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眠れる王  作者: 慧瑠
見えてくる意思

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51/236

初めての感触

後半は視点を三人称にしています。

本来なら起きる予定の無かった時間に俺は目が覚めた。時計を確認する必要も無く、外の暗さで夜だと言うことが分かる。

自然に目覚めた訳じゃ無い。二度寝ができる状況でもない。


咄嗟に隣にあった大剣に手を伸ばし、息を殺して外の様子を伺う。

目覚まし代わりになった爆発音に、知らない声の怒号や悲鳴、金属が打ち合う音が混ざり、絶えず聞こえている。その声の中には、ゴレアさんやキャロの声も含まれている。


テントの入り口から少し外の様子を見てみると、そこは予想通りの惨状だった。


「ファイルアン!」「大丈夫だ、フリムとキャロの方を」「私達も大丈夫よ!それより、桜達をお願い!」

「結構クるなぁ…。朱麗、妃沙、大丈夫?」「アハハ……覚悟してたとは言ってもいざとなると」「ハッ……ハッ……」


無数に転がる死体と、それでもまだ数でゴレアさん達を囲む連中。

並木達の足元にも、呻いている男が三人転がっているのが見える。岸達は、荷馬車を守っているようで、荷馬車を中心に円陣の意識しながら自分達を囲む男共と対峙している。


当然岸達の足元にも、男共が転がっているのが分かるし、中には完全に死んでいるのもチラホラ確認することができた。


まさか、寝て目が覚めたら、死体を見る事になるとはな……。こうなるまで、気付き起きなかった俺自身にも呆れる。

だが、自分の警戒心の無さを嘆くのは後だ。今はこの状況に対応する方が先。


俺は、もう一度外の様子を観察する。


敵は人間。最低でも人型の何か。目に付く様な装備や鎧もないし、雰囲気も野蛮さがあるな。所謂、野盗というやつか。

数は多いが、ここから見える限りでは、魔法を使っているのはフリムと橋倉ぐらいで、敵側には見当たらない。遠距離から弓も飛んできてはいるが、各自で対処は出来ている。

数で劣っていても、戦況は優勢なのは見ての通りか。問題があるとすれば……。


俺の視線は野盗達から、並木と古河に背中を擦られている橋倉へ移る。


()れるかだよな…。


怯えや引け目は無く、手も震えていない。それどころか、今からやろうとしてる事に、不思議と嫌悪感も無い。今の所は。


――できる。


根拠の無い確信の背を押す様に理由をつけて、大剣を握る手に力を込める。そして、ファイルアンを後ろから狙おうとしていた男の首を刎ねた。


人間を殺す。と意識しているせいか、繋がっている肉に無理矢理割り込み、進んで骨を折って削り、他所の命を手に掛けた感触が手に残る。

離れた首を探す様に噴き出る血が、顔に付着するのか気持ちがわりぃ。


当然気分の良いものじゃない。一言で、最悪だ。

だけど、殺すことに問題はないな。


「起きたか」


「どういう状況っすか」


「分からねぇ。野盗だと思うが、どうも目的が掴めない。

とりあえずは現状打破に集中。あの様子だと、ちっさい橋倉とかいう娘、今はもう戦えねぇぞ」


ファイルアンに言われて並木達を見ると、橋倉は震えて座り込んでしまっていた。古河と並木が守るように立ち回っているが、距離を詰められて戦いづらそうで囲まれ始めている。


「俺が行ってきます」


「気をつけろ。かなり無茶な攻め方もしてくる」


「了解っす」


大剣を盾と長剣に変えて駆け出し、俺に反応した敵の筋肉を見て、次の動きを予想していく。

まずは二人。

両サイドからの挟み撃ちだが、フェイントの様子もない。右からの一撃を盾で受け流し、体勢が崩れた所を狙って首を刎ねる。大剣の時の様に上手く行かず、骨に当たった瞬間に止まりそうになる剣を力尽くで振り抜き、左側の敵の土手っ腹に盾の縁を叩きつける。


殺せていない。

鈍い音と、それなりの感触はしたものの、盾を抱きかかえ見上げてくる目は、俺を見る目は死んでいない。


このまま押し飛ばして距離を取るか、それとも――その思考の瞬間、少しだけ動きが止まった俺は見落とした。

盾を抱きかかえる男の後ろから伸びる腕の筋肉を……。


「くそっ」


気付いてから漏れる言葉は短い。言葉を漏らすよりも、俺は別の行動をしないといけないんだ。

腕の角度は、そのままだと盾を抱きかかえる男ごと貫く角度だ。だが、止める気配も軌道が変わる気配もない。

本当に、この男越しに貫く気か!


男の背後から伸びる腕の持ち主は、蜃気楼の様にぼんやりと現れ、俺と目が合った。


隠密系のスキルか…。


間に合わない回避は諦め、剣の軌道を予測して、当たるであろう場所の筋肉密度を上げて固めると同時に認識が遅れた原因を観察する。

ぼんやりと現れた男を見て、リピアさんが教えてくれたスキルの中に、気配を殺すみたいなスキルがあった事を思い出した。確かスキル名は……'消息'だったかな。


剣が伸びてくるまでの僅かで、嫌に長く感じる時間の中、スキルの情報を確認しつつ防いだ後の行動を考えていると、ぼやけていた男が一気に鮮明に見える様になった。

何が起きたかを脳が理解する前に、ぼやけていた男の頭に矢が突き刺さっている事を確認した俺は、盾を思い切り突き出して貫く寸前だった剣に、盾を抱きかかえていた男を押し込んだ。


そのままでも良かったんだが、念の為に長剣で心臓を貫いてトドメを刺してから、矢を放った人物に目を向けた。


「安藤君、おはよ」


「顔色悪いな」


「結構ねー……」


橋倉を古河と一緒に支えて歩いてくる並木は顔が蒼白いし、どこか言葉も弱々しい。よく見る必要もなく、他の二人も似たような感じだ。


「無理はするなよと言いたいが、助かったぞ。ありがとう」


「いいよいいよ。それより安藤君、少し伝えたいことが」


並木が弓を構えると同時に、俺も長剣を横に突き出す。剣は男を貫き、並木が放った矢は俺の後ろに迫っていた男を射抜く。


「戦いながらで平気か?」


「一応覚悟はしてたから平気。一人目の時よりは、戸惑いが薄れてるよ」


「そうか。古河と橋倉は」


「アタシも大丈夫っちゃ、大丈夫ー。少し気持ちの整理はついてきたから」

「わ…ハァハッ……わたしも…まだ……」


一箇所だけを見つめている橋倉の視線を追うと、その先には岸の姿があった。


口では言えても、三人とも限界に近いのは分かる。橋倉に至っては、ファイルアンが見ても無理だと判断していた。

だが、今の俺は分かるぞ橋倉。惚れてる人の前で、へばってられないよな。


「分かった、気張(きば)れ。

古河も、止めはしないが声が震えてる。ぶっ倒れるまで無理すんなよ」


「う、うん」


「そうだねぇ。迷惑は掛けないよー。

掛けない程度までは、頑張るさぁ…」


まだ震えてはいるけど、支えはなく立っている橋倉と、短剣を構えて呼吸と整えている古河。


これ以上は野暮だな。幸い数は減っているし、ゴレアさん達もまだ余裕がありそうだ。

何より、さっきチラッと見えたが、長野の足元を火の玉みたいなのが駆け回っていた所を見ると、多分言い訳できるレベルでユニークスキルを使っているんだろう。


この調子なら並木の話を聞く余裕もあるし、全滅できるのも時間の問題だな。


「それで?伝えたい事ってなんだ」


「王様と連絡とれそう?」


「常峰と?っと」


ゴレアさん達には聞こえない様に小声の並木に答えつつ、攻めてきた敵の槍を躱し、盾で穂先を叩いて下げる。

地面に向いた槍を足で踏みつけ、男が次の行動をする前に、前屈みになった姿勢の男の首を切り落とした。


《常峰、起きてるか?》


武器の形状を大剣に変え、殺した男が持っていた槍を足で引っ掛けて手に取り、遠くに見える弓を構えている男に向けて投擲をしつつ常峰に念話をしてみたが……。

まぁ、時間が時間なだけに返事はない。


「今は無理そうだ」


橋倉の魔法で、片腕が消し炭になっている男を大剣で貫き、盾の部分で飛んできた矢を弾くと、位置を特定した橋倉が地面スレスレに鋭利な大きめの礫を魔法で放つ。

当たる寸前に古河が小細工をしたのだろう。

遠くで敵を貫いた礫は、そのまま分裂して近くの敵を襲い、体内にめり込むと小さな爆発と共に腕や足を吹き飛ばした。


だが、少しやり過ぎてるかもしれないな…。フリムがソレを見て、こっちを凝視してきてる。実際の所、やろうと思えば、俺達の誰か一人で殲滅はできる程度だろう。

相手が人間である事は違いないんだが、なんというか……統率力も無いし、連携もあまり感じない。例えるなら、ゴブリンの群れを相手しているのと変わらない感覚。


「王様はお休み中かぁ。できれば、指示を仰ぎたかったんだけどなぁ」


俺の返答を聞いた並木は、不満げに呟きながらも弓で一人、また一人と射抜いていく。


「なんかあったのか」


「うん。なんか、作為的に襲われてるみたいだからさ」


「作為的?」


「そ。たまたまじゃなくて、操られて襲ってきてるみたい。

今の所、全員'魅了(チャーム)'ってスキルの影響を受けてるのが視えてるんだよね」


並木が言うなら、そうなんだろうが……魅了(チャーム)のスキルの事を俺は詳しく知らない。イメージ的には洗脳と似たような類なんだが、あっているんだろうか。


「隠れてても視界に入れば分かるんだけど、見当たらないからスキル持ちは近くにいなさそう」


言われてみれば、さっきから並木は何かを探すように見渡していた。どうやら並木のスキルは、姿を消しても看破する事ができるようだな。

そのおかげで、男ごと串刺しにしようとしていた奴を射抜けたんだろう。


「荷物を狙ってるわけじゃないのか」


「分からないけど、荷物を狙っているにしては、その素振りが無さ過ぎるかなって」


指摘され、少し動きを気にしていると、確かに荷物を狙っている様子ではないな。ファイルアンも目的が分からない的な事を言っていたし。

考えられるのは、単純に俺達を殺そうとしている可能性が高いか。


「ひとまず、切り抜けるのが先だな。

常峰には後で伝えりゃいいだろ」


「そうだね」


一旦考えることを止め、戦いに集中する。


話しながらでも相手はできているが、やはり数が多い。全力でやれない分、面倒な気持ちが俺を急かす。そんな気持ちを抑えつけて確実に一人ずつ仕留めていく。



時間が経てば、嫌でも慣れてくる。

俺だけではなく、並木や古河、橋倉までもが慣れ始める。

殺すペースも上がり、死体の山を築き上げた頃、最後の一人をキャロが殺した。やっと全員を殺し終えた。


空は白み、朝が近い。視線を少し落とせば……着ている服の色がすっかり変わってしまっている事に気付く。

乾いた血は、どうも気持ちが悪い。


「ぉ…うっ……」


「大丈夫…じゃないよね」


明るみに照らされる死屍累々を目の当たりした橋倉が嗚咽を漏らし、口から出てくるのを必死に抑えている背を古河が撫でている。

並木は、目を凝らして周囲を見ているが、その魅了(チャーム)持ちは見つけられていないようだな。


「き「居た」――は?」


敵が居なくなった事を確認した岸達を呼ぼうとした瞬間、俺の言葉は並木に遮られた。


振り返ると、一箇所を見続ける並木の姿が。俺も並木の視線を辿り、その方向を見るが……姿は見えない。

見えないはずなのに、その空間と目が合ったような気がした。


「えっ、はやっ」「安藤!!下がれ!」


並木とファイルアンの言葉は同時だった。

何が起きているか分からないままファイルアンの言葉に反射的に反応し、飛び退くように一歩下がると、背後に気配を感じて振り返る。


ソレと目が合った。


甘い香り、俺の頬に触れる手。だがそれよりも……欲情を誘うような身体でも、布面積が少ない服でも無く。その整った顔、淡い紫色の瞳から目が離せない。

引っ張られる様な……感じもないな。誰だコイツ。


「ん?貴方…「安藤君!ソレ、魔族!」


目が合っている女の声を掻き消した並木の言葉を即座に理解して、握っていた大剣の柄頭で魔族の女の鳩尾を狙う。

魔族の女は咄嗟に手を滑り込ませて防ぐが、そのまま俺は吹き飛ばす。


「あいたたた。初対面の女に遠慮の欠片も無く、男としてどうなのかしら」


吹き飛ばされた魔族の女は空中で体勢を立て直し、ふわりと地に着地した。

骨を折った様な感触はしたんだがな…。随分と余裕そうだ。


「少し予定が狂っちゃったわ。

私は帰るから、見逃してちょーだい」


ゴレアさんやキャロ達に囲まれているというのに、魔族の女は手を上げて余裕そうに告げてくる。だが、当然俺達は逃がす気はない。


その事が分かったのか、魔族の女は軽く溜息を吐いて――。


「'誘惑の帳'」


突然視界が揺らぎ、甘い匂いが意識を埋めていく。と思ったのもつかの間で、すぐに匂いは消え、視界のピントも合う。


「'プレスグラビティ'」


同時に並木が魔法を唱えると、いつの間にか飛び上がっていた魔族の女が地面に叩きつけられた。


「あらぁ?」


うつ伏せのまま起き上がれない魔族の女は、不思議そうな声と共に、かろうじて視線は俺達へと向けくる。正確には、俺を一瞥してすぐに後ろの並木達に。


おそらく魔族の甘い匂いの魔法を古河がどうにかしたんだろう。そして逃げられないように橋倉が押さえ付けてる。

魔族の女は、その事に気付いてはいるんだろうな。


さて、ここからどうする。

ゴレアさん達は、囲んで警戒はしているが迂闊に近付こうとしない。今なら仕留められそうな気もするが、余裕そうな態度が気がかりだ。


「安藤、知り合いだったりは」


「しないっすね」


「そうか。キャロ、フリム、捕縛だ。ファイルアンは警戒を」


返答を聞いたゴレアさんが指示を出し、キャロとフリムが馬車から縄を持ってくた。そして魔族を縛り拘束をしている間、並木とファイルアンが弓を構えて狙い、不審な動きがあれば何時でも射抜ける様に警戒を続ける。


少し離れた所で、ことの流れを見ていた岸達も方針が決まった事で近付き、岸はそのまま魔族の女に触れるつもりのようだ。

岸のスキル下になれば、情報は引き出せるだろうが……。


「ちょっと、あまりキツく縛らないで。

私、縛るのは好みだけど、縛られるのは嫌いなの」


キャロとフリムは橋倉の魔法の影響を受けていない様で、髪まで地面に貼り付いている魔族の女の軽口を無視して縛り上げている。

しかし、この状況でも余裕があるのか。


「並木、隠し玉っぽいのは分かるか?」


「余裕そうな理由かな?

要素の一つとしては、多分魅了(チャーム)とは別のEXスキル'セカンドライフ'があるからじゃないかな」


「効果は」


「安藤君のリヴァイブアーマーの劣化版だね。

一日、一度だけなら死んでも蘇る。それだけ――」


それは岸が魔族に触れたと同時だった。


一瞬音が消えたと思った瞬間、魔族の女が文字通り爆発した。


「な、永禮君!!!」「「キャロ!フリム!」」


近くに居た岸とキャロ達は爆発に巻き込まれ、立ち込める爆煙で姿が確認できない。

ゴレアさんとファイルアンは、警戒を緩めずに二人の名を呼び、橋倉が駆け出しそうになっているのを古河が引き止めているが、名前を呼ぶ声は悲痛なものだ。


「ちょーっと嫌な感じがしたわ。

流石に、コレ以上は不利になりそうだから、本当に帰るわね。また会いましょう」


「ごめん、転移魔法を使われちゃった」


魔族の女の言葉が響くと同時に、古河は悔しそうに呟いた。つまりは、もうこの付近にあの魔族は居ないんだろう。


岸のスキルは、死なれるとスキル下から外れるらしい。本人の予想では、死んでいる相手にもスキルは効果がないだろうと。

あの魔族の女は、岸のスキル下に置かれた瞬間、支配された事を察して自爆したか。


一度だけならば死んでも蘇る。だけど『死んだ』という過程は踏む。自害でリセットをする判断と、行動する事に戸惑いが無いのはすごい。

多分俺も同じことはできるだろうが、その度胸はまだないぞ。


「だーーーーッくっそ、自爆とか」


「間に合ったか。元気そうだな永禮」


「俺のおかげだな」


煙が晴れた先では、大の字で倒れている岸とキャロ達を抱え込み守る様に、半透明な銀の蟹が鎮座していた。

岸が一瞬でビッグラットを喚び出し、肉壁にして直撃を防いでいたのは見えたが、あの蟹は長野のか?筋肉が見えない。


「キャロ、フリム、大丈夫か?」


「えぇ…なんとかね」


「大丈夫です」


「そうか……」


ゴレアさんも二人が無事な事を確認できて、安堵の声を漏らし、周囲を見渡した。

煙は完全に晴れたが、予想していた通り魔族の姿はない。とりあえず、一段落ではあるだろう。……疲れた。



その後、事後処理はゴレアさん達がしてくれると言うので、俺達は先に朝食を食べる事になったんだが――


「「「「…」」」」


誰も食が進まない。

食事が出るまでは気丈に振る舞っていた岸達ですらも、箸が動いていない。

落ち着いた事で、自分達からも外からも臭う血生臭さを無視する事もできず、自分達がしたことを改めて自覚する。


割と平気だと思っていたんだが、そうでもないな。

殺す事に戸惑いも抵抗も無かったんだけど、罪悪感は感じるもんか。


どうせなら、この罪悪感までも無くなってくれていたほうが楽なのに…と思いながら、大きな溜息を吐き、朝食を無理矢理胃に詰め込んでいく。


----------

---


「どう思う」


「魔族の事かしら」


「それもあるが、安藤達の事だ」


ゴレアは死体を集めながら、集めた死体から男達の情報がないか調べていたキャロに聞いた。

少し遠くから死体を担いでいるファイルアンも、運ばれた死体をキャロと共に並べて調べているフリムも、そして問われたキャロもゴレアが感じ、聞きたい事を理解している。


「経験はないでしょうね。

おそらく初めて。でも、戦い方は知っている。という所かしら。


首を刎ね、眉間を射抜き、安藤と岸と桜は確実にトドメを刺して殺しているわ。

朱麗と佐藤は、少し戦い方に違和感があった気がするけど、同じ様にトドメをしっかりと。長野と妃沙に関しては、私の専門外よ。


それでも二人に関して言えるとすれば……異常ね。

長野の、あの小さなモコモコとした生物といい、私達を守った大きい生物といい。妃沙の魔法発動速度に、見たことのない挙動をする魔法。正直呆気にとられたわ」


「そうだな。

俺も思う所はあった。あの生かす選択肢が無い戦い方……殺すことに慣れていないんだろうな。


技術と経験がイメージに追いついていない。それに、あれでも力を制限して戦っていたんだろう。

力がある分、道を外されたら厄介だぞ。ただ愚直に殺す戦闘、言っちゃなんだがこの連中と変わらない」


「私も驚きました。見ただけでも三つの属性を操り、無詠唱で魔法を使う橋倉さんに。

魔族を押さえ付けていた魔法も、簡単なものではありませんね。私達が触れても、当人しか影響のない魔法操作技術。

その魔法ですら、魔法名のみの詠唱破棄。


血の滲むような特訓をしたと考えてもいいでしょうけど、橋倉さんの場合は相当特別なスキルを持っていると考えていいかなと思います」


「やはりそう思ったか。

何か彼等には違和感を覚える。戸惑いが無い割には、経験が足りていない。積み重ねて得たモノではなく、後付されたような意識の持ちようだ。


本人達の事情は分からんが、戦わねばならない境遇になってしまったのだろうな。

いや、戦う道を選び始めたと言ったほうがいいか」


各自の意見は、全員が何処かで感じていた。だから納得もできた。

それと同時にもう一つ。


今は未熟でも成長した彼等は、自分達でも驚くような偉業を成し遂げてくれそうな期待をしてしまっている。


「歳をとったな。将来ある若者なんて言葉が浮かぶとは……」


「ゴレアと一緒にしないで。私はまだ若いわ」


「私も若いですよ」


「俺はアイツ等と二つしか変わらない。

そして、ゴレアは俺達のリーダーだ。平均すればまだ若いだろ?

俺達が立ち止まる理由はない。精々、成長した後輩に置いていかれないようにしようぜ」


その後ゴレア達は、襲ってきた男達の情報集めに集中した。


それから集まった情報は、男達が入れている刺青からして、襲ってきたのは二つの盗賊団である事ぐらいだった。

魔族との繋がりも分からず、二つの盗賊団についても見覚えのない刺青であった。

二つと予想したものの、もしかしたら一つの組織である可能性もある。


その場で集められた情報だけでは、分かることも少なく、ゴレア達はギルドへの報告を優先する事に決めた。


「魔族の件も早急に伝えるべきだろう。

出現場所がここまでログストア国に近いともなれば、騎士団が動く。伝えるなら早いほうがいい」


「となると、依頼も放り出すわけには行かないし、ログストア国に戻るのは一人か二人ぐらいだな」


「私が行くわ。

全速力で馬を走らせれば、一日も掛からないでしょう?」


「一人で大丈夫ですか?」


「問題ないわよ」


刺青の写しをポーチに入れたキャロは、馬車から馬を一頭外すと、自分の荷物から手綱を取り出して手際よく着けていく。


その間にもゴレア達は他に情報がないかと調べていたが、特に新しい事も見つからず、準備を終えたキャロはログストア国へ向けて馬を走らせた。

次は少し常峰の視点で書こうかなぁとか考えています。

場面の調整も難しいですねぇ。

視点変更を控えたい気持ちと、他の組も書きたい気持ちと……何時も通り、勢いでいきます。



ブクマありがとうございます!

嬉しさのあまり、何時もより多く唐揚げを揉みました!

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