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眠れる王  作者: 慧瑠
敵と味方とダンジョンと

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40/236

実践訓練 終了

ちょっとだけ長くなったかもしれません。

三階層を進みはじめて数分。目の前には、ネズミが群れでいる。

俺の腰ぐらいのデカさのネズミが、パッと見て二十体。佐藤が集めた知識によれば、ビッグラットと言う種類の魔物らしい。一応、調理さえすれば食えるんだとか。


そのビッグラットを前に、俺達は一歩も動かない。最初は、長野がユニークスキルを使うらしく、残りは見学だ。


「'力を貸せ。 "獅子(レオ)"'」


「これが、精霊……なのか?」


長野がその名を呼ぶと、地面から火柱が立ち上がり、その中から唸り声を上げながら炎を纏う獅子が姿を現した。

唸り声に合わせて口元から漏れる火花。歩いた後に少し残り燃える炎。サイズにして二メートル程の獅子は、中々の威圧感がある。


そんな獅子を見て驚くゼス騎士団長には、ユニークスキルを使う前に一応自己申告はしておいた。

俺以外はサラッと嘘をついている。元よりその約束なので、いちいちツッコミはしないが……よくまぁ、そんなにサラッと嘘をつけるもんだな。


「レオ、敵を殲滅してくれ」


――一歩。


長野が喚び出した獅子が行った行動はそれだけだった。

さながら噴火だ。


獅子が一歩踏み出し、少し力を入れて地面を踏むと、獅子の足から扇状に亀裂が入り、ドロリと粘り気のある炎が噴き上がってビッグラット達を呑み込んだ。

こっちにまで来る熱風を防ぐ為に手で顔を覆った隙間から覗いてみれば、炎が収まる頃にはビッグラットの姿は無い。


まぁ、当然だと思う。


「とまぁ、俺のはこんなもんだな」


「喚び出すのに魔力を使っているのか?」


「逆に言えば、喚び出すのだけにしか使わない」


俺の質問に、長野は答えながら獅子の顎下を撫でている。


喚び出したのが攻撃する分には魔力とかの消費はなしか。召喚できる十二体の内一体でこんなに強力なら、全部喚び出した日にはどうなるのかが気になってきた。


「その精霊は、一体だけなのか?」


「もう少し居ますよ。全部は見せられませんけど」


「制限があるのか」


「つーよりは、サイズ的にここで出せないのが一、二体いるので」


長野の答えにゼス騎士団長は数秒唸り、頷いた後その視線を岸へと向けた。

次は岸の番か。


岸も、次は自分と言うことを察したようで、先行してダンジョンを進んでいく。

足場は炎が煮えたぎっているが、獅子が大きめに喉を鳴らすと足場が出来上がり、その上は暑さを感じない。


そこで、ふと気になった事をゼス騎士団長に聞いてみる事にした。


「ゼス騎士団長、地面を掘ったり砕いたりして、近道とかできるんっすか?」


「そう…だな。私が知る限りでは不可能だ。

ダンジョンに穴を掘り、巣を作っている様な魔物も居るが、その穴が下の階層まで続いていたという話は聞いたことはない。

魔法で地面を砕こうとも数分と経てば修復されていたりで、近道を作る手段は無い。とされているのだが……こうしてユニークスキルの片鱗を見てしまうと、一時的になら可能なのかもしれんと考えてしまうな」


未だに音を鳴らして煮えたぎっている下を、苦笑いでゼス騎士団長は見て答えてくれた。

俺も釣られて視線を落とすが、修復していく気配はない。


今後ダンジョンに行く事もあるだろうから、そういう事ができれば良かったんだが…無理そうか。


「実際の所どうなのか聞いてみるのであれば、常峰君ならば答えられるのではないか?

彼は、ダンジョンマスターにもなったのだろう?」


「あぁ…確かにそっすね」


言われてみればそうだわ。常峰に聞きゃいいじゃん。

今は念話を切られてるから、繋がった時にでも聞いてみるか。


そう考えていると、次のビッグラットの群れが見えた。

群れが見えた途端に岸は双剣を抜かずに走り出し、肉体強化の魔法を使って加速する。


そして――


「タッチ」


一番近くに居たビッグラットに触れ、そのまま反応しきれていないビッグラットに触れていく。


「'捕まえろ'」


その一言に、触れられたビッグラット達は同族に牙を剥き、襲い始めた。ビッグラット達もいきなり同族に襲われて困惑しているようで動きが鈍いが、そんな事お構いなしに岸は次々と触れていき……すぐに全てのビッグラットに触れ終えた。


「'探索して、次の階層への階段を見つけてきてくれ'」


ビッグラット達は反抗的な態度も見せず、一度声を上げるとダンジョンの奥へと駆け出していく。


「これが俺の獣使いの効果っす」


「触れるだけで魔物を使役できるスキルか。テイマーの上位互換の様なスキルだな」


「そんな感じっすねー」


人間でも。なんてバレた日にゃ大変だろうな。

触れるだけ隷属化ができる。バカな俺でも分かるぐらいの脅威。

長野が目に見える脅威なら、岸のは知らない内に…目に見えない脅威……疑心暗鬼で大変なことになりそうだ。


「お、四階層への階段がありゃしたで」


どうやらさっきのビッグラット達が、次の階層への階段を見つけたらしい。


俺達は、遭遇した敵は長野の獅子が殲滅する形で二十分と掛からずに、ゼス騎士団長曰く最短ルートで三階層を後にした。



-残りは二階層。

階段を降りると、すぐに大広間があり、目の前にはコウモリ、ゴブリン、ビッグラットと、知る限りの魔物が群れを組んでいた。

そして俺達が大広間に入ってきた事に気がついた魔物達は、一斉に視線を俺達へ向け、同時に敵意も向けてくる。


「一応次は俺だが…。

先に言っておく、多分漏らすわ」


「え?おもらし宣言って……ちょっといきなり性癖暴露は俺達でも…」


「佐藤、率先してそっちに流すから処理は自分でしろよ」


え”っ?と声を漏らす佐藤をよそに、俺は群れへ向け足を進めていく。


ざっと見てコウモリの群れだけでも五十。地上はゴブリンとビッグラットが合わせて三桁いるか?ぐらいか。

実際問題、俺一人なら問題ない。もし後ろに居るのが、新道か市羽か東郷先生の三人の誰かなら護衛にも問題ない。だが…今の状況で後ろまでは難しいな。

かと言って、残る主人指定を使う気もしない。


考えても仕方ないか。まぁ、やれるだけやってみよう。


俺は自分のユニークスキルを意識する。

ピクリピクリと、筋肉がいい感じに緊張しているのが良く分かる。そして視界に映る魔物達の筋肉が力を溜め……飛びかかってくる動作までよく見える。


「フンッ」


盾を持っている腕に力を入れ、筋肉の密度を調整。そのまま身体のエネルギーを循環させながら、飛びかかってきたビッグラットにタイミングを合わせて一気に盾を押し出す。


――パンッ


と、乾いた音が響いた。

破裂し飛び散ったビッグラットの血を盾で振り払い、その動作で引いた盾を持つ拳を力任せに振り抜く。

空気を擦る拳は熱を持ち、ピタリと目の前で止めた拳の先で再度なる破裂音。


圧縮して放った空気は拳圧となりて眼前の群れ潰す。破裂した空気は衝撃を生み飛ぶ敵を裂く。

これぞ俺のユニークスキルを使って生み出した技――筋衝拳(きんしょうけん)だ。


視界の端に、筋衝拳の衝撃を抜けた動く筋肉が映る。


多分とは言ったが、できるだけ後ろに敵を漏らす気はない。


ハルバートを持つ腕が膨れ、パツパツと服の繊維が引きちぎれていく音が耳に聞こえるが、気にせず一気に力を入れて服と共に敵を千切り断つ。

本来なら刃が届かない場所も、荒れ狂う風に乗った筋肉の刃の射程範囲。


ただ、俺の技は力任せであり技術が無い。まだ未完成なのを一番俺は理解している。


「パンプアップで服が弾け飛ぶとか、ギャグかよ」


「拳振っただけで破裂音とか、ファンタジーじゃなくて格闘漫画の住人だろ」


「ちょ、げんじぃ!永禮!せめて戦う意思ぐらいみせろ!」


敢えてニ、三体の魔物を後ろへ流すと、武器を構えることすらしない岸と長野に文句を言いながら対処する佐藤の声が聞こえた。

その会話を耳に、一振りで十。二振りで更に十五。と数を減らし、先に俺を仕留めようとして後ろへ流れなくなった魔物を確実に倒していく。


目減りする程には数が減ったな。

だがやはり、コウモリの方が飛んでいる分、倒しづらい。先に倒すか。


「マッスルナイト!後ろだ」


岸の声に反応して振り返ると、ビッグラットが飛び上がり、俺に突き立てようと牙を剥き出しに口を開けているのが目に入る。


反応は遅れている。防ぐのは難しい……他の魔物が好機とばかりに筋肉が力を溜めている。

反撃をするにしても、攻撃を食らうことになるだろ。

一瞬警戒はした。だが、俺の筋肉がこれぐらいなら'大丈夫'だと囁いている。だったら俺はそれに身を任せ、拳を握った。


俺の肩に勢いよく突き立てられた歯。それは、金属がぶつかりあった様な音と共に砕け、驚いた様に目元の筋肉が動くビッグラットに向けて握った拳を振り下した。

その衝撃音が、飛びかかろうとした魔物達を威嚇する。


「人の体って金属音が鳴るんだな。マッスルの極致か……」


「常識を疑え」


「格闘漫画もファンタジーってことだろ」


後ろで散々に言われているが、気にせずに次だ。

コウモリの魔物の処理。ハルバートでやっても、俺の技術不足でたまに避けられる。だったら今の俺でもできる避けられない様な攻撃をすればいい。


常峰がナイフに魔力を流している事で考え、ゼス騎士団長に相談して形にした。


ゼス騎士団長が斬撃を飛ばす際、剣術スキルによるスキル補正と鍛えた技術で斬撃を飛ばす。だが、それでは遠距離には向かず、離れれば斬れ味が落ちるんだ。と意味の分からない事を言っていた。

その斬れ味を補うのが魔力。

剣に魔力を込めて、その魔力ごと斬撃として放つ事で距離を稼ぎ、その斬れ味すらも補う。


その事をヒントに俺が形にした技。

ゼス騎士団長にも初お披露目だ。


身体を少しだけ逸らして身体を捻り、盾に魔力を、筋肉に力を込める。そして、盾の面で空気を押し払う様に!腕に掛かる風の抵抗ごと前に!払うッ!


「'シールドバッシュ'!!」


「違います」


岸の声が聞こえた気がしたが、耳に届ききるよりも先に爆発した様な音がダンジョン内に響いた。

面で放たれた衝撃波は、飛んでいたコウモリ共をダンジョンの壁まで押して、そのまま問答無用に押し潰す。


少し見上げれば、飛んでいるコウモリは片手で足りる程度。俺の技から逃れられたのは、飛行している高さが低かったからか。

まぁ、四、五体なら問題はない。後は地上を片付けよう。


---


「無双ゲー見てるみてぇ」


「持ってる武器が武器なせいで、実は方天画戟です。って言われても、あぁ~って感じするもんな」


風が斬れる重たい音を耳に、目の前で魔物共を蹂躙しているマッスルナイトこと安藤を見ながら呟くと、隣に居たげんじぃが笑いながら返してくる。


「あれでまだ、だって言うんだからヤベェよな」


まこっちゃんが言う事も、本当にその通り。

詰まった様な言葉になってるが、言いたいことは分かってる。同じ異世界巡り組だから説明は聞いているから、その効果も頭には入れている。


マッスルナイトのユニークスキルは、完全に発揮されていない。


四人の主人を持って初めてマッスルナイトのスキルは一段階目が終わったといえるだろうさ。それなのに、今は三人。

まだ打ち止めじゃねぇってんだもんなぁ。


「インフレマッハとはこの事だな」


呟きながらチラッとゼス騎士団長の様子を見てみると、案の定驚いた顔が貼り付いて言葉を失っているご様子。


俺達のスキル確認をしたかったのは分かる。でも、実際みるとそういう反応にもなるんだろうな。


集団模擬戦の時でも驚いたと聞いたけど、あれはスリーピングキングの作戦で、俺達は目立つような戦いはしなかった。

こうしてユニークスキルを目にするのは、今回俺達にユニークスキルを使わせて見ておきたいと考える要因になったスリーピングキングのぐらいだろうな。


スリーピングキングの魔王との戦い。


あれは驚いた。

魔王のメニアルさんが言うには、自分もスリーピングキングもまだ本気ではなかったと言ってたけどさ……その戦いすら、俺は完全に目で追えてなかった。

消えて現れて、剣の動きやスリーピングキングの動きがブレてと、コマ送り。さながら、くっそ重たい動画を見せられている気分。

まぁ、ただ俺の脳が処理しきれていないだけなんだが、そんな気分。


ユニークスキルは強いとは思うさ。でも、反応できないんじゃ宝の持ち腐れ。

俺のスキルは特にそうだ。俺単体じゃ強くない。

配下が増えなきゃ強くない。


パーフェクトテイマー。

俺の意思一つに、触れるだけで支配下に置けるスキル。支配下にしたモノは、配下専用の空間で収容可能。


そして、支配下に置いた者が持つスキルを習得しやすくする。

増えれば増えるだけ俺はスキルを覚えやすくなって、先天性のスキルも、持っている奴を何人か支配下に置けば覚えられるのも分かってる。


色んなファンタジーを読んできた俺は、比較的使いやすく強力なスキルだなと思った。触れればいいだけというのは強い。

ただ、触れられなかった場合が弱い。スリーピングキングの戦いを見て実感した。

せっかくの異世界転移をエンジョイするには、まだ足りない事がよーく分かった。


「チートな俺達ではあるけどよ。俺達が敵対した場合、誰が一番厄介なのかねぇ」


「今の所、やっぱり王様だろ」


「げんじぃの意見と同じだ」


何となく二人に聞いてみたが、返ってきた答えは俺と同じ。


エンジョイしたい俺達にそんな気サラサラないが、当初考えていた通りに進めば可能性はあった。

クラスメイトの輪から外れて行動をし続ければ、何処かで敵対する可能性は十分に。


序盤ではよくある可能性を潰したのは、スリーピングキング。

本当によくやったと思うぜぇ。同士討ちの行動だけを制限した事も、クラスの連中に帰る場所を作ったのも。

仲間意識を上手く植え付けたと思う。完全に手綱は握られたが、そのリードが長すぎて拘束感が無い。理解しても、その感覚が薄い。

思慮ある不自由の中で漫然さを許容するなんて……まるで詐欺師だな。いや、それが理想なのかもしれない。


「ん?永禮、ニヤツキメ顔キメてどうした」


「どうせ脳内ドヤ顔で語ってんだから、触れてやるなまこっちゃん」


「あぁ、いつもの病気か」


「お前ら酷くない?」


ま、スリーピングキングが面倒は引き受けてくれてるわけで、振り分けでこっちに来たら問題を解決すればいいだけの話。

実際の所、動きやすくなったのには違いない。


スリーピングキングに感謝しつつ仲間から辛辣な言葉を頂いた俺は、ため息を吐きながら、しゃがんでいた姿勢から立ち上がって動ける様にしておく。

マッスルナイトを囲んでいた群れは数を減らし、あと一振りか二振りかで全滅するはず。


「終わった。進もうか」


「へいへい」


マッスルナイトの言葉に返事をして、事前に収容しておいたビッグラットを喚び出して四層の探索を命令して解き放つ。

殺さずに配下にできた十二体のビッグラットが四層を駆け回り、頭の中に階段を見つけた報告が届く。


「んじゃ階段の場所も分かったし行くべ。

道中、コウモリの群れが一つと、ゴブリンの群れが一つあるが…まぁ、げんじぃ処理で」


コウモリは三体ぐらい回収しておくかなぁ。


-----------------------


岸の案内で四階層を抜けた。

道中、俺達の気配に魔物が集まってきたらしく、岸が予想していたより戦闘をしたが……まぁ、あってないようなもの。

長野の獅子が、大体一撃で屠っていった。


そして、苦労も無く最下層へ足を踏み入れたんだが…。


「何もないな」


佐藤の言う通り、階段を降りるとココまでで一番広く天井が高い大広間に出た。そして違うのは広さや高さだけじゃなく、先へ続く道がない。


「最下層に着いたからクリア!なんて事はないだろ。

つまり、ボスルーム、このダンジョンのボス戦だろうぜ」


「その通りだ。ダンジョンには階層ボスというモノと、最下層にダンジョンコアを守るダンジョンボスがいる。

ダンジョンボスを倒せば、攻略完了となりコアを破壊できる。同時にダンジョン外までの転移も可能だ。


階層ボスは、ダンジョンによって階層は違うが、ダンジョンボスは最下層に居ると思ってくれて構わない。一応例外は存在する。それが、常峰の様な自然発生ではないダンジョンだ。


基本的には、意思を持つ魔物が長い時間を掛けて生むダンジョンが、その例外に当たる。

私が知る限りでは二十年前に一度だけ例外ダンジョンが誕生した。他にも確認されていないだけで存在はしているのかもしれん。

今後、君達が攻略するかもしれない。知識としては集めておいて損はないだろう。


では、ユニークスキルの力は見た。ダンジョンボスは、ユニークスキル無しで戦うように!

魔法陣に足を踏み入れたらボス戦開始だ」


ゼス騎士団長の言葉通り、足元を見ると薄くではあるが魔法陣があるのが分かる。


今までで見ていないのは大型の魔物。ここまでくれば、ダンジョンボスが大型の魔物だと言うことは簡単に予想できる。

そんな相手にユニークスキルは無し……か。


「ヘイ、マッスル安藤、合図したら盾を貸してくれ」


「なんか策があるのか?」


「永禮やげんじぃばっかり、ズリぃからな。こっそり俺もユニーク使う」


ゼス騎士団長に聞こえない様に小声で盾を要求してくる佐藤。どうやら佐藤も何かしたくて仕方がないらしい。

岸も長野も、佐藤の気持ちを察しているようだし、だったら俺がとやかく言っても仕方ないか。


俺は頷いて魔法陣に足を踏み入れた。

続くように全員が足を踏み入れると、ダンジョンボスがその姿を見せる。


俺達の対面の壁が崩れ始め落ちるかと思ったが、そのまま形と位置を保ち、全体が削り出される様に現れた。


「ゴーレムか」


常峰とやったゲームであんなのが居たな。

石やら岩やらの種類があったのを覚えている。その大きさは、小さいのから巨大なヤツまで様々。

目の前のは……精々五メートルぐらいか?いや、もうちょいか?


どちらにしろデカいな。


「目立った弱点や文字は無いな」


「この世界のゴーレムは、動力源になってる核を破壊するタイプらしい。

パッと見てソレっぽいのはないから、背中の可能性もあるが……まぁ、テンプレ考えて、あの外装の内側だろうよ」


へぇ…素材以外にも、そういう違いがあるのか。


長野と佐藤の会話を聞きながら、俺もゴーレムを観察してみる。

……ダメだな、石造りにしか見えない。

核がどういうモノかも分からないし、あの巨体で、ついでに硬い。ユニークスキルも使えないから力技で砕けるかどうか。


他のクラスメイトがどうやって攻略したのか気になる所だが、後で聞けばいい。今は、硬かろうが、俺の予想とは逆に柔らかろうが、倒せるまで砕けばいい。


デカさのせいか、威圧感はある。圧迫感も十分。ただ……メニアルさんやレゴリア王の様な、あの心臓を鷲掴みにされる様な感覚はない。


メニアルさんと戦った時に常峰から感じた、目を閉じるとそのまま『死』を迎える様な感覚はない。


あれは怖かった。優しすぎて、自然に意識に入ってくるようで。呼吸を止める事を、閉じた目を開けない事を、当然であるかの様に意識が受け入れ沈んでいく。自覚するまで分からない恐ろしさはない。


いけるな。


「先手貰うぜ!」


「合わせる」


双剣を抜いた岸が駆けていくのに合わせて、俺も盾とハルバートを握り直し駆けた。

あの目っぽい窪みに視力があるのかは知らないが、ゴーレムも反応して腕を振り下ろしてくる。


上等じゃねぇの。


盾に魔力を込めて、全身に強化魔法で強化をする。そしてそのまま振り下ろしてきた腕を――。


「ふんッだッッ……っしぃぃぃぃ!!!」


受け止め、堪え、軌道を流すッ!


「イカすねぇ!!マッスルナイトォ!」


岸が声を上げながら、ゴーレムの関節っぽい所に双剣を振り下ろした。


「くへっ、かてぇなぁおい」


だが岸の双剣は、関節部分に傷を付けた程度で弾かれた。むしろ、ゴーレムより双剣の方が刃こぼれしている。


岸は訓練をしてはいたが、スキルが上がりづらいと嘆いていた。本人曰く、ユニークスキルのせいで普通に覚えるのは時間が掛かる様になってしまっているらしい。

だから、普通に攻撃をするのにも様々な形で入るスキル補正が入らない。加えて、いくら訓練しているとは言え、武器に負担を掛けない技量は短期間で身にはつかない。


このままだと、先に岸の剣の方が折れるな。


「二人とも下がれ!そこは火傷するぞ!」


「それぐらい操作して見せぃ!」


「今後の課題にはしとくぜ!

'求めるは炎'」


長野の言葉に、岸が文句を言っているが、気にせず詠唱に入ったな。俺も下がらないと巻き込まれる。


突き出しかけていたハルバートを引き、下がると同時に後ろに気配を感じた。


「安藤、盾」


「ほらよ」


投擲ナイフを口に咥えて後ろから走ってきた佐藤に、すれ違いざまで盾を渡す。そしてすぐに長野の魔法ともすれ違う。


「"フレイムボール"」


先に駆けていた佐藤よりも先に、長野の魔法がゴーレムに当たり爆発。巻き上がる砂煙の中に、佐藤は迷うこと無く飛び込む。

数回の金属音。その後に、煙の中から両手で盾を構えて吹き飛ばされ出てきた佐藤を長野が受け止めた。


「マジでアレ受け止めてたのかよ……」


「鍛え方が違うからな」


「筋肉ってすげ。

ま、永禮、マッスル安藤、後はド派手にかましてくれやい。」


視界が晴れ、見えてきたゴーレムの両肩の付け根と胸。そこに深々と投擲ナイフが刺さっている。


なるほど。あそこが脆いんだな。


「んじゃ次はマッスルナイト、かましたれ。

道は、作ってやんよ」


「任せろ」


岸が、刃こぼれしていない刃を下に持ち替え、ゴーレムに肉薄する。

当然ゴーレムは反応するが、走ってる途中で肉体強化を更にしたんだろう。加速した岸を捉えきれず、ゴーレムの懐に岸は辿り着いた。


それを確認した俺も駆ける。

不思議と、ゴーレムと目があった気がした。


ハルバートを低く構え、ゴーレムの胸に刺さっているナイフだけに集中する。


一瞬、振り上げられた腕が目に入ったが……既に辿り着いていた岸が、その両方を切り落とす。


俺は止まる事なく走り、低く構えたハルバートの角度を少しずつ上げて上げて、その胸を目掛けて一気に突き抜く!


脆くなっているその胸部は、思っていたよりも簡単にハルバートが刺さり、途中で少し硬いモノに当たった感触ごと力を入れて突き出した。


「見事だ」


自分の息遣いが聞こえる中で、ゼス騎士団長の声が耳に届くと同時に、ゴーレムは砂へと姿を変えて崩れていく。


そうか。あの少し硬いモノが核だったのか。


頭上で崩れていくゴーレムを見て、自分たちの勝ちの確信と共に思った。


あの硬いまま崩れてこなくて良かった。と…。


ゴーレムが居なくなった後、少しして現れたダンジョンコアと魔法陣。

あのコアに触れれば、ダンジョンの外へ戻れるように細工はしてあるらしく、途中でユニークスキルを使って一時間五十分という時間でクリアした俺達は、少しダンジョン内で時間を潰すことにした。


その時間を潰している時にゼス騎士団長から聞いたんだが……。


市羽はあのゴーレムを、一撃で一刀両断にしたらしい。

最近、筋肉が落ちてきました。

鍛えねばぁ。


ブクマありがとうございます!

感謝の気持ちがやみません。

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