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眠れる王  作者: 慧瑠
敵と味方とダンジョンと

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ウォーミングアップ

慣れるためにと、簡単で分かりやすくと考えつつ戦闘描写を書いてみましたが…語彙力不足をより実感しますね。

後、ギャグも書けるセンスが欲しい。など次から次へと欲がでてきます。

目が覚めた時は、部屋のベッドの上だった。


このベッドの感触…ログストア城のベッドだな。


手触りと身体を包む感覚で、自分が今どこのベッドで目が覚めたかを確認しつつ身体を起こす。


「ゴホッ……あ?」


咳き込んだ時に口に当てた手が、何故かネチョッとしたことに違和感を覚え見てみると…これまぁべっとりと血が付着していた。

驚きもあるんだが、あまりにも突然のことに冷静に自分の身体を調べていく。


手は動くし、身体も異常がある様にも思えない。立ち上がるのも…問題ないな。


寝る前の最後の記憶は…確かメニアルと試合をして、勝負が付いた所で記憶が無くなっている。


「心当たりをこじつけるのであれば…'スキルフォルダ'」


吐血の理由を確認する為に、俺は自分のスキルを確認することにした。するとどうだろうか…ご丁寧に正解を教えてくれていた。


------------------

眠王


|説明|

その者、眠れる王。眠りを愛し、眠る事に至福を感じる王。


|ログ|

限定解除の使用を確認。

第二起床再睡眠を確認。


使用負荷、反動軽減の為、体質変化を実行…完了。

------------------


本当、ご丁寧にどうも。

つまりなんだ?俺の身体はまたスキルに弄られて、この手に着いた血は変化の結果だと。


「不純物でも吐き出してるんかね」


とりあえず手に着いた血を拭くために部屋を見渡すと、壁に俺の制服が掛けてあった。どうやらここは、俺の為に用意してくれた部屋らしい。

多分あるだろうと願い、ポケットに手を突っ込むと…洗濯されて綺麗に畳まれたハンカチがしっかりと入っていた。


汚すのも気が引けるが仕方ない。


そのハンカチで手を拭きながら、もう一つ気になった事があってスキル内容を確認していく。


……。ふむ。


結果的に、気になっていた事は分かった。

限定解除は、また封印?制限?どっちでもいいが、使えなくなっている。分かっているのは第二起床をする為には、二十四時間起床しなければならんらしい。残りの二つは…分からん。


予想では起き続ける事か?

第二起床で二十四時間って事は、第一起床は四十八時間、完全起床は七十二時間?無理だろ。無理無理。

昔にギネスで十一日不眠の記録を見た気もするが、俺は間違いなくそんなことしたら死ぬ。


「ん?起きてたか」


「安藤、俺は残り二回変身を残している。だが、変身したら死ぬらしい」


「死活問題だな」


「全くだ。そこで安藤、もし…もしだ。その時が来たら、後の事は頼んだぞ」


「え?ヤダ」


結構シリアスな空気を醸し出したつもりなんだが、部屋に入ってきた安藤は、サラッと拒否をしてベッドに腰をおろした。


「つか、その変身使わなきゃいいだけじゃねーか?」


「確かにな。まぁ、使おうにも、多分三日間ぐらい連続で徹夜しないといけない」


「常峰には無理じゃん」


「うん」


すんなりと頷く。

それはもう子供のように、素直に。


手を拭いていたハンカチをテーブルの上に置いて、俺もベッドの上に座る。


「血?大丈夫なのか?」


「それこそ、その変身のせいだと思うわ。異常は感じられないし、平気だろ」


テーブルに置いたハンカチを見た安藤が心配そうな表情で聞いてくるが、俺が説明をすると、不満げではあるが納得はしたようだ。

ハンカチを置くついでに時計を見ると、時間は昼過ぎ。約一日寝てたっぽいな。


「それで、部屋に来てどうしたんだ?」


「一昨日から寝っぱなしだからな。普通に心配したのと、起きてたら訓練場に引っ張って行こうかと」


「…ん?一昨日?」


「そうだぞ。常峰がメニアルさんと戦ったのは一昨日だ」


なるほど、一日どころか約二日寝てたっぽいな。

うん、やべぇな。シーキーには昨日帰る予定で話してたのに、一回ダンジョンにも連絡入れとかないとな。


「とりあえず訓練場に行くか。本当は二度寝したいが、許してはくれないんだろ?」


「当然。お前のせいか、おかげか…面白い事になってるからな」


「面白い事?」


「行けば分かる」


何やら楽しそうな表情の安藤に連れられ、俺は訓練場へ向けて足を運ぶ。

その道中でシーキーに念話を飛ばし、言葉にはされなかったが、どこかふてくされている様子のシーキーに謝罪と何かお礼とで買収して許しを貰う事に成功した。


そんな事がありつつ、訓練場に着いた俺は中に入って驚きのあまりに声を失う。


「踏み込みが甘いですね。一歩手を抜けば、一手遅れると思って動作の一つ一つを大切にしなさい」「はい!」

「フェイントをする前に、一撃一撃を無駄にするな!」「すみません!」

「いいですか?魔法を行使するのに必要なのはイメージも大事ですが、平常心を保ちなさい。目の前に剣が迫ろうとも、魔法が迫ろうとも乱れない精神を」「は、はぃ…」

「ほら右、次も右、しっかり見て防ぐ。まだ感覚に頼るな。腰が引けてる」「分かりました!」

「遠慮はいらぬと言ったはずだがのぉ…。殺す気で来なければやめじゃ。それとも…それが貴様等の限界か?」「はぁ…はぁ…まだまだ!」「すんませんっした!」「次、お願いします」


セバリアスとゼス騎士団長だけじゃなくて、ラフィやレーヴィの他、連れてきたダンジョン勢やメニアルまでもがクラスメイトに稽古をつけている。

何より…クラスメイト達の熱気がすごい。


隅の方では休憩しているのか、ダンジョン勢のメイドと執事、ログストア国のメイド達が用意した飲み物を飲みながらでも、戦い方を聞いている。


「何があった」


見る限り、クラスメイト達は全員いる。

それも最近では珍しい事だと思うが、やっぱりこのヤル気はなんだ。


「皆、常峰君に感化されたんだと思いますよ」


「東郷先生」


「かく言う私も、張り切ってます!」


ふんふん!とアピールをする東郷先生にも困惑をする。


感化って、あの戦いを見て何の影響を受けたんだ。


「かなりカッコ良かったからな。仕方ねぇさ。

それに、寝坊助のお前にあんまり差をつけられたく無かった奴等もしばしば」


「大半が後者じゃねぇのか?」


「カッコ良かったのは事実ですよ!」


安藤の説明を聞いて、東郷先生のフォローを聞いて…ちょっと照れくさい。そして同時に嬉しくも思う。

あまちゃんな俺は、戦う事から遠ざけようとも考え、殺すなとも言い…何より、クラスメイトには死んでほしくないと思っている。何かと、今のクラスは好きなんだ。

こうして、目に見えて生きる意思を見ていると安心できるな。


戦う術、自衛手段を学ぶ所見て安心する…それでも戦っては欲しくないと、俺の願いは矛盾しているが…願う我儘ぐらい矛盾させてくれ。


「安藤、一戦どうだ?」


「お?王様直々は、嬉しいな」


皆の熱気に俺も感化され、安藤を誘い剣を取りに行く。


「大怪我はしないでくださいね!」


「大丈夫ですよ。俺もちょっとは強い方なんで」


なんてカッコつけて東郷先生に返事をして、今回の得物となる剣を一本を手に取り引きぬ…けない!

いや、ちゃんと力を入れれば抜ける!だが……重い。


「どうした常峰」


「今日の相棒を選んでるんだ。ちょっと待ってろ」


背中越しの声に、自分でも意味の分からない返事をしながらそっ…と剣を戻した。


軽く深呼吸。

脳を回転させて思考を深める。


昨日の記憶はある。戦い方も良く覚えている。だが剣が重く、振れる気がしない。


答えは実に簡単なものだった。

……俺、寝起きじゃん。


もう一度剣を持ち上げるが、手から腕、肩まで及ぶこの重量感。こんなん振ってたら腰が逝く。それどころか十分経つ前に息が上がって、寝て起きるまでは足腰生まれたてになりそうだ。


「なぁ安藤」


「なんだ?」


「俺さ、寝起きなんだけど」


「そうだな」


「…」


察して。

安藤君、察しておくれよ。


希望を胸に振り返り安藤を見ると…随分と挑発的な笑みを俺に向けているじゃないか。

安藤の奴、俺が言いたい事を分かっててスルーしてやがる。


そうかそうか。なるほどね。その挑発、乗ってやろうじゃないか安藤君。俺が戦闘をユニークスキルだけに頼っているものでは無いという事を教えてやろう。


並ぶ武器を眺め、今の自分でも使えそうな物を探していく。

普通に剣はまず厳しい。斧やハンマーなどの重量系は剣以上に論外だろう。鞭とかの変則的な武器も…ありっちゃありか。


数分色々と見ながらイメージを固めていく。


「決まったか?」


「ま、こんなもんだろ」


ある程度イメージが固まった俺は、軽く小細工をした目的の武器を手に安藤と向かい合う。


「メリケンナイフと短槍か」


「今の所、使えそうなのがこれぐらいなんだ」


「紐を結んで使うのか」


「重くてな。落ちそうなんだ」


安藤は俺が握っているメリケンナイフを見て、一番端の穴に括り付けた紐の存在に気付く。その理由として、重さなどと適当に言うが…流石にこれぐらいなら俺も振れる。

当然安藤も嘘なのは気付いているだろう。


別に気付いている事を気にせず、俺も安藤の武器を確認する。


あれはなんだったかな。槍に斧を付けた様な…あ、ハルバートか。

安藤の武器は、そのハルバートと腰に剣が二本。背中に大剣を背負っている。その大剣のせいで、背後から攻撃するとしても、狙う場所が限られてくるな。


「観察は済んだか?できれば時間を伸ばしたくないんだが」


「あんまり意地悪言うなよ。後五時間ぐらいはこうやってお前を見てたいわ」


「んじゃ、五時間頑張ってくれ」


俺の言葉をサラリと流し、ハルバートの先を俺に向け、腰を軽く落として構える安藤に、俺は構える事無くメリケンナイフの握り手に一本だけ指を通してぷらぷらと揺らす。


時間勝負だな。


俺と安藤は喋らない。

だんだん安藤の集中力が高まっていくのが分かる。だが安藤からは仕掛けてこない所を見ると…俺の出方でも窺っているのかね。


「ま、ゆっくりやろうぜ」


安藤の視線がメリケンナイフから俺に移った瞬間にそう呟き、揺れを大きくして先端が安藤へ向いたタイミングで押し出す様にメリケンナイフを投げる。

後は紐を伝い魔力を送り込み、回転しない様にだけ意識をする。無回転投擲なんて技術は俺にはないからな。


意識をしながら安藤の行動を見ていると、ハルバートを少しだけ動かしてメリケンナイフをはたき落とした。


「お前なら投げてくると思った」


「俺も、お前ならそうすると思ったよ」


握る紐を使い引き寄せると、メリケンナイフは地面を鳴らしながら手元に戻ってくる。

それをさっきと同じ様に一箇所だけ指を引っ掛けぷらぷらと。


「また投げるか?」


「おう。…ほれ、どうする」


軽い会話とは裏腹に、魔力で向きだけ固定して思いっきりメリケンナイフをぶん投げる。


「距離を詰めるさ」


「だろうな」


一歩踏み出した安藤は、少し大きくハルバートと振り上げ、迫るメリケンナイフを弾き上げようとした。そのタイミングに合わせて紐を引く。

そうすることでハルバートの先に一瞬引っかかった手応えを合図に、力を抜き、魔力を使ってメリケンナイフの軌道を調整。

ついでに魔力で大雑把に道を作り、それの道を滑るメリケンナイフはハルバートの穂先から柄まで絡まった。


「チッ」


考え通りにはなったものの、俺の筋力足らずで安藤からハルバートを取り上げられない。と言うかビクともしねぇ。


「俺と力勝負か」


「マッチョメンめ…」


これならやっぱり肉体強化の一つでも覚えておくべきだったな。


自分の非力さに嘆きながら、安藤に向けて短槍を投げ飛ばした。

当然反応する安藤はハルバートを一度突き立て、腰に付けた剣を抜き、俺が投げた短槍を切り伏せる。


安藤、お前の動きは手に取る様に分かるわ。


ハルバートを突き立てた瞬間に、俺はメリケンナイフを手元に引き戻し身体を回転させて、その遠心力を利用してメリケンナイフを横薙ぎに振り抜く。


「見えてるぜ」


上半身を逸らして避ける安藤。

それを見て、俺は口元が緩む。


「なっ!」


余裕を見せていた安藤は驚きの声を漏らす。

避けたはずのメリケンナイフが、同じ軌道で上半身を戻した自分の側面から迫っているのだから。


「俺のハルバートか!」


「ご明答」


自分が突き立てたハルバートに一回転してから迫ってきている事を確認した安藤は、顔を顰めて握っていた剣で紐を断とうと振り下ろす…だろうと俺は予想してた。


そして予想通りに行動した安藤は、また驚きの顔を浮かべる。


当然だ。振り下ろした剣は紐を断つ事ができず、伸びた紐を押さえつけた剣に紐は絡みつき、そのまま剣を握る安藤の腕にまで絡みつく。


「力尽くで千切ろうとするなよ」


「もう試してやめた」


肩を軽く上げて呆れた様に言ってくる安藤の肩に、近づく途中で拾った短槍を乗せて一言。


「はい。俺の勝ち」


「随分と小賢しい事をするもんだ」


「そういうな。まともにやったら勝負にならねぇよ。

それに…お前だって随分と手加減してたじゃねぇのさ」


「そこまで分かってんのか」


「あんだけ攻めて来なけりゃ、誰でもそう思う」


話しをしながら安藤の手に絡みついた紐を解くと、本当に力尽くで紐を千切ろうとしたのが良く分かった。

紐の跡と、それよりもかなり細い跡が血を滲ませながらくっきりと残っている。


「しかし…細い糸まで結び付けられてるとは、気付かなかった」


「紐だけじゃ、本当に力技で引きちぎられそうだったしな。気付かれてたら気付かれたで、また別の姑息な手を使ったさ」


「よーやるわ。

途中でナイフが変な動きした気がしたんだが、あれはどうやったんだ?」


「魔力ぶちこんで固定して、魔力で無理矢理ナイフの道を作ったりしてた」


「紐やら糸やらがお祭りしなかったのもそれが理由か」


「途中で絡まったら台無しだからな。ほれ、解けたぞ。

後は、東郷先生に治療してもらえ」


「わりぃな。行ってくるわ」


解き終えた安藤を見送り一息つくと、メニアルの言葉が耳に入ってきた。


「あれは参考にしてはならぬぞ。魔力にモノを言わせただけのやり方じゃからな」


それに対して、メニアルが訓練をしていたクラスメイト達からは、元気のいい返事が聞こえて俺の胸をえぐってくる。

それはもうゴリゴリと。


メンタルに大きなダメージを受けた俺は、訓練場の隅に移動して休もうと足を動かした。一歩、二歩と進み、メニアルの横を通り過ぎようとした時、肩をガッチリ掴まれて足が止められる。


「なんでしょうかメニアルさん」


「あの戦いは無かろう。手加減に甘えおって」


「俺と安藤の仲なのでね。ウォーミングアップってやつだ」


「なら、準備運動はよいな。夜継、お主も少々鍛えるべきやと思うが」


「や、休みは…」


「十分に寝ておっただろう。駄々をこねるな」


元より拒否を認める気は無かったんだろう。

襟を掴まれた俺は、抗う術無く引きずられていく。


それからミッチリ二時間。メニアルとクラスメイト達に絞られた後、一度ダンジョンへと戻ることにした。


帰宅前にハルベリア王と相談の末、今度ログストア国に来るのは一週間後。

その頃には安藤達は実践訓練を終えているらしく、おそらく領地などの贈呈もその時に公にする予定らしい。


それまでに俺は、ハルベリア王との約束を果たす為の魔道具開発を済ませておきたいな。いや、その前に…シーキーのご機嫌を取ることが先だな。安藤の勝負服の運命が掛かってる。

常峰君が居なかった三日…四日間の話しを一話ちょろっと挟もうかなと悩み中です。

書く場合は、シーキー視点になると思います。


それよりも…そろそろ別々の行動が始まるのに、名前やスキルが決まってない…。



ブクマ、評価ありがとうございます!

これからも励みに頑張らせていただきます!

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