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眠れる王  作者: 慧瑠
敵と味方とダンジョンと

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34/236

カッコつけたい

前半は第三者視点。後半は常峰君視点。


ちょっと、読み返して分かりづらかった気がしたので先に補足しておきます。

常峰の後ろに並ぶ安藤も含めたクラスメイト達は、ダンジョンのメイドや執事が用意した紅茶と茶菓子を堪能していた。


最初は王達の空気に呑まれかけ、次は注目を浴びる様な登場をしたクラスメイトの常峰 夜継に驚き、次々と用意されていく椅子や茶菓子に紅茶にと…置いていかれるテンポの良さに驚きを通り過ぎ、何故か冷静に味を堪能できている。

そんな少し緩い空気とは裏腹に、常峰が座る円卓の空気は重い。


「常峰 夜継、貴様はその隣に座る奴が誰か分かっているのか?」


重苦しい空気の中で、レゴリアから常峰に対する問いから話は始まった。


「メニアル・グラディアロード。ログストア国より討伐を頼まれた五人の魔王の内の一人でしょう?知っていますよ」


「ならば、何故ココに居る」


冷静に、事もなしに返答をする常峰の態度が気に入らないのか…レゴリアとコニュアの空気は張り詰めていく。


「それは自分がメニアルと手を組んだからですかね」


常峰の一言は、レゴリア達を更に警戒させる。

護衛で来ていた騎士に兵士も、その空気に感化され下ろしたはずの武器を手に、無意識に構えかけた。


命令があれば一斉に飛びかかれるように、自らが仕える主を守れるように。


「常峰 夜継…それは我等人類に対する裏切り行為ではないか?」


「裏切り?そんな事はないですよ。

元々はログストア国と協力関係で、メニアルとは此方側の目的の為に手を組んだだけなので」


「だからそれが!」


「あぁ!もしかしてこれは勘違いですかね?」


「勘違いだと」


机に立てかけていた剣を抜きかけたレゴリアを手で制止しながら、笑みを崩さずに常峰は言葉を続ける。


「そうですね。勘違いです。

確かに自分達はログストア国に召喚されましたが、別にログストア国の人間ではありません。


さっきから何度も言うように、ログストア国とは協力関係。俺達は俺達の目的があって、その為に協力関係を築いただけですよ。

レゴリア王、そしてコニュア皇女、随分と俺達に興味があるようですけど…やり方は考えて欲しかったですね」


「なにが言いたい」


「安心して寝れねぇって言ってんだよ」


崩れぬ笑みはそのままに、言葉には明らかに怒気が含まれていた。


常峰はゆっくりと視線を動かし、レゴリアからハルベリア、コニュアを見ると最後にレゴリアへと視線を戻す。


再度レゴリアに向けられた顔は表情が抜け落ちたようで、大きなため息の後、常峰は言葉を続けた。


「不安を誘うための根回しも程々に…俺達を調べて目ぼしいスキルは見つけたか?

見つけたよなぁ?特にリュシオン国は、喉から手が出る程に引き込みたいスキル持ちが」


今度はコニュアが反応を見せる。視線が常峰の後ろへ流れ…

コニュアの後ろに控えていた剣を佩いていないローブを羽織った護衛達も、懐から短い杖を取り出した。


「やめなさい」


鈴の鳴らした様な声が、その護衛隊を制する様に言葉を紡ぐ。だが金色の瞳は常峰から外れない。


「俺が求めるのは安眠と快眠だ。

そして俺達が求めるのは、帰還法を調べ確立することだ。その為にログストア国には協力してもらっている。

だから必要であれば魔王の討伐を俺達が協力する。そういう関係だ。


だけどな、ログストア国の不安要素は今はダイレクトに俺達の不安要素になるのが現実。例えば…ハルベリア王が見逃している他国からの密偵共も、俺からすればただただ邪魔なんだよ」


常峰はセバリアスが用意した紅茶で喉を潤し、遠慮なしに発言をする常峰の言葉に耳を傾けていたレゴリア達をよそにすぐ続きを喋りだす。


「だからこうしませんか?

条件はハルベリア王と同じ、魔王討伐には協力しましょう。魔神討伐にももちろん。だから、ギナビア国もリュシオン国も俺達に協力しませんか」


常峰の言葉に大国の首脳達の視線は、常峰の隣で暇そうにメイドから紅茶のおかわりを受け取っているメニアルへと移動する。


「その場合、私達も魔王と魔神の討伐を依頼しますよ。そうなれば、貴方が手を組んだ魔王も敵として頂きますが」


抑揚の無い言葉と共に、明らかな敵意を孕んだコニュアの視線は魔王から外れない。


だが、コニュアの視線を受けてもメニアルは気にした様子も無く茶菓子を貪る。そしてつまらなそうにため息と共に、やっとその視線をコニュアへと向けた。


「夜継、我は認めてやろう。

喜べ人間…今ここに宣言してやる。魔王メニアル・グラディアロードはこの場を以て常峰 夜継の傘下に入る」


「なっ!」


「クハハハ!すまぬ嘘だ。

既に我は夜継の傘下故、この場を以てと言うのは語弊がある。


我は常峰 夜継を国の王として認め、既にその庇護下。これは、我のみならずハルベリア…貴様も認めたと聞いているが?」


意地悪な笑みを浮かべるメニアルに、ハルベリアは片手で頭を支えて聞いている。


私は聞いていない。そう答えたい。

確かに、動きやすさを考えて城を構えた事は聞いた。元は魔王メニアル・グラディアロードが治める領地なために実際の所は文句を言うつもりもなかった。


だから了承はした。その地を拠点として行動する事を…常峰が出してきた魔王メニアル・グラディアロードをどうにかする条件はログストア国としても願ったり叶ったりだったからだ。

…だが、聞いていない。

魔王と手を組んだことも、その魔王が既に常峰を王として認め傘下に入る事を了承した事も…何一つ聞いていない。


「幾つか知らぬ情報もあったが…確かに私は常峰君が異界の者達をまとめる者として認めてはいる。

それが王だと言う立ち位置なのであれば、それを認めたことにはなるのだろうな」


「ハルベリア!お前!」


「レゴリア、発言には気をつけるよう。魔王はまだしも、常峰君と協力関係なのは確かなのだ。

お前とて異界の者達を敵にはしたくないだろう。

彼等の決定権を握るのは彼だ」


「こんな小僧一人に、好き勝手を許すと」


「今更だな。我が国で好き勝手をしようとしているのは、ギナビアもリュシオンも同じだろう」


しかしハルベリアは流れに乗った。いや、乗るしか無かった。


常峰は薄々ログストア国の隠し玉に気付いている。その事を先日のリピアの一件の時に念話で話され、何より既に隠し玉は常峰の手中にある状態。

ハルベリアにとっては魔王よりも、自分達が召喚した者達の方が今では脅威だ。


だが、それは敵であればの話。


常峰が念話にて提示してきたのは一つ。

協力関係はそのままに、独立の了承だった。


かわりに、異界の者達は何処かの国に付くことはない。あるとしてもログストア国の様に協力関係を築くぐらいだと言う。


故にハルベリアは了承をした。

その独立を、その行動を。…まさか、魔王を連れてくるとは思っていなかった、先代から続いている魔族との戦いに進展をこうも簡単に持ってくるとは思わなかった。


「貴様等の問題は後にせよ。リュシオンの娘、既に我は魔王の名ぐらい捨ててやれるが…貴様はどうする。

先に答えを出しやすくしてやろうか?異界の者達は、例外なく皆が夜継を支持し、その元に集っているぞ」


ハルベリアの言葉を聞いて、尚も声を荒げようとしたレゴリアに被せる様にメニアルの言葉が静かに響く。


「例外なく…ですか」


コニュアは呟き、常峰の後ろ…ペコペコと頭を下げながら紅茶のおかわりを受け取る東郷を見る。そして数秒の沈黙後、ゆっくりと口を開いた。


「リュシオン国は常峰 夜継様を王と認め、以後の協力関係を希望します」


「それはありがたい。これで誰かがリュシオン国に行く時は安心できます。

いやー…本当に、東郷先生達の組がログストア国領土から移動する時の不安が一つ消えましたよ。


セバリアス、頼んでいたことはできそうか?」


「可能でございます」


自分の言葉に反応を見せたコニュアを確認した常峰は、近くに居たセバリアスに前もって頼んでいた事を聞いた。


常峰の言葉を聞いたセバリアスは返答と共に頷くと、懐から小さなあまり目立たないネックレスを取り出して東郷に了承を貰いネックレスを付ける。そして東郷に自分のスキルを確認するように伝える。


「あ…」


セバリアスの言葉に従い、小さな声で'スキルフォルダ'と唱え確認した東郷は声を漏らした。


ここの所、毎日の様に確認していたスキル内容に新しい内容が一つ追加されているのが分かったからだ。


------------------

信仰 Lv:7

|説明|

慕われる者、愛される者、崇められる者、奉られる者。信じ尊ばれる存在。


|スキル効果|

・信仰者の数に応じてスキルレベルが上がり、スキルレベルに応じて、自身の所持スキルにプラス補正を得る。


・レベルに応じて、信仰者の思考誘導をする事ができる。


|ログ|

現在、スキル抑制中。現在Lv:2

------------------


「ほ、本当に?」


「我が主からのご指示により、僭越ながら私がご用意させて頂いたスキル抑制の魔道具でございます。


東郷様のご意思により抑制の調整はできますが、あまり感情的になりすぎますとスキルの効果に耐えきれず、そちらのネックレスは壊れてしまいますのでお気をつけください。


東郷様が御自身のスキルを扱える様になるまでの補助と考えて頂ければ幸いです」


「ありがとうございます!常峰君も、ありがとう!」


背中越しに聞こえる東郷の言葉に片手を上げて応える常峰。その満足そうな顔はコニュアに向けていた。


「お、お声が…もう一度お「東郷先生、国巡りの時はリュシオン国に少し滞在してあげてください」


「え?あ、はい!分かりました」


「常峰 夜継様」


「これから、どうぞよろしくおねがいしますね。コニュア皇女」


------------


さて、これでおそらくリュシオン国は大丈夫だろう。


セバリアスからリュシオン国の事を聞いた時、リュシオン国を建国したのが、かつて'聖女'のユニークスキルを持った女性だと言うことを知った。

そして、並木から東郷先生のスキルのレベルが上がっている事を聞いて確信した。


フューナ・イカツァの目的は、確かに俺達の情報をリュシオン国に伝える事もあっただろうが、もっと別の…'聖女'の護衛が本来の目的、願わくば確保だろうと。


後にも先にも'聖女'を持っていたのは、その建国した女性が一人。

神聖国家リュシオンからすれば、聖女とは神にも等しい存在として信仰されている。そんな存在が現れたとなれば…そりゃ、我が国へ!となる。


スキルの話を持ち出し、視線を追っていれば、俺の考えが間違いじゃないと笑みが漏れた。


気持ちが高ぶっているんだろうか。饒舌に喋りたくなる気持ちを止めるのが大変だ。だが、まだ気軽なお喋りの時間じゃない。

リュシオン国は、表だけでも協力関係を口にした。今はそれだけでいい。だから次だ、次は…ギナビア国。


「随分と用意周到じゃねぇかおい。

常峰 夜継、貴様はどこまで見えている」


「目の前しか見えちゃいないですよ。

それで、ギナビア国はどうしますか?俺としては、お手手繋いで仲良しこよしが嬉しいんですがね」


「断った場合を教えろ」


さっきからピリピリと…。何のスキルを使ってきてるかは知らないけど、レゴリア王からは何かしらの干渉を受けているな。


まぁいい。その干渉の影響は俺にはない、あったとしても弱気に出る気はない。腰を据え、胸を張り不敵に強気に…。


「そりゃ、三つ巴になるだけでしょう。

軍事国家ギナビア、魔王軍、そして俺達連合の三つ巴に」


大きく行こうじゃないか。


「俺を脅すか小僧」


「そんなつもりはありませんよ。

言ったでしょう?俺達は帰還方法の確立の為に協力が欲しいと。そして、俺はただゆっくり寝たいだけなんですよ。

その為に周りを固める。安心したいんでね。


じゃあ、固められなかったのはどうするか…洗い流すのが一番簡単かと考えています。

初めはそうですね…密偵を軒並み排除する事から始めますか」


「先程から俺達が密偵を送り込んでいると確信しているが、その証拠でもあるのか?濡れ衣着せて、ただで済むとは思うなよ」


見つからない自信があるんだろうな。

そりゃそうか、決定的な証言が出る前に密偵は死ぬだろう。ログストア国に居るギナビアの協力者は、ヘマすりゃ暗殺されて口封じ。


その決定的な証言は出ないだろうなぁ。かと言って、疑わしきは罰して冤罪が証明された場合は、ログストア国にとっては危機だ。

無理に漁ることはできない。無駄に敵意を見せる訳には行かない。相手が唸るぐらいの情報を手にしなければログストア国は黙認するしかない。


だが、強気に出れる材料があるから俺は強気なんだ。


「レゴリア王、リピア・モニョアルと言う女性をご存知ですか?」


「知らんな」


即答か。


俺は視線をハルベリア王に一度向ける。


《ハルベリア王、リピアさんをお願いします》


《ふむ、分かった》


一つ一つカードを切っていこう。連なったカードを一枚ずつ連続で、止めるな。


「それは残念ですね。

実は、俺は何故か転移魔法を使われましてね。今まで少し遠くに居たんですよ」


「…それが何の関係がある」


「ログストア国、ハルベリア王からすれば予想外の事態だったらしくて、慌てて犯人を探し始めたらしいんですよ。

そして先日、やっと容疑者が一人捕まったんです」


「その者がリピア・モニョアルだと?」


ハルベリア王はゼス騎士団長に耳打ちをして、ゼス騎士団長は出ていった。

もう少しすればリピアさんが来るだろう。それまで冷静さを欠くなよ俺。


「聞いた話では。

ただ、皆から聞くとリピアさんは随分と俺達の為に色々としてくれたと…俺としては、ちょっとリピアさんが犯人だと思えないんですよね」


「ふっ…だから他に密偵が居ると言いたいのか」


「どうでしょう?だから、それを本人に聞いてみようかなと」


「ほぉ、この場で…だがもし、死んでしまった場合はどうする。隷属魔法の可能性もあるだろう?」


「ハルベリア王も隷属魔法の可能性を気にして調べたらしいですが、その痕跡は見つからなかったと言っていたので…大丈夫じゃないでしょうか」


「それならば安心だ。この場であれば、手を出せば分かるだろうしな」


「そうですね」


これでいい。

これで、この場での発言をリピアさんは許され、何かあっても反応が遅れるだろう。

俺達は隷属魔法の存在を確認できていないと誤認した。だからリピアさんから情報が漏れる事はないだろうと確信した。


それでいい。

精々俺のやり方が足りないと考えて、舐め続けてくれ。小僧が調子に乗っているだけだと…馬鹿にしていてくれ。


「ハルベリア王、リピア・モニョアルを連れて参りました」


「ご苦労。して常峰君、ここからどうする」


「ありがとうございますゼス騎士団長。

それではハルベリア王、一応自分の目でも刻印の有無を確認したいのでよろしいですか?」


「よい」


ゼス騎士団長に繋がれている鎖を握られながら、リピアさんは俺の近くへと来た。


近くに来たリピアさんには申し訳ないが、席から立ち上がり布に包まれていない肌を確認していく…フリをする。


《リピアさん、隷属魔法の刻印は何処にありますか?

ハルベリア王が調べた結果では、本当に見当たらなかったらしいですが…》


《口内の奥、上壁に刻まれています》


なるほど、随分な所にある。そりゃ表面を見ただけじゃ見つからないわけだ。


「確かにありませんね」


嘘を口にしながら、視界にラフィを入れて念話を飛ばした。


《ラフィ、リピアさんの口の中だ。できるか?》


《可能でございます。しかし、発動させて頂いたほうが位置を特定しやすく、失敗の確率が下がります》


《分かった。その辺はなんとかする。リピアさんを死なせるなよ》


《王のご期待にお応え致しましょう》


頼もしいね。家のメイドと執事は。


席に座り直し、未だ余裕の笑みのレゴリア王へ顔を向ける。

その顔が何処まで続くか見ものだな。早く止めないと…俺の手は次々と進むぞ。


「ではお聞きしましょう。リピアさん、嘘偽り無く答えてください」


《岸、頼む》


《へいよスリーピングキング》


「リピアさんは、密偵ですか?もし、そうなら…どこの国の密偵か教えてもらっていいですか」

《'リピアさん、スリーピングキングの質問に偽り無く答えてください'》


岸とリピアさんを念話で繋ぎ、岸にはスキルを使ってもらった。


これで無理矢理喋らされるリピアさんと、それを阻止しようとする隷属魔法…命令権は岸の方が上だ。だが、強制的に隷属魔法はリピアさんを殺すだろうな。


「はい。私は密偵です。

私は……ぁ……」


リピアさん身体が硬直し、言葉が止まる。同時にリピアさんの口の中に魔法陣が見えた。


なるほど、やはり'死ぬな'と言わないと隷属魔法の効果は出てくるか。


今後の為に観察をしていると、口の中に見えた魔法陣を覆う様に幾何学模様が浮かび上がり…音もなく魔法陣と共に消え去った。


《隷属魔法を強制解除致しました。もう、問題はないかと…念のために現在も他の刻印を調べていますが、見当たりません》


《こっちでも消えているのを確認した。良くやった…ありがとう》


《ハァア…我が王の頼みとあらば、如何なるご命令でも!》


驚いた表情をしているリピアさんを見ながらラフィに念話で礼を言う。


隷属魔法の事をセバリアスに話すと、ラフィがそっち方面に強い事を教えられ、ラフィに相談すると…簡単ですよ?と言われた。

ただ場所が分からないと、少し隷属魔法の方が早くなるかもしれない。との事で今回のやり方を思いついたんだが…リピアさんぐらいには説明しておくべきだったな。


「どうしましたか?」


「いえ、久々に口を開いたもので少し言葉に詰まってしまいました。申し訳ありません。

改めてお答えします。私は、ギナビア国の密偵です。

常峰様の観察及び、任務により常峰様の身代わり石に手を加え、転移魔法を埋め込みました」


「そうでしたか…まさか、リピアさんが…」


自分のあまりの棒読み加減に、笑いが漏れそうになるのを堪える。

俺に演技は向いていないかも知れないな。


必死に堪えながらレゴリア王を見ると、眉間に皺を寄せながら驚いた表情と器用な顔になっている。


「罪人の言葉が真実だと言う証拠はないだろう…」


まぁ、そうやって逃げるよな。


だがレゴリア王、死ぬ予定だった人物は死なずに情報を話したと言うことを、もう少し考えるべきだった。

焦りが顔に出てくる前に、余裕な内にそこまで考えるべきだったな。


「確かに…ではリピアさん、貴女がギナビア国の密偵だとしてお話を続けます。

あぁ、先に言っておきますね。リピアさんが俺を転移させた事件についての処遇は、ログストア国ではもう無理でしょうから…俺達の城へ来て働いてください。それでチャラと言うことで…。


では改めて…リピアさんに続けてお聞きしますね。

他にギナビアの密偵は何人ぐらい居て、名前をお聞かせ願えますか?知っている分だけで構いません」


「常峰様の恩情、痛み入ります。

この身、許される限り常峰様のお側でお使いください。


誠意を示す為、まずは常峰様のご質問にお答えしましょう。私が知る限りの情報を「待て…」…常峰様、如何なさいますか?」


「待ちましょう」


レゴリア王から待ったがかかる。


残念だったなレゴリア王、リピアさんがこの場に立った時点で、ギナビア国の言葉は決まっているんだ。

いくら軍事国家とは言え…害しか無い状況で、黙って自分の首を締めたくはないだろう。


「それで、なんですかレゴリア王」


「いいだろう、今回は俺の負けだ。

常峰 夜継、貴様を侮っていた事も詫びよう。


レゴリア・ギナビアの名において、リュシオン国及びログストア国同様…ギナビア国も貴様と協力を結びたい」


その言葉に、礼を言おうと口を開きかけたが…先にレゴリア王の言葉が続いた。


「だが、協力と言うのだから此方の頼みも聞いてくれるのだろうな」


「内容によりますが…」


「貴様等、異界の者達の中から数名、我が国へ寄越して欲しい」


何か言われると考えてはいたが…人質の様なものか。

リュシオン国から言われるのは、十中八九東郷先生が絡んでくるだろうと分かっていたから先手で東郷先生にお願いした。


だがギナビア国となれば…どうするかねぇ。


国家間の戦争は無いと思うが、何をさせるつもりか。取り込もうとするのは間違いないだろうし、下手をすれば独断で魔族と軽く一戦交えたりもするだろう。


帰還を望む者はダメだ。そこに付け込まれかねない。


俺が行くのが楽かもしれないが…それはレゴリア王が納得しなさそうだ。さて、どうするか…個人の意思とは関係のない俺からの頼みになる。

できれば、あまり縛りたくないんだが…。


「常峰君、ギナビア国には私が行こうと思っていたわ。私が抜粋して最大四名、レゴリア王それでどうかしら?」


まさか市羽が自分から率先して言い出すとは。いや、確かに市羽なら安心できるが…。


「貴様は?」


「市羽 燈花。ユニークスキルは勇者よ」


「おぉ!そういえば此度の召喚では勇者が二人居たんだったな。俺としては、その片割れが来るならば文句はない。

どうする?常峰王」


確かに安心はできるんだが、市羽がギナビアに行くのはできれば避けたいんだけどな。個人的にはリュシオン国、市羽には東郷先生の近くに居てほしかった。

まぁ…ここまで笑える程に上手く、怖いほどに掌で物事が進んだ。欲をかきすぎて、全部おじゃんにする必要もないか。


「市羽が良いならそれでいい。

ただ、もう少し経験を積んでからだ。予定通り、ログストア国での訓練を終えてからギナビア国へ行く。

ギナビア国へ向かう四名は、後日ハルベリア王からお伝えしますよ。


それじゃあ…俺達のお披露目はこれぐらいとして、今後の事について話し合いがあるので、失礼しても?」


「構わぬが一つ聞いてよいか?」


俺の問いに答えるハルベリア王は、何やら呆れた顔で俺を見た。

なんだろうか。


「常峰君が出てきたあの扉、あれは何かの魔法か?」


…。あ、そういえば言ってなかったな。

これも武力を問われた時の切り札として、何より強硬手段だから伏せていたんだった。


「あれはダンジョン内であれば移動できる扉ですよ。つまりは、ここは既にダンジョン内…俺の支配下です。

これは俺のスキルや魔法ではなく、俺の力、ダンジョンの力の一つです。


ハルベリア王は知っていたかもしれませんが、リュシオン国とギナビア国は知りませんでしたよね?信頼の証として先にお伝えしておきますよ」


話が終わり、俺が席を立った事でセバリアス達が扉の前に整列をしていた。そして面白がってか、クラスメイト達もセバリアス達同様に綺麗に並んでいる。


演出としては上々。皆、ノリが良いままで俺は嬉しいよ。

だからここはカッコつけさせて貰おうか。


「皆の王であり、ダンジョンマスターもやらせてもらっている常峰 夜継と申します。気軽に'眠王'と呼んでください。


以後、よろしく」

やっとちょっと大きな進展ができそうです。


ブクマありがとうございます!

気が向いたら感想などもください。


私事ですが…ちょっと体調を崩しました。

おかゆがおいしい。

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