、エマスさんはあの影をどうするつもりだろう。
いや、エマスさんじゃないな。常峰は、アレをどうするつもりだろうか。
中々、及第点のいく内容が書けず、少し遅れ気味ですみません。
これでも少しうーん…。と頭を悩ませています。でも、早く次へ進みたいので、これで……。
ブクマありがとうございます!
嬉しさを食事に向けるのではなく、運動へ向けたら筋肉痛と友達になり始めました。




