冒険への一歩
新章です。
とりあえず、今回は安藤視点です
送別会の後、ダンジョンに残る三人以外は常峰から金を渡された。金額にして金貨百枚。常峰の予想では、かなりの大金だから見せびらかすとかは止めたほうが良いと釘を刺された。
そしてどんちゃん騒ぎした後に、俺達はログストア城へと戻り自由行動が始まった。事前にハルベリア王には常峰が話していたらしく、その日の夜はいつも使っていた食堂で二度目のパーティーをする事になり、本格的な活動は翌日となったのだが……。
「頭いてぇ」
「二日酔いだなこりゃ」
「空気に酔うとはこのことよ」
岸と佐藤と長野は、昼前になってやっと起きたと思ったら、完全にグロッキー状態になっていた。
「情けないなぁ。安藤君を見習いなさいな」
「岸君達は、眠王主催とハルベリア王主催と、どっちのパーティーでも結構騒いでたもんね―」
「も、もう少し……休んでから、でも…」
並木も古河も呆れ気味だが、橋倉は三人に一生懸命回復魔法を使っている。まぁ、それでも岸達のは本当に二日酔いなどではなく、気分的にそうなっているだけだから意味はない。
俺は俺で、流石に部屋に七人も居ると筋トレも出来ず、ベッドや椅子は岸達に占領されていて、渋々だが窓の縁に腰を掛けている。行動しようにも岸達が復活してくれなきゃ動けないんだ。
一応、今度の予定はハルベリア王主催のパーティーの時に話し合ってはいた。岸達曰く、今後行動するに当たって俺達に必要なのは身分証が第一だろうとの事。
ログストア組は新道が、他国巡り組には東郷先生、ギナビアに行くに当たっては市羽が…という具合で、いざとなれば身分の証明ができる人物が他の組には揃っているが、俺達の組は常峰以外知られていない。
そしてその常峰は、基本的にダンジョンの方の管理が忙しいと言うことと、ダンジョン外には出れない規約があるらしく、異世界巡り組の幽霊部員の様な存在だ。
つまり、異世界を巡る予定の俺達は、一々検問で引っかからない様に身分証が必要になる。と言うのが岸の意見。
当然岸達三人は身分証についての打開策を見出していた。
一つは、ハルベリア王に作ってもらう。だが、これはログストアの傘下国内であれば問題はないが、他所様じゃ分からないとの事で、提案されたのが'ギルド'という場所に行く事だ。
「俺達は商業じゃなくて冒険者ギルドに行くんだっけか」
「そうだ。商業ギルドは、基本的に商人や職人が集まるギルド。
でも俺達は、ダンジョンに行ったり未開の地に行ったり、討伐なんかが主になるからな。登録をするなら冒険者ギルドだ。
冒険者ギルド組合と商業ギルド組合は、ログストア国建国と合わせて合併。今では、一般的に'ギルド組合連合'って一括りでも通じるっぽいから、あんま深く考えなくていいはず。
ギルドは国からじゃなく、個人個人の出資で成り立っている大規模な組織なんだよ。経営は支部がある国だけど、元を辿ると大国を含めたある程度の国のお偉いさんが個人で出資をしている形を取っているらしくて、所属する国が無い組織。だけど各所に支部が存在している。
つまり、ギルドに所属している証明さえあれば、基本的にある程度の検問は越えられるんだ。ギルドの名前を使ってな」
佐藤の説明を聞くが、そう簡単なものなのだろうかとも思う。
つか、冒険者ギルドがどういうモノなのかも俺は知らない。今の説明だと、パスポートを用意してくれる場所ぐらいのイメージしか湧かん。
「そもそも冒険者ギルドって何するのー?単純に、そのギルド組合連合に登録するだけなの?」
俺と似たような疑問を古河は考えていたようだ。
古河の質問に答えたのは、俺のベッドに伏している長野だった。
「簡単に言えば、魔物の討伐や傭兵登録とか、他にもペット探しとか……何でも屋みたいなもんだ。
依頼が張り出されてるから、それを受けて、達成したら金が貰えるんだよ。
出来高制の派遣だとでも考えたら分かりやすいかもしれないな。まぁ、村とかが出してる長期護衛の依頼とかは、月々の支払い金額が決めてあって、依頼期間一年とかもあるらしいけど」
長野の返答を聞いて、なんとなく俺にも分かってきた。
要は、仕事の斡旋機関なのか。ゲームとかで似たようなシステムを見た気がするな。それがそのままギルドという形で存在しているとでも思えばいいのか。
「ふーん、長野君達は物知りだね。一緒になってアタシも調べ物したりしてたから、ギルドの名前だけは知ってたけど……そこまで詳しく調べてなかったや」
「まぁ、まだ少し調べりゃ、俺達の知識が通じる土俵内だからな。
スリーピングキングも少し気にしてたけど、どうも元の世界の知識が見え隠れする部分が多い気がするとは思う。
スリーピングキングの見解では、俺達よりも前に来た異世界の人間が、俺達と同じ地球の人間である可能性が高い。それも、下手すりゃ最近の人間である可能性がな。
できればその辺も調べてくれると嬉しいってよ」
「常峰はそんな事を言ってたのか」
「昨日のパーティーの時、この世界には閏年が無いって話が盛り上がってな。そん時に言われたんだよ。
通用するなら問題ないし嬉しいことで、重要な案件では無いから気が向いたらで言ってたから、スリーピングキングも気になっただけで、別にそこまで知ろうとは思ってないんだろ」
岸自身も気にした様子はなく、本当に機会があれば調べておこうぐらいのようだ。
確かに言われてみれば、こっちに来てから感じた大きな違いは魔法だけの様にも感じる。料理とか細かい部分に目を向けると、知らない料理ばっかりだったけど、知っている料理もあった。
生活に関しては、一日の時間や一月一年の日数も変わらない。いや、多分専門家が居れば何らかの方法で計算して違うと言うんだろうが、カレンダーや時計は同じだ。
二十四時間、三百六十五日……適当に当てはめるには、少し微妙な数字だよな。
言われて考えてみれば似ている所は多かった。元々それが普通だったから気にならなかったが、一度気付くと、気になってくるもんだな。
気になってしまい、元の世界と似ている所を考えていると、部屋の扉がノックされた。
「ひぅ……は、はぃ…あ……」
扉の一番近くに居た橋倉が、反射的に返事をしてしまったようで、オロオロと俺の様子を伺っている。
そんなに怯えなくても、別に怒ったりはしないが……。
「駆様、モクナです。よろしいですか?」
「ほっ!…は、はぃ」
すまん橋倉、不意打ちはオロオロしちゃうよな。うん、仕方のない事だ。
ニヤニヤする岸と、何かを察したような他の連中の間を抜けて、俺は扉の前まで移動した。
「筋トレの女神のご登場だ」「永禮、何か知ってるな」「ここは俺こと、ギャルゲマスター源次郎にも教えとくべきでは?」
「ねぇ、今、駆様って」「アタシが知る限り、モクナって安藤君専属メイドのモクナさんだけなんだけど……」「き、綺麗な方です…よね」
背中越しに感じる好奇な視線と、そういう会話を無視して俺は扉を開けた。
その先には、当然モクナさんが立っていて、俺はモクナさんと目が合い心音が煩くなる。
少しいつもと違う髪型に、何処か照れたような面持ち。
普段のモクナさんとのギャップに、俺はただただ見入ってしまう。
「あ、あの……おかしいでしょうか」
「いえ!素晴らしいっす」
「安藤君ガチガチじゃん」「何か新鮮だね―」「いっひっひ」
並木と古河は面白そうに見ているし、岸に関してはイラッとする笑いをしているが、俺はそれどころじゃない。
目の前でモジモジしているモクナさんで視界も脳も一杯だ。
「良かったです。私、あまりこういう事をしたことがないもので、変でしたらどうしようかと」
「モクナさんは何を着ても何をしても綺麗っす!」
「ナニをさせたいんだろうな」「ナニだろ」「はわわ…」
どうやら楽しんでいるのは、長野や佐藤も同じらしい。橋倉は……多分俺と同じで、きっと顔が赤いんだろう。
野郎共の変な会話で、俺の脳内に一瞬よからん風景が過るが、それを気合と理性でねじ伏せて言葉を探す。
部屋に来たぐらいなんだし、きっと用事があったに違いない。
だから、俺は……どう聞けばいい?ダメだ思考がまとまらない。
「昨晩は私用で、ハルベリア王がご用意したパーティーの方に参加が出来ずに……。なので、ご挨拶をと思い伺わせていただきました。
良かった。まだ、駆様が居てくれて」
「今、マッッスルナイトから効果音が聞こえたわ」「「ズキューン!!」」
後で岸達はぶん殴る。
だが、岸達がグロッキーだったおかげで、こうしてモクナさんと会えているんだから……そうだな、本気のデコピンぐらいで勘弁してやらないとな。
決意を固めつつ、俺はモクナさんへの返答を探すが、一向に思考がまとまらない。
綺麗だ。かわいい。キュンキュンする。……常峰にヘルプで念話を送ったら、怒られそうだな。などと低下する脳内処理の一方で、モクナさんは小包を俺に差し出した。
「これは?」
やっとの思いで出た三文字。と共に、俺はモクナさんから小包を受け取る。
「遠出をなさると言うことで、ハルベリア王が皆様に御用意した物に比べれば数段劣る品ですが、ローブでございます。
皆様と常峰様のご様子から、あまり身分を明かしたく無いようでしたので。その、私も少々裁縫には自信がありまして……」
「手作りってことだよね?」「手作りだねー」「す、すごぃ…」
そうか手作りか……。手作りか!
おおぉおぉ…?なんだ、異性からの手作りとか、貰ったことねぇぞおい。こういう場合は、どうすればいい。
ダメだ、本気で考えがまとまらない。ここはやはり――
《助けてくれ常峰》
《何があった》
《ローブ貰った。俺はどうしたらいい》
《…は?あー……そゆこと。
とりあえず、お礼言って羽織っとけよ》
《なるほど!その手があったか!
助かった…。流石常峰だ》
《お、おう…。その、あれだ、頑張れ。俺も別に経験豊富な方じゃないから、常に返答できると思うなよ》
俺は常峰との念話を切って、受け取った小包を開けてからローブを羽織った。
サイズも丁度いい。柔らかい。いい匂いがする。
きっと、俺の頭の中は茹だってくらくらしていると言っても過言ではないだろう。
「あざっす!大事にするっす!」
「ふふっ。良かったです。似合っていますよ駆様」
モクナさんの笑顔を見て、思わず俺も笑顔になる。
常峰の目的の為に俺はログストア国には残れないが、定期的に帰ってきたいな。岸や並木達と常峰に相談すれば、何とかなるだろうか。
そう考えていると、モクナさんは俺の手を握り、俺の目を見てくる。
見つめられると恥ずかしいが、その瞳から俺は目が離せない。手、柔らかい。
「旅路、光ある事、ご武運をお祈りしています」
「また戻ってくるっす。そん時は、良かったら買い物でも行かねーっすか」
「はい!是非!」
満面の笑みとはこの事だろう。自分の心筋がギチギチと強張っていくのが良く分かる。
「マッスルナイト今、ナチュラルにデートに誘った?」「俺達は何を見せられてるんだ…つか、あの仁王立ちでデートに誘うってどうなんだ」「この源次郎……ズキズキがムカムカに変わったんだが」
「安藤君って意外とやり手なんだね」「誰かもコレぐらい積極的だったらいいのにね。妃沙ちゃん」「ふぇ…え、ぁ……そんな、朱麗ちゃん…別に、今のままでも……ぅん」
そ、そうか。俺は今デートに誘えたのか。
や、やるじゃねぇか俺。しかも、是非って事はOKって事だよな?シーキーさんだ。シーキーさん作の服が出来たら帰ろう。一度戻ってこよう。プレゼントも考えよう。そうしよう。
手を握られ、ガチガチになっている身体を必死に動かし、できるだけ優しくモクナさんから手を離す。
これ以上触れてたら、多分ダメだ。なんか本能がダメだと言っている。大きく深呼吸をして緊張を解し、後ろの岸や並木達の声に耳を傾けて心を穏やかに…。
落ち着いた所で、改めてモクナさんと目を合わせた後に頭を下げた。
「あざっす!それじゃあ行ってきます!」
「はい。いってらっしゃいませ。
皆様も、旅路に光ある事、ご武運をお祈りしております」
「ういっす」「あ、俺達にもご丁寧にども」「ありがとうっす」
「ありがとうございます。安藤君はきっちり送り返しますね」「浮気しないように見張っときますよー」「ぁ、りがとう……ございます。ぃってきます」
皆の返事を聞いたモクナさんは、優しく微笑んだ後に頭を下げて扉を閉めた。扉の向こうから聞こえる足音は遠ざかり、同時にゆっくりと俺の身体の緊張も完全に解れていく。
色々と岸達に言いたいことがあるし、デコピンもしてやりたいがその前に――
「五分、休ませてくれ」
「余韻に浸ってどうぞ」
岸からの了承を得て、俺はそのまま扉に頭を付ける。ヒヤリと冷たい感覚が、火照った頭の温度を下げていくのが心地良い。
あー。やっと思考がまともになってきた。
自分でも驚くほどに緊張していたのが分かる。これまでは感じて来なかった感覚は、何とも言い難いな。
相も変わらず心音がうるせぇが、まぁ…すぐに静かになるだろう。
落ち着いたことで、さっきの自分の言動に恥ずかしさがこみ上げてくる。同時に俺は、今度モクナさんに会ったら…と考えていた事を思い出す。
ユニークスキルの'主の証'を渡すのを忘れてた……。
つ、次に会った時は渡そう。
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数十分後。
俺達は、荷物の確認を済ませて、城下町まで来ていた。
「贈呈式で通った時は気にしてなかったが、石造りもあるが木造も結構あるな」
「そうだね。それに、あんまり高い建物がないね」
俺の言葉に返した並木が言うよに、確かに全体的に建物の背が低い。殆どが二階建てか、天井が高そうな大きな一軒家。精々あっても三階建てに満たない程度だ。
一応高い建物もあるが、かなり遠いのが良く分かる。ここからでも分かるが、見張り櫓の様になっていて、店や家という訳でも無さそうだな。
振り返れば、通ってきた高級住宅街の奥に、少しせりあがった場所にそびえ立つ、相応のデカさと広さのログストア城が見える。
「ログストア城の周辺の一等地は、基本的に貴族が住んで、俺達が今歩いている大通りがある城下町は店が並び、ここから少し外れていくと居住区なんかがあるらしい。
んで、この大通りを真っすぐ行けば、俺達が知るように贈呈式をやった場所。反対側は、ほら集団模擬戦をした広場があるらしい」
「なるほどな」
「そんで、俺達が今から向かう冒険者ギルドは、正門付近の一番大きな建物だと」
「よく知ってるな」
「調べたからな。裏道小道は分からねぇけど、ログストア王都の多少の地図は頭に叩き込んだ」
自分のこめかみ辺りをトントンと叩く佐藤に、俺は素直に驚く。
どちらかと言えば方向音痴な俺からすると、地図が頭にあるのも驚きだし、あったからと言って迷わないのもすげぇ事だ。
「ちなみに、城下町に高い建物が殆どない理由は、あの見張り櫓から見える視界を遮らない様にらしいぞ」
「そなの?」
「あぁ。高い建物が多いと、それだけ見えない所ができるから避けてるんだと。あの見張り櫓には、交代で監視が常に居て、問題が起きたら巡回の騎士団に連絡して即対処できる様にしている。って訓練の時にジグリさんが教えてくれた」
「ゼス騎士団長さんの部下の人だよね?やたら江口君と仲がいい。
良かったのかなー、そういう事教えて」
「いや、多分ダメだったんだろう。ゼス騎士団長がすんげー怒ってたし」
「だよねー」
長野と古河の会話を耳にしながら、一番近い櫓に目を凝らすと……確かに三人ぐらいの人影が見える。
おそらくアレが見張りの人なんだろう。
ってか、佐藤と長野が色々と調べている事は知ってたが、そんな所まで調べてたんだな。よく覚えているもんだ。
常峰が、岸達の知識と好奇心は何かと役に立つぞ。と言っていたけど、こういう事を言っていたんだろうなと今更ながら実感した。
それから更に数十分後、露天も覗きつつ、俺達はひと目で他の建物より広いんだなと分かる建物の前に着いた。
外観から分かるのは、横広がりで二階建て。両扉の上にある緩い曲線の看板には、でかでかと『ログストア支部冒険者ギルド』と書かれていた。
「着いたな……」
「あぁ……」
「やっとだぜ……」
岸達は、何やらしみじみと呟いているが、俺からすればデケェなとしか……。並木達も俺と同じ意見なようで、大きいねぇ。という会話が聞こえる。
扉は大きいが、人の出入りも多い。
出入りする人達の武装もかなり目に付くし、中に入らずとも中の声がここまで聞こえてくる。その声に岸達はテンションのテンションは上がっているようで、チラチラと俺や並木達の様子を伺っている。
「いつまでもココに突っ立ってるのも邪魔だしな。
とりあえず、中に入るか」
「あぁ!行こう!俺達の冒険への一歩だ!」
俺の言葉に反応した岸が、人目も気にせずに高らかに叫び冒険者ギルドの扉を開けた。
中に入った瞬間、思ったことは――喧騒。
きっとこの言葉が正しい。
絶えない声と物音で、一瞬頭が痛くなった。
扉を抜けた先、その正面奥には役所の様に受付が並んでいるが、視線を横にずらせば酒場の様な場所になっている。当然その酒場の方では、良い筋肉をした男共が言い合っていたり、その様子に野次を飛ばしていたり。
全員がそうではなく、普通に食事をしているグループなどもあるが……まぁ、うるさい。
「早く行こうぜ」
「あ、あぁ」
足を止めてしまっていた俺に、長野は急かす様に言ってくる。岸や佐藤に至っては、先に受付へ向かってるし、岸の後を橋倉が。その後を並木と古河がついて行っている。
つまり、長野だけが待ってくれていた。
少し申し訳なくなりながらも長野の後に続き、俺も受付へ着くと、どうやら岸が既に手続きを初めているようだった。
「マッスルナイト、これに記入をしてくれってよ」
「おぉ」
岸に渡されたのは紙とペン。
その紙は登録申請書の様で、名前と年齢に性別、続けて違反行為に関する規約と数個の記入項目。最後に、一番下にある魔法陣に魔力を流せば終わりか。
俺は自分が書く部分の記入を終えて、受付の女性に紙を渡す。
「はい。記入漏れは……ありませんね。
少々お待ち下さい」
受付の人はそう言って魔法陣の下にある担当欄に名前を書いて、その上から魔法陣が彫ってある大きめの判子を押した。
そして別の紙を被せ、少し紙が光ると、同じ内容の紙がもう一枚出来上がり、写しの方を軽く折りたたんで、看板に書いてあったギルドの模様と同じ模様が入った小さな手帳のポケットにしまい、俺に渡してくる。
「こちらが登録証明となります。
手帳越しで構いませんので、魔力を流していただくと、本人である証明が可能となっております。
無くした場合は、数日の手続きと再発行料が掛かりますので、保管・管理にはお気をつけください」
「わかりました」
説明を受けた俺は、確認の為に手帳に魔力を流すと、ギルドの模様が光る。岸達も確認をしたようで、自分の手帳に魔力を流せばギルドの模様が光るが、他人のに流すとまた別の色で光ることが分かった。
「これで登録の方は終わりになります。
依頼をお受けする際は、あちらの貼り出しボードから依頼書を持ってきて頂くか、受付の方にてご希望に沿った依頼をお探しして、受理証明書を発行させて頂きます。
依頼終了後は、依頼主のサインを受理書にしていただき、依頼主から依頼をする際にギルドからお渡ししている依頼申請書を受け取り、最寄りの冒険者ギルドにて提示して頂ければ完了となります。
また、一部の討伐依頼に関しましては、サイン入の受理書と申請書に加え、討伐対象の一部が必要な場合があるのでお気をつけください。
極稀にですが、依頼主がサインをしない場合や、討伐対象の部位回収が不可能な場合がある事があります。
その際は、最寄りの冒険者ギルドにて概要を説明して頂ければ、対応の方をしますのでご安心ください」
もっと大雑把かと思ってたが、意外にも依頼一つ受けるのに、しっかりとした手続きがあるんだな。聞く限りでは、不正も一応しにくくはなっているのか。
受付の人が、さっき手を翳した方を見れば、確かに乱雑に紙が貼り出されている大きなボードがある。他にも酒場のカウンター付近や、別の場所にも似たようなものが。
ボードの上の看板を見ると、どうやら討伐、護衛、納品、捜索などと依頼の種類ごとに貼り出しボードが決まっているようだな。
「もし分からない事があれば、受付でお聞きください。
以上で説明も終了となります。
ようこそ、冒険者ギルドへ」
その言葉を聞いて、黙って説明を聞いていた岸達は嬉しそうにガッツポーズをしている。その姿に並木達は苦笑いをしているが……岸達の気持ちも分からんでもない。
確かに俺も、少し胸が踊っている。なんだか、冒険者ギルドって響きにロマンを感じる。
「んじゃ、ちょっと依頼を受けてみようぜ」
岸の言葉に全員賛成して、貼り出しボードに向かい、どの依頼を受けようかと眺めて始めた時、後ろから声が聞こえた。
「おいおい、新米かぁ?」
声に反応して振り返ると、俺より少し身長が高く、見事に鍛え上げられている筋肉を持ったゴツい男が、ニヤリと笑い立っていた。
後ろからは、岸達の'テンプレきたで!!'という声が聞こえる。
なるほど、これはテンプレなのか。
ふと思ったのですが、もう少しタグを登録すべきですかね?
するとしたら……どんなタグが合っているのでしょう。
ブクマ、ありがとうございます!
嬉しさの勢いで、南蛮を作りすぎました。
数日、更新ができなくなるかも知れません。すみません。
なるべく、無いようにします。




