安藤君も忙しい
初めに、数話前ぐらいから念話の会話が 《》←これじゃなくて 『』←になっていたので修正しました。
全然気付かなかった…。今後、気をつけていきます。
風呂から上がり、自室に戻る途中で並木を見かけた。
そういえば常峰から並木に伝えることがあったな。
「並木」
「んー?安藤君ではないかー。私に何か用かな?」
「何か…機嫌がいいな」
「お風呂上がりだからねー」
言われてみれば、並木の顔は少し紅く、髪も湿っている気がする。それにどこか声もふわふわとしているような…。
本当にこんな状態の相手に話をしていいのか悩む。
「それでなにかな安藤君や」
「あー…常峰からなんだが」
「ほぅ。王様が私に何か頼み事を?」
ぼわっとした雰囲気から一転して、面白そうに笑みを浮かべた並木。
正直、並木とはあんまり話したことも無いから、この雰囲気の変わりようについていけない。まぁ…多分だが話を続けても大丈夫か。
「そうだ。常峰が並木には東郷先生のスキルを見て欲しいんだとさ」
「…?、東郷先生のスキルを?なんでまた。
それに、王様のスキルで見れないんだけど…」
「さぁ?並木が東郷先生のスキルを見て、変化が無ければそれでいいとしか。もし何か気付いたのであれば、教えて欲しいってよ。
スキル確認の時は、面倒だけどフューナ・イカツァにはバレない様に東郷先生から許可を貰ってくれって」
「変化の判断は私がしていいの?」
「そこは分からねぇ。なんにも言わなかったって事は、並木の判断でいいんじゃないか?」
並木は、うーん…と悩みながらも納得はしてくれた。あ、後もう一つ伝える事があった。
「それと、クラスメイト以外のスキルも、できるだけ今は見ないようにしておけって常峰から」
「理由は言ってたの?」
もちろん理由も聞いている。
ただ、他の誰かが聞いているかも知れないから注意してと…。
少し離れていた並木に近付き、耳元に顔を寄せる。
一瞬、並木は引こうとしたが、俺の顔を見て逃げるのをやめた。
確かに勘違いされそうだが…誤解されたなら解けばいいから我慢してくれ。
「リピアさんの他に、ギナビアからの密偵が数人居るらしい。
相手とスキル把握が出来ていない今、もしかしたら並木のスキルでも感づく人間が紛れているかもしれない。
それは並木が危なくなる。こっちでも情報収集をして、ある程度確認が取れるか…完全に自由行動が許されるまでは誰かのスキルを見る事は止めておけ…だそうだ」
「へぇ…まさか、王様が私の心配をするとは思わなかったなぁ。それとも、私だけが情報を持つのが嫌なのかな?」
へらっと笑いなが言う並木の言葉に、並木から離れ俺は驚いた。並木は驚いた俺の顔を見て、不思議そうに首を傾げる。
常峰から言われていた。
並木に伝えた時、どうせ並木は疑い深いから変に考えるだろう。と…そして、その時に追加で言う言葉も。
「並木って、面倒なぐらいに人の言葉を素直に受け取らないよな」
「うっ…それは、安藤君の言葉じゃないね…」
並木は、すぐに常峰の言葉だと察したようで、苦虫を潰した様な顔をする。
「よく分かったな」
「まぁ…ね。多分、私が言った嫌味の返しだよ、それ。
何か言い返したい気持ちなんだけど浮かばない。仕方ないなぁ、ここは大人しく聞いておくよー。
分かった時には、安藤君に伝えればいいんだよね?」
「それでいい」
「はいさ、それじゃおやすみ。安藤君もガンバー」
軽く手を振りながら自室へと向かう並木を見送り、俺も改めて自室へ足を進めた。
明日やることを頭の中でまとめていると、もう自室の前に辿り着いている。そして、自室の前には俺の専属メイドと一緒に別のメイドが一人立っていた。
「安藤様、お待ちしておりました」
「待ってた?」
俺の専属メイドの'モクナ・レーニュ'さんは、頭を下げて言う。
モクナさんが挨拶以外で話しかけてくるのは珍しい。俺とモクナさんは、基本的に挨拶と頼んだ事ぐらいでしか会話はない。
正確に言えば、俺が何を話していいか分からない。声をかければ返ってくるし、部屋の掃除とかは確かにしっかりしてくれているが…逆に言えば関わりなんてそれぐらいで、リピアさんとの方がまだ仲がいいと言っていい。
だからモクナさんから待っていたと言われると…変に警戒をする。
「少しお時間を頂けますか?こちらのウィニが安藤様に御用事があるようで」
「'ウィニ・チャーチル'と申します。安藤様、大変申し訳無いのですが…お時間を頂けませんか?」
モクナさんの隣で頭を下げて自己紹介をするメイドは、どこかで見たことがある気がした。
いや、もう半月はここに居るんだから見かける事はあったんだろうけど…なんというか、もう少し印象的な現場で見たような。
「別に構わんすけど」
「ありがとうございます!」
とりあえず、見覚えがある事は置いておいて話を聞くことにした。
ウィニはモクナさんと違って、表情が声と顔に出る人っぽいな。さっきは申し訳なさそうな顔をしていたのに、今は明るい表情をしている。
ちなみに…モクナさんは何時も通り表情は無いな。まさに無表情。
「では安藤様、参りましょう」
「え?どこに」
一人パタパタと行ってしまったウィニから、部屋の前に立っているモクナさんへと視線を移す。
同じ様にウィニを見ていたモクナさんは俺の視線に気づいたのか、俺の方に向き直り言った。
「ウィニはチーア様の専属メイドでございます。
おそらくチーア様のお部屋へ向かわれたのかと」
説明を聞いて思い出した。あのメイド、まだ常峰が居る時に訓練中に乱入してきた幼女と一緒に居たメイドだ。
もう一度ウィニの方を向けば、その背中はさっきより遠くなってしまっている。
当然俺はチーアと言う幼女の部屋は知らない。
「ご案内致します」
「すんません。頼みます」
ウィニが行ってしまった方向へ歩き始めるモクナさんの後ろをついていきながら、俺の頭の中は困惑でいっぱいだ。
何故俺が呼ばれるのか…まったく分かんねぇ。
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モクナさんについていく事十数分。少し豪華な扉の前に着いた。
「こちらがチーア様のお部屋となっております」
足を止めたモクナさんに続いて、俺も扉の前で足を止める。軽く周囲を見渡すが…既にウィニの姿はない。
「おそらくウィニは中に居るかと。少々お待ち下さい」
俺の行動で考えを察したモクナさんは、扉を軽くノックをした。
すると、扉はちょっとだけ開いて幼女が顔を出す。後ろには少し冷や汗を流し、緊張した顔のウィニの姿が見える。
「……。もくな、やつぐは?」
「常峰様ですか?」
幼女の言葉に首を傾げ、モクナさんは俺を見る。それに釣られるように幼女の視線も俺へ向く。そして俺の視線の先には、頭をペコペコと下げるウィニ。
この辺りで俺も察した。この幼女は、常峰に懐いていた…そして、常峰が居なくなって半月、なんか我儘でも言って俺が呼ばれたんだろう。
「あー、うん常峰はちょっと今は居ない」
「やつぐいないの?」
「チ、チーア様えっと…安藤様は常峰様のご友人なので何時頃戻られるか分かるかと…」
涙目になる幼女に、慌ててウィニがフォローを入れる。
そんな事を言われても俺は分からねぇぞ。そう口にしようとしたが、幼女はウィニの言葉を聞いてパァァっと顔が明るくなり、俺に期待の眼差しを向けた。
「あんどーわかるの!」
分からねぇ。率直に伝えようとした。だけど、幼女の後ろで首を思いっきり振っているウィニを見て言葉を飲み込む。
モクナさんも何か言おうとしたが、俺の答えの様子を伺っている様に言葉を発さない。
ウィニにとっても、モクナさんにとっても幼女に泣かれたくないのか?しかし、だからといってどうすりゃいいんだ。
俺は子供のあやし方なんて知らねぇぞ。
「じゃあ、あんどーがやつぐとおはなしできるひとだ!」
俺は息が止まったような感覚がした。
何を言ってんだこの幼女。まさか、念話に気付いているのか?
「チーア様、ですから常峰様は今は別の場所にですね」
「んー?おはなしできないの?」
ウィニの言葉に幼女は首を傾げる。
俺はその様子を見ながら、必死に頭を回す。
これはどういう状況だ。ウィニの様子から察するに…ウィニは念話に気付いていないのか?だったら、この幼女に入れ知恵をしたのは誰だ。
それとも幼女が何となく口にした言葉なのか?仲が良かったら念話ができるとか思っているとか…。
考え続けてみるが最善の回答が浮かばない俺は、最終手段を使うことにする。
《常峰、起きてるか》
《……寝てる》
向こうが拒否って無くて良かった。
脳内に響く声は、確かに眠そうだったが常峰と連絡が取れた。
起こしてしまったのは悪いと思っちゃいるが、俺は無視をして簡潔に今の状況を常峰へ伝える。
《やられたな…》
状況説明を聞いた常峰の第一声はそれだった。
《やられたって?》
《チーアを使われた。多分、チーアは誰からか安藤達の中で俺と連絡が取れると確信している。
誰から言われたのか…何を言われたのかは分からないが、誰かがチーアを使って連絡手段の有無を確認してきた》
《無視して断ればいいか?》
《断れる状況ならいちいち俺に連絡はしてこないだろう?何があった。もう少し詳しく教えてくれ》
俺は、幼女が泣き出しそうになると、モクナさんとウィニが慌てるような様子を見せる事を伝えて、断りづらくなった事を伝える。
すると、常峰の少し考えた様な唸り声が脳内に響く。
《ウィニとモクナって誰だ》
《ウィニは前に幼女と来てお前を逃さない様にしてたメイドだ。モクナさんは俺の専属メイド》
《あの二人か…二人ともチーアを泣かせないようにしてるのか?》
《あぁ。分からねぇから分からねぇとバッサリ切ろうとすると、二人とも慌てる》
《なるほど。普通なら王の娘だからくる行動かと考えるが…少しカマをかけてみるか。
安藤、小声じゃなくていいからウィニさんに聞いて欲しい事がある。その様子を俺に伝えてくれ》
常峰は何か予想が付いているようだが、俺には分かんねぇ。
王の娘と言われて、確かにそれなら泣いたりされるのは嫌かもな。と納得しそうになったんだが…常峰は別の理由があるような言い方だ。
考えても分からない俺は、脳内に響く常峰の言葉をそのままウィニに聞くことにする。
「ウィニさん、チーアが泣くと何か困ることがあるんですか?」
「え?えっと…」
「王はチーア様を溺愛しております。私達事ではありますが、チーア様のお言葉一つで私達の処罰が決まってしまいますので…」
「ちーあがなくと、うぃにこまるの?」
「チーア様には笑っていて欲しいというのがウィニの願いです。
泣かれてしまうと…そうですね、ウィニは困ります」
返答に困った様子のウィニの代わりに、何故かモクナさんが答えた。幼女は幼女でウィニに聞き、ウィニはそれに返事をしている。
俺は、それをそのまま常峰に話した。
《ウィニさんは、答えを渋ったんだな?》
《まぁ…本人を前にして言い辛い事だし仕方ねぇんじゃねぇかな》
《でもモクナさんは、迷わずに答えたんだろ?》
《それはそうだが…何か分かったのか?》
《まだ仮説の域を出ないけど、何となくそうじゃないかってのは分かった。多分、チーアに泣かれると困るのはメイド達だけじゃない。
安藤、モクナさんとかも一緒でいいから何処かの部屋に入れるか?チーアと念話をする》
もう本当に意味が分からんくなってきた。
俺が困惑している事を常峰も分かっているんだろう。後で、詳しく説明はすると言われ、とりあえずチーアを優先してほしいと言われた。
「あー…チーア、ちゃん?部屋に入ってもいいか?」
「ちーあのおへやに?」
「常峰の秘密を一つ教えてあげようと思うんだけど…内緒の話だからさ」
「やつぐの!いいよ!」
幼女は扉を大きく開けて、俺を部屋の中へと招いた。
なんか適当に秘密だの言っておけば食いつく。と常峰が言っていたが…まさかこんな簡単に食いつくとは…。
扉の奥に広がるファンシーなキラキラした部屋に圧倒されながらも、一歩足を進めた。後ろからモクナさんも続いて入ってくる。
俺はそれを確認しつつ、耳からイヤリングを外して幼女に渡した。
「?」
「これを握って、常峰の事を考えてみな」
首を傾げる幼女に言うと、幼女はぎゅっと力強く握りしめて唸り始める。そこから数秒後、幼女の表情は明るくなり うんうん! と声を出しながら頷き始めた。
「安藤様…あれは」
幼女の様子を見て、モクナさんが俺に聞いてくる。モクナさんの隣では、ウィニが幼女と同じ様に頷いている。
さて…幼女の事は常峰に任せて、俺は俺で常峰から聞いていて欲しい事を聞くことにした。
「その前に一つ聞きたいんすけど…あの幼女、えっとチーアちゃんは鍵っすか?」
俺が聞いた瞬間、ウィニが幼女と俺の間に立って、モクナさんがウィニを背に幼女からは見えないように俺の喉元にナイフを突き付けた。
こうなるなんて説明は無かったぞ。一応気をつけろよ?と常峰は言ってたけどよ…まさかナイフを突き付けられるなんて考えもしなかった。
「問いです。どこでそれを知りましたか?貴方はどこの手の者ですか?答えなければ、このまま喉を突きます」
とりあえず一歩下がろうとすると、先にモクナさんに足を踏まれて下がれなくなる。
後で常峰に文句を言うことは確実として…今は、この状況をなんとかしないといけない。
「俺は何も知らない。どこの手の者と言われると…強いて言えば、常峰の手の者っすかね」
両手を上げ、敵対の意思は無い事をアピールしつつ俺は答えた。
ウィニの奥では幼女が楽しそうに何か独り言を呟いているというのに…。
「証明ができますか?」
「そっちに言えない事があるように、こっちにも言えない事があるんすよ。今、チーアちゃんが握ってるイヤリング…あれ、常峰と念話するための道具なんで本人に聞いてみたらどうっすか?」
「不審な動きを見せた場合、次は止めません」
モクナさんは俺の一歩後ろへと移動し、そのまま俺にも分かるように背中にナイフを突き付けた。
ウィニはウィニで俺と幼女の間をキープしたまま、幼女の様子を見ている。
生きた心地がしねぇ。ぜってー後で文句を言う。
そんな事を考えながら時間が経つのを待っていると、幼女は しー! と口に指を当てて楽しそうに笑った後、持っていたイヤリングをウィニへと差し出した。
「ないしょだけど、うぃににわたしてって」
「私にですか?」
「うぃにのあとは、もくな!」
幼女からイヤリングを受け取ったウィニは、数秒真剣な顔をした後、さっきまでのピリピリした雰囲気ではなく幼女を相手にしている時の様な空気に変わり、何やらペコペコと頭を下げ始めた。
これ、あれだよな。
電話なんだけど、なんか言葉に合わせて身体が動いちゃってるやつだよな。
その様子を見ていると、ウィニは怪訝そうな顔で同じ様に見ていたモクナへとイヤリングを差し出した。
やっと俺は解放されそうだな。
モクナさんと常峰の会話が終わるまで、俺はウィニと幼女が楽しそうに話しているのを見て待つことに。
待つこと数十分。
「安藤様、この度は無礼を働き失礼いたしました」
ナイフをどこかに収め、イヤリングを差し出すモクナさんもウィニと同じ様に雰囲気が元に戻っている。
「いえいえそれもこれも…コイツが悪いんで気にしなくていいっすよ」
《なぁ、常峰》
《悪かったって》
話し声は聞こえていないにも関わらず、常峰に念話を飛ばすと真っ先に謝ってきた。どうやら、俺がどういう状況になったかは知っているらしいなぁ。
《説明はもちろんあるんだろうな。つか、モクナさんとかに念話の事を教えてよかったのかよ》
《それは大丈夫だ。モクナさんとウィニさんは、ログストア側の人間だからな》
《本人が言ったのか?信用できんのかよ》
《ログストアの人間じゃなきゃ、チーアに泣かれて困る様な事はないからな》
《説明》
《急かすなよ…まぁ、簡潔に説明するとだな――》
壁に背中を預け、幼女の相手をしているウィニとモクナさんの様子を眺めながら話を聞いた。
なんでも、チーアというあの幼女は、他国への牽制手段の鍵だという。常峰はウィニとモクナさんに確認をしたから間違いないだろうと。
その詳細まではハッキリと分からなかったが、知っている素振りで警戒をしたモクナさんの反応で確信はしているそうだ。
その牽制手段と言うのは、おそらく他の大国は使って欲しいモノであって、ログストア国としては使いたくないモノである可能性が高いらしい。
それで?えーっと、ハルベリア王と協力関係は結んでいる事を盾にとって、俺の安全の確保をしたと…。
《知らねぇ内に、脅しがうまくなったな》
《事実だから脅しじゃないさ。ログストア国自体を信用してはいないが、ハルベリア王がそういうわけじゃない。
協力関係でいようとは思っているさ》
《んで、これからどうする気だ》
《それなんだが…少し急がねぇとヤバイかもしれない。安藤…実践訓練をする前に、事態が動く可能性がある。
それまでに、俺が頼んだ事と、クラスメイト全員に個人行動をしないこと、各組ごとで活動する準備を進めるように伝えて欲しい。明日には、多分ハルベリア王から魔王の事で話があると思うから、そん時で構わない》
ヤバイと言う割には、常峰の声は落ち着いている。何かまたしでかすのだろう…そう考えると、俺も少しワクワクしてくる。
《忙しい奴だなお前は》
《そろそろゆっくり休む暇が欲しい。そのために、働いて貰うぞ安藤》
《見返り期待してるぜ》
《最高の寝具をやろう。だから安藤、明日はまず最優先でリピアさんと接触してくれ、多分あの人が一番今危ない》
《今すぐじゃなくていいのか?》
《リピアさんの素性をモクナさん達は知らない。下手に勘ぐられるのも危ないからな…多分だがまだ時間はある。
明日、リピアさんと接触した時にイヤリングを渡してくれ。俺もできるだけ急ぐために…少し寝る》
それだけ伝え残すと、常峰との念話が切れた。
多分、念話の受信を拒否したんだろう。明日には、また連絡がくるとして…俺もとりあえずは寝るために部屋に帰るか。
「そんじゃ、俺は帰っても平気っすかね?」
「あんどーありがとう!」
「お、おう」
幼女に手を振り返して部屋と出ていく。
モクナさんも俺と一緒に部屋を出て、俺の自室へと先導して歩いている。
道中で珍しくモクナさんが呟くように言った。
「まさか…僅かな情報であそこまで言い当てられるとは思いませんでした。
固定概念の無さや想像・発想力…異界の方々は恐ろしいものですね」
「全員が常峰みたいな奴じゃないっすけどね。
皆が常峰だったら、世界はずっと寝てるんじゃねぇかな」
「いえ、常峰様だけでありません。
安藤様も物怖じせずに、対応してみせました。僅か半月という期間で順応してきているのでしょう。
訓練の状況も少しですが聞き及んでおります。異常スキルを持ち、型にはまらない考え…それだけで私は恐ろしく感じる反面、頼もしく思えます」
「過大評価っすよ」
「過小評価はしたくありませんので」
そんな話をしている内に、自室の前に着いた。
「では、私はこれで…おやすみなさいませ安藤様」
「うっす…おやすみなさい」
モクナさんと目が合った。初めて見るモクナさんの笑い顔に、なんか無性に恥ずかしくなって、頭を下げてそそくさと部屋に入る。
少しドギマギしながら布団に横になる。頭の中はモクナさんの顔が浮かんでは消え浮かんでは消え…。
「いやいやいや…確かに美人な人だけどさ。そうじゃないじゃん?なぁ、多分…」
どうしても誰かからの答えが欲しくなって常峰に念話を飛ばしてみるが…まぁ、当然のように返事はない。
少しうるさい心臓の音を耳に…俺は必死に寝た。
新キャラが、まだ続々と登場予定を控えているぅ…。まだ名前が決まっていないのに…。
ブクマありがとうございます!
登場キャラが多い作品になりそうですが、頑張っていきたいと思います!




