精霊王と今後の予定
精霊とは。
特定の場所に溜まった魔力が自我を持った存在の事を言う。精霊には性別や寿命というものが存在せず、長い時を漂い続ける。
精霊は喜怒哀楽に素直であり、特に'楽しい'という状況を好み集まるとされている。
善悪の理解は乏しく、好みの環境を求め彷徨い、謳歌し飽いたら消滅をするとされ、即ちこれが精霊にとっての'死'である。
精霊使いの場合、自身が見え適合した精霊と友好を深め契約を結び、対価の元で精霊から力を借りる事により、魔法などの援助を受ける事が可能である。
幾多に存在する精霊の中でも'精霊王'は別格である事が確認された。
始祖となる精霊であり、現存する精霊は精霊王の子とされる意見も存在している。だが、その姿を目にする事は非常に稀である為、永き時を経た現在に存在するかは不明である。
精霊は独自の対話方法が存在しているらしく、精霊使いの協力を得て実験をした結果、大陸間での意思疎通・情報共有を可能としていた。
この力を使い、新たな連絡方法を確立しようとしたが失敗に終わる。
理由として、精霊使いの場合は対価に応じた働きはするが、それは友好的である事が前提として置かれている。加え、強要をすれば精霊側は拒否する事も可能であり、精霊側の気まぐれが強く影響する事が分かった。
善悪の判断が無く、喜怒哀楽に忠実であり、生に執着する事も無く死に怯える事もない。知覚するには加護が必要であり、気まぐれのみで行動をする彼等の力を一般化するのは不可能と考える。
ただ、私は知っている。例外となる精霊が存在している事を。
~著・知恵袋~
って事をセバリアスが用意してくれた本を読んで知った。
「すごいですねぇ。
大体合っていると保証をしてあげるわ」
「精霊王のお墨付きとなりゃ、この著者も大喜びでしょうよ」
「訂正があるとすれば、善悪の判断が出来ないのではなくて、興味が無いからしないのよ。悪戯をする事が楽しいって思う子だって多いもの。
もちろん、興味を持っている子も居るわぁ」
「数がいるなら個体差も生まれるだろうよ」
現在俺は、精霊王のターニアと連れて自室へと戻っていた。
そしてセバリアスに紹介しつつ精霊の事を聞くと、軽い説明と共に本を渡され、興味を持ったターニアと読み終えた所だ。
一緒に戻ってきたシェイドとケノンには、申し訳ないが安藤達が置いた死体を見に行ってもらっている。
あの二人、何かとターニアに突っかかって、話が進みそうになかったんだ。
「それで気になってたんだが、俺の噂ってなんだ」
「ほかの子が言っていたのです。
とても心地の良い魔力を持っている者が居ると。そして、日に日に増えていく魔力が精霊達には面白かったらしくて、日替わりで噂を耳にしていたんですよ」
「それで興味が湧いたと」
「えぇそうです。
場所は他の子達が知っていましたから、すぐに見つけられましたよ。まぁ、あの子達にも見つかってしまったんですけどね」
なるほど。精霊界隈では、俺は時の人になっているわけか。
日に日に増えていく魔力ってのも、寝たら増えてるからだよな?俺には何が面白いのか分からんが、精霊にとっては面白い事なんだな。
うーん。特にどうしようも出来ないし、精霊達が飽きればそれで終わりか。実害も別にあるわけじゃないしな。それよりも俺は気になる事がある。
「なんでシェイド達は、ターニアに敵意むき出しだったんだ?
ターニアが精霊王って事を知らない…なんて事は無いんだろ?」
実際の所、ターニアも興味が湧いたから来ただけであって、別に'敵'では無かった。もちろん味方である様な感じもしないんだが、それでもシェイド達が敵視する理由が分からん。
「さぁ?貴方達で言う反抗期ってやつかしら。可愛いものねぇ」
少し悩んだ素振りを見せ、気に留めた様子も無くふふふっと笑い答える。その様子を見て、セバリアスが小さく溜息を吐くと、いつの間にか無くなっていた茶菓子の追加を用意しながら俺の質問に答えてくれた。
「シェイドとケノンは二代目の王が勧誘をした精霊です。
二代目は精霊使いの素質もお持ちでしたので、飽いて消えようとしていた二人に'面白い世を体現させたい'と声を掛け連れてきたのです。
それから数年後の事で、その間に二人は二代目に大変懐いておりまして、シェイドとケノンは'例外'に当てはまる成長を遂げた事に興味を示した彼女――精霊王が今回の様に見に来たことがございます。
その際、二代目が精霊王も勧誘したのですが」
「興味が無い。って断ったんですね。
あぁ、でしたでした。そうでした。あの子達は、私とは違う成長を遂げている事に興味があった事を忘れていましたよ。
精霊として何気なく漂い続けた私と違って、何かに執着を見せ始めたあの子達。夢を持って生き延びようと足掻き始めたあの子達に興味が湧いたんでした。
精霊でありながら、生を持った故に死を持つあの子達は、もう私と同じではありませんからねぇ。断った時に、怒ったんですよ!あの子達!」
「二人の為、弁明をさせて頂きますが……'興味は無いし、くだらない思想はつまらない。'と拒否した精霊王に、シェイドとケノンは大変怒りを覚えた様で。それ以来ですかね、二人が精霊王を極端に敵視をしております」
「うふふふ。成長したんですよ、あの子達。
あの時はあの子達の成長が楽しくて、嬉しかったのを思い出しました!」
セバリアスが説明してくれたおかげで、大方理解はできた。つまり、ターニアが二代目の思想をバカにしたように拒否したから二人は怒ったと。
でも、これ、あれだ。ターニア側に悪気が全く無いから拗れてるやつだ。終いにゃ二人の成長を喜んでる始末。
「ターニアにとって、二代目の言葉はつまらなかったのか?」
今の今まで忘れてたのに、実は面白そうでしたぁ~なんて返答は返ってこない事は分かっているが、一応聞いてみる。
「面白い世の体現でしたっけ?
つまらないし、くだらないわ。別に体現なんてしなくても、世界は時経てば興味深く面白くなるもの。
現にこうしてあの子達は成長を見せ、貴方の様な存在も現れた。いちいち体現する必要は無いと思わない?
体現しようとする子達には興味が湧く事もあるけれど、体現しようとする思想には興味ないもの」
あぁ、やっぱりか。
さも当然の様に言い放つターニアを見て俺は思った。
精霊の価値観。こうしてターニアの言葉を聞けば、あぁなるほどね。とは理解はできるものだが、それに同意を俺はできない。
俺も理想や思想ぐらいはある。ゆっくり寝たい……なんかはそうだろう。そのために俺は傍観者でいられないし、そうであるつもりもないが、ターニアの場合は完全に傍観者だ。
興味があるから観察して、失せれば忘れる。それでターニアの場合は十分なんだろう。
これは、俺が知りたい事を質問しても無駄かもなぁ。
もしかしたら興味がある可能性に掛けて、聞くだけ聞いてみるか。
「ターニア、一つ聞いていいか?」
「構わないわよ?」
「魔神を知っているか?」
「知らないわ。興味ないもの」
ですよね。まだ少ししか会話してないが、何となくターニアの性格は分かった。
魔神って単語が曖昧な存在を示している現状で、ターニアが率先して調べようとはしないだろう。俺に接触してきたのも、他の精霊達が噂をして興味を惹かれたからだ。
仮に、魔神が本当に現状で存在していたなら、もしかしたら知っていたかもしれないが……。
遥か昔から世界を知っているなら、過去の事例ぐらいと思ったんだけどなぁ。少し質問の仕方を変えてみるか。
「今、五体の魔王が存在していて、なんでも魔族は魔神を復活させようとしているらしい。
それは人間側が全滅する危機でもある。もしかしたら世界が崩壊する危機かもしれないんだが、どうおもう?」
「あら、そうなんですか。人間側は忙しいわね。……えっとえと、この場合はどう答えればいいのかしら?まだ興味がある貴方とは楽しく仲良くしたいのだけれど。
一応言葉を真似て選ぶ様にはしてるけど、やっぱり面倒ね。
えーっと、私が言えるのは、興味がないわ。
別に人間が滅びようと魔族が滅びようと、どっちでもいい。世界が崩壊するのも、それでもいいんじゃない?
それで私が消えるのであれば、それまでって事でしょう?」
なんか、隠居したといかいう仙人みたいなお爺さんが、テレビで似たような台詞吐いてたのを思い出したわ。
時が訪れるまでは享楽で、時来たならばそれまでよ。みたいな感じだったかな。もしかしたら、あのお爺さんは精霊だったかもしれん。
しかし残念だ。この様子だと、どんな質問をしても俺の聞きたい魔神の事は聞けそうにないな。セバリアス達も知らなかったし、やっぱりメニアルに聞くのが一番か。
当時を経験していそうなターニアからなら、違う視点から知れると思ったんだがな。
などと俺が少し頭を悩ませていると、何かを思い出したようにターニアはあっ!と声を漏らし俺を見る。その様子に、何事かと落としていた視線を上げてターニアを見ると、どこか満足げな笑みを浮かべて俺の額に指を当てた。
「興味の無い事は知らないけど、興味がある貴方に少しだけ力を貸してあげるわ。
貴方には私の加護を授けてあげる。もしかしたら、私じゃない他の精霊が知っているかもしれないし、聞いてみるといいわよ」
思わぬ提案に反応を見せる前に、視界の端からターニアの喉元に刃が伸びて添えられた。
「戻ってきて正解でした。それ以上動けば、その喉元掻っ捌きますよ」
「ケノン、随分と早い帰りだな」
「申し訳ありません王よ。どうしてもこの不届き者を残して行く事に不安を覚え、シェイドは現地に送り私は戻ってまいりました。
ふふっ、しかし正解でしたね。事もあろうに、我等が王に加護など抜かすとは」
不正解だよケノン。俺は加護とやらに興味があるもの……。
少しめり込んでいる剣を握るケノンの表情は、もうそれは敵意剥き出しのドヤ顔という器用な顔をしている。何となくセバリアスの様子を見ると、頬を上げてる表情筋と違ってターニアを見る目が笑っていない。
「あの子にも言ったけど、あなた達が加護を与えればいいじゃない。あったら便利なのは確かなはずよ」
「そんな烏滸がましく恐れ多い事を出来るわけがないだろう。少しは頭を使ったらどうですか。
そもそも!我等が王には加護など必要ない。王の目となり手足となる私達が動けばいいだけです。ですよね!我等が王よ!」
「皆、優秀な限りで俺は嬉しいよ」
「フッ。聞きましたか?こういう事ですよ」
そんな嬉しそうに笑ってドヤ顔かます所みたら、流石に加護が欲しいとは言い辛ぇ。
まぁ、きっとあれば便利だが、無くて困るものじゃないしな。だったら、こっちの笑顔を守る方が俺には価値があるわ。
「ふーん。私にはよく分からないけど、そうなのね。
それならそうねー。えっと…あぁ、じゃあこの子達じゃ用意できない物をあげましょうか」
そういうターニアに怪訝そうな表情を浮かべていたケノンだったが、気にせずターニアが指を鳴らすと、テーブルの上が光り始め、収まる頃には何かが置かれていた。
完全に光りが収まると、その置かれていた物を確認できた。それは、ハンドボールサイズの変わった石だ。
ターニアの髪と同じ様にカラフルな色合いをしている石。サイズ的には、岩と言ってもいいかもしれないが…これはなんだ。
「それは私の気まぐれ。
精霊の気まぐれが溜まった結果よ。形を成したものは滅多にできるモノではないけど、私達精霊以外にとっては、今でもそれなりに価値があった気がするわ」
「た、しかに、これ程の高純度のモノは、私やシェイドでは用意できませんね」
「他の子も無理よ?これは、純粋に私だけの気まぐれだもの」
おっ?非常に悔しそうではあるが、ケノンも認めたとなれば本当に珍しいモノではあるのか。
ターニアの気まぐれ……綺麗な岩としか思えんな。価値があるかもと言われれば、ありそうな雰囲気ではあるけど、これって宝の持ち腐れになるのでは?
こういう場合は博識に任せようとセバリアスに視線を送ると、それより先にカラフルな岩を興味深そうに見ていた。
セバリアスでも珍しいと思う一品なのかコレ。
「かなり高純度・高密度の'精霊の涙'は初めてお目にかかりました」
「あぁ、そっちでは涙なんて言うんでしたね。そうでした。
まぁ、名称なんてどうでもいいので、貰って頂けるかしらね?」
精霊の涙ってアレか。安藤が武器を買った時の話に出てきた、意思を持つ武器の素材になるとかなんとかの。
なるほど、それに加えてセバリアスも初めて見るとなると、かなり稀少価値があるモノだよな。そんなモノをポンと出してくる事にも驚くが、気まぐれで渡されるとか…裏があるんじゃないかと勘ぐってしまうな。
「いいのか?高価そうなモノを貰っても」
「いいんですよ。気まぐれですし、私には不必要なので。
お手を貸せなかった代わりにでも思ってくれればそれで」
まぁ、本当に気まぐれなのだろう。変に考えるより、素直に受け取っておいた方が面倒じゃないな。俺には持ち腐れになる一品だが、セバリアスや武宮辺りが喜んで何か作ってくれそうだし。
というか、そろそろ書類整理に戻らないと寝れなくなる。
「ありがたく受け取っておくよ」
「それは良かったー。
さて、他にも行きたい場所があるからこの辺で帰るわ。またね~、あの子のお気に入りが、私を飽きさせないでくれる事を期待してるわ」
言葉を残し、ターニアの姿が消える。ケノンが剣を鞘に戻した所を見ると、本当に居なくなったんだろう。
ふぅ…。居なくなったことが分かると、どっと疲れがきたな。次会うのは半年後ぐらいスパンを開けたいって思うぐらいには疲れた。
「本当に申し訳ございません。王よ。同胞が王に無礼とご迷惑を」
「いや気にしてない。ああいうどっちつかずの立ち位置とも、早い段階でパイプを持てたのは良いことだ。
感謝はしても責めるなんて事はないから、シェイドにもそう伝えててくれ」
「寛大な処置!痛み入ります王よぉ!」
片膝をついて涙を流し始めたケノンに、セバリアスがハンカチを渡している。ここで俺が何か声を掛けて、また感銘を受けた様な反応を見せられても困るな。
とりあえず、ケノンが落ち着くまで待つ間に住む場所の仕上げをするか。
数が数だからな。基盤はダンジョン機能を使わないと、流石に時間が掛かりすぎる。地表区画と地中区画の整理は粗方終わったから、後は上空の居住区を作れば一段落だな。
空中の城がある区画を中心として、周囲を囲む様に広めの大地を等間隔で三つ生成。それぞれの区画に適度な森林と水場に、密集した家々を用意する。
区画間を移動できる道を広めに繋いで、脇には森林でいいか。いや、草原っぽいほうが良いのか?……コア君に任せよう。
後はダンジョン生成の規定に添う為、地上と空中間を移動できるように、なんかいい感じの道を作ればいいか。
トラップ扱いで水路でも用意して、船で行き来できる様にすればクリアできるかな。移住してきた者達はダンジョン移動用の扉を使えないし、使わせたくないからな。それに普通に使える移動手段を用意しておかないと、望まずして閉鎖的になりかねない。
今までどおり俺達の居住区は山の中でいいし。移り住みたい区画があるなら、その場所に用意すりゃ良い。
メニアルの提案で、引退兵達の暇つぶし用にダンジョンもどきの生成も頼まれてたが……三箇所ぐらい難易度違いで作るか。どういうダンジョンにするかは、メニアル達の案を採用していこう。
流石に規模が規模なだけあって、最短でも丸二日ぐらいコア君にフルで手伝って貰わないといけないな。今から取り掛かるか。
さて、後は人材だが。区画ごとの管理を中満や畑、柿島にも頼めば勝手に盛り上げてくれそうというのは、流石に無茶ぶりだな。経験と知識が圧倒的に足りない。
いや正確には、学ぶ場と時間が無いから、ぶっつけ本番になるのが問題だ。統治に関しての前例知識は、元の世界で得られる情報のみ。経験をする機会なんて、そうそうあるわけがない。
そういうゲームやシミュレーターをやった事を俺はないしなぁ。
マジで頭抱える。
セバリアス達に手を貸してもらうとしても、俺の意思が前提で置かれているのが問題の一つ。当たり前のように無理をしかねないし、多分だが簡単に切り捨てや排除もする可能性もある。
それに国として名を上げ、こうして空中に浮かぶなんてやたら目立つ城と街があれば、魔族以外が観光なり、新天地なり、新しい商業の可能性を見出して来るのも時間の問題だろう。
でも人間が圧倒的に少なく、魔族が大半を占めている。幾ら大国の後ろ盾があるとは言え、一見すれば魔族の国と誤解されても仕方ない。
俺は別に構わないが、ここは安藤達の家でもある。俺は構わなくても、俺が望むものではない。だったらどうするか……。
ここの魔族達が無害である事を示し、必要であれば人間も、他の種族も魔族達同様に受け入れる必要が出てくるかもしれない。人間達が来るのであれば、通貨の意識が必要にもなるだろうし、その為には各国の全通貨を一定数保持する事も必要になるはず。
あ、ダメだコレ。多分パンクする。
俺の頭がパーンってなる。
……よし!いっその事、こっちから動くか!問題は多いが解決できない問題ではないはずだ。
解決できない問題ではないはずだが、人手と知恵に経験・目安、何一つ足りていないし分かっていない。
だがなぁ…せっかくの友好関係、使わないと損だよなぁ。
「お見苦しい所をお見せしました。王よ」
「落ち着いたか?」
「はい!」
いい笑顔だ。……安藤達も帰ってきた時には、こうして笑える場でありたい。セバリアス達も一緒に笑える場でありたい。これが俺の理想だ。
その問題を解決する為に動けば、別の厄介事が出てくるのは見えている。それでも、解決するに値する。ここで動かないのは、寝覚めが悪いからな。
「それならケノン、一つ頼まれてくれないか?」
「何なりと!」
俺は似たような内容を書いた紙を三枚用意して、キラキラとした目をしているケノンに渡す。
「これをハルベリア王、レゴリア王、コニュア皇女に渡してきて欲しい。誰にもバレずに。
できるか?」
「可能です!お任せください!ご希望にお応えして見せましょう!
ただ、ソイツ等の場所が離れているので、少しお時間が掛かりますが…」
「構わない」
「ハッ!ではこのケノン、行ってまいります!」
敬礼をしたケノンは、俺から受け取った紙を大事に折りたたみ胸ポケへ入れると、虚空に溶ける様に消えた。
後は、三人からの返事を待ちつつ、当初の目的の帰還方法の情報集めにも手を出し始めたい所だ。いや、その前にメニアルとダンジョンづくりか…?
あぁ…頭が…。
「我が王よ、お疲れでしたら少し休まれては。
書類整理などは、私と清掃を終えたラフィとで済ませておきますので」
「そう…だな。目は通しておきたいが、正直今の状態だとまともに頭に入らないかもしれん。
少しだけ仮眠をする。二時間ぐらいしたら起こしてくれ」
「かしこまりました」
セバリアスの返事を聞いた俺は、自分の布団へ飛び込むと、ものの数秒で意識が落ちきろうとする。
完全に落ちきる前に、ふと考える。帰還方法が確立できて、俺の目標が達成した後は?と……。そして俺はある言葉が浮かぶ。
-君臨すれども統治せず-
今の立場で俺が求める最終目標はこの辺りかもな。
などと願望が浮かんだのを最後に、俺の意識は完全に落ちた。
次まで常峰の予定です。
幾つか先の場面は決めているので、そこまで早く行きたいなぁ。ルート分岐をどっちにするかは…その時の気分次第になりそうですが。
ブクマ、本当ありがとうございます!
一層励みに頑張ります!




