母と父がお世話になりました。
サブタイ考えるのも大変だ。
今回は少し短め。
ここ数日忙しく、ちょっと時間が無くて…もう少し忙しいので、もしかしたら更新遅くなるかもしれません。
静寂が支配する睨み合いの中、先手を打ったのは魔王だった。
横に翳した魔王の手の先に、空間が捻じれ歪み、そこから柄が生えるように顔を出す。出てきた柄を握り、歪んだ空間ごと軽く振り払う様に行われた横一閃。
同時に鈍い金属音が、静かな森の中に反響した。
「ほぉ…。随分と芸達者なドラゴンではないか」
魔王が振り抜いたはずの剣に目を落とせば、自分の剣は半ばから折れ、戻した視線の先には自分の剣のもう半分を咥えたドラゴンの姿。
魔王には見えていた。
振り抜いた瞬間に、薄く口を開けて剣の軌道上まで顔を落とし噛み砕き折る姿が。
大きく避ける訳でもなく、無謀にも負傷覚悟の攻撃でもない。それがまぐれなのか、はたまた考えての行動なのか…興味が湧いた魔王は、次の手を打つ。
「これならば、どう動く」
言葉が呟かれると、新しく魔王の足元に二つの歪みが現れる。
魔王は、その歪みの片方の中に折れた剣を落とし、もう片方からは別の剣を引き抜いた。そのまま腕を引き…ドラゴンに目掛け突く。
その行動を見ていたドラゴンは、鎌首をもたげ空を見上げ、レーザーの様なブレスを見上げた空へ放ち、少しだけ動かされた様に見えた手の下には明らかに伸びている剣が踏みつけられていた。
「良く見えておるな。貴様…そこら辺のドラゴンではないな。
防戦一方な理由は、飼い主でもおるのか」
空から重量を上げ落下させていた剣が、ブレスによって溶けているのを見ながら魔王はドラゴンに問う。
「我等が王は、まだ魔王と事を構える気は無いと察し、私からは手を出さぬよ」
「我を魔王と知って尚、我が前に立つか」
「既にここは王の地。お引取り願えますかな」
渋く、響く声で喋るドラゴンからは、確かに殺意は存在しない。だが、これ以上暴れるのであれば…と敵意を魔王はその身に受けている。
心地よい重圧に魔王は、突き伸ばした剣を新しく現れた歪みに落とし、新たな武器を呼び出そうとした時、周囲の空気が変わった事を感じた。
魔王の動きを見て少し身構えていたドラゴンも、もちろんそれに気付き、その姿は人型へと変わっていく。
「これは…」
「我等が王の御前、魔王よ…客人として無礼が無いように」
人型へと姿を変え、胸に手を当て頭を下げるドラゴン執事の隣には、少し大きめの両開き扉が空間から浮き上がる様に現れた。
魔王は警戒する。
見たことの無い魔法と、その奥から感じる異質な存在感。
無意識に構え、扉が開くのを待った。
そして扉が開かれた瞬間…魔王は隙間から見えた人影に向け剣を振るう。
「やはり…伸縮する剣と、次元を削り断つ魔法。懐かしいものを見ました。
貴女、フロリアル・グラディアロードの縁者ですね?」
「チッ」
完全に開かれた扉の先では、自分の剣先をメイドが止めていた。
剣に罅が入っている所を見ると、それなりに限界も見えている。故に魔王は二撃目となる手を振り下ろした。
振り下ろされた手の軌道に合わせて、空間が削られ世界の色を黒く染め上げていく。
「レーヴィ」
「はい、兄様」
空間が削られゆく先、突然周囲からかき集められる様に水が渦巻き、そこから巨大な顎が削り落とされた空間ごと喰らった。
追加で聞こえた別の二人の声。
同時に起こった現象に、魔王は思わず苦笑いを漏らし、手加減は命取りになりかねない事を察する。
もう一度と、今度は消される事の無いように、逆に削り返すつもりで魔力を倍以上込め、魔王は敵を見据えた。
視界に映るのは、先程までドラゴンだった執事の男、自分の剣を止めたメイドに、異質な空気を纏う若い執事、隣には若い執事と同じ様に異質な空気を持ち、青く瞳と輝かせているもう一人のメイド。
そして…一番奥には手をこちらに翳している人間の男。
誰一人として行動を見せない。いや、奥の人間は何かをするつもりの様だが、脅威は感じない。
魔王は、それを好機と確信して腕を振り下ろそうとした。
先手で戦力を削ぐ。そう考えて…だが、何故か身体が動かない事に気付く。
「'法を敷く'」
囁くように耳に届く声。
「'我が領地にて、我が許可無き者 行動制限を設ける。
以降、王に敵意を持つ者は一切の攻撃行動を禁ずる'」
頭の中に溶け込み、刷り込まれる様に脳が言葉を受けれいていく。
まるで自分の意思かの様に攻撃の手が止まりかけるが…魔王は、明確な敵意と殺意を持って尚も腕を振り下ろそうとした。
「'法を犯し者には罰則として、強制拘束を実行する'」
追加された言葉に、魔王は完全に動きを止めた。いや、周囲の木々や土が魔王を締め上げ、無理矢理動きを止めていた。
「猪口才な」
それでも無理矢理動こうとする魔王だったが、前後から首に剣が添えられ動く事は叶わなかった。
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こちらに視線を向けながらも動かなくなった魔王を見て、俺はゆっくりと息を吐く。
ラフィが気になる事があると言って様子を見ていたが…話ができなさそうなので効果がありそうな手として考えていた'眠王の法'を使った。
スキルが発動した事は感じたのだが、無理矢理反発される様な感覚と共に魔王は俺達に向け攻撃をしてこようとした。
焦ったね。
正直、俺ができることは今の所コレぐらいしか思いついていなかったから…かなり焦った。
咄嗟に罰則を法に付け加えて、ラフィとセバリアスのおかげて行動を抑えられたが…結構ギリギリだったな。
眠王の法の拘束力は、俺の使える魔力量と対象の残存魔力量合計との拮抗で決まる。
クラスメイト達を相手に発動できた理由としては…それに相手が従う意思があるかどうかでも、どうやら効果に差が出てくるっぽいな。
強制的に縛ろうとすると、えんらい量の魔力が消費されていくようだし…最悪、今回みたいに無理矢理なんとかされてしまう。
後、俺のスキルは精神干渉はできない。行動には制限をかけられるのが正しい認識かもしれん。
とまぁ、今回二回目の'眠王の法'を使って分かった。
俺の魔力量が上がれば、もっと拘束力が強まるのかもしれないが…使った魔力に比例してヤツが俺を襲ってくるわけで。
「セバリアス、おかえり。
早速で悪いが…魔王には話があるから、俺の客人として招いてくれ。すまん、俺は少し…寝る」
「かしこまりました。どうぞ、ごゆっくりお休みください」
「あぁ。ラフィ、ルアール、レーヴィも呼び出したのに悪いな。ありがとう助かった」
「「「勿体無きお言葉」」」
俺は、頭を下げている四人を背に部屋へと戻る。
もうね…今もガンガン抵抗してくるせいで、しんどいぐらいに魔力を消費し続けてんの。それを埋める様に睡魔ちゃんが俺を誘惑してきて…限界なんです。
いきなり寝ると抜かした俺を、アホの子見る様な目で見てくる魔王を無視して俺は寝ることにした。
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「王のお話はお聞きになりましたね?抵抗なさらぬよう願います」
「分かっておる。ここから暴れても我が不利、予想外であったよ…まさか、お主等の様な存在がおるとはな…。
して娘、どうやら我が母を知っていたような口ぶりであったが」
敵意をしまい、攻撃の意思を消せば拘束が解けた事を確認した魔王は、振りかざしていた腕を下げ、悠々と腕を組み立ち直しながらラフィに問う。
「知っていますよ。
フロリアル・グラディアロードは私の数少ない友人でしたから」
「友人?面白い事を言う。
母が亡くなり、もう二百は時が経とうとしている。我が生まれ三百余年、お主の様な者は知らぬ」
「フロルが話しているかは知りません。
ラフィ・ドラゴニクスか、貴女の後ろに居る私の父、セバリアス・ドラゴニクスの名を聞いたことはありませんか?」
「セバゥ!?」
魔王は、ラフィが口にした名前に驚き、慌てて後ろを振り返る。
そこには先程まで戦っていたドラゴンが、執事姿で自分の後ろに立っているが…これがセバリアス・ドラゴニクスだというのか。と言葉が出せずにいる。
魔王メニアル・グラディアロードは、確かに両親からその名を聞いていた。
-ドラゴニクスの親子は、数少ない龍族の生き残りで、代々ダンジョンの主に仕えている。そして親子して自分が仕える相手以外には非常に性格が悪い。
知り合う機会は無いだろうが、もし知り合っても敵にすれば厄介な相手になるから気をつけなさい。
なにより!父の方のセバリアスは、パパよりも強いから!
メニアルが成長して強くなったと思ったら、アイツの鼻っ柱叩き折りに送るから!-
と、常々父親の方が言っていたのを覚えている。母は、ラフィと言う娘の話を良くしていたが、優秀な子で、昔は自分も色々と教えてもらった様な話ばかり。
両親は、魔王同士のいざこざに巻き込まれ亡くなったが…両親の遺書に、ドラゴニクス親子について少しだけ書かれていた事も思い出す。
「先の男が、ダンジョンの主か」
「左様でございます」
メニアルの言葉に、セバリアスは答える。
両親は遺書に書いていた。
セバリアスと会う様な事があれば、それは父の知るダンジョンの主が誕生した事になる。
その場合は、手を組む必要はないが…敵対はしないようにと。
そのダンジョンは異質であり、はるか昔に異界の者が作り、ダンジョンを守護する者は異質な者が多く、敵対すれば被害は目も当てられなくなる場合が高い。
もし敵対する事態になったのなら…全てを無視して主を殺せと教えられている。
自分は父も母も越えている。
父の剣に母の魔法を身に着け、今や魔王とすら呼ばれるほどに。
それでも策無しで、この四人を相手にするのは厳しいと魔王は考え…今は大人しく従う事にした。
「少しであれば話は聞いておる。
父も母も、お主等には世話になったようだ」
今は敵意も殺意もない…が。
もし、今代のダンジョンの主が自分と敵対をするようであれば、その瞬間に殺すつもりでいる。
自分にも守る民が居る。負傷した者や戦えぬ者も居る。その為に脅威となるのであれば…と、静かに意を固めていく。
「では、ご案内致します。
ルアールとレーヴィは、お客様のもてなしの用意を、ラフィは王のお近くに」
「「「かしこまりました」」」
ラフィ達は頭を下げ、先に扉を抜けていく。
残ったセバリアスは、メニアルの少し前を歩き、一先ずは食堂に案内をする事にした。
そういえば…メインヒロインとか決めてないや。
ブクマ、ありがとうございます!
なるべく更新ペースキープできるようがんばります。




