そこそこ皆我儘に
「つまりなんだ? 爺は、初代や二代目と一緒になって魔神と戦ってたと? どんだけ長生きしてんだよ」
「安心しろ。生きちゃいねぇさ、しっかりくたばったよ。今はもっとスピリチュアルな存在だ」
「幽霊的な?」
「そうそう、ちっさいおっさん的な」
空中であるにも関わらず、俺の隣に腰をおろしている爺――常峰 光貴と簡単に交わした情報交換によれば、福神 幸子が言っていた魔神を内側から倒すという役割に二代目と爺が今まで加わっていたらしい。
そして封印が緩んだ事で、丁度魔神に吹き飛ばされた爺が外側に押し出されたのだと言う。
「それにしてもやー坊、お前見事にさっちゃんに使われたな」
「うるせぇ、いいんだよ。俺も色々と福神さんには頼み事したんだから」
「お兄さんは、その取引は釣り合ってないと思うけどなぁ!」
「何がお兄さんだ。若作りするのにも限度があるぞ」
「ガッハッハッ! 生意気な口は変わらんなぁ!」
ここまでの流れを簡単に説明をしている最中から爺は愉快愉快を笑い、俺ならもっと上手くやった。と言い放っては笑い、合間合間で知恵の披露と共に世間話に花を咲かそうとしては笑い。
本当に楽しそうに爺は笑う。
それに釣られて俺も笑ってしまっているから、これまたなんとも。
「まぁ俺の事は今度でいいんだよ。それより魔神が完全に復活するまでの時間と、戦ってたなら魔神戦の注意点が知りたいね」
「そろそろ復活するのは間違いないが、どれぐらいかは分からん。戦ってみりゃ分かることだが、注意する事だらけで聞いた所でだぞ? アレの動きや空気の変化にはすべて注意しろってもんだ。だから今のうちに休んどけ、アレとの戦いはしんどいぞ」
「爺達が寄ってたかって封印止まりってので覚悟はしてる」
「まぁ、外は俺とやー坊、内はアルベルトとライル……やれんこたぁない」
「ライルってのは、初代勇者の名前か?」
「ん? あぁ、そういや名前を残したくなかったとかで滅多に名乗らなかったのか。ライル・アルベルト――そいつが初代の名前だ。アルベルトは自分が勇者の血縁としったアイツが名として引き継いで、家名にギナビアを名乗ったのさ」
なるほど。勇者の事を調べても初代勇者は初代勇者とした記されていなかったが、アルベルトさんが初代勇者の気持ちを汲み取ってそうしてたのかもな。
魔神や帰還には関係ないが、少し気になっていた事が解消できてよかった。
「それとな、帰還のタイミングを計りかねてる様だが、その辺はさっちゃんが教えてくれるだろうよ。そういう所はちゃっかりしてる娘だ」
「顔に出てたか?」
「俺を誰だと思ってんだ。それぐれぇビシッとお見通しよぉ」
ほんっとうに腹立つ笑みしやがって。愉快そうで何よりだよ、この野郎。
だけど、まぁいい。俺も悪い気分じゃない。
《新道、そろそろ準備を始めたい。皆を集めてもらえるか?》
《もうすぐなのかい? うん、そうか。分かったよ、皆を集めておく》
《頼んだ。次に連絡する時には、こっちに来てもらうと思うからコア君伝いでもいいからリピアと連絡を取って転移魔法の最終確認も終えておいてくれ》
《リピアさんにもね。それはいいけど、ダンジョンで何かあったのかい? ダンジョンの人達が妙にソワソワしているみたいだけど》
《ダンジョン内に俺が居ないし、ダンジョンマスターの権限をコア君に全譲渡しているからだろう。事前に説明はしてあったがそうか……影響が出そうか?》
《ちょっと不安そうには見えるけど、セバリアスさんやシーキーさん達が落ち着いているから大丈夫だと思うよ》
《それなら良かった。頼んでばっかりで悪いが、そっち方面でも何かあったら連絡をくれ。一応コア君達が先に気付くとは思うが、それでも見落としがあるかもしれん》
《お安い御用さ》
新道から東郷先生にも伝わるだろうし、帰還組の事は新道と東郷先生に任せておけばいいだろう。
あの二人は優先順位を間違える事はない。俺も安心して魔神戦に意識を向けられる。
「おぉ? あー……こりゃキツイな」
「何が?」
くつろいでいた爺は、ボーッとしていたかと思えばそんな事を呟き、ポリポリを頭を掻きながら立ち上がる。
その視線はずっと上空を見つめて離さず、俺も釣られて見上げれば爺の呟きの理由が分かった。
神々しい空を隙間なく埋め尽くす大量の魔法陣。
確認している間にも次々と増え続けているソレ。
「やー坊、帰りてぇって奴等はどんぐらいで準備ができる」
「三十分あれば確実って所だ」
「こっちでも準備が居るだろ? それ含めてどんなもんだ」
爺の言葉を聞いて考える。
急かしてしまえば、後十分もすれば新道達はこっちに来れるだろう。そこから帰還魔法の準備をと考えると……。
「一時間」
「そうかそうか」
そう告げられた瞬間、魔法陣が一段と輝き――無数の巨大なドラゴンを筆頭に大型小型関わらず大量の魔物が召喚されはじめた。
限界があるのか分からない。ただ止めどなく、溢れ出るとは正にこの様な事を指すのだろう。
そしてソレは現れる。
顔は悪魔の様な風貌。上半身しか出てきていないが、身体は人の形寄り。
サイズ感はまぁおかしい。ルアールクラスか? 下手したらそれよりデカイんじゃなかろうか。
そしてそれから放たれる並々ならぬ威圧感。ひれ伏しそうにな雰囲気。肌に感じるモノは、神聖過ぎて拒絶反応が出そうになる。
福神 幸子の時の比ではない。
なるほど、魔に染まっても神。不純物を孕んで尚もコレか。
「福神さんに神の力とやらは移したんじゃなかったのか?」
「さっちゃんは神に成ったが、あっちは元から神だからな。神である事にゃ変わりない。しかも制御をする気もない」
「時間稼ぎならまだしも、倒せる気が全くしない。封印の方向でいかね?」
「そりゃムリだ。さっちゃんに乗せられて、封印の要を壊したのはやー坊だぞ? もう一度するとなりゃ、そうだな……被害は度外視で最低二年ぐらいは掛かる」
「封印までに二割り生き残れればいい方だな。これなら、再封印の準備までしてからアーコミアに挑めば良かったかねぇ」
「それでもやー坊は同じ状況に立ったさ。お人好しだからなぁ! ガッハッハッ!!」
「おぉおぉ否定できない俺を笑ってくれ。ダメ出しよりソッチの方が清々しい」
爺のおかげで少し気分は楽になった。
それでも気後れはしているが、まだ頭は回せそうだ。
なんて思っている矢先に魔神が動く。
口が開き、甲高い音が発せられ、脳が狂い感覚が引き剥がされそうになる。加えて衝撃波でも発したのか、残っていた鎧共や神の城の一部が粉々に。
そしてその音を合図に、召喚された魔物達が一斉に動き始めた。
「あぁ、今のは始まりの合図的なやつですか……なぁ爺、本当にアレ倒せるんだろうな」
「アルベルト達が内側で神核ってのを壊せば、外側に神核が出てくる。それを壊せば殺せるのは確かだ」
「根拠なしだったら三途の川に沈めてやる」
「さっちゃんが神に成った時に知った事だ。神様本人からなら確かだろ?」
「今、俺の中で神の株価は今世紀最大の大暴落してるから」
「損切りするなら今だぞ」
「させてくれるのか?」
「させんが?」
「くそ爺め」
「ガッハッハッ!!」
ひとしきり豪快に笑った爺は、息をゆっくり吐くと雰囲気が一瞬で切り替わる。
俺も十二分に肩の力は抜けた。
いい緊張感だけが残り、移動を開始している魔物達の動きがハッキリと見え、魔神の意識がコチラに向いている事もしっかり肌で感じれている。
「……さて、誰も欠けたくねぇのなら、気合入れろよやー坊」
「互いにな」
お互いに背中を叩きあい、一度だけ深呼吸をして同時に言い放つ。
「頼りにしてるぜ。爺」「頼りにしてるぜ。やー坊」
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「うーん、あれが魔神かぁ。やっぱり僕が会った魔王と近しい気配だね。ただあの時みたいに交渉できる理性があるようには思えなけど」
バルコニーからログストア国を見ていたコア君は、片手間にダンジョン内の様子を伺いつつ、遠くに現れた魔神の姿を見て独り言を漏らす。
「常峰君が考えていた交渉は無理だねぇ。まぁ、もっとも今の常峰君に交渉する選択肢は無かったみたいだけどさ。常峰君は神とどんな取引をしたのか気になっちゃうなぁ……新道君」
「気付いていたんですね」
「ダンジョンはダンジョンマスターにとって身体の一部みたいなものだからね。それに僕はダンジョンそのものだよ? 気付かないわけがないじゃないか」
「確かにその通りですね」
コア君が振り返れば、制服に身を包んだ新道が苦笑いを浮かべて立っていた。
他のクラスメイト達は集合場所に集まり終えているようで残りは新道だけなのだが、どうして自分の所へ来たのかはコア君にも分かっていない。
「僕の疑問を察して来てくれたわけではなさそうだね。それに答えてくれる気もなさそうだ」
「正確に言えば、頼まれ事をされただけで俺にも取引内容までは分からないんです。だからコア君さんが満足する様な答えを俺は持ち合わせていません。
俺が来たのは、ただならぬ存在感を感じて確認をしに来ただけですよ」
そう言う新道は、苦笑いのまま視線をコア君から魔神へと向け、表情を渋くしながら一つの問いかけをする。
「常峰は勝てますかね?」
「どうだろうね。どの世の中でも、絶対に勝つ戦いの方が少ないものだと僕は思うよ。ましてや相手はアレだからね……常峰君の頭の中にどれだけの勝算があるのかすら僕にはもう分からない」
「助けには行かないんですか?」
続けて問われた新道の言葉に、コア君は少し悔しそうな表情を浮かべ、それでも笑みのまま答えた。
「君は酷いことを聞くね。君は知っていると思うけど、ダンジョンマスターはダンジョンから出られないんだよ? それに僕は常峰君から、ココを守り、ダンジョンを維持していてくれ。って頼まれているんだ。
だから僕はこうしてダンジョンのすべてを見ている。些細な動きも見逃す気はないし、事前に全部潰す。常峰君から預かっている魔力が尽きない様に気をつけながらね」
コア君の答えを聞いた新道が口を開こうとする前に、それを許さないように被せ、でも……と言葉が続く。
「僕が君に常峰君を助けて欲しいとは頼まないよ。最初に言ったでしょ? 何を犠牲にしても君達は帰らなければならない。死ぬことも、それ以外を目的にする事も、もうダメなんだよ」
「分かっています」
「うんうん。常峰君から聞いているし、君の行動も僕は見ていた。だから君がとても利口な人間だという事も知っているよ。しっかりと別れを済ませた君には伝えておこうかな。
おそらく君達は魔神と常峰君が戦っている中で、あの場所でその時を待たなきゃならなくなる。常峰君は君達を守りながら魔神と戦わなきゃならない。
僕からの問いだよ、新道君。そんな時、君達はどうする?」
もうコア君は新道を見ていない。視線はログストアの方へと向けられ、その先では既に戦闘が始まっている。
少し悩む様子を見せた新道もコア君と同じ様にログストアの方へと視線を向け、一切の不安も憂いも無い表情でハッキリと答えた。
「常峰が俺等に死んでほしくない様に、俺等も常峰には死んでほしくない。俺等が選択した'帰る'という事を間違った選択にしたくないのは、きっと常峰も同じですよね? それならコア君さんもそれを尊重すると思うのですが?」
「君はもう少し素直な子だと思っていたけど、随分と生意気な言い方をするね」
「そういうお年頃です。色々とできるようになり始めたから、我儘も増えてきちゃって。大人に踏み入れたばかりで、まだまだ子供なんですよ。俺も常峰も」
「それを止められる大人が居ないのが問題だね」
「ご心配なく。最後のストッパーは、何も常峰だけじゃありません」
それだけ言い残して集合場所へと移動していく新道に、コア君は何を言うわけでもなく視線すら向けず、小さくため息を漏らす。
少し羨ましい……。
ため息に漏らしかけた言葉を混ぜ、次の来客への言葉を口にする。
「今は敵かい?」
「であれば、既に刃を抜いておる。お主と言葉遊びをしておる時間はない、此奴を任せた」
「市羽 燈花……君に負けたのかい? メニアル」
振り返れば、先程まで新道が居た場所は空間が裂かれており、そこから市羽を抱えたメニアルが姿を表した。
「ちと疲れて眠っておるはおるが、我の完敗じゃ。実に見事であったよ」
「そういう君は、随分と真新しい服を着て元気そうだけど?」
「元気な訳があるか。服は贈り物、我とて立っておるのが精一杯じゃ……まぁ、経験の差よ」
コア君が用意した簡易ベッドに市羽を寝かすメニアルは、確かに振る舞いこそ気丈ではあるが息は時折乱れ、コア君から見ても隙だらけ。
具合を観察すれば、むしろよくココまで市羽を運んできたなと思うほど。
だがコア君はメニアルの様子には触れず、隣に立ち並び市羽の様態を診る。
目立った外傷は無く、治り続けている火傷の様な痕も、少しすれば綺麗になるだろう。
しかし異常な程に高い体温。
寝ているにも関わらず消費し続けている魔力。
それでも尚、一定に保たれている呼吸。
「あの強化魔法を使ったんだね。違うね、今も使い続けている感じだ……うん? あぁ、なるほど……」
暫くブツブツと独り言を漏らし続けたコア君が何度か頷き、上下に挟むように魔法陣が展開される。
「どうじゃ?」
「うん、少しすれば目も覚めると思うよ。疲労ももちろんだけど、今の市羽ちゃんは魔力枯渇の状態に近い。だけど、回復魔法はこっちで用意したし、発動している強化魔法はこっちで一時的に止めたからすぐに魔力も戻ると思うよ」
説明をされてもいまいち理解しきれていない様子のメニアルを見て、コア君はうーん……と悩みながら簡単に簡単にと言葉を続ける。
「市羽ちゃんの使う強化魔法は、こっちで一般化している強化魔法とは別物なんだよ。扱う難易度も段違いで高いし、その分効果も高い。けど今回のは更に別、前にショトル戦で使っていた強化魔法とは少しだけ違ってね。前回のは絶対に魔力を外部へ漏らさない様に気を使っていた。
だけど今回のは、多少の無駄を承知で発動する以外の手順を簡略化したみたいだね。調整も維持も全て自動で行われている。」
「そんな事が可能なのか?」
「実際に目の前で可能にしている子が居るし、こうやって解析できれば納得できる部分も多いよ。理屈は簡単なものさ。予め魔力を貯める魔法陣を体内に別で用意していて、そこから維持と調整を行う魔法陣に関連付けさせている。市羽ちゃんがその魔法陣を発動すれば、後は勝手に魔法陣が貯めてた魔力が尽きるまで強化魔法を維持する仕組み。
外部から魔力が供給される限り魔法を発動し続ける、その魔力も自動で回収する様にする――半永久の障壁なんかを作る時と同じ、魔法陣の使い方としては初歩も初歩さ」
ただ、市羽のソレは常軌を逸している。
あまりにも複雑で繊細な魔法。一歩間違えば自滅も免れない。本来この方法では不向きすぎる事をコア君は理解している。
いや、不向きとかじゃないね。僕でも出来るかどうか……。
そもそも魔力を体内で棲み分けさせるなんて、下手をすれば魔力が暴走して弾け飛ぶ。僕は絶対にしたくないね。
「言葉ほど簡単ではないのであろうな」
「君が相手だと制御に意識を回せないと考えていたんだろうね」
「事実そうだったわ。気を抜く暇なんて無かったもの」
声のした方へ視線を向ければ、目を覚ました市羽がコア君の魔法陣に触れて消し去り、起き上がるところだった。
その様子にコア君は苦笑いを浮かべる。
暴走を起こさない様に発動を止めていたはずの魔法も、代わりの回復魔法も、市羽はいとも簡単に解除してみせたのだ。
更には自身の魔法にも即座に手を加え、先程よりも安全に安定を見せてから停止した。
これにはコア君も何か言葉を発することができず、そっと小さく息を漏らすに留まってしまう。
「起きておったのか」
「今ね。少し休むつもりがまさか寝入ってしまうなんて、己の未熟さを知れたわ」
「寝入るという程でもなかろう。暫くは休め」
「夜継君の所へ行くのでしょう? なら、私も行くわ。コア君さんのおかげで、支障がない程度までは回復したもの」
勝手にトントンと話を進めて行く二人に、コア君は本日何度目になるか分からないため息をわざとらしく、二人に聞こえる様に大きく吐き捨て、二人の会話を遮る。
そうされれば、市羽とメニアルは口を閉じ、二人の視線はコア君へと向いた。
「僕には君達の行動をどうする事もできないからとやかくは言わないよ。ただ渡したいモノができたから、僕はそれを取りに行ってくる。僕が戻ってくるまで、もう暫くは休んでいきなね」
呆れ気味のコア君は、二人が何か言い出す前に扉を繋げ、その場からゆっくりと移動した。
-
一人、バルコニーで吹かれる風を感じ、既に最寄りでも始まっている交戦の様子を眺めながらコア君は冷えた水で喉を潤し気持ちを落ち着かせていく。
ダンジョン内は先程よりも騒がしいが、コア君的には物悲しい。
何故ならメニアルや市羽は当然、新道達ももうダンジョン内には居ない。
視線の先、飛び交い巻き起こる攻防の奥、圧倒的な存在感と魔力が渦巻くそこに皆を送り出したのは、他でもないコア君自身。
そこへ自分も混ざりたいという気持ちを冷水で冷まし、滾りを落ち着かせるのも何度目か。
「セバくん、ルーくん」
「「お呼びですか?」」
コア君が名を呼べば、即座に背後へ現れる二人。
「少し敵の数が多いようなんだ。数を減らしてきてくれないかな」
その言葉にルアールも、セバリアスもきょとんと目を丸くして、返答が中々出てこない。
二人の役目はダンジョンの護衛。レストゥフルの防衛だ。事前に常峰から伝えられており、ダンジョンマスターがコア君に移った後でもレストゥフル内には、ショトル戦以降一発、一匹たりとも侵入を許してはいない。
新道達が居なくなった今、元より足りていない人手はより足りなくなったはずなのに、コア君は暗にこの場を離れろと言っている。
その本当の理由も、二人は気付いているからこそ、どう返答すればいいかが思いつかず、やっとの事でセバリアスが絞り出したのは確認の一言。
「よろしいのですか?」
様々な意味を含めての確認。
願ってもない限りの提案ではある。あるのだが、それでは常峰の意に反する結果になってしまうのではないかと不安が残るのだ。
「ここは心配いらないよ。今度こそダンジョンも、常峰君の国も、僕等が守るさ。だから君達は迎えに行っておいで、最後の主を」
二人は深く頭を下げる。
そして顔を上げた二人の表情はとても優しい表情で、ゆっくりとコア君の隣に並び立つ。
「最初の主よ、私とルアールはお言葉に甘え、我等が主をお迎えに行ってまいります」
「だけどさ最初の主よ、ここを守るのも役目なんですよ。三人でカッコつけようとしないでください。後で俺等が怒られちゃいます。初代が言ったじゃないですか、俺等は同じぐらいの立場だって。
初代も二代目も三代目も、また一人で背負おうとしないでくださいよ」
「今度こそと言うのならば、私達も今度こそ共に戦わせていただきます」
隣に並ぶ二人は、知らない間に随分と大きくなったね。とコア君は思い、渦巻く感情は複雑になっていく。
自分が知っている時より随分と融通が利くようになり、随分と素直になり、随分と欲張りに。
それが嬉しくて、かつて自分が望んでいた暖かさをこうして形にしてくれた常峰に感謝をして、それでいてやっぱり……。
「悔しいね」
そう漏らすコア君の口元は、嬉しそうに緩んでいた。
時間を返してもらう方法を教えて下さい。
連休は、皆で休みませんか?
ブクマ・感想・評価ありがとうございます。
こんな私ですが、これからもお付き合い頂ければ幸いです。




