馬車だけどな
エマスさんに圧倒され続けて一週間、リーファ王女から告げられた依頼の日になり、俺達は事前に用意された馬車と共に、王都の大門の前でリーファ王女を待っていた。
江口と秋末は昨日の疲れが抜けていないらしく、馬車の中で寝ている。エマスさんは目隠しをしていてわからないけど、おそらく起きてはいると思う。
まぁ、ハッキリ言うと俺も精神的に疲れが抜けなくて、もう少し寝ていたかったのが本音だ。
この一週間、俺達の実力を見たエマスさんは、俺達をミッチリ鍛えた。[依頼に行く者]とは言葉ばかりで武宮や皆傘、もちろん親衛隊も例外なくミッチリと。
理由は単純なもので、俺達はエマスさんの期待未満の実力だったから。
最初に実力を見せると模擬戦をした時、俺達は全員でエマスさんと戦ったが、一分と持たずに地に伏せていた。呆気にとられてもう一度と試したけど、結果は変わらなかった。
そしてもう一つエマスさんに言われて、調査から戻ってきたゼスさんとの模擬戦もした。そして、エマスさんよりは粘れたが、本気のゼスさん相手にも俺達は負けた。
あれは『殺し合い』だった…。
少しばかり戦えるようになって慢心していたのかもしれない。それでももう少し粘れると思ったんだけど、正面から叩き伏せられる結果に。
そこからはエマスさん指導の元、修行が始まってしまった……。二日目ぐらいに武宮が武器屋に戻ろうとすると、エマスさんが珍しい鉱石でボルディルさんを買収して、ふらっと居なくなるとすぐにあらぁ~と肩に担がれ連れ戻される皆傘。
親衛隊が皆傘を逃がそうとしても、数秒で地に転がされる。
リーファ王女の予定した日まで、睡眠時間以外はほぼ訓練に費やされた俺達は、気がつけばエマスさん相手に五分持つようになっていた。
「エマスさん、訓練中は聞く気力すら無かったんで忘れてたんですが。
どうして俺達を鍛えようと思ったんですか?
常峰の役に立つには力量不足かもしれませんけど、正直に言ってエマスさん達が居れば十分な気がしてきたんですけど」
「当然だ。我等が王が望むのならば、儂等が動けばいい。
だが、いつもそなた等の面倒を見れるとも限らん。
我等が王は慈悲深き王だ。甘さもまた、我等が王の良き所。
我等が王は、そなた等が折れることを望んでいない。だが此度見た限りでは、その特殊なスキルに頼りきりな面が見え、そのスキル自体もまともに扱えては居なかった。これでは我等が王が悲しまれてしまう。
そなた等が生きる事もまた、我等が王の為である。そなた等が強くなる事もまた我等が王の望みである。
であれば、儂がそなた等を鍛えるのも道理だ。不思議な事は無いだろう」
「じゃあもし、強くなった俺達が常峰に牙を剥いたら……」
全てを言い切る前に、自分が馬鹿らしい質問をしかけている事に気付いた。ちょっと前、ゼスさんに聞かれたからこんな疑問が出てきたんだろう。
ありえないし、ありえて欲しいとも思わない。だが絶対は無い。
俺が無くとも誰かがそうなるかもしれない事だ。その時に、俺がどっちに付くかは分からない……。敵対したクラスメイト側か、常峰側か、どっちに付くか。
どっちにしろ、この質問をエマスさんにするのは失礼だ。
「やっぱ今のは無しで」
「構わん。
儂に限らず、儂等は王の御意志に従うまでだ」
短く返ってきた言葉には、俺が常峰に寄せている信頼とは別の。もっと重い決意を感じた。できれば、その意志には従いたくは無い様な……。
「まぁ、此度の我等が王は、儂等にも約束をしてくださった。その心配をする必要もなく、それだけで儂等は救われている」
フッ。と笑うエマスさんの言葉には、さっきみたいな複雑な感じはしなかった。
よく分からないけど、エマスさん達と常峰との間では、また別の何かがあるんだろう。堅物そうなエマスさんが微笑みを浮かべるぐらいには、絆にも似た何かが。
常峰がした約束が、その心配を消せる約束だったんだろうな。短期間で、何を約束したのかはさっぱりだけど…。
「皆様、お待たせして申し訳ありません」
エマスさんに返す言葉も思いつかず会話もないまま少し待っていると、その言葉と共に、いつもの様な王女感のある服ではなく、街でよく見る様な服装に身を包み、少し大きめのカバンを背負ったリーファ王女が駆け足で向かってきていた。
いつも王女なリーファ王女しか知らないせいか、失礼ながら走ったりできるんだなって思ってしまったが、おかげで気まずさから抜け出せたことには感謝だな。
「揃ったな」
「エマス様、改めて依頼を引き受けて頂きありがとうございます」
「事の流れは我が王から聞いている。
詳細は、貴様から聞くようにとも」
「詳細ですか?」
「我が王は見通しておられる。
当人同士の問題故、あまり関わらないのが我が王の御意志だ。ならば関わらない様にする為、貴様の考えも聞いておかねばな。いらぬ踏み込みをしないように」
「なるほど…。
あの時の新道様のご質問……常峰様のご質問でもありましたか。いえ、寧ろと言うべきですかね」
「納得できたのならば、それでよい」
「そのお話は、後ででよろしいですか?」
「構わん」
リーファ王女が来たから秋末達を起こしていると、エマスさんとリーファ王女が何かを話していることに気付く。しっかりと聞こえないけど、どうやら依頼の事についての話みたいだ。
常峰も何か気掛かりがあったようだし、エマスさんは常峰から別の仕事も頼まれているんだろうな。
「それはいいとして、秋末!そろそろ起きてくれ。リーファ王女が来たぞ」
「マジか。もう少しだ「皆傘」おはよう!」
たった一言で覚醒したようにキリッとする秋末。
寝起きに駄々をこねる様ならと、予め十島から教えてもらっていた魔法の言葉の効き目はすごいな。
「馬車は任せて良いのか?」
「大丈夫大丈夫。今の俺は『御者』だから」
俺の質問に答えた秋末は、寝癖頭のまま御者台へと移動した。
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「秋末、平和だなぁ」
「元の世界じゃ、中々味わえないタイプだよな」
馬車に揺られること二時間半。俺は秋末と一緒に御者台に座り揺られている。
秋末が『御者』に職業を変更した事で、馬車の操縦は完璧に近いものになったらしく、俺はその様子から御者の仕方を学んでいたのだけど……抜けきれていない疲れと、このほのぼのとした空気に当てられて中々頭に入ってこない。
それでこうして秋末と話しているのだが、馬の歩く音に鳥の囀りに、後ろでは江口がエマスさんに何やら教えてもらっていて、リーファ王女に関しては目を閉じて馬車の揺れに揺られている現状。
「眠くなってくる」
「だからさっき寝とけば良かったのに」
「エマスさんだけに任せる訳にもいかないよ」
「まぁ、いくら王様の部下と言ってもな。その気持は分からなくもない。
リーファ王女が予定してるルートによれば、もう少しすれば小さな村がある。そこで一休みするし、そん時に寝ればいいんじゃね」
「村か……。考えてみると、王都を離れたのは常峰に連れられて城の自宅に行った以来。
なんだかんだで、こうして異世界を歩くのは初めてだ」
「馬車だけどな」
「'異世界の歩き方'なんて本があれば、きっと馬車での移動も書かれているはずさ」
「そんな本があるなら、お嬢様の為にも欲しいところだ」
お嬢様?あぁ、皆傘の事か。秋末もそう呼ぶんだな。
十島もそう呼んでいたし、多分湯方も篠崎もお嬢様と呼ぶんだろう。皆傘が親衛隊の四人と元々仲が良かったかと言われると、そんな印象は無かった。
常峰が言うには、十島は元の世界でも皆傘と何かしらの信頼関係にあった様な言い方をしていたけど、正確なことは知らないし、親衛隊は皆傘のユニークスキルに感化されてると聞いている。
どうしてそんな呼び方をしているのか、時間もあるし聞いてみてもいいかな。
「同級生。ましてやクラスメイトをお嬢様って呼ぶのに抵抗は無いのか?」
「全く無いわけじゃないけど、晃司はそうでもないみたいだったぞ」
「十島が?」
「そう、十島が。
最初は驚いたよ、なんか慣れたように晃司がお嬢様の世話をするもんだから。
向こうの世界でも晃司とは普通に遊んだりしてたけど、そういう一面があるとは知らなかったからなぁ。
ま、今じゃ晃司に釣られて俺達もなんだかんだ楽しいからいいんだけど。慈もノブも、案外ノリノリだ。何より!あの鞭の音が痺れる!」
「十島に釣られて皆傘親衛隊をしてるのか。常峰も俺も別の理由だと思ってた」
「ハハハハ!それもあながち間違ってない。
それが要因でもある。実際は、嫌ならいつでも親衛隊は辞められるさ。晃司もお嬢様もそう言っていたし。
ただほら、ここだけの話だけど……俺ってドMみたいなんだ」
「へ、へぇ~」
最後の方は耳打ちする様に小声だった。
そうか。……そうか?
いや、うんまぁ、そういうのは個人の自由だから俺が何か言える訳でもない。もちろん、知りたいわけでも無いんだけど。
しかし、曖昧な返事をしたのが問題だったみたいで、そこからは何故か性癖暴露をしろと秋末に迫られたけど……なんとか秋末の言葉を躱すこと一時間、最初の予定していた村が見えてきた事で、やっと言及が落ち着いてきてた。
落ち着いたおかげで村の様子をしっかりと見ることができる。
リーファ王女の予定では、この最初の村で一泊する予定だったんだけど……祭でもしているんだろうか?
近くに行けば行くほど賑やかな声が聞こえてくる。
「おかしいですね。前後で祭り事がある予定は無いはずですが」
賑やかな声に気付いたリーファ王女も不思議そうなところを見ると、恒例行事的なものじゃなくて突発的な祭みたいだ。
ん……?あれは何だろうか。
村の入口に着いた事で、その中央にあるモノが見えてきた。
だけどソレが何かと言うと……骨組みとしか言えない。なんと言えばいいか、博物館なんかで見れる恐竜の標本みたいな骨が組み上げられている。
「お待ち下され」
「あー、はいはい」
俺が村の奥に目を凝らしていると、村の入口に立っていたログストアの騎士と同じ兵装の人に呼び止められた。
秋末が馬を止めて対応はして、会話を聞く限りでは、決まりとして荷の確認だけはするらしい。
「こ、これはリーファ王女殿下!」
「お勤めご苦労さまです。頭を上げなさい」
「ハッ!」
「少しお聞きしたいのですが、村が賑やかなようで。何かあったのですか?」
「ご報告の為、伝令は送ったのですが入れ違いになってしまったようですね。改めてご報告をさせて頂きます!実は――」
ログストア騎士団第七部隊・近隣町村護衛勤務の'マモニア'さんの説明によると、この村の賑やかさはもう一週間は続いているらしい。
その原因が、どうやら市羽達みたいだ。
解散後、翌日には市羽達はギナビア国へ向けて出発した。その後の詳しい足取りは知らないけど、ギナビア国とログストア国の国境沿いに行くとすれば、この道を通るのは必然だとリーファ王女が教えてくれた。
つまり、俺達より先にここに市羽達は着いたらしいのだが、その時にココはドラゴンに襲われた。
突然現れたドラゴンによって村は蹂躙されかけた。しかし、幸運にも滞在していた市羽達の手によりドラゴンが討たれたと言う。
完全に被害が無かったという訳じゃないけど、迅速にドラゴンを処理した市羽達のおかげで一週間掛からずに復興も終わり、討伐後に村を出ていった市羽達を祝う祭の熱が今もまだ冷めないらしい。
「そしてこれが、市羽様御一行が討伐されたドラゴンです!」
説明のついでに護衛勤務歴五年のマモニアさんが村を案内してくれて、やっと中央に鎮座している恐竜標本の正体が分かった。
どうやらこれは、村を襲ったドラゴンをシンボルにしたもの。
「一週間そこらで白骨化するんですか?」
「いえいえ、御一行のお一人が血抜きをしまして、肉は村の食料になりました。
骨のみにして磨いたものがコチラです」
血抜きと言えば、心当たりがある。十中八九、漆だろうな。細かな部分は知らなけど、表面上の簡単なスキル内容なら常峰から教えてもらっている。
一応、組のリーダー間で全てのスキル把握はしていたから分かっているけど……。
見上げた標本を見て思う。
俺が戦った場合、このドラゴン相手に何処までやれるだろうか。被害を抑えて戦えるだろうか。
「凄いですね。ドラゴンを倒すなんて」
「本当ですよ!自分も市羽様達の戦いを拝見する機会に恵まれて、本当に良かったと思いました!
実際にドラゴンと戦いになられたのは市羽様だけでしたが、それでも一振りで、一撃でドラゴンの首を刎ねた瞬間は、次元の違いを見せつけられましたね!」
「一撃ですか」
興奮気味のマモニアさんの言葉は、それ以上俺の耳には届かなかった。
自分ならどう戦うか悩んだ矢先に、市羽は一撃でコレを倒したなんて聞かされるとね。自他共に認める天才は、こっちの世界でも健在か。嫌になるね、本当……。
ふっ……。こっちの世界に来て、自分がこんなに負けず嫌いだったとは、良くも悪くも新しい環境か。誰よりもとは思わないけど、超えたい壁が多いな。
しかし、常峰はこの事を知っているんだろうか。念話で聞こうにも、常峰の判断で念話用の子機は皆傘に渡してある。連絡を取るならエマスさんができると言っていたけど…。
「エマスさん、多分もう常峰の領地内では無いですけど、常峰と連絡取れますか?できればドラゴンの事を伝えておきたいんですが」
「分かった。暫し待て……。……。
兄から我が王へ伝えておいた。我が王から報告に対し礼の言葉と、問いが返ってきた」
「問い?」
「ドラゴンの標本に不審な点はないか?との事だ。些細な違和感や気になる事でも構わないそうだ」
常峰の問いに返すために、もう一度標本のを見上げてみるけど……不審な点は見当たらない。その前に、どうあれば不審な点になるのかが分からないな。
違和感は…ある。なんだこの違和感。
「江口、秋末、なんかこの標本に違和感があるんだけど分かるか?」
「違和感かい?確かに、言われれば何か不自然な気がするけど……分からないね。秋末君はどうだい?」
「いや、俺も分かんね。その前に違和感があるか?すげぇ骨だなぐらいしか感じないんだが」
秋末は違和感すら覚えないか…。
俺と江口の勘違いの可能性もあるけど、やっぱり何か違和感がある。気持ち悪いなんかが引っ掛かってる感じなんだけどな。
「リーファ王女は、何か感じたりしますか?」
「魔力の残留を少し感じます。一週間経っていると聞きましたが、討伐した勇者市羽様は凄いものですね」
「魔力の残留ですか」
まだ俺は、魔力感知を正確にできない。ゼスさんに手解きを受けてはいるけど、まだ曖昧な感じで、それこそ違和感程度にしか感じ取れない。
この違和感は、そういう事なんだろうか。
「我が王に伝える事は決まったか?」
「エマスさんは何か分かりますか?」
「儂からの報告は既に終えている。我が王は貴様の意見を望みだ」
つまり、違和感を覚えたのは正解で、常峰は何か分かったのか。エマスさんは当然気付いて、これは常峰からの提示された解答のある問題だ。
「違和感しか分からない。と常峰に伝えてください」
「そうか。……。……。
我が王からのお言葉だ。それだけ分かれば十分、以後も精進するように」
「エマスさん、答えはなんですか?」
「知る必要はない。我が王は貴様以下の情報で見通され、ご指示に従い既に手は打ってある。
ただそうだな……未熟を知るのも経験だ。それが嫌ならば、腕を磨け」
未熟――その言葉が俺に刺さる。
違和感の答えを常峰は見破った。この場に居ないにも関わらず、何を理解したんだろうか。まだ俺は何も足りていないのか。
「悩め、悔め、そして二度目を受け入れるな。貴様の判断は正しいものだ。
我が王も仰られただろう。今の貴様でそれだけ分かったのであれば十分だと」
「慰めてくれているんですか?それ」
「慰めなどではない。
儂も過小評価をしていた。素直にその才は誇るといい」
不思議と、取り繕いの無い言葉だと分かった。
俺達はその後、マモニアさんの案内で村を少し見て回り、オススメという宿に一泊する事になった。風呂も付いていて、昼に食べた食事も美味く、晩御飯に期待をして部屋で寛いでいた時にふと気付いた。
「そういえば、もうすぐ晩御飯だけどエマスさんは?」
部屋はリーファ王女が一部屋、俺とエマスさんで一部屋、江口と秋末で一部屋の三部屋とったのだが、今はリーファ王女とエマスさん以外が俺の部屋に集まっていたけど、そのエマスさんの姿はない。
「僕は知らないよ」
「俺も知らね」
どうやら二人も知らないみたいだ。はて、一体何処にいったのだろうか。
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新道達が部屋で寛いでいる頃、リーファは宿の風呂で身体を洗い、浴槽に身を沈めている。
「気を使わせてしまいましたか…」
本来であれば他の客も居るはずの風呂は、リーファ以外の姿はなく貸し切り状態。おそらくは、マモニアがそうなるように手配したのだろうと、リーファは考えながらも慣れぬ馬車で疲れた身体を休めていた。
今回の旅は、父であるハルベリアの図らいである事には違いないが、元を辿ればリーファの心情に気付いたお節介である。その事も十分にリーファは理解している。
だからだろうか、日頃の執務とは違う疲れが心地よいと感じているのは……。
リーファは慣れない疲れと、中々整理がつかない心情に思わず笑みが漏れる。故に、風呂場に誰かが入ってくる事に気付き遅れた。
「隣、失礼するぞ」
「へ?あ、どうぞ。一人で少し物寂しさを感じていたので、ご遠慮はしないでください」
「そうか」
リーファと比べても身の丈は高く、目元は布で隠されて見えないが、褐色の肌は引き締まり、短めの緑色の髪は毛先に向かうに連れ色が薄くなっている。一つ一つの動作にガサツさがあるものの、リーファは隣に来た女から目が離せない。
「ふむ。話を聞こうと思って来たのだが、儂の身体は変だったか?
こっちの姿は慣れないんだ。話す分に問題がなければ、このまま続けたいんだが」
その言葉を聞いてリーファは止まった。
頭の中で巡るのは、『儂』と『話を聞こうと思って』の単語がぐるぐると回り、一つの結論を否定したくても出来ずにいる。
そして思わず聞いてしまった。
「エ、エマス様ですか?」
「そうだが?
儂に雌雄の概念はあまりない。姉が基本的に雌であるが故に、対となる儂は合わせて雄としているだけだ」
それに何の問題が?とばかりに気にした様子も無く返答するエマスに、リーファは身体のみならず今度は思考も停止した。
対するエマスは、リーファの様子に気付きながらも気にする事はなく、リーファの復活を待ちつつ湯を堪能している。
それから十数分後、やっとの思いで常識を諦める。という手段で気持ちを落ち着かせたリーファは、騒ぎ立てる事もなく平常心を装い口を開く。
「エ、エマス様は、性別を超越なさっていらっしゃるのですね」
「儂のみでは無い。儂等兄弟姉妹は、皆がそうだ。ただ慣れ故に、兄や儂は雄、姉や妹は雌の形をしている事が多い。
儂の説明はこれぐらいでいいだろう。次は貴様の事情を語れ」
これ以上は必要も無く、次に喋るべきはお前だと言わんばかりに黙しているエマスに、リーファは決意したようにポツリポツリと口を開き始めた。
「初めはモクナの話を聞いてだったと思います。
あ、モクナと言うのは、城に仕えているメイドの一人なのですが、その者が異界の方の一人に恋をしたらしいのです――」
本当は三つぐらいの視点を同時進行で書きたいんですが、それはまぁ…時間的にも問題があるので、視点変更で上手くやっていこうかなと思います。
それぞれの山場は考えてはいるので、たぶん同時進行せずに今の方が楽ですよね。上手く繋げられるように頑張ります。
まずは、誤字脱字から減らさねば
ブクマありがとうございます!
本当に嬉しく励みになります!小躍りするほどに!




