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眠れる王  作者: 慧瑠
敵と味方とダンジョンと

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30/236

安藤君も忙しい にっ

会話が多くなりがりですね…。

目覚まし…なんてものはなく、自然と目が覚める。

時計を確認すれば…まだ五時だ。


「習慣づいてきたな」


元々早起きの体質なのだが…こっちに来てからは常峰を起こす為により早起きになった。

起こす必要の無い今でも、自然とこの時間に一回起きてしまう。


二度寝を基本的にしない俺は、そのまま起きて軽く身体を伸ばしていく。そして一息ついた時…頭の中に昨日のモクナさんの笑みがふわっと浮かんで、身体が熱くなるのを感じる。


《常峰くーん》


何故か焦りが生まれ、常峰に念話を飛ばしてみたけど…まぁ、あいつが起きているわけがない。


落ち着かねぇ。


なんか考えて気を紛らわせようとしても浮かぶのはモクナさん。これはあれだ…俺はギャップ萌えの沼に半身浸かったかも知れない。

気持ちを鎮めろ俺。いいか?今は、まだその時じゃない。


気分を紛らわせる為に腕立てから腹筋、尚も鎮まらない心に対抗して倒立腕立てまでしていると、部屋の扉からノック音が聞こえた。


「安藤様、起きてらっしゃいますか?」


「ふぉ、はい」


俺の心を乱す御本人の声が聞こえて、俺の心臓は運動していた時よりうるさくなる。そのせいで変な言葉で返事をしてしまった。


「失礼いたします。常峰様より頼まれていたハルベリア王との謁見の事なので…すが……。先に、お風呂にいたしますか?」


返事を聞いて部屋に入ってきたモクナさんは、下げた頭を上げて言葉を一瞬失い、俺に風呂を提案してくる。


当然だろう。扉を開ければ、上半身裸の男が倒立腕立てをして汗を流しているんだからな。そりゃそうだ。

知らない奴が見れば困惑するだろうし、まだ親しくない相手に見られて…恥ずかしいっす。


「いや、報告を先にお願いします。これは日課なので気にしないで続けて構わないっすよ」


羞恥心を振り切った俺は、何故かポーカーフェイスを気取り倒立腕立てを続けてしまった。


自分でも自分の行動を理解していない。


「そうですか?では、常峰様から頼まれていた事ですが…ハルベリア王の本日のご予定を確認した所、夕刻…安藤様達が訓練を終えた直後になってしまいましたがよろしかったでしょうか?」


「うっす。他の奴等にも伝えておきます」


「ありがとうございます。一応、メイドを通じ他の方々にもご連絡はしておきます。

謁見のご用意ができ次第、またお迎えにあがりますので、できれば前後のお時間は開けていただくよう願います」


「あざーっす!」


自分の行動を理解はしてないが、自分でも変なテンションなのは十二分に理解してる。あざーっす!なんて…何時以来だよ使ったの。


「では、私はこれで失礼いたします。何か御用でしたらお呼びください」


「いつもご苦労さまっす!」


「ふふっ…安藤様は自己鍛錬も欠かさないのですね。素敵な方だとは思いますが…あまりご無理をなさらぬように」


パタリと扉が閉まる。


聞いたかおい。素敵な方っておい!


止まるどころか、叫んで走り出したい気持ちをエネルギーに変えて、倒立腕立ての速度が上がる。二時間後、部屋に来た岸に笑われるまで俺の筋トレはノンストップで行われた。


------------

---------


「いっひっひっひ、それで筋トレに没頭してたと」


「捗ったのは確かだな」


岸が来たことで、変なテンションから一転して落ち着きを取り戻した俺は、汗を軽くタオルで拭き取り服を着た。

そして、一息ついたところで岸に俺の心境を話したんだが…笑われてしまった。


「しかしそうかぁ…マッスルナイトに春到来かぁ?」


「春が来る前に、夏の様な暑さを感じてるけどな」


「筋トレしてたからじゃね?どっちにしろ俺には分かんねぇや。ハートフルラブコメは専門外だ。

冬が到来しない事をお祈りしておくとして…スリーピングキングから連絡あったんだろ?」


どうやら岸が俺の部屋を訪ねてきた理由は、暇だったからとかじゃないらしい。


「メイドが謁見があると言ってきた。

事件の経過報告なら、ゼス騎士団長がいつもしてるからなぁ。スリーピングキングが何かやろうとしてるんじゃね?と予想して来た」


「常峰曰く、実践訓練をする前に事態が動く可能性があるんだと。今日は俺も常峰からの頼み事でちょっと動き回らねぇといけねぇ」


「なーんか穏やかじゃねぇな。なんかあったのか?」


少し悩んだが、俺は岸に昨日あったことを話す。

その話しを聞いていた岸は、頷きながら話を聞いて少し考え始めた。ブツブツと呟き、何か分かったように顔を上げた。


「スリーピングキングはギナビア国の尻尾切りを警戒してんのか」


「どうしてそうなるんだよ」


岸が導き出した結論を聞いて俺も考えてみるが…そうなる理由が分からん。


「分かりゃ簡単な話だぜ?いいかマッスルナイト、スリーピングキングが転移された理由はなんだ」


常峰が転移された理由?リピアさんが言うには、俺達の動揺を誘うためだよな。それは分かるが…それが事態が動きそうな理由に繋がらなくねぇか?


俺も俺でもう少し考えを広げてみるが…やはり答えはでてこない。そんな俺を見かねた岸は、指を立てて得意げな顔で話し始めた。


「この世界に喚ばれて、まだ環境慣れしていない俺達を取り込む為に相手が使ってきた手は、俺達を動揺させる事だった。

だけどそれは失敗に終わってんのは分かるよな?」


「まぁ、常峰は生きていたし連絡も取れたからな」


「そう。俺達はスリーピングキングと連絡が取れる。だが、相手はそれを知らなかった。

リピアさんがなんて報告してるかわかんねぇけど、連絡手段は無いと相手は思ってたんだ。


そしてリピアさんは、俺達に協力を表立ってしている。それを本当なら相手は快く思わないと俺は思うけど、俺達を懐柔させる為の一環だとすりゃ許されるわけよ。んで、他にもリピアさんみたいなのが居た場合、リピアさんの行動は筒抜けなわけ…そんで昨日、チーアちゃんを通して連絡手段がある事がバレた。

するとどうなる…そう、リピアさんは虚偽報告をした裏切り者か、もしくは無能だ」


「待て、リピアさんが気付かなかっただけで、その後に見つかったとは考えたりはしないもんか?」


「スリーピングキングが分かるように連絡を取ってきたのはあの執事だけだ。俺達は、その後には連絡手段を確保していたことになる。

だけど、リピアさんはそれを見つけきれず、ただ俺達に手を貸しただけ。まぁ、言ったように命令を果たせなかった。


それだけなら良かったんだけどなぁ…リピアさんは俺達と友好を深めているのは事実で、それも相手は知っているわけだ。

逆に言えば、リピアさんが裏切り者だと知っているのはスリーピングキングの組だけで、他の連中は知らない。知らないまま仲良くなった」


岸は、珍しく真剣な表情をしている。そしてこの辺から俺も、段々と答えが見えてきた。


常峰を転移させた理由は、誰かが居なくなるっていう動揺を誘うため。その動揺を誘う為に、次はリピアさんを使おうとしているって事か。


「マッスルナイトも分かったみたいだな。

多分、次はリピアさんを使ってくるだろう。命令には失敗したが…俺達との関係は良好。それに半数以上が密偵だとは知らない。


それを利用するとなると…リピアさんをスリーピングキングを転移させた犯人に仕立て上げ、自分達に協力していた人物は実は敵だった。という不安を誘導…そこから生まれた動揺と不安に漬け込んで、やさしーく手を差し出す。そんなところだろうぜ」


「でも、それは俺達が弁解をすればいいんじゃねぇか?」


「どうやって弁解する気だ?密偵だけど協力者なんですってか?

そんな事をすれば…なんで教えなかった!って思う奴が出てきて拗れる。それとも、別の誰かを犯人に仕立て上げるか?

それより先に、チーアちゃんから連絡手段がある事が漏れるだろうよ」


そうか…事実を俺達しか知らないって事自体が問題なのか。


「あの幼女が黙っている可能性は」


「スリーピングキングが何も考えずに教えたとは思わないけどよぉ…見た感じチーアちゃんって四、五歳ぐらいだろ?仮に子供に'秘密だよ!'って言っても、ウズウズしてどうしても話したくなっちゃう年頃だと思うがねぇ」


「なるほど。幼女から漏れるまでが制限時間」


「そこでどれだけ時間稼ぎできるかが重要なのは間違いないだろうぜ。ただ、リピアさんと連絡を取りたいってスリーピングキングは言ってんだろ?

多分、スリーピングキングの中では実刑判決がくだるまでが制限時間だろうな」


常峰は一体どこまで考えていて、どこまでが予想通りに物事が進んでいるだろうか。幼女が知っているかもしれないと話したあの瞬間でここまで考えたのか?


「しかし岸もよく分かったな」


「いや、あくまで俺の予想にしかすぎねぇさ。普通に飛躍しすぎた考えなのは確かだぜ?それに、もしかしたらだけどな…スリーピングキングは元々この流れにする予定だったのかもしれねぇ」


「リピアさんを利用する気だったと?」


「そういうこった。マッスルナイトもリピアさんから聞いたとは思うが、スリーピングキングがリピアさんに協力する変わりに提示した条件は、リピアさんに掛けられてる隷属魔法をどうにかする事らしいじゃねぇか。

契約者に死亡したと誤認させ破棄させる…悪い手じゃねぇとは思うぜ。まぁ、生存の有無まで分かるタイプだったら意味がないけどな」


説明を聞けば、岸の考えも分からんもんじゃないが…常峰がそこまで曖昧な手段を取るだろうか。


なんというか…贔屓目に見てる事は自覚してるが、あまりにも安直すぎるというか…それは常峰らしくない気がする。もっとこう…堂々とやらかす気がするんだ。

まぁ、だからと言って常峰の考えが分かるわけじゃないんだけどな。


頭を悩ませていると、時計が目に入った。時間は岸が来てから既に一時間は経っていた。


「そろそろ朝食だな」


「お、もうそんな時間か。んじゃ食堂行くか」


俺と岸は話を切り上げ、食堂へと向かうことにした。

決めたわけじゃないんだが、飯時には全員が集まるのが暗黙の了解みたいになっている。誰かが居なければ、基本的に待つスタイルだ。


だからあまり遅れると、クラスメイトから文句を言われる。


「ちょっと急ぐか」


「文句は言われたくねぇもんな」


---------

------


食堂に着き、全員が揃った事を確認してから朝食が運ばれた。その途中で常峰に一回念話を飛ばしてみたが、繋がっている気配がない。


丁度リピアさんも居るから念話のタイミングなんだが…何時まで寝てるんだあいつ。


食事中も何度か試したが…常峰が起きなければ念話は繋がらない。きっと起きたら念話が来ると信じて、訓練前に俺は別の頼み事から済ませることにした。


「えーっと…確か…」


食堂を見渡し、目的の人物を探す…必要もなく一際皿を積み上げている人物を見つけた。近くに寄ってもその人物は気付く様子もなく食事を続けている。


「武宮、ちょっといいか?」


「ふぉ?わたひ?」


あぁ…そういえば武宮は今日、麻痺の日か。


「ひょ…おょ…」


「食事続けながらで構わないから、ちょっと聞いてくれ」


俺は、麻痺している武宮(たけみや) 恵美(えみ)の隣に座った。


武宮(たけみや) 恵美(えみ)。スポーツ少女で、陸上部に所属していた事ぐらいしか知らない。特に元の世界でも関わりがある人間では無いんだが…常峰が武宮に用事があった。


「一応確認から入るが、武宮のユニークスキルは'鍛冶神(かじがみ)'だったよな」


「ふぉうはほー」


舌が回っていない言葉と一緒に頷く武宮。ここ最近、飯時は半分はこうだから気にせずに話を続ける。


「武宮は訓練を定期的に休んでるが、ユニークスキルを鍛えてるのか?」


武宮は運動神経の良さも相まってか、双剣を使って訓練に参加していた。だが、最近は二日に一度ぐらいのペースで参加するようになっている。


そう。俺が常峰から頼まれた事の一つは、戦闘訓練を休み始めたクラスメイト達の今後の方針を聞いてきて欲しい。ということだった。

別に何をしていても構わないから、できるだけ聞いておいてくれ…と。


「ふゅーん。ふょふょみゃふぇ」


皿に残っていた料理を食べ終えた武宮は、ぷるぷると震える身体で橋倉の元へと向かい、麻痺を治療して戻ってきた。


「あーあー。んんっ。いやー、麻痺中はやっぱ喋り辛いね。慣れ始めてる安藤君とか凄いと思うよ。


えーっと?それで、休む理由だっけ?そうだね!最近はちょっとユニークスキルを使ってみようかなって思ってだね。でも、色々試そうかなって思っても、私のユニークスキルって結構設備が必要みたいで…設備の目処が付くまでは訓練集中でいいかな?


一応、本とか借りて鍛冶に関して読んでみたんだけど…どうも読書は性に合わなくて、体を動かしたくて集中できないんだよね」


照れたように頭を掻く武宮を横目に、俺は聞いた話をメモしていく。多分、他の奴等から聞いてる内に忘れるからな。


俺の様子を、隣から武宮が覗いてくる。そして何かを察したように声を漏らした。


「あぁ…常峰君が気にしてるのかー」


「できるだけ、望む形の環境を提供したいらしくてな。なんか、あいつもあいつで色々やってるみたいなんだ」


「相変わらず皆に気を遣うね彼は。お節介だなーって感じる時はあったけど、こんなになっても変わらない常峰君には感謝するよ。

でも、安藤君も大変だね。常峰君、安藤君を信頼してるから結構無茶頼んでるんじゃない?手伝ってあげようか?」


「そうだな。結構無茶苦茶な事を言ってきたりもするが、なんだかんだで俺はあいつと居るのが楽しいから別に苦じゃない。

だけど手伝ってくれるってなら頼む。名前書いとくから、俺が聞いたのと似たような事聞いておいてくれ」


俺はメモ帳に話を聞く予定だった相手の名前を書いて武宮に渡した。まさか手伝い人ができるとは思ってなかったが…これなら思ったより早く済みそうだな。


だったら、先に全員に伝えておくことを終わらせるか。と思ったが、これは俺が言うよりは新道辺りに頼んだほうがいいか。


「へぇ、私以外にも結構休んでたりする人居たんだね」


「やれる事も増えてきて、色々と考え始めたんだろ」


「あれもできそう、これもできそうで迷うけどね!魔王討伐とかも実感湧かないし…新道君や市羽さん、東郷先生もだしもちろん常峰君もなんだけど、色々と率先してくれて頑張ってくれてるから落ち着いてはいられるけどさ。

色々漠然としてて困っちゃうよ」


「焦らなくていいんじゃねのか。元の世界でも俺はそうだったし、こっちでも結局はそんなもんだった。

異世界がどうか分からねぇけど、友達とか一緒に来てんだしさ。別に一人で決めなくてもいいんじゃねぇか?俺が言うのもなんだけどよ…本当に困ったら常峰を頼れよ。

なんか自分の都合を手伝わせてくるだろうけど、力にはなってくれるはずだから」


変な事でも言ってしまったのか、武宮は黙った。不思議に思い様子を見ると、何やら目を丸くして俺を見ている。


なんだ?本当におかしな事でも言ったか俺。


「安藤君って、本当に常峰君の事を信頼してるよね」


「まぁ…してるな。アイツ、自分の事とか他人を使って楽しようとするんだけどな。こっちが本当に困ってたりすると、一緒になって悩んでくれるし、協力だってしてくれるんだよ。

面倒くさがりで…いっつも寝ることを優先しがちな奴だけど、情に弱いっていうかなんというか。


俺にとっては良い奴なんだ。アイツは、要望に応えてくれた人間を無下にはしない。必ず、応え返してくれる。

自分が楽する為に、誰かの為に動くような奴なんだよ」


「情けは人の為ならずってやつ?」


「本人に言わせりゃ、人の振り見て我が糧とせよ。ってやつらしい。情けを掛けるぐらいなら、貸しを作って返してもらうんだと」


常峰の座右の銘のようなものだ。昔、常峰と仲良くなった時に教えて貰った言葉。


俺には難しく合わない言葉だったが、常峰は確かに他人をよく見る奴だった。無茶苦茶な事を言っていても、けして無理な事は言ってこない。

やったらハイお終い。じゃなく、必ず返してくれる。それが分かっているからこそ、俺は手伝ってやるかと思えるし、何かある時は遠慮なく頼めるんだよな。


「そっか。なら、私も頼む時は覚悟しとかないといけないね」


「別に優しいかと言われりゃそうでもないからな。覚悟は必要かもしれねぇ」


「うんうん。そうしとく。私も一緒に居てくれる人いるし…一緒にボチボチ頑張ってみるよ。

それでも難しかったりした時は、その人も一緒に頼むことにする。


ありがとね。ぼんやりしてたビジョンが、少し明確になった気がする!お礼として、お手伝い頑張るよー」


「大したことはしてねぇんだが…わりぃな。助かる」


なんかスッキリした様子の武宮を見送り、俺は新道へと歩いていく。その時、頭に声が響いた。


《すまん…寝てた》


《常峰、惚れた》


《…》


念話が切れた。


おかしいな。とりあえず連絡が取れたら言おうと、昨日から考えていた事を言っただけなんだが…。


何度か呼びかけるが…念話は繋がらない。二度寝でもしたかと思い、足を動かそうとすると…また頭に声が響く。


《すまん、寝てた》


《二度寝から早い起床だな》


《……。さっきのは夢じゃなかったのか。安藤いいか良く聞けよ。

親友として惚れてるのは俺も同じだが、俺はお前の彼女にはなれねぇ。俺は彼女は女がいい》


《何いってんだお前》


《あ?》


なんか寝ぼけてる常峰に、モクナさんの事を説明する。そして常峰からも勘違いをしていた事を説明された。

どうやら常峰は、俺に告白されたと勘違いしたらしいな。


《なんで俺がお前に告白するんだよ》


《寝起きでかまされたの俺なんだけどな。んで、なんだっけ?モクナさんにギャップ萌えしてロマンチック止まらないと》


《ヤバイね。視線が引っ張られるってあるんだなって》


《いいな、そういうの。ついに安藤にもそんな相手が来るとは…応援する。なんか手伝える事あったら言ってくれ》


《そん時は頼む》


伝えたい事を伝え終わった俺は、リピアさんを探すが…片付けをしていて少し忙しそうだ。その事を話すと、常峰もまだ時間はあるだろうし後ででも大丈夫だとのこと。

リピアさんの手が空くまでと言うことで、さっきの武宮との会話を話した。聞いた常峰は、それはいつか礼をしないといけないな。と言っている。


あ、もう一つ俺は常峰に言いたいことがあったのを忘れていた。


《常峰、江口に彼女が居ることが発覚した》


《ん?それこそ武宮の事じゃん》


《え?》


《いや…だから、江口の彼女は武宮だぞ。ん?知ってて話を振ったんじゃないのか?》


《マジか》


《マジだ。俺が江口と一緒のクラスになった時はもうそうだったみたいだぞ?何となく、見てて分かるもんだろ。

ほら、組分けする時も聞き方は江口らしくなかったが、非戦闘スキルの事を聞いただろ?多分あれは自分の事じゃなくて武宮の事を考えてだろう》


全然気づかんかったぞ。

江口と武宮が…結構タイプ的には反対なイメージなんだが、そういう事もあるんだな。


食堂の扉が開く音がして目を向けると、クラスメイト達がゾロゾロと出ていく。時計に目を移せば、訓練の時間が近付いていた。


《常峰、そろそろ訓練だ》


《そうか。あー、リピアさんとは話せそうか?》


《今なら大丈夫そうだな。ちょっと代わるわ》


食堂の扉の前で皆が出るのを待っているリピアさんの元へと行くと、俺の雰囲気で言いたいことが分かったのか、少しだけ扉から離れる。


「私に何か御用でしたか?」


リピアさんが、比較的小さな声で聞いてくる。


「俺じゃなくて常峰が」


「分かりました。安藤様は訓練場へお向かいください。

私も後で向かいますので、その時にお返しします」


「分かったっす」


俺はリピアさんにイヤリングを渡し、俺も訓練場へと急ぎ向かった。


できれば訓練が始まる前に、新道に言うことをまとめたメモを渡しておきたい。

描写も、もう少し頑張ります…。ペースも、もうちょっと早く進めた方がいいですかねぇ…。


ブクマありがとうございます!

ブクマや感想、評価などの数字が増えると、少しだけご飯を豪華にしたくなる衝動に駆られます。

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