はじめての!おきゃくさま!
セバリアスが安藤達の所へ向かって八日目。
ダンジョンの改装をある程度終えて、一息ついていると安藤からの念話が来た。
《よぉ、生きてるか常峰》
《なんとかな。今は、自分のセンスの無さに絶望をしている所だ》
《なんだそりゃ》
《ほら、今は俺ダンジョン管理してるからさ。ダンジョンっぽくを目指して色々とな》
《あー…そういうの難しそうだな》
《センス問われている気がしてな…結構メンタルやられてる》
久々の安藤との会話は、そんな内容から始まった。
ダンジョンをとりあえず十六階層にして、それぞれ五階層毎にボス役のメイドと執事を割り振り、十六階層目は玉座の間を配置。
ダンジョン内であれば、環境まで弄れると分かってからは、一から五までは草原。六から十までは極寒、十一から十五までは深海。などをイメージしてエリア分けもした。
これは、下に伸ばしたのもので…最初に上に伸ばした居住区は、隠し扉の先の隠し扉を越えて、適当にそれっぽいキラキラした空の宝箱を置いたその先の隠し扉を越えないと来れないようにもしたし…。
後、風呂場を広くした。
一応、空中に外装込みであればダンジョン内部を拡張できるとかも分かっているんだが、そんな事をすれば目立ってしまう。
ダンジョンとして見つかれば、挑戦者は来るだろうが、俺の魔力だけで維持できるのにわざわざ攻略させるようにする気も無い。
なんて思いつつ、今は、モグラ気分を満喫しながら連絡待ちをしていた事を安藤に話す。
《ひでぇもんだ。罠とかも仕掛けたりしたのか?》
《草原は広めの空間に丸太とちょこちょこ落とし穴設置したな。極寒は…ただただ広く、時折落とし穴だな。深海は、水で満たして基本的に酸素の確保手段を消した。
魔法とかで、長時間潜れる事もできるらしいが、そこまでして玉座の間まで来たなら…まぁ、逆に話してみたいもんだわ》
《雑過ぎだろ》
《自分のセンスの無さを垣間見たね。
あれだ…対策して来た所を罠でハメたりも考えたんだが、対策手段がどれだけあるのかも分からん。
ダンジョン攻略のテンプレートみたいなマニュアルが欲しいぐらいだ》
《広さとかどうなってるんだ?》
《ダンジョンの効果にある空間調整の一種。
本来の面積の十倍までなら、縦横好きに空間弄って広げられたんだよ》
《便利…なのか?》
《まぁ、元が広かったらそれだけデカイから、思ったより便利だぞ広さだけならな。
そこに罠とか…結構面倒》
まぁ、この空間調整は、屋外が一番効果が出るかもしれんけどな。
周りに広がる森林をダンジョン範囲に収めて、その空間を広くすれば…ほら、距離感狂ってくる。だけど今の俺は、屋内ダンジョンだけで精一杯です。
《一先ずご苦労さん?》
《おうよ。それで、そっちはどんな感じだ?》
《そうだ、その報告に念話したんだった。こっちも三日ぐらい様子みて、落ち着いてきたかな》
今度は安藤の報告を聞いた。
セバリアスが到着したのは三日前。手紙を受け取り、頼んだ通りに動いてくれたらしい。
食事時に手紙の時に俺の生存、連絡手段がありそうな事に反応を見せたのは市羽が観察した所では二人。
その内の一人は…リピアさんか。なるほど。
世界巡り組のメンツで動いてくれたのは、良かったな。リピアさんを無駄に責める事にもならなそうだ。
それから三日経った今日、他に動きは無いらしい。
市羽は二人が反応を見せたと言った。スキルが反応する程にリピアさんともう一人の雰囲気が変わったと本人は言う。
もちろん、誰かも分かっているらしい。
その相手は…
《'フューナ・イカツァ'と言うメイドだ》
《誰だ?》
いや、本当に分からん。誰だ?その前に、よくよく考えてみれば、リピアさん以外名前知らないじゃん俺。
ちょっと関わったのも、リピアさんかチーナに付き添っていたメイドさんぐらいだ。
《東郷先生の専属メイドだ》
《…。その事を東郷先生は?》
《伝えている。リピアさんを捕まえる時は、東郷先生は酔いつぶれて、橋倉は頭痛が残っててな。二人を古河と市羽が見ていた。
その時に、フューナさんは一緒になって様子を見ていたらしい》
《並木にスキル確認させたか?》
《リピアさんに言われてしたぞ。結果としては、'鑑定' '料理' '裁縫' '回復魔法' '光魔法' '祈りの聖歌'が高レベルだった。
他にも鑑定を邪魔する様なスキルも所持はしていたな》
リピアが調べろと言ったのなら、リピアとは違う勢力の可能性が高いな。
スキル名から察するに…フューナというメイドは、リュシオン国の人間か?
《ちなみにだが、リピアさん曰く'祈りの聖歌'ってスキルは、リュシオン国の人間なら覚えるスキルだそうだ。
加護を与えるスキルだとかで、複数人が同時発動する事で真価が発揮されるスキルらしい。
覚えるには専用の聖書が必要で、その聖書は国外に持ち出される事は無いとも。
覚えるだけで、精神干渉系のスキルに耐性を持てたりするから、自分も覚えておきたいスキルの一つだとリピアさんがぼやいてた》
さいですか。
まぁ、どちらにしろ…随分と特殊なスキルなんだな。少なくとも、期間がどれだけ掛かるかは知らないが、フューナはリュシオン国に行ってそのスキルを覚えた。
ついでに言えば、リピアさんがリュシオン国の人間である可能性も消えたな。
《リピアさんから情報は引き出したか?》
《いや、並木曰く、岸の配下になったことで命令権は岸が握っているらしいが、隷属状態が解除されたわけじゃないらしい。
リピアさんが言うには、その隷属魔法の契約内容に情報漏洩対策で、いらんこと話したら死ぬ細工がしてあるとか》
なるほど…。
岸に情報を吐く様に命令させたとして…話し終えたら岸の命令の効果が切れてしまい、隷属魔法が機能する可能性があるか。
無理矢理にとは言え、協力者であるリピアさんで試すのは得策じゃない。
《リピアさんはどうよ》
《思っていたより協力してくれてんな。
防衛手段に関してだが、戦闘面は訓練で基礎を学ぶべきだと。
スキル抵抗に関しては、必要なスキルをリストアップして来てくれたぞ。ただ、覚えるのにもそれなりに時間掛かるし、基本的に覚え始めはそんなに効果は無いらしい。
長い時間を掛けてスキルレベルは上がっていくから、旅とかの予定があるなら、その最中でも慣らしていかないと実用までは難しいかもだと。
一応、リピア式スキルレベリングみたいな感じで、継続してやっていた方がいいこととかもまとめてくれてる。
まぁ…毒に耐性をつける場合なら、毒を摂取して回復魔法で解毒してを繰り返せば、パワーレベリングみたいな事ができるらしいけど…他にもそんなやり方でよければ、色々とある事を苦笑いしながら教えてくれたよ》
《最悪死ぬな…それ》
存外仲良しになってそうだな。
それなら、尚の事リピアさんで試すのは気が引ける。
……。どこまで協力的か分からないが、試してみるか。
《安藤、リピアさんは近くにいるか?》
《リピアさんか?居るぞ。それこそ、毒耐性をつける為の初期段階の、かなり弱い麻痺毒を持ったキノコ料理をテーブルに並べてる》
《大丈夫なのかそれ》
《一応、クラスメイトにも説明して、半々の人数で分けて交代交代で食う予定だ。
摂取量さえ間違えなければ、半日程度で完全に抜けるから大丈夫なんだとさ。まぁ、試しに俺は食ったが…直後は正座で痺れたみたいな感じになる》
本当に大丈夫なんだろうな…。なんか不安になってきたぞ。正座して痺れると、俺は一時立てないタイプなんだが…。
安藤達には、悪い事をした気分になりながら、リピアさんに念話の相手を替わってもらった。
《ご無沙汰しております常峰様》
《お久しぶりですね、リピアさん。安藤達が世話になっているようで》
《いえいえ…安藤様達に捕まった時は、素人の拷問か…はたまた、未知のスキルの的かぐらいは覚悟していたので、これで見逃されている現状に違和感を覚えます》
プロの拷問を経験済みなのか聞きたくなったが、聞いた所で無駄なので今は置いておこう。
今は、別の事を聞いておきたい。
《リピアさん、岸は良くしてくれていますか?》
《命令権の行使も無く、待遇は良いかと》
《それは、リピアさんが協力的で居てくれてるからだと思いますよ。
次にですが…雇い主を裏切るつもりありません?》
《…常峰様、現在私は岸様の配下となっております。
裏切るも何も…命令一つで可能なのでは?》
《俺達の味方になってくれると言うのなら、岸に配下から外す様にも言いましょう。
少し時間は掛かると思いますが、その隷属魔法を解除もしましょう。
言わば、その忌々しい拘束から解放するので…どうです?俺達にリピアさんの意思で協力してくれませんかね。
英雄達の基盤を作った者。悪くないと思うのですが》
少しの沈黙。
さぁ、どう返答がくるか。
それ次第では、少し答えて欲しい事があるんだがな…。
《申し訳ございません。私は、幼き頃から国に仕える身。個の意思は関係無いのです》
《リピアさんの意思で協力してくれませんかね》
あえてリピアさんの答えはスルーして、同じ質問をする。
国がどうではない。俺はリピアさんの答えが聞きたい。
きっと、リピアさんは俺が聞きたい事を察しているはず。
《現在は、私ができる限りの協力はしております》
私ができる限り…ね。
俺は、その返事に満足した。
リピアさんができる限りでいい。是非、俺にも協力してくれ。
《リピアさん、できる限りで構いません。質問をするので答えてください》
《ふふっ…えぇ。可能な範囲であれば》
返ってくる言葉は、どこか楽しそうだ。
察してくれているようで助かる。
《ログストア国をどう思いますか?》
《ギナビアなどに比べ、内部が脆いかと。付け入る隙は多く感じます》
引き合いにギナビア国を出すか。なるほど。
《例えばですけど…リピアさんがログストア国を掌握すると考えた時、どうしますか?》
《数名の大臣と密に連絡を取る事から始めます。
ログストア国には、ギナビア国やリュシオン国への牽制手段があるので、大々的な侵略行為は難しいと考えます。
なので、内部に居る者をこちら側へ引き抜き、その者を王に据えるなどが得策かと》
他国への牽制手段は、結構知りやすい情報なのか?
《牽制手段について、詳しく知っていたりしますか?》
《申し訳ございません。黙秘させていただきます》
隷属魔法の契約内容に引っかかる可能性が出てくるのか。とりあえず、これも保留だな。
ただ運が良かったり、外交が上手くてとかではなく、そういう手段をログストア国が持っていると明確にできただけでも儲けもんだ。
さて…そろそろ本題を聞くか。
《リピアさん、貴女はログストア国の者ですか?》
《いいえ、違います》
《リピアさん、貴女はリュシオン国の者ですか?》
《いいえ、違います》
《リピアさん、貴女はギナビア国の者ですか?》
《黙秘させていただきます》
自分の素性は隠さないといけないもんな。
しかしそうか…俺達が召喚された事は、ギナビア国もリュシオン国も知っている。連絡手段がどういうモノか確認できていないが、スキルもある程度は知られていると考えていいだろう。
勇者達をただの対魔王の戦力として考えるか…それとも、別の利用価値を見出してくるか…。どっちもだろうな。
俺ですらそう考える。
《いやはや、変な質問に協力ありがとうございました。
岸のスキルの件は、その隷属魔法をなんとかできる目処が立つまでは我慢してください。
正直、仲良くなれたのに命令権をギナビアに戻す事をしたくないので》
《理解しております。隷属魔法に関しては、一応私も知ってはいますが、廃人間近になる場合や、最悪死ぬ場合ばかりですね》
《そうならない方法を見つけるまで、待っていてもらえますか?》
《ご協力できる間に限ります。でもよろしかったのですか?私はまだ信用に値しないと思いますが。
例えば…お答えした情報が嘘で、岸様のスキル下から外れた瞬間敵対する可能性もあると考えますが》
《それで結構。それまでには、安藤達にリピアさんと親睦を深めて貰っておきますから。
仲良くしてやってください。そして仲良くしましょう。
もし嘘だった場合ですが…嘘だったら嘘で、気が向いた時に本当のことを答えください。
今は、聞いたことが本当だと思っておくんで》
《わかりました。では、その時を気長に待っております。
安藤様にお戻ししますね》
その言葉を最後に、一旦念話が切れた。
安藤からの念話が来るまで、リピアさんの協力で得られた情報をまとめる。
ログストア国でそこそこの権限持ちの誰かが、既にギナビア国と手を組んでいる。恐らく一人では無いだろう。
だが、リュシオン国の手がどこまで伸びているかが不確定だな。密偵が入り込んでいるのは確実だろうが…。
後はログストア国が他国を牽制できている手段。
存在が確定して、リピアさんがそれについて喋れなかったとなると、ギナビア国は対抗手段を既に確立しているのか…間近なのか。
とにかく、ギナビアが漏らしたくないログストアに関する情報がある。
これは…魔王をどうにかする前に、ギナビアと一悶着あるかもしれんな。
残るはリュシオン国に関してだが…フューナ・イカツァか。リピアさんは協力的過ぎて疑わしいぐらいだが…こっちはそうもいかないよなぁ。
ただ、出稼ぎなり何なりで来ているぐらいなら、別にそんな事もないだろうが…俺達の動きに反応を示したのであれば多少は警戒していたほうがいい。
漁夫の利でも狙っている場合もある。
ここは刺激せずに、もう少し様子を見ていた方がいいかもしれん。
《ふぁ…ふぉこね、かふぁったそ》
《………。だ、大丈夫か?》
《ふぁいそーぶっ》
安藤の言葉が聞き取りづらい。
おかしいな。口で会話をしているわけじゃないのに、なんでこんなにも呂律が回ってないんだ。
《麻痺ってんのか?》
《ふぁひっへる。ひゃんしゅっふんくぉらひで ふぉほる》
《わりぃ、何を言ってんのか分からねぇ。
三十分ぐらいで戻るでいいのか?》
《ふぉおー》
さっき、安藤はかなり弱い麻痺毒って言っていた気がするんだが。
脳まで麻痺るとか、甚大な影響があるのではなかろうか。
《あー…そのなんだ。回復魔法とかで毒抜きしてもらわないのか?》
《ふぁいひょは ふゅぃはんへいはへ》
《安藤、今回に限り、入れ歯を頭にぶち込んでくるか、毒を抜いてきてくれ。
まったく分からんくなってきた》
《ふぇいふぇい》
回復魔法を受けに行ったのか、安藤からの声が聞こえなくなったと同時に部屋の扉が叩かれた。
安藤が麻痺ったということは、そろそろ俺も飯の時間かもしれんな。
「お休みの所申し訳ございません、ラフィです。王に至急お伝えしたいことがございます」
ノックの後に聞こえたのは、珍しく慌てた様子のラフィの声だった。
どうやら、飯で呼びに来た訳では無さそうだ。
「どうした」
「失礼致します。食材調達に行ったものより報告がございました。
こちらに向けて何者かが凄まじい速度で移動してきているようです」
「その…高速接近してきてる奴はココを目指しているのか?」
「それは分かりません。ただ、この周辺は森で囲まれています。あるとすれば、このダンジョンぐらいかと…。
後、それを探知した者の言葉では、何者かは相当の強者の可能性が高いと」
相当の強者ねぇ。
言って、このダンジョンのメンツも中々に戦闘能力は高い方だと思う。
戦闘向きでない者も居るようだが、それを抜いても個で強い。食材調達に良く行く者達は、魔物と対峙する事もあるから、基本的に戦闘能力がある者が行っているようだが…。
それでも強者の可能性か。
「案外、ただ通過コースにココが被ってただけかもしれん。手は出すなよ」
「かしこまりました。皆にもそう伝えておきます」
一礼をした後、ただ…と言葉を続けた。
「ただ…お父様も近くまで戻ってきているようで、最悪の場合、お父様とその何者かが接敵する可能性がございます」
「へ?」
《あー…戻った。
いやな、リピアさんに言われたんだけどよ。
なんでも最初は、時間経過で治す方が基礎を作るにはいいらしいんだ。
一応、弱めの毒を使ってるし、最悪の場合も考えて、東郷先生と橋倉は別々のグループに居るから、なんかあった場合でも回復魔法の用意はできてる》
間抜けな声を上げた俺の脳には、安藤が入れ歯をはめ込んで戻ってきたようだ…。
そして同時にコアからダンジョン付近に、俺の認知していない者が近付いてきている事を告げる様な感覚が送られてくる。
《まぁ、一応安全性は確保しながらやってっから、安心しろよ》
安藤の念話を聞きながら、俺はダンジョンの機能を使って周辺の映像を映し出した。
外と言えば、いつもなら鬱蒼とした森と空程度しか映らない映像には、初めてその全体を見た気がする見知ったドラゴンと…セバリアスのせいでサイズ感が狂って小さく見える人影。
意識して人影をズームすれば、その正体も俺は知っていた。
セバリアスを前にして、悠々と腕を組みセバリアスを見上げているのは……露出度高めハイセンスデザインのボロボロのドレスを纏い、艷やかな銀の髪を靡かせる綺麗な女性。
「魔王…」
「ん…?この娘…」
漏れた呟きと共に一気に顔が引き攣ったのが分かる。
向かいではラフィが何か言っているが耳に入ってこない。
魔王をどうにかする前に、ギナビアと一悶着あるかもな。とか得意気に呟いがド阿呆はどこのどいつだ。
初っ端からラスボス級はルール違反ではなかろうか。
《常峰?大丈夫か?》
いつまでも返事をしない俺を心配してか、安藤からの念話が頭に響く。そのおかげで、ハッと現実に引き戻された気がした。
《大丈夫かどうかは、これから決めてくるわ》
《どうした》
《ちょっと初めてのお客さんでラスボスが来た》
《は?》
互いに喋る事は無いものの、画面からは一触即発の空気がヒシヒシと伝わってくる。
安藤には悪いが、ちょっと急がないとな。今、魔王と一戦交えるのは、俺のメンタル上よろしくない。
《安藤、ちょっと念話切る。
今後については、そのまま続ける方針で。何か進展があれば連絡くれ。
基本的にはフューナを警戒して、連絡できている事は悟られたくない。世間話とか、そっちの状況も知りたいが、今は必要最低限にする。
それと、戦闘向きじゃないユニーク持ちには、ある程度の過程を終えて、ゼス騎士団長とリピアさん辺りから許可が出たら訓練をあまり強要はするな。
自分のスキルを理解して伸ばしたい奴も居るはずだから、そこら辺は尊重する様に東郷先生達にも伝えて欲しい。
判断はそっちに丸投げだ。
あー後、お前のユニークの主人を決めるとかで底上げされるやつ、アレをできれば新道と東郷先生と市羽に渡しておいて欲しい。
安藤の為でもあるし、瞬時に移動できる一定範囲も確認しとけ。結構範囲あるなら、緊急事態にひとっ飛びする事もあるだろうし。あと一つは…なんか好きな子にでも渡すように取っておけばいんじゃね?
そういうことだから、こっちも一段落したら一度念話送る》
《お、おい常峰!お前、ラスボスって》
《悪い、ちょっと始まっちまった。行ってくる》
《と――》
安藤との念話を強制的に切り、ダンジョン領域の拡張をする。
確認すると、付近と言っても地味に距離がある。だから領域を広げ、そこまで移動できる様にしなければ。
「王よ、お父様なら大丈夫かと」
「大丈夫かもしれんが、俺はまだ魔王との交戦を望んでない。止めに行く」
「お考えを汲み取れず、差し出がましい事を言ってしまいました。手の空いている者で戦闘ができる者を集めてまいります」
「まぁ…ラフィの言葉を信用はしているんだが、万が一にも俺の目の前でお前達を失いたくはない。
準備ができ次第、俺の部屋に集まるように頼む」
「ンハッ…なんと!お優しきお言葉ッ!二分頂戴いたします。すぐに集め、戻ってまいります」
姿が掻き消える様な速度で移動していったラフィを横目に、俺はダンジョン領域の拡張をしてく。
前の様にすぐにはできず、何やら反発される様な感覚があるが、大量の魔力を使って無理矢理広げる。
正直、俺は戦闘に関しては数に入れられない。
起床からまだ三時間半…なるかならないか。スキル効果もまともに機能できていない時間帯だ。…だが、手がないわけじゃない。
効果があるか分からないが手段だ…、もし通用しなければ正面から撃退しか方法はない。そうなってしまえば、セバリアス達に任せっきりになってしまう。
いや、今は俺のスキルが通用すると願って…会話の内容でも考えておこうか。
魔王メニアル・グラディアロード――話の通じる相手である事を祈ろう。
昔、据え置き機の在宅設計シュミュレーションのゲームにドハマリしていたのですが…どうも内装センスは育ちませんでした。
ブクマありがとうございます!
どうぞ、これからもよろしくお願いします。




