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眠れる王  作者: 慧瑠
敵と味方とダンジョンと

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私達の城

ちょこっとテンポを上げて、合流していきたいと思います。

《おはようございます常峰様》


《おはようございます。朝からすみませんね》


安藤様から預かったイヤリングをチョーカーの間に滑り込ませて、異界の者達が空にした皿を台車に乗せていく。

耳に付けてしまえば、仮に安藤様が付けている所を覚えていた者からすれば、不思議に思われてしまう。


《私に御用と言う事でしたが…ギナビア国の動きに関してですか?》


《そうと言えばそうかもしれないですね。俺の話の前に、リピアさんが気付いたことを聞いてもいいですか?

その言葉が出たってことは、ギナビア国が何か動きを?》


《大きい動きではありませんが、今度ギナビアの王がログストア国へ勇者を見に来る様な動きを見せています》


隷属魔法のせいで、全てを伝える事はできませんが…常峰様ならこれだけの報告で言いたい事をある程度は察してくれるでしょう。

ただ、私のような一介の密偵には詳細が伝えられていないので、時期などは不明なのです。どちらにしても詳しくは伝える事はできませんね。


《動きを見せているだけで、何時来るかまでは分からない感じですか》


《ハルベリア王の日程の確認ができれば予測する事は可能ですが…私では立場上把握できません》


《メイド長は、モクナさんが安藤の専属と兼用してるんでしたっけ》


《はい。ハルベリア王の身の回りは基本的にメイド長が行っていますので…》


常峰様は何か考えているようで、返事がない間に手早く皿を台車に乗せ、片付けをしている他のメイドに一言掛けてから私は食堂から厨房へと移動する。


本来であれば、厨房へ空き皿を届けた時点で別の仕事へと向かうのですが、最近は私が耐性スキル上げ用の食事を用意しているため、皿洗いまでが私の仕事。

常峰様のお世話ができない。と言うことで、モクナさんとの相談の末にこの仕事をする事ができている。


当然、密偵として協力的な行動はどうかとオーマオ様に咎められましたが、情報を引き出すためだと話せば丸く収まりました。…ですが、どうも最近は他の密偵の動きが怪しい様にも感じますね。


《分かりました。ギナビアの動きは頭に入れておきます。

俺の用件なんですが、多分連絡手段がある事がバレました。探っていた相手にはまだ伝わっていないでしょうが、それも時間の問題かと》


皿を洗っていた手が一瞬だけ止まった。少し揺らいだ心を落ち着かせ、何事も無かったかの様に皿洗いと再開しつつ考える。


オーマオ様はオーマオ様で何か画策していたようですが、行動するのはもう少し先のはずと予想していたんですがね。


《誰かが漏らしたのですか?》


《昨日チーアと念話をしました。

安藤曰く、チーアが念話の存在を確信したような言い方をして、我儘を言ったらしくて…》


チーア・ログストア。第二王女ですか。

教育を担当しているのは、ウィニさんのはずでしたが。ハルベリア王が確認を求めたか…それとも、別の勢力からの入れ知恵か。

どちらにせよ、そこから漏れるとは思いませんでしたね。


《チーアを使ったのがどこの勢力かは分からんが、おそらくギナビア国の密偵にも近い内に伝わるかと。

俺の考えでは、ログストア国の行動とは考えにくい。それでもモクナさんを通して一応ハルベリア王には釘を刺しておきました》


《迅速な行動、良き判断かと。その事を私に?》


連絡手段の有無がバレたとなれば、私の虚偽報告がバレるのも時間の問題ですね。ギナビアがどういう判断を下すか…オーマオ様が独断でどういう行動にでるか。

いくつかの状況を考えた場合、私の動きは…オーマオ様に念話の存在の報告をして、次の命令があるまで待機ですかね。


《それもなんだが、リピアさんには俺の頼みを信じて聞いてもらいたいんですよ》


《できる範囲であれば》


《その前に正直に答えて欲しい。リピアさんは、ログストア国やギナビア国に思い入れはあったりしますか?》


思い入れ…。ないですね。


ギナビア国に生まれ、鑑定と転移魔法の素質があったため軍の教育機関へ移動。そこからは、訓練訓練の日々でしたし…。

初任務の際、情報漏洩対策の為に隷属魔法を受けてからは…自由なども無く、ただ与えられた任務をこなすのみの生活。


表立った部隊に所属しない私は、簡単に言えば便利な捨て駒同然。私もそれを受け入れていましたが…どこかでこの生活が嫌になっていたのでしょう。

だから、異界の者達に惹かれ、常峰様のあんな言葉に乗ってしまっている。


伝令としてではなく、私の言葉を聞かれた時…不思議と嬉しかった。

英雄の基盤を作るなんて事を言われて、分不相応だと分かっていても…いいなぁ。なんて考えてしまった。


きっと疲れては居たのでしょう。命令を聞くことにも、それで生涯を終えると理解できている事にも。

それがおかしいとは思いません。でも、夢を見る事を夢見ていたのは確かです。


ギナビア国に居る両親は、今も元気に過ごしている事でしょう。

ギナビア国では、軍の教育機関に行けることは名誉であり、将来性が約束されたレールの上が用意され、軍が率先して子を引き取る際には国から大金が親へ支払われる。


その大金で、きっと両親達も相応の生活はできているはず。裏切り行為は軍としては重罪ですが、厳重な調査が入り両親にまで失態が無いと分かれば…基本的には咎められる事はない。

教育機関中ならいざしらず、私もいい大人ですから、責任は本人で取れるので…そこも気にする事はありませんね。


いくら考えても、私は別にギナビア国へ愛国心を持っていないようですね。ログストア国へは任務で来ているので割り切っていますし。


《無いですね》


《ハッキリいいますね。まぁ、協力をしてもらってる身としてはありがたい限りです。

それじゃ、あんまりリピアさんの仕事の邪魔もしたくないので率直に言いますが…もし、リピアさんが俺を転移した事件の実行犯として売られた時、あまり抵抗をしないで捕まってくれませんか》


まぁ…私は虚偽報告を続けていますから、ギナビアから裏切り行為だと思われても仕方ありませんが…。


《安易に死ねと捉えてよろしいですか?》


実行犯である事は確かですし、言い逃れも限界は出てくるでしょう。

それでも、無抵抗で捕まるとなれば、容疑を認めた事にもなりかねませんし…今回の事件はそれなりの問題として死罪でもおかしくない事です。


常峰様が何を考えて言っているとしても、私からすれば死の宣告と同意義。もし、それを望むのであれば、今からでも手を切る事を考えなければなりませんね。


《言い方が悪かったですね、そういう意味ではないです。

自分はやってない主張はしてもらって構いません。むしろ、それはしてください。ただ気をつけて欲しいのが、物理的な抵抗…リピアさんに戦闘能力がある事はできるだけ隠してください。


俺の方からも、実刑判決までの時間は稼ぎます。だけどリピアさんが容疑を認めてしまうと、それが無意味になるので…全力で自分の無実を主張してください。

時間が稼げればそれだけ俺が楽になります。


まぁ、もし捕まりそうならの話なので…早い段階で捕まった場合はお願いします。

その時用に、できれば最近アイツ等が食ってる料理やらを軽くまとめててくれると嬉しいです》


《お話は分かりました。ですが、一つお聞きしたいのですが、時間を稼げばどうにかできる事なのですか?》


《時間さえ稼げれば、どうとでもしますよ。

リピアさんには先に話しておきますが、方向性としてはリピアさんにはこっちに来てもらおうかと思っています。隷属魔法をどうにかする約束も兼ねて、こっちに来てもらったほうが楽なので》


来てもらう?

確か、常峰様は現在ダンジョンを所有していると記憶していますが…手段が分かりませんね。元々ダンジョンとは魔物の住処の一つとして考えられ、国やギルドがダンジョン攻略へと赴く場合が殆ど。


後は訓練の場として安全を確保した上で、ダンジョンをそのままに運用したりする事もあるにはありますね。

……しかし、どちらにしろダンジョンの所有と言うのは、あまり良いイメージは持たれないのが事実。

常峰様はそれを理解しているのでしょうか。


《まだリピアさんが完全に俺達側とは言えないので、全部教えるわけにはいかないんですけどね?

ちょこっとだけ言えるのは、勇者達はログストア国の戦力じゃないって事ぐらいですかね。協力関係ではあるのは確かですけど。


まぁ、安心してください。安藤達が世話になってるんで、仇で返す様な事はしませんよ》


やはり分かりませんね。ですが、そうですね…虚偽報告をした時点で、ギナビア国での私の立場はかなり悪い。

一時の感情で動いた結果です。だったら最後ぐらいは感情に従って動いてみようかと思います。


《期待しています》


《ハハハ、期待されるのは苦手なんですが…今回は期待しててください。

俺的にも中々血迷ってるなとは思ってますけど、ちょっと楽しくなってきている所なんで》


それから安藤様にイヤリングを返すまでは、世間話の様な…主に私の好きな食べ物などを聞かれました。

常峰様の元へ行った時に、パーッと祝い事をするからと。今まで好き嫌いを考えた事が無かったので、返答には困りましたが新鮮な時間ではありました。


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-----


「あー…くそ」


「中々良かったと思うわよ」


「余裕ぶっこかれてる相手に言われてもな」


「そうでも無いわ。安藤君には、あんまり慣れていない武器は使えないもの」


壁に凭れ掛かり話す俺と、隣で息切れ一つ無く立つ市羽。


今日の訓練のペアは珍しく市羽だった。本人からの誘いで、俺も断る理由が無くそのまま訓練をしたが…やっぱり勝てねぇ。

クラスメイトでも戦闘能力の強弱が見えはじめているのは確かだが、市羽だけはなんというか…レベルが違った。


クラスメイトとの模擬戦では無敗を誇る市羽。少し前にゼス騎士団長から一本を取った実績まで追加されている。

改めて、'天才'という言葉を実感した。


「っても槍だろ…」


「私の中では比較的使いやすい武器よ」


そうは言うが、市羽が最も扱いやすい武器としてるのは刀だ。

両刃でも問題はないと言うが、刀の様な片刃の方が使いやすいんだとか。だが市羽はあまり刀を使わない。


今回の模擬戦の様に、槍を使ったり双剣やレイピア、大鎌などと様々な武器を使っている。それでもコイツは無敗。

勇者のスキル恩恵で身体が覚えやすいから。とは言うが、初めて使った時でも、ものの数分である程度使いこなす様は…ゼス騎士団長ですら驚いていた。


「本当に天才だな」


「スキルなんて才能を皆貰っているでしょう?」


「つってもな…」


同じ勇者のスキルを持つ新道は、日々訓練をして剣を極めようとしている。そんな新道でも市羽に勝ったことはない。


「物覚えが良いだけよ。時間が経てば、皆と変わらないわ」


「努力をしないからだろ」


「努力をできないからよ。初めてでもある程度できるから、その必要を感じないの。

物覚えが良いからって両親が面白がって色々とやる機会を与えてきて、私も子供ながらに両親が楽しそうだからって期待に応えてただけ。


気がつけば、天才と持て囃される様にもなったし、その道を極めようとしている人からは嫉妬を貰ったわ。

別に平凡である事を望みはしないし、天才と言うならそれでも良いのだけれどね…。ただ、それで周りが諦めていくのはあまり好きじゃないのよ」


「そのある程度が、普通とは違うんだよ」


「だから天才なのでしょう?基準があって、望むラインがある物事に対して、私は別に苦もなく到達するわ。

できる事、やれる事は勝手に増えていくのも確かだけどね。私にだって苦手な物はあるのよ。


例を挙げれば人付き合いは苦手よ。何を考えているか分かれば、それに応える事はできても…勝手に思われている事に対して、私は応える事はできないの。

他人の評価が欲しいわけじゃないしね」


何か、今日の市羽はよく喋る。

喋る割には、その顔は面倒くさそうで、つまらなそうだ。


「天才なのは否定しないのか」


「私にとってはどっちでもいいことだから…否定も肯定もする気は無いわね」


どうやらこの話題は、市羽にとって好ましいものではないらしい。

そこそこ市羽との絡みはあるが、別に仲がいいかと聞かれたらそうじゃない。何を考えているか分からないのは同じだ。


「でもそうね。天才と呼ばれてるのも悪くないのかもと考えられる様にはなったわね」


「そうなのか?」


「えぇ。ちょっとした勝負事だけど、私一度だけ常峰君に負けたのよ。

その時に、こんな簡単な事でもお前は負ける。天才を打ち負かすなんて、どんな奴でもやり方次第。どうしても天才であることが嫌なら、同じ土俵まで引きずり下ろしてやる。って言われたわ。


正直、腹が立ったのは確かなのだけどね…あまりにもバカバカしくて笑ったわ。それ以来ね、天才である事が別にどうでも良くなって、むしろそれはそうで良いのかもと思ったのは」


常峰が市羽と勝負事をしたのにも驚いたが、それ以上に常峰が勝ったっていうのが驚いた。


「なんの勝負をしたんだ?」


「どっちが先に寝れるかよ」


「…完敗だっただろうな」


「数秒で終わったわ」


本当にしょうもない勝負事だった。

なんでそんな事をしようと思ったか分からんが、その勝負で常峰に勝てるとは思わない。


しかしそんな過去があったとはなぁ…。


「他にも、常峰君の行動とかは中々に面白いのよ。それは安藤君も分かるんじゃないかしら」


「まぁ、分かるな」


「だから常峰君が何かする時は、少し気になってしまうのよね…それで安藤君、常峰君は何をする気なのかしら?」


俺をペアに誘ったのは、それが理由か。

常峰と連絡を取れるのは基本的に俺だけだもんな。そりゃ、俺に聞くのが一番早いわ。


市羽は色々と知っているから話しては良いと思うが、全部を話していいものか…。と悩んでいると、訓練場にリピアさんが顔を出し、俺の元へイヤリングを持ってきた。


本人に任すか…。


「安藤様、頼まれていたモノをお持ちいたしました」


「市羽に渡してください。俺は、もう少し身体を動かしてくるんで」


市羽の事は常峰に任せて俺は剣を片手に、岸達の所へ混ざりに行く事にした。


---------


それから訓練が終わるまで俺のイヤリングが返ってくる事はなく…戻ってきた時には、王との謁見の時間になり、イヤリングはモクナさんに回収されハルベリア王の元へ。


クラスメイト達は、用意された椅子に座りハルベリア王を待っていた。


「皆、待たせた」


俺達が入ってきた扉とは別の扉から現れたハルベリア王は、その言葉と共に椅子に座り、同じく入ってきた娘のリーファが隣に座る。


「早々に共有するべき情報であったにも関わらず、遅くなってしまった事をまずは謝罪したい。

此度、この場を設けたのは…君達に魔王の事について少し教えておこうと思ってだ」


そう言うと、ハルベリア王が入ってきた扉と同じ扉からゼス騎士団長がデカイ袋を担いで入ってきた。

その重たそうな袋から出てきたのは、六つの水晶玉。ゼス騎士団長は、水晶玉を並べると俺達が入ってきた扉の前に立つ。


今居る部屋には、俺達とハルベリア王にリーファとゼス騎士団長、そしてモクナさんだけだ。あまり漏らせない情報なのか…そんな空気に俺達も少し緊張している。


「ここで見た事は、口外しない様に願う。何ぶん我が国には敵が多く、小さな事でも気をつけておきたいのでな。


モクナ、彼らに資料を」


「かしこまりました」


モクナさんから配られた資料に目を通す。

内容は、魔王の名前と容姿の詳細、予想としてのスキルなどが書かれている。

俺は常峰との会話を思い出して、メニアル・グラディアロードという魔王の資料を注意深く読むことにした。


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メニアル・グラディアロード


軍で動くことは少なく、個で動く事が多い魔王。

個体での戦闘能力の高さ、又その攻撃手段が不可解な部分から討伐が困難と予想される。


予想されるスキル

・空間把握系のスキル

・高速攻撃系のスキル

・剣技スキル


その他にも機動力が高く、戦闘の際は行動を制御する事から始めるのが効果的と予想。

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情報が少なくねぇかこれ…。


読んで分かったことは、まぁ強いんだろうな。って事ぐらいしか伝わってこねぇ。


「情報不足なのは申し訳ない。

魔王と対峙し、帰還する者の方が少なく…我々としても頭を抱えている。


次に、これを見て欲しい。魔王の姿を保存したものだ」


ハルベリア王の言葉に顔を上げると、リーファが並んでいる水晶玉の一つに触れた。

同時に水晶玉は光り、空中に映像が映し出され始める。


まるでプロジェクターだな。

なんて考えもすぐに止められた…。映し出された魔王の姿と、その映像で起こる一瞬の出来事に。

女型の魔王、メニアル・グラディアロード。何をしたかも理解できずに、一瞬で挑んでいった奴等は負けていた。


リーファは、俺達が言葉を失って映像を食い入る様に見ている事を確認して、映像が終わると次の水晶玉、また次と魔王の姿を映していく。


「以上だ。これが…魔王だ」


五つ見終わっても言葉が出ない。

おかしいだろ…?あれと戦えって、何をどうしたら勝てるんだよ。


それもだけどよ、マジで常峰はメニアル・グラディアロードと手を組めたのか?


「君達に頼みたいのは彼らの討伐だ。

どうか、我々に協力してほしい」


大体の奴等が考えているだろう、無理だ。と…俺も思う。


「そしてもう一つ…君達ならばコレが分かるかと思うのだが」


俺達の困惑をよそにハルベリア王は言葉を続け、リーファが六つ目の水晶玉に触れる。

映し出された映像を見て、俺達は別の意味で困惑した。


遠くに見える森の奥、そこに浮かぶ城。俺の言葉じゃ表現し辛いぐらいにデカく豪華で…圧巻な城。そして何より…城に下がる巨大な垂れ幕に描かれているのは、俺達の学校の校章。


「先日、突然現れた城だ。一夜で建てられた城なのだが…君達ならば分かると言われてな。心当たりはあるかね?」


あるも何も…。


「あの…ハルベリア王、このお城がある場所は何処か教えてもらえますか?」


ぽかんとした顔をしていた東郷先生が聞いた。


「望遠用の魔道具と併用している故、本来より遠くに位置していると思って欲しい。

この映像は、ログストア国の国境警備隊から送られた映像だ。場所はココより南に山を二つ越えた辺り。

映像を見ての通り、この先よりは森と山が多く…手付かずの地となっている。


国境警備隊からの報告によれば、おそらくは国境より更に奥、魔王メニアル・グラディアロードの領地付近と予想している。

それで…君達はこの城に覚えがあるかね?少しでも情報が欲しい所なのだが…」


東郷先生も、どう答えるべきが悩んでいる様子だ。

皆も垂れ幕に刻まれているのが学校の校章だとは分かっているが、その城自体に見覚えはない。


言葉を悩む中、一人が言った。


「私達の城よ」


その声の主、市羽へと視線が集まった。


「それは…どういう事かな?」


驚いたようなハルベリア王の質問に、市羽は声色を変えず、当然のように返す。


「どういう事も無いわ。私達の寝坊助な王様が、私達の為に作った私達の城。それ以外に意味はないわ」


「一夜で作ったと」


「さぁ?でも、私達の元の世界には'一夜城'なんて言葉が実在するわ。私達にとっては、別におかしいことでもないわよ?」


「……。そのようだな。本人から確認が取れた…これは君達の城らしい」


常峰とも念話はしていたのだろう。

ハルベリア王は頭を抱え、疲れた様にイヤリングをモクナさんへ渡してため息をついた。


俺達も苦笑いを浮かべる者や、岸の様に爆笑している者、唖然と言葉も出せない者と様々だが…先程見た魔王の事よりも印象が強く、緊張していた空気はない。


疲れた様子のハルベリア王により、これでお開きとなった。もちろんイヤリングもモクナさんから返してもらったが…ふと俺は思い出す。

ハルベリア王のあの反応だと常峰は魔王と手を組んだことをまだ言っていない。いつ言う予定なのか…。

クラスメイト組は人数が多いので、視点を定めるのが大変です。

第三者視点でもいいんですが…あんまり描写がくどくならない様にと考えると、自分的には心理描写を入れやすい個人視点が楽なんです。

でも、あまりコロコロと視点を変えるのも…と悩みますね。今後も、色々と考えつつ頑張ります。


いつも読んでいたがきありがとうございます!

ブクマも、本当ありがとうございます。数字や言葉になると、より一層実感が湧いて嬉しいです。


ご飯、ちょっとだけ豪華になりました。

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