目覚めのビンタ
大変遅くなりました。
「ッ……夜継め、何を急いておる」
召喚され襲ってきていた魔物達が落下していく中、言葉を漏らすメニアルは空間を歪ませた足場に片膝をつき、片手で頭を抑えつつ黒い球体を見上げる。
先程、市羽がその球体の一部を斬り裂いた時にメニアルも中の様子を見ていた。その後に聞こえた声も確かに聞いた。
小さく呟くように響いた声を聞いた瞬間、自分の体に起こった異変。
一挙手一投足に絡みつく倦怠感。
当人でも辻褄が合わず、気付けば停止をしているのかもしれない思考。
時折起こる明滅と、虫に食われた文の様に飛び、混濁を自覚する意識。
だがそれらは決して不快というわけではなく、一言で言うなれば、強烈な睡魔。
不快感が無いからこそたちが悪く、拍車をかける様に包み込む空気が心地いい。優しく誘う子守唄の幻聴すら聞こえてくる。
この空気に触れたのなら誰でも分かる。今、気を抜き目を閉じれば、一瞬で眠れると。
いや、気を抜かずとも抗う事を忘れて眠り落ちてしまうと。
「目を開けておる事が、これほどまでに億劫であるとはな」
睡魔はメニアルも例外なく誘おうとしている。
しかしその包み込む様な空気と睡魔、それらの根源たる圧倒的なまでの支配力を見せつけている魔力を、メニアルは己の魔力と奪い借りた神の力を放出して抵抗をする。
「……まったく、この場に置いてこの様は無いじゃろ」
纏わり付く眠気を払おうと首を振れば、頭の重さに体が持っていかれそうになる。
呼吸は落ち着いているはずなのに、心臓の音は早く煩いと感じるのは気のせいか。
メニアルは、それらの気持ちも気力でねじ伏せ周囲の様子を伺う。
新道達や市羽達の周りには、ワケの分からない札が囲んでおり、この空気の影響を極端に下げている気配がすた。
対して飛行していたセバリアスとルアールはなんとか耐えているのもの、落下してしまった場合を考慮してか人の形へと姿を変えてフラフラとし、高度が少しずつ下がっていっている。
さて、どうしたものか。とメニアルが思案し始めようとした時、凄まじい速度で放たれたソレが黒い球体へと着弾すると同時に、メニアルは思わずため息が漏れてしまう。
呆れからか、はたまた別の感情からか。どちらにせよメニアルのため息と睡魔は、認識すら難しいその魔法が突き破り、あとを追いかけてきた吹き荒れる風に引き剥がされた。
数秒遅れて、湖に石を叩き込んだ様に凄まじい音を立て、黒い球体の一部に穴が開く。
「なるほどのぉ」
開いた穴から見えた二度目の向こう側は、一度目からそれほど時間が経っているわけでもないのに、劇的に変わっていた。
向かってくる攻撃を防ごうとするそれらを軽く一掃するのは――四体の魔神。
「急いたのではなく、強いられたか」
メニアルが呟く間に穴が完全に閉じかければ、次の魔法が寸分違わず同じ場所へ着弾して無理矢理穴をこじ開ける。
更に今度は一発では終わらず、二発、三発と凄まじい速度を誇る魔法が撃ち込まれていく。
「ふむ……我ですら直前にならねば認識が追いつかぬとはな。見事、美しく洗練された無駄なき魔法じゃ。残留する魔力から察するに、ダンジョンの者――初代か。
まったく、嫌になるのぉ。小娘には負かされ、過去の者に魅せられ、この様はあまりにも不甲斐ない」
カラカラと笑うメニアルは視線を感じ、そちらへと目を向ければ、市羽がメニアルを見ていた。
『メニアル『良い良い。問わず語らず好きにせい。』――そう、お言葉に甘えるわ』
『それで良い』
頭に響く念話の言葉を遮り返し、ヒラヒラとメニアルが払うように手を振れば、市羽はそっと念話を切り視線を外す。
メニアルも視線を黒い球体に開いた穴へと向け、大きく息を吐く。
突如としてメニアルから波打つように魔力が溢れ出し、背後で切り開かれた空間からは、二人の男が落ちるように現れた。
「感謝の言葉はいらぬぞ」
「……ふぅー。これでも礼節は持ち合わせておりますので」
「礼ぐらいは言わせてくれよ、メニアル・グラディアロード。体たらくぶりを見せたとはいえ、こんな力の使い方をして平気なのか心配なぐらいなんだからよ」
「魔力の心配か? であれば問題ない。ここに来る前に働けと渡されたからのぉ」
乱れていた服装を正すセバリアスとルアールの言葉に、メニアルは胸元へと指を滑らせて一枚の紙を取り出した。
大きさにして五センチ程度の正方形。そこに描かれていたのは、紙に貼り付く小さい結晶を中心に、複雑に線の絡まる魔法陣。
その魔法陣を見た二人は、ひと目見ただけでソレを用意した者が誰なのか理解する。
欠片はダンジョンコアの欠片。その欠片に絡まる魔法陣は、欠片から漏れる魔力を自然のものへと変換し、更に最初に魔力を込めた者へと送る供給役を担っている。
そんな御業を形にできる者は、二人の知る中で一人しかいない。
「最初の主……ですか」
「流石にダンジョン契約は今の彼奴でもできぬとの事でな。市羽と我に渡してきおった」
セバリアスの言葉に答えるメニアルは、その紙をスルスルと元の場所へと戻し、話を打ち切る様に手を叩く。
こうして話している間に撃ち込まれていた魔法は止み、無理矢理開かれた穴の縁には空中で待機していた札が貼り付いて閉じるのを阻害している。
「ドラゴニクス、ルティーア長男、我に手を貸す気があるか?」
「「それが我らが主の為ならば」」
「結構じゃ。なれば気合を入れよ。ただ狩るより難儀じゃが、であるからと抜かし死すれば夜継の為にならぬ」
断るのならばそれで良いと思っていたメニアルはゆっくりと手を上げ、セバリアスに、ルアールに、そして自分に言い聞かせる様に続ける。
「我等がするは外野を招き入れず。外野に至らず。ここは我等の戦場であり、今更外野が声を上げる場であらず」
頭上に展開されていく魔法陣を見て、セバリアスとルアールは少しだけ驚いたように目を見開く。
「メニアル・グラディアロード、貴女はこの魔法を一体どこで」
「我は停止していた貴様等のダンジョンを監視、管理しておったのだぞ? 過去にあのダンジョンで何が起きたかぐらいは知っておる。更に言を重ねるならば、この魔法は我の領分じゃ」
対するメニアルは気にした様子もなく不敵に笑みを浮かべ、間を置いて飛んできた凄まじい速度の魔法は射線に現れた空間の裂け目へと消えていく。
「すまぬな、これは預かるぞ。このままでは大任果たせぬまま故。暫し休み、暫く譲れ初代よ。なんて言ったか……あぁ、そうじゃそうじゃ、べっどめいきんぐは我等に任せるが良い」
一度言葉を止め、展開を終えた魔法陣を眺めたメニアルは指を鳴らす。
「'空間隔離'」
響く音と同時に見えない壁が魔力の流れすら遮断する。
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「や~坊の周りが働き者すぎて、お兄さんの出番なくなっちまったなぁ」
三人を送り出した常峰 光貴は独り言を漏らす。
「俺が無理してしゃしゃるまでもねぇ。むしろ下手に出しゃばられると、あの魔族の嬢ちゃんの邪魔になっちまう」
周囲を軽く見渡せば、付近での召喚は止み、揃いも揃って眠りに堕ちている。起きている者といえば、光貴が手を出した常峰のクラスメイト達と、メニアル、ルアール、セバリアスの三人のみ。
その内メニアルに至っては、光貴が懐かしいと感じる気配を漂わせていた。
「はぁ……どうせ覗き見してんだろう? お前さんの旦那とライルは上手くやったみてぇだな。となりゃ俺等が下手を打つわけにもいかねぇよなぁ……さっちゃん」
その独り言に返ってくる言葉はないが、答える様にスッと冷たい風が光貴の肌を撫でる。
「あぁ、本当にここまで長かった。いろんな奴に迷惑掛けて、いろんな奴の死を踏み躙って、見事なまでの他力本願で、わけぇ奴等に俺等老害の尻を拭わせて。立派なことなんざぁ一つもねぇ。
お前さんに至っては、まだこれからもやー坊達に手を差し出させる始末。
よかったなぁ。や~坊が俺と違ってお人好しでよ。損得勘定の天秤に情を乗せてくれる様な奴で……」
今度は冷たい風は吹かず、代わりに光貴がフッと鼻で笑い続けた。
「流石に俺も力を使いすぎちまってる。アルベルトやライルがいねぇんじゃあ回復手段もねぇし、するつもりもねぇ。やれる分やっちまったら、俺もライル達の所へ逝くからよ……礼の方はさっちゃんに頼むわ」
光貴は一呼吸置いて空を見上げる。
鎮座する黒い球体に時折入り始めたノイズの様なブレ。先程までこじ開けていた穴は、札ごと呑み込み消えている。
しかし光貴が焦ることも無ければ、また札を黒い球体へと送ることもない。むしろ表情は笑みすら浮かべている。
既に勝利へのピースは送り込んだ。
「んじゃぁ、お膳立ても兼ねて最後の仕事の準備でもしますかねぇ」
鼻歌交じりに光貴が冷たい風を感じながら足を進める。淡く輝く魔法陣の上に集まっている常峰のクラスメイト達の元へ。
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はぁ……ままならねぇもんだな。
お手上げ状態になった俺は、俯瞰の視点から見える己の体を見下しながら整理する。
おそらく、向こう側で魔神は倒された。どういう戦いがあったのか、どんな展開で、どんな手順だったのかは分からない。
だが魔神は倒された。
均衡を保ちながら戦っていたはずなのに、一瞬で神核を叩き壊されたんだろう。
証拠なんてもんはないが、ぶっ倒れている俺の体を囲む四体の魔神が証拠でいいよな?
一瞬にして存在感を増した魔神。
俺のスキルで生み出したモノが枯葉を払うかの様に消し飛ばされ、思考を走らせる暇もなく行われる怒涛の攻撃。
そんで終いにゃ分裂だよ。分体が弱いなんてこともなく、どれもコレも本体と同じレベルで手数も威力も笑えない。
全体像がお目見えできると思ったんだけどな……。
結果は、もはや見慣れ始めたバッキバキの上半身オンリーな魔神が四体。足せる言葉があるとすれば、四体の内の一体、そいつの額と胸元にあるアレ。
おそらく神核であろうと思われる深紅の結晶体。
一回だけ。
存在感というか、もう何でもかんでもがマシマシになった瞬間に現れたその結晶体に攻撃を届かせた。
元々神核の話は聞いていたし、そんな目に分かる変化が現れたとなりゃ狙うにも迷いはなかった。
まぁ、その結果なんて言わずもがな。未だに傷一つなく輝いているのが現実。
あの結晶体、馬鹿みたいに硬い。
壊せるイメージが沸かなかった。いや違う、今も全く浮かばない。
一体だけなら活路を見いだせたかもしれん。
そんな言葉で気持ちだけでも奮い立たせるのが精一杯。
神核にダメージらしいダメージを与えられず、更には相手にしなきゃならん魔神が増えた。その状況に焦ったのは間違いない。
だから脳内で踊っていた文字が言葉になった時――それを唱えた。
メリット・デメリットなんて考えず、全能感に酔ったまま、調子に乗った結果がコレ。
スキルの暴走。
溢れる魔力を使うことはできる。俺のイメージに沿って、なんかを創り出すこともできる。しかし、広がり続ける魔力を制御できない。
魔神の空間内だけならば、あんまり俺も気にはしなかったが、間違いなくこの感覚……外に漏れている。
'眠りを愛し死を憶え'――使った瞬間に流れ込んできた効果は、制御しなければならない効果だった。
広がり続ける魔力。その俺の魔力に触れ、抵抗できずに眠りに堕ちたモノ達。
眠ってしまったら最後だ。そのままゆっくりと死に至り、そのモノ達の生命やら魂云々やらが俺の糧になる。
魔力、身体能力、知識、生命力、果には寿命までが俺の糧に。
幸いなことに爺が手を貸してくれているようだから、今の所クラスメイト達は無事みたいだ。
セバリアスやルアール、メニアル達もなんとか耐えてくれているから、まだこうして考えていられる。投げ出さずに焦りながらも頭を回せている。
流石に皆が居なくなったら……うん、まぁ、お手上げ通り越して投げていただろう。
コア君達のことも忘れて自暴自棄になる自信はある。そうなればコア君達が、この世界に残ると決めた者達が、世界の皆が結託してどうにかして賑やかに俺を殺してくれるんだろう。
晴れて俺はラスボスになるわけだ。
それも一つの可能性。
このまま進めば、ありえるかもしれない可能性。まぁね、そう諦めるには、まだ早いらしい。
「駆け抜けるわ」
「おう」「はい」
戦闘音に紛れて増えた声は聞き慣れたものだ。
外に漏れている魔力の流れも変わった。
広がっていたはずの魔力は、一定の範囲を満たす様に溜まっていく。
壁だ。壁に堰き止められている。なるほど……メニアル達か。
「あら、随分とお寝坊さんね。レイヴン、少し任せるわ」
「わかりました」「そっちは頼むぞ。市羽」
一瞬、俯瞰しているはずなのに市羽と目が合った気がした。
そして次の瞬間、乾いた音と共に頬に衝撃が走り、俺の視界は暗転する。
「おはよう。迎えに来たわ、ご機嫌はいかが?」
「めっちゃ頬がいてぇ」
目を開ければ、目の前には満面の笑みを浮かべる市羽の顔。
さっきまで忘れていた嗅覚も戻ってきたのか、血の臭いやら硝煙の臭いやらに紛れて市羽の匂いが鼻孔をくすぐる。
ってか、体の感覚が戻ってきている。いや、意識が体に戻ったと言ったほうが正しいのか?
「夜継君が考えていたことは分かるわ。でも嫌よ? 顔見知りを手にかけるなんて」
「どうしてこっち側のセリフなんだよ」
ラスボスのくだりだろうか。
どういう思考でたどり着いたのか知らんが、思った事をそのまま返せば、市羽はふふふっと柔らかい笑みを見せて答える。
「貴方がどこへ行こうと、どうなろうと、私は貴方の隣に居ると決めたのよ? ラスボスになると言うのなら、残念だけど貴方は裏ボスよ。前座として立ちはだかるラスボスは私。当然でしょう?」
「重いわ」
「背負いなさい」
寸の間もなく返ってくる言葉。
こえぇよ。まったく。
しかし、まさかビンタ一発で体に戻るとはな。
戻れそうで戻れない。そんなもどかしさはどこへやら。
まぁいいか。
何度か吹き飛ばされて再生はしていたが、体を動かすのに問題はなさそうだし、さっきよりも気分は落ち着いている。
だからといって暴走自体はまだ完全に制御できていない……が、それでも放出を緩やかにはできているみたいだ。
洒落にならんぐらい眠い事を除けば、予想外ではあるが風向きは概ねいい感じになってきた。
「さぁ、夜継君。お話の続きは落ち着いたところでしましょう? 貴方の剣と盾は手元に来たわ。ここから貴方はどうするのかしら」
「そうだな……まずは……」
魔力で全方位を囲むように壁を作り上げ、魔神の攻撃を防ぎつつ安藤というよりはモクナさんに声をかける。
「モクナさんまで着いてくるとは思っていませんでしたが、戦えると思っていいんですね? 死ぬかもしれませんよ?」
「既に私も死人です。その名は捨て、彼と名を共に」
「……そうかい」
安藤へと視線を向ければ、これ以上とやかく言うのは野暮なんだろうなと分かる。
お前が腹をくくってるなら何も言うまい。
俺は大きく息を吐き、頭の中を切り替えていく。
魔神討伐、スキル制御、クラスメイト達の転移。
使える戦力、使わない戦力、魔神のスペック、俺の状態。
浮かぶ単語を並べ、点を線で繋ぎ、何通りの道を用意して一つの結果を手繰り寄せていく。
非常に残念な事で、情けない話ではあるが、俺の戦いは負けだ。
全てを犠牲にしてこいつを倒しても、それは俺の負けだ。
スキルの感覚からして死ぬ気はしないが、魔神を殺せる気もしない。延々か永遠か……こいつと戦い続ける事はできるだろうが、それは俺の負けだ。
まぁ、らしくもなくカッコつけてみようと思った結果でしかない。ここが現時点での俺の限界なのだろう。
選択をどんだけミスったか、どうすればよかったかなんて反省は寝る前の時間潰しにでも使えばいい。
さてさて、んじゃ俺らしく勝ちに行こう。
「市羽、この魔神が用意したこの空間は消せるか?」
「このまま守っていて頂戴。十秒で叶えてあげる」
そう告げ、鞘に収めている刀に手を置いた市羽は目を閉じた。
「空間消滅後、レイヴンは一体の魔神を抑えろ。一撃は重く、再生もするし、手数も多い……できるな?」
「抑える? 一体でいいのか?」
「強気じゃねぇの。なら少しだけ無理をさせてやる。盾の役目を果たせ」
「「仰せのままに」」
スッと俺を挟む様に両側に立つ安藤とモクナさん。
同時に、市羽の刀が鞘に収まる音がする。
「'世渡り遊び・散策'」
風に乗るのは市羽の声のみではなく、フワリと揺蕩う斬撃が風に乗り散っていく。
軌跡を残しながら進んだ斬撃が壁に触れると、軌跡の線に沿ってパズルの様に世界は崩れ落ちた。
流石だ市羽。
壁が取り払われた事で、制御外だった魔力がより一層近場に感じる。
手のひらから零れ落ちていた魔力が、俺の掌へ戻ってきている。
集中できればそれほど時間が掛からずに制御ができそうだ。
「これでいいかしら?」
「上出来だ。これから俺はスキルに集中する」
「私にどうして欲しい?」
「剣の役目を果たせ。俺を待つ必要はない。神核を砕いてもいい」
「ふふふっ……えぇ、いいわ。それでいいのよ夜継君。存分に振るわれてあげる」
安藤もモクナさんも市羽もどうしてこんなに自信満々なんだろうね。
羨ましいよまったく。
ただそうだな……うん、気分がいい。
お前らのその自信が心地いい。俺の言葉に頷き応えるソレこそが、俺を奮い立たせる。
その自信の裏付けは俺がしてやろう。失敗したなら俺が拭おう。
俺は知っている。
俺を評価するお前らを知っている。
だから俺の言葉に応えるならば傲岸に笑みを浮かべろ。
俺のために、その自信を掲げ続けろ。
そうしてくれれば、俺は意地でもお前らの背を押したくなる。
「あー、いい感じにテンション上がってきた。B級にもならねぇ映画のクライマックスみたいなもんなのに、胸が躍るから困るね」
「あら、いいじゃない。私は好きよ? 素人の卒業制作みたいな映画」
「そんなの見たことねぇが、まぁ良いんじゃねぇか? デカイのがいりゃ、B級ぐらいにはなるだろ」
「?」
首をかしげるモクナさんを他所に、俺等の笑みは深くなる。
今度映画の話をモクナさんにもしてやろう。
セバリアス達に話せば、意外と面白い反応を見せてくれるかもしれんな。
ほら、余計なことを考える余裕も出てきた。
「この戦いは勝ったも同然だな」
見上げれば、神核持ちの魔神の目が光り、レーザーの様な魔法が俺へと迫る。
だが俺は動かない。
代わりに安藤が一歩だけ前に出て拳を振り抜けば、相殺だけに留まらず魔神の顔が衝撃を受けたように上がる。
周りに迫る魔法は、安藤の武器を持ったモクナさんが全て対処し、お返しだと言わんばかりに市羽の一線が魔神共の腕を切り落とす。
いやはや頼りになるね。
どうやっているのかは知らんが、セバリアスとルアール、メニアルのおかげで暴走している魔力が広がる事も防いでくれている。
クラスメイト達も、動きこそしないが、参加してやろうか?と爛々とした視線をぶつけてきているのが分かる。
そんなに俺に楽をさせないでくれよ。期待しすぎて腐っちまう。
まぁいい。やろうか。
どう転んでも、俺はお前等に期待してるよ。
「さぁ、魔神狩りの時間だ」
大変遅くなりすみません。
やっと更新する時間が少しできました。
まぁ、頭が回らない回らない。体力が持たない持たない。
当初の予定では今年中には完結するつもりだったのですが、ないがないがと時間が取れず、もう年末になってしまいました。
年始は少し時間が取れそうです。
ブクマ・評価ありがとうございます!
こんな私ですが、これからもお使い頂ければ嬉しく思います!




