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眠れる王  作者: 慧瑠
それぞれ

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230/236

おやすみ

常峰君視点です。

少し長くなりました。

'おやすみの時間だ'なんてカッコつけてはみたものの、結局時間が欲しいのは俺の方。


幸い、メニアル達が俺の魔力を漏らさないようにしてくれたおかげか、俺の予想以上に制御までの時間が短くて済みそうだ。

別個で脳みそがあるみたいに五感や魔力を通して入ってくる情報の処理にも問題はない。

ただ……時間が欲しい反面、あんま時間を掛けていられないのも事実。


若干ではあるが薄赤色が交じる視界。

回復はしているはずなのに、徐々に増していく体の痛み。

そしてさっきから溢れそうなのを堪え、何度も飲み込んでいる鉄臭い液体。


最初の時も、その次の時も何かしらの影響はあった。今の状態も最後の枷を外した影響だろう。

なんだったかな……体質変化だっけか。

いつもは寝ている間に終わってたっぽいが、今はスキルで寝ている状態にも近い。その変化とやらが行われていると同時に、反動も表に出てきたってところかね。

まぁ、何にせよやることは変わらん。


まさか出てくるとは思わなかったが、出てきたのなら準備が整うまでは新道達にも継続して魔神の相手をしてもらおう。

準備が終わったら後は……帰還組は必要以上に気にかけなくても良さそうだな。

福神 幸子の都合で東郷先生と新道は動けないだろうが、他の皆は大丈夫だろう。もし少しミスがあっても爺が動くだろうし、この気配……どういう風の吹き回しかは知らんがアイツがその気なら任せて問題はないか。


魔神に集中できるのはありがたい。

さて、集中するからには考えなきゃな。

佐々木と田中が手を出した分体は、数で攻める様に形を変えた。

残り二体の分体は安藤とモクナさん、市羽が圧倒している。その対処に精一杯なのか、俺に手を出してくる様子は今の所はない。

唯一念話が通せる本体からは、視線も殺意も感じるが新道が相手にして制している。


そうとなれば気になることは、神核が二つあるって所だな。

額と胸元の二つ。

分体の様に本体も散り散りに分裂出来る場合、その神核は別々に行動できるのかどうか。

神核は同時に破壊する必要があるのかどうか。

他にも気になる点は幾つかあるが、その場その場で対応はできるだろう。


色々と試す時間は無い。必要な結果は神核を破壊する事。

最初から同時破壊をすればいい。


市羽と安藤の会話を聞く限りでは、市羽は時間さえあれば壊せると断言した。

だったらアレは壊せるモノだ。

最初の一撃の時の感覚と、市羽や安藤が攻撃した時の気配。それを元に要求される破壊可能な攻撃方法と手順の考察。

少しでもより確かな方法を。


そんな事を考え、様々な可能性を予想して幾つかの対応を決めていると、体中にビリビリとした感覚が駆け抜けた。

干渉されている……今まで感じたどれよりも強烈で、一体誰から、どこからかも分からない。


一瞬魔神からか? と思いもしたが、感覚がそうじゃないと伝えてくる。

もっと別。もっと遠くから。それこそこの世界の外からとか――あぁ、なるほど。見計らったかのようなタイミングだ。


少しだけ向けた視線の先では、煌々と輝き始めている魔法陣とサムズアップしている爺の姿が見える。

その光景を確認すれば、強烈な干渉がピタリと止んだ所を見ると予想は間違ってなさそうだな。


はぁ……動くか。


「レイヴン」


「おう」


「佐々木達を退かせる」


「そのタイミングで変わればいいんだな」


「俺を守ろうとはしなくていい。好きにやれ」


「あいよ」


んで次は……。


《新道、時間だ。魔法陣を起動後、新道と東郷先生が先陣してくれ》


《皆で一斉にってわけではないんだね》


《戻った後の事で福神さんから話があるそうだ。それと、こっちの事情で城ヶ崎に一番最後に入る様に頼んでおいてくれ》


《そういう事なら分かったよ。皆にもそう伝えておくよ》


《あぁ……達者でな》


《そっちこそ、元気で》


本体の相手をしていた新道が消えたことで魔神の目は一斉に俺へと向けられ、念話を通して濁流のような感情が流れ込んでくる。


それは嫌悪。

己が振るっていた力の一端を俺から感じるからか。はたまた、そういう事態まで追い込んだ血筋を感じ取ってか。


それは憎悪。

常に邪魔をし続けた'異界の者'がこうして最後まで邪魔をしているからか。それとも、あと一歩という所で嘲笑う様に立ち塞がる存在そのものが気に食わないのか。


それは焦燥。

じわりじわりと己の世界が蝕まれている事に気付いてもどうしようも出来ない現状に。いや、ここに至るまでに積み重なった不満を思い出し爆発しているのかも知れない。


それは恐怖。

今まで積み重ねてきたモノが崩れていく事にか。または、考えもしなかった死を感じた事へか。


限らず際限なく流れ込まれていく様々な感情。同時に今まで魔神が見てきたであろう映像が流れ続け始める。

見ていて気分の良いものではない。わざわざそういうモノをチョイスしているのかは知らないが、気分のいいものではないというだけで、それ以上でもそれ以下でもない。どうでもいいんだ。


こちらの世界に来てから、一層そう思う。

映像で何百万が死に腐ろうと俺は何も動かされない。前の世界だって俺が寝ている間に、どこかで死んでいる奴は居た。こうして別の世界があると分かった今、別の世界のどこかで惨たらしくくたばってる奴が居るのだろう。死んでいく奴が居るのだろう。


だからそれがどうしたというのか。


俺はその程度で足を上げはしない。それほど俺は優しくも無ければ、感受性豊かなわけでもないんだ。

何時だって、俺の周りを取り巻く環境が人間が居て、俺は渋々足を上げる。

足を上げ、前へ運び、踏み降ろし、一歩進む。


それは知らん誰かのためでも無く、死んだ誰かのための弔いでもない。

願うなら同情はしてやろう。語るなら理解はしてやれるかもしれん。だからそれ以上の反応を期待しないでくれ。


どうした魔神。何をそんなに驚く事がある。

この程度で俺の歩みが止まるわけがないだろう。お前が万の屍を積み上げて悪と呼ばれるのなら、それを踏みにじり億の屍を積み上げて俺は英雄を生む。それだけの話だ。


面倒な事に俺だけの話で終わらないから、俺は止まるわけにはいかんのよ。


「市羽」


「……」


静かにその名を呼べば、縦横無尽に動き続けて居た市羽は俺の目の前に現れる。

肩で息をしていても、その不敵な笑みを崩す事無く。茹だる体からは湯気が発せられているが、どこまでも涼しい顔で飄々として、その眼はまだやれると訴えかけてくる。


「よくやった。美味しいところは貰っていくぞ」


柄にもなく、勢いに任せて市羽をそっと抱き寄せる。

俺の動きから先を察してか、珍しく驚いた顔を見せていたが知ったことか。こうでもしないと素直に言うことを聞かないだろ。


「目が覚めるまでには終わらせておく」


「もう良かったかしら?」


「あぁ。十二分に助かった。俺の期待以上の働きだ……今はゆっくり休め」


「……目が覚めるのは貴方のベッドがいいわ」


「分かったよ」


「ふふっ、おやすみなさい」


「あぁ、おやすみ」


俺の肩に頭を預けていた市羽からは、すぐに寝息が聞こえ始め、体は完全に脱力してもたれ掛かってくる。

脅威だった市羽が寝た事に気付いたのか、魔神は遠慮なしに俺を攻撃し激しさをましていくが、もう俺の魔力の壁を超えることはできない。


「メニアル! ルアール! セバリアス!」


「「はっ!」」


「ほぉ、ちと見ぬ間に随分と誑し方を学んだようじゃな」


「これ見よがしに不幸話を垂れ流されてるからな。その一部を参考にさせてもらっただけだ」


呼び声に応じて現れた三人。

ルアールとメニアルは感涙を流しそうになっているし、メニアルはメニアルでニヤついている。


何を思っているか分からんが、俺は魔神が送りつけてくる映像の一部を流用しただけだ。

柄にもないとは分かっているけど、今の市羽相手に納得させるのなら、それぐらいで丁度いいのかもしれない。

まぁ、参考にさせてもらった人は帰らぬ人となり、恋人を惨殺して自分は焼け死んだようだが。


「色々と迷惑を掛けたな。市羽を連れて戻って、俺の部屋でいいから寝かせておいてくれ」


「良いのか?」


「お陰様でな。制御も今終わった。後は消化試合だ」


「ハハハハハ!! 魔神との戦いを消化試合と言うか。しかし夜継よ、お主が敗れれば魔神はもう止められぬ。可能性の尽くは、ここに至るまでで潰れてしまっている。分かっておるな?」


「分かってるよ。だから消化試合でいいんだ。ここまでお膳立てをしてもらってて、俺が負けるなんて事はない。それぐらい断言しとかないとな、これでも王様なんでね」


「であるか。我と初代からの最後の贈り物じゃ」


メニアルが軽く指を鳴らしたと思えば、魔神の額付近の空間が裂け、そこから黒々とした何かが飛び出し神核を穿ち砕いた。


……え、砕いた? あ、いや、すぐに再生を始めている。

ただ少し再生までに時間が掛かるのか。


「どうやら同時に破壊せねばならぬようじゃな。腹は括れたか?」


「全く……助かるよ。欲しい情報が得られた」


「どうせ余力もなく、残っていても足手まといにしかならんからのぉ。我もゆっくりと観戦に回るとする」


市羽を抱きかかえたメニアルは、隣に開かれた空間の裂け目へと入っていく。

頼むと言葉を添えてセバリアスとルアールに視線を送ると、二人も深々と頭を下げてから同じ様に裂け目の向こうへと足を進めた。


「しかし夜継よ、先はすまんかったな。学んだとは言え行動に移すとは、絆されていたのはお主だったようじゃ。そうしても良いと思わぬ相手に出来るほど、お主は行動的でもないであろう」


「……ラプトとジレルに土下座はしとけよ」


俺の言葉に、メニアルは肩をすくめて返すだけで裂け目はピタリと閉じる。

その後ろでは魔神の声が怒りをそのままに空気を揺らしているが、呆れるほどに俺の心は穏やかだ。


気分はそうだな……散歩。そう夜に散歩をしている気分だ。

なんの目的もなく、時間を気にせず、夜風を感じながら近場のコンビニなんかにブラブラと。


「常峰くーーーーーーん!!」


聞こえた小さな叫び声に顔を向ければ、絢爛豪華な扉の前で東郷先生が手を振り、俺と目が合うと大きな動きで頭を下げた。


「ありがとうございました!!」


律儀な人だ。

こっちに来てから先生には沢山世話になったし、任せっぱなしだった面も多々ある。そこに居る皆がちゃんと帰れると選べたのには、きっと東郷先生の存在も大きいだろう。

最後まであの人は先生でいてくれた。一緒に寄り添って、悩んで、折れないでそうあろうとしてくれた。


《「こちらこそ、ありがとうございました」》


軽く手を上げたからといって、こんな声では聞こえないだろう。だから念話を使って一方的に伝えてから切る。

それでも、他の皆もそれぞれ反応を見せて返してくれている。


東郷先生と新道が扉を潜った事を確認してから視線を魔神へと戻せば、魔神の視線も東郷先生達へと向けられていた。


丁度いい。


少し気合を入れて踏み込み、一気に魔神との距離を詰め、再生を終えた額の神核へと拳を打ち付けた。


「割れないか」


再生を終えた神核の硬さは相変わらず。ただ全力で拳を振るったぐらいじゃ意味ないない。

むしろ俺の拳が血だらけだ。


さて次。

周囲を漂う俺の武器を足に纏い、強度を高めてからの蹴り。


「本当にかてぇな」


既に癒えた拳の様に自滅はしなかったものの、やっぱりといえばいいか……簡単にはやれないな。

まぁ、大した問題じゃない。


最後の確認は出来た。

神核のサイズは額で俺と同じぐらい。胸元の神核はパッと見で六畳一間前後。

やってる事や体格のわりには小さい神核だと思うが、元は一つで個別活動用に分断したか、もしくは最小限のサイズを維持しているだけか。

どっちでもいいか。下手にデカすぎるよりは俺が楽だからどうでもいい。


再生していく様子は見た。分体や本体の肉体的再生と見比べれば、その速度は明らかに落ちている。しかし再生する術があるのは事実。それの対策をするには時間が無いな。

だったら再生を上回る速度で破壊する脳筋戦法が手っ取り早く確かな方法。


「手短に行こうか」


そう言葉を漏らしたものの、神核を攻撃した俺を当然魔神は許さない。

横で口を開いて魔力を溜めている分体。

背後で拳を振り上げている分体。

分裂した全て突撃してきているのも気付いている。

そして本体は、俺が動けない様に魔法と魔力で俺を拘束して閉じ込めた。


薄々感じてはいたが、戦い方が少しずつ変化している気がする。搦め手を狙っていたり、力押しで戦おうとしてみたり、魔力のみで俺を圧倒しようとしてみたり……チマチマしてみたり大胆にしてみたり、こっちを探っている様な戦い方が時折垣間見える。

俺の反応で手順や攻撃方法を調整しようとしているような感覚。


「お互いに情報不足だったみたいだな」


まぁいいさ。それもお互い様だ。

スキルは完全に制御できた。この辺り一帯は俺の魔力で満たされている。扱える魔力も、増え続ける魔力も段違い。

この程度の攻撃を叩き潰すなんて造作もないぐらいに。


「本当は俺も帰って寝たい所を我慢してるんだ。逃げないでくれよ?」


まずは魔力で分体共を魔法陣ごと叩き潰し、一切の漏れがないようにキューブ状に固定。


――次。


本体の両腕を千切り飛ばし、同時に上半身が生えている魔法陣からも胴体を切り離す。


――次。


抵抗してくる魔神の攻撃を正面から捻じ伏せ、同時に二つの神核の周りを削り、抉り、その全てを露出させる。


――つ「チッ……」


肉体の再生速度は本当に早いな。

もっと一気に剥き出しにしないと。それに、視界の赤みが増すばかりか、かすんでもきた。邪魔だな、意識してしまう。これなら目を閉じていても同じだ。


感覚は研ぎ澄まされている。なんの問題もない。

神核の周りの再生も終えている事までハッキリと分かる。


「次は一撃で引っ剥がしてやる」


魔力を圧縮して剣の形で固定。それを四本。

それを使ってもう一度、攻撃の起点にしている再生をした両腕を切り飛ばす。そのまま二つの神核の両脇に剣を突き立て――


「吹っ飛べ」


――意図的に暴発させる。


あわよくば神核まで壊れないかなと思ったが、そんなに甘くはないか。それでもまぁ、神核は完全に露出させられた。

それなら次の行動は決まっている。


神核の表面を俺の魔力で包み込む。

破壊した時に一片も逃さぬ様に隙間なく。

これが俺のできる無力化。これでお前は手も足も出ない。


何をするにも魔神は神核を通して魔力を使っている。周囲の魔力を自分の魔力に変換するにも、この神核が使われているのが分かる。

そういう魔力流れだ。

市羽が俺を引っ叩きに来る前も、俺の魔力すら取り込もうとしていた。今でも神核を包んでいる俺の魔力を吸い上げようとしている。


それも仕方ないだろうな。

俺の魔力が邪魔で、そうして包まれている限り、神核を使って肉体が再生できないんだろ? 伝わってくるよ、お前の焦りが。

無理矢理俺に干渉して、何かをしようとしてるのがビリビリと。


「総魔力は俺に分がある。だが魔法を使えない俺には、効率良くそれは使えない。'眠りを愛し死を憶え(ソムヌスメメント・モリ)'も効率がいいとは言えない。それに神核をぶっ壊す程の兵器を用意できたとしても、周囲に被害が出ない様なモノは浮かんでこないのも事実」


肉体は吹き飛ばされ、神核のみとなり声をあげる事すら出来ない魔神に語りかけながら、俺は神核へと触れる。


「呆れるか? 優位に立つとお喋りしたくなってな。まぁ、それでもここまで戦って、厭味ったらしく色々と垂れ流されて分かったよ」


ここまでの記憶力があり、探りながら戦う思考があるにも関わらず対話すら成り立たない理由。

元は魔王で、神を取り込んで、初代勇者すら取り込んだはずの魔神。かつて爺共に封印された魔神。

同情するよ魔神。


「爺達に奪われたのは、神の力だけじゃないだろ」


ちぐはぐな感じはあった。

封印が解かれて出てきた時、魔神という存在をハッキリを身体が感じ、正直どこかで畏怖した感情が生まれていた。

しかし、最後の枷を外した辺りから浮かんでは消えていたが疑問に思っていた事がある。


何故、こんなのを封印できていたのだろう……と。


爺達が努力し、試行錯誤し、犠牲を払い封印した事は分かっている。その時は封印できた事は理解している。だが、今まで封印されていた理由はわからなかった。

コア君が五代目と語られる初代魔王との会話や、幾度か行われていたであろう異世界からの召喚。次元の歪みは確かに生まれていたはずなのに、何故魔神は今まで封印できていたのか。


完全復活までは遠くても、する機会はあったかもしれない。

そもそも、'神の城'はチーアが停止させていたとしても起動はしている。神の城は封印の為の道具でもあるが、兵器である事にも違いない。

'スキルフォルダ'なんていうモノを自然の摂理に組み込める程の神の力に加え、異界から召喚された初代勇者に、神や勇者と対峙できるほどの初代魔王という存在の融合体。

謂わば天然物のチート存在。


そんな存在が、いくら一時的に神の力を奪われたとは言え、知識も経験も培い、数千年以上の時を掛けても尚、封印が解けないとは考えにくい。

現にコア君は封印後に初代と会っている。

それにも関わらず、外部からの手が無いと封印から出てこれない状況になった。内側で戦っていた爺共の手によって。


「俺の推測が正しいのかは分からんが、きっと本来のアンタの強さはこんなもんじゃないのだろうな……。まったく、恐ろしい限りだ」


魔神の抵抗を上回る魔力で抑えつけ、胴体の方の神核には武器を貼り付け纏わせる。


「……だが、ここで殺せそうで安心した」


魔力を超振動させ、幾つもの螺旋の刃をイメージし、渦を描きながら締め上げる。力の限り、魔力の限り、神核が削れていく音を耳に。


「往生際の悪「――」


一瞬意識が飛んだ。

その間に俺の魔力を無理矢理吹き飛ばし、事前に気付いていた俺の言葉を遮った爆発音は、声のようにも聞こえた。


ゆっくりと目を開ければ、目の前には粉々になった神核。少し視線を下げれば、消滅していく巨大な神核の破片。

そして振り向いて気配を追えば、中満が扉へと入り残り一人となった城ヶ崎の元へと向かう生きた神核。


「自爆するなんてな」


一気に踏み込んで魔力と共に神核を追うが、小さくなったあの神核の方が僅かに早く辿り着くな。

最低限だけを残した自爆に加えて最後の力を振り絞っているのか、ご丁寧に爺や安藤達も不意打ち気味に魔法で拘束されているし、流石に拘束から抜け出せても間に合わないだろう。


「保険をかけていて正解だったわ」


「言っておくけど、聞こえてるから」


ギリギリ間に合えばと思って全力で追っても、やはり神核の方が早く城ヶ崎へと辿り着く。

そして神核は、城ヶ崎の胸元にある薔薇の花弁が散り、そこから伸びたガントレットに鷲掴みにされた。


「一応全力だったんだから勘弁してくれ」


月衣(るい)に怖い思いをさせたって事を踏まえて、貸し一つにしといてあげる」


「悪かったな、城ヶ崎」


キョトンとしている城ヶ崎を他所に、ガントレットから神核を受け取ると、そのままガントレットは甲冑へと姿を変えて城ヶ崎を扉へと誘導する。


「じゃあね。月衣」


「んーと、なんかイマイチ分かんないけど、ありがと、彩。……元気でね」


甲冑から聞こえてくる漆の言葉に返した城ヶ崎は扉の向こうへと消えていき、少しして後を追う様に扉も消え、そして手に残った神核の抵抗が無くなる。


「……。おつかれさん」


先程までと同じ様にするまでもなく、メニアルの魔法を握りつぶした時と同じ様に魔力を使い握ると……神核は静かに音を立てて散った。


……神核の気配は他にはない。

……他に敵の気配もない。


終わったか。


気が抜けたら、一気に身体が重くなった。

あーしんどい。

この後は、神の城とかどうしよう。やばいな事後処理がめんどくさい。


ふと見れば、薄暗く真っ赤な視界には駆け寄ってくる安藤とモクナさんの姿が見える。


なんか叫んでるけど……悪いな、水の中に居るみたいに上手く聞き取れん。


「――!」


あん? なんで駆け寄ってきた安藤が俺を抱きかかえるんだ? ってかコレはお姫様抱っこか?

そういうのはモクナさんにするべきだろ。


「――!!」


「―!」


なんかモクナさんと安藤が言い合ってるし。

痴話喧嘩するにゃ、少し早いだろ。


はぁ、まぁいいや。そろそろ意識を保ってるのも限界だ。

なんだかんだ頑張ったし、少しぐらいいいだろ。やっと寝れるだ。


「後は任せた。少し寝る」


……おやすみ。

色々あったついでに少し膝をやってしまいましてね。えへへ。

本当、遅くなりました。


まぁ、書きたい事も色々とありますが、後数ページでひとまず終わりになると思うので、最後の後書きにまとめて書こうかと思います。



評価・ブクマ・ご感想ありがとうございます!!

ここまで長らくお付き合いありがとうございます!! これからもお付き合い頂ければ嬉しく思います!!

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