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眠れる王  作者: 慧瑠
水面下の波
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いざ、エルフの里へ

後半は第三者視点にしています。

俺が直接出向くと宣言してから翌日の夕方過ぎ。

質問をしたそうなセバリアス達には悪いが、俺は長時間睡眠に入って、今起きた。


「あー、うん。反応がやたら増えたから問題は無さそうだな」


寝起きで真っ先に確認するダンジョン領域内の反応は、寝る前よりも数が増えている。それに驚きはしない。むしろ、そうであって俺も安心した。


「いつも助かる。コア君」


そう声を漏らせば、言葉が返ってくる事はないが、どことなく上機嫌な雰囲気が胸の内から漏れ出てくる様な感覚がする。


反応が増えたのは偶然ではない。むしろ必然であり、反応が固まっている所を見ると、シェイドに聞いたエルフの里の位置は間違っていなかったようだ。

寝る前に、シェイドが言った位置へダンジョン領域の拡張をコア君に頼んで正解だったな。いい感じに時間短縮もできて、領域拡張したとは言え、俺の睡眠時の回復の方が上で魔力消費の気怠さはない。


寝起きの気怠さ。二度寝と睡魔の誘惑は……戦旗を掲げながら俺の周りでダンスして、俺もそっちに混ざりたい気分だが……我慢だな。


「セバリアス、入っていいぞ」


「失礼します」


ダンジョン内の反応を探ったときに、俺の部屋の前に待機している反応もしっかり捉えていた。

それに気付いてか、俺からの声を待っていたセバリアスに声をかければ、扉を開けて深々と礼をしている。


「何か言いたいことがありそうな顔をしているな。セバリアスには、この後に頼みたい事もあるし、遠慮せずに言ってくれ」


「ありがとうございます、我が王よ。では、僭越ながら……此度のご提案の意図をお教え頂けますか? ミスをしたのはシェイドであり、その拭いに我が王が出向く事は無いと愚考、私やルアールを送り込むだけで解決してみせると具申致します」


セバリアスの言葉に答える前に、寝る前に淹れた紅茶を口にしようとすると、セバリアスが新しいのを用意しようとする。

手を上げ、それを止めて冷えた紅茶でザラついた喉を潤してからセバリアスの方を向いた。


「ははっ、セバリアスは身内には厳しいな。あまりシェイドを責めてやるな。重傷を負いながらも迅速な報告の為に戻ってきた事を評価してやってくれ。

それにセバリアスやルアールに頼めば、俺の期待以上の成果を持って帰ってくるだろうと確信している」


「身に余るお言葉」


「事実だよ。ただな、今回の場合は、俺が出向く事に意味がある」


「と、おっしゃいますと」


「今、行くな。と止めないのはダンジョンの領域を拡張したからだろう? セバリアス達はダンジョン契約者だからそれを感じる事ができる。それで俺がダンジョンを離れないというのは理解できたはずだ」


「……元より我々には、我が王をお止めする権利はございません」


セバリアス達が過敏に反応するのは理解できる。

昨日も、寝る前にダンジョンの者と少しすれ違ったが、噂で聞いてか不安そうな表情を見せていた。休眠状態のダンジョンの感覚がどんなもんかは知らんけど、そこには戻りたくない事ぐらいは俺でも読み取れるさ。


ダンジョン機能を使えば、心理状況から考えまで丸わかりだとしても、使わんでも分かる程度にはな。


「そう心配するな。ここは俺の寝床だ。セバリアス達が嫌がっても、どっか隅に居座って寝てやる」


「我々が王を嫌がるなど、今後もございませんよ」


「嬉しい言葉だ。さて、話しを戻すが、今回俺がココを離れる事に意味がある。ダンジョンではなく、中立国を離れるという事に意味が」


「国から離れる意味ですか……なるほど、我が王が不在であろうと国は安泰である事を知らしめる事に意味があると」


「流石だな。セバリアスの言う通り、俺が居なければ国が危ないという認識を取り除く為に俺が出向く。

今、どの国の連中も、中立国は俺のワンマンだという認識が強い。実際の所はその通りだと言っても過言ではないと俺も思っている。それは、俺が居なければ国は脆くなり、逆に言えば俺はココから動けない認識にも繋がる。

ギナビア国やリュシオン国に俺が出向かず、使いに足を運ばせ、向こうからコチラへ招き入れた事でもその認識は大きくなっているだろう」


俺の言葉を聞きながら納得したように頷くセバリアスを見て、ある程度はもう考えついているだろうと思いながらセバリアスの答え合わせの為に続ける。


「今回はその認識を取り除く、もしくは薄める意味合いが強い。俺が居なくても国としての機能は揺るがないという事を示すために」


「今であれば、ギナビアからはヒューシ様が、リュシオン国は聖騎士団やコニュア様が証人になると」


「そういう事だ。重役から噂が広まれば、それなりに効力はあるだろう。まぁ後は……そろそろ俺も、分かりやすい形で表に出て動いとかないとクラスメイト達にも示しがな……。

帰還方法の確立に時間が掛かってしまって行動するとき、あの国の者かぁ……って動き辛くならないためにも、ちょっとは王としての俺が動く必要があるのさ」


「牽制の意味合いも兼ねているのですね」


「分かりやすい形で対等でないと、話の時に見下してくだらない高圧的な態度で受ける輩も少なくはないからな。話を聞いて貰うためにも、コチラが聞く為にも、ある程度の力の誇示は必要ってのが俺の考えだ」


俺が出向く理由は伝えた。追加で言う事があるとすれば、エルフという存在が対象であるという事。だが、それは言う必要はないだろう。


エルフが関わっているのであれば、エルフを守る為に身を売ったシューヌさんが出てくる可能性が高い。上手く行けば、そこでコンタクトが取れる。

まぁ、これは俺である必要はないんだけどな。それこそ、セバリアスかルアールが出向いても場は用意してくれただろう。


だから追加で言うとすればの内容でしかない。セバリアスなら、そこまで言わなくても分かっているはずだ。


「我が王のご意思、確かにお聞きしました。我が王が国の事をお考えになっている事は、重々承知していたはずなのですが……愚考、具申をお許しください」


「許すも何も、俺の身を案じてくれた事は分かっているし、ダンジョンの事を考えればセバリアスの意見は最もだ。

セバリアス達はそれでいいんだ。セバリアス達がダンジョンの事と俺の事を第一に考えてくれているから、俺は別の事に思考を回せる。だから、これからも遠慮せずに意見や進言があれば言ってくれ」


「それが我が王のお望みとあらば」


そう。ダンジョンの主である俺の事を第一に考えてくれるから、俺は国の王として、一人の異界の者、いちクラスメイトとして考えていられる。

情報整理にも思考を割ける余裕があるんだ。


深々と頭を下げているセバリアスを見ながら、小さく笑みを浮かべていると、セバリアスは頭を上げて言葉を続けた。


「ですが、護衛はお付けください。我が王を疑うわけではありませんが、今の我が王では万が一を回避はできません」


まぁ、寝起きだしな。俺のスキルの事を全ては話していないが、俺の雰囲気でセバリアスはそれとなく察している節があった。

時間経過による戦闘能力の向上を問われた時に、そういう効果があると言う事だけはセバリアスに伝えている。だからこその万が一を予想しての言葉だろう。


「分かった。それを言われると、俺も自信がない。護衛は……シェイドを付けよう」


「私はルアールを推します」


「シェイドへの罰だ。重傷だったが、リピアさんとセバリアスのおかげで動くのには問題ないだろう?」


「ほぼ全快までは治療しましたが……」


「汚名返上のチャンスを与えてやってくれ。今回の件はシェイドも結構堪えているようだからな――ルアールもそれでいいか?」


セバリアスから視線を外して扉へ言葉を投げかければ、ゆっくりと扉が開き、紅茶セットの乗った台車に手を掛けながら苦笑いしているルアールの姿があった。


「お気付きでしたか」


「今はダンジョン機能を使って居場所の把握はしているからな」


ルアールの言葉に返せば、ルアールは納得したように部屋の中へと入って、新しく紅茶を用意しながらセバリアスに言う。


「ほら、セバ爺もそろそろ観念しろって。これ以上は、流石に我等が王に失礼だ」


「分かっていますよ。度重なる無礼をお許しください」


「いいんだ別に。意見、進言を求めているのは俺の方だからな」


報告を聞いた時のシェイドは本当に堪えている様子だった。俺がダンジョンの主になってからすぐに頼み事をしてしまったからな……ダンジョンに居る時間も少なかった。

俺と関わる時間も無くて、申し訳無さで潰れそうな雰囲気が漏れ出していた。


今回は、シェイドとの友好も深めつつ、俺の事をちょいちょい知ってもらいたい所だな。


「んじゃ、すぐに戻ってくるとは思うが、俺が不在の間を二人には任せた。俺はこの紅茶を飲んだら城に向かうから、シェイドとガレオさんを呼んでおいてくれ」


「「かしこまりました」」


ルアールが淹れてくれた新しい紅茶を口に二人を見送ると、俺は小さく息を漏らす。


本当は俺とシェイドだけで行く予定だったのだが、流石にそれを聖騎士団は許さなかった。俺が聖騎士団を疑ったように、向こうも俺を疑った。


事実を捻じ曲げて報告する可能性があるのではないか……と。


その疑念は最もで、そう言われるのも視野に入れて話を進めていたから問題はない。問題はないが、シューヌさんとエンカウントした時は面倒にもなりそうだとため息は漏れてしまう。

しかし、聖騎士団の誰かはそれ以上に面倒だし、まだ俺の話も聞いてくれるガレオさんの方が連れて行くならば楽だ。


聖騎士団の連中もそれで納得をしたのだから、わがままを言っても仕方ないだろう。


《へい!スリーピングキング!》


《元気そうだな。岸》


紅茶を堪能しながら少しだけ脳内で愚痴を漏らしていると、脳内に機嫌の良さそうな声が響いた。


《そりゃくそったれな拘束から開放されたからな!!》


《思ったより時間がかかったな》


《同じ事を何回も聞きやがって。同じ答えしかでねぇってのにさ!だから俺は言ってやんだよ――》


機嫌は良さそうだが、相当ストレスは溜まっていた様で岸のマシンガントークが止まらない。俺は俺で適当に相槌を打ちながら、紅茶のおかわりを堪能していると、一通り落ち着いた岸から提案が出された。


《んでよ、白玉なんだけどよ》


《あぁ》


《スリーピングキングの所で住まわせてやってくれね? なんやかんやでギルドも扱いに困ってる臭くて、俺等と同行させんのにもあれかなぁって。

明日、新道達も一緒に一度そっちに帰る予定だから、そん時に連れて行こうかなって思ってんだけど》


《明日か。俺、少し遠出するから家を空けるけど、適当に戻ってくるのは構わん。白玉さんは……そうだな……うん、セバリアスに伝えておくから連れてきていいぞ》


《おん?スリーピングキングが遠出って珍しいな》


《ちょっとエルフに会いにな》


《おいおいおいおい!俺も行きてぇ!!》


《ハハハ、今度行きゃいいさ。行けるようにアポぐらい取ってくるから》


《言ったな?? ぜってぇ行くから、ちゃんとアポ頼んだぞ!》


更にテンションが上がった岸は、うっきうきなまま念話を切ったようだ。


しかし、白玉さんが来るなら資料の解析も一層進む可能性があるな。できれば、そこにシューヌさんまで加われば更に加速しそうなもんだが……まぁ、エルフの里に行ってみないと先の事は分からんな。


ひとしきり紅茶を堪能した俺も、重い腰を上げて城へと向かい、シェイドとガレオさんと共にエルフの里へと扉を繋げ、移動した。



「雨か」


「これは'視感の雨'かと思われます」


「魔法か」


「広範囲の索敵や探知に使用する魔法の一つでございます」


扉を抜けて空中に出てみれば、パラパラと小雨が降っており、遠くの方は霧雨になっていて視界が悪い。しかし振り返れば、境界線が引かれている様に雨が降っている様なことはない。


「これはエルフが使っていると思うか?」


「エルフは木々や精霊魔法のみを多様する傾向があるので、可能性は低いかと。しかし全く無いともいい切れません。エルフの里にはギルドから訪れてきていた者もいましたし、その者の可能性もあります。申し訳ありません、発動者を特定できればいいのですが」


「謝らなくていい。可能性が低いだけでエルフが利用しているのかもしれないなら、迂闊に邪魔もするわけにはいかんな。少し場所を移すか」


濡れない様に上部を魔力のみで壁を作って雨を防いでいた俺は、その範囲の外まで魔力の足場を伸ばして全員で魔法の外へと出ていく。


しかしギルドから来ている者も居るのか。リュシオン国が不可侵条約を結んでいるとはいえ、外との交流はあるんだな。


--

-


視界を邪魔するように視界を遮る霧雨の中央には、エルフの里が存在していた。

いつもならば穏やかで、自然の空気が流れるエルフの里も、今は緊張した空気が張り詰めていた。


「!?」


「どうかしたのかしら? フリム」


「今、常軌を逸した魔力の反応が'視感の雨'の範囲内にありました」


「ありましたって事は、居なくなったの?」


「わかりませんが、雨の外には移動したみたいです。キャロ、ゴレアさん達は」


「偵察に行ってるわ。もう少しで戻ってくると思うから、その時に伝えましょう」


里長の家の一室を借りて魔法を使っていたフリムは、自分の魔法領域に現れた自分の感覚を疑う様な反応に戸惑いを隠せていない。

視感の雨を発動している最中は無防備になってしまうフリムの護衛をしていたキャロも、冷静に答えるもののフリムの動揺に一層警戒を強めた。


それから数分ほどすると、部屋の扉を開けて、少し濡れているゴレアとファイルアンが入ってくる。


「戻ったぞ。今ん所は攻めて来る様子は無いが、少しずつ包囲網は狭くなってるな。一気に攻めてくるのも時間の問題だろう」


「……どうした? キャロ、フリム」


偵察結果を告げるゴレアも薄々気付いていた二人の様子の変化に、ファイルアンが問いかける。


「フリムの魔法範囲内に、常軌を逸した存在が一瞬だけ現れて消えたらしいのよ」


「常軌を逸した存在?」


魔法維持に集中しているフリムに変わってキャロが答えると、ゴレアは首を傾げて考える様子を見せ、ファイルアンは少しハッとした様子で口を開く。


「もしかして、魔王……か?」


「分からないわ。私の探知はソコまで広くないし、その存在を感じ取れたのはフリムだけだもの。ファイルアンやゴレアは見ていないんでしょう?」


「俺は見なかったな。ゴレアは?」


「いや、俺も見ていないな」


そこから会話は広がらず、しん……とした空気が広がる。

魔王という単語を否定でいない現状では、その可能性だけで最悪の状況を三人の脳裏が過っていた。そんな中、集中していたフリムが言葉を発した。


「多分魔王ではない……と思います」


「根拠は?」


「私の魔法を妨害する事もなく、すぐに領域外に出た様子でした。いきなり上空に真四角の部屋が現れたのですけど……もし魔王なら魔法だと分かった瞬間に妨害をしてくると思うんです」


フリムの言葉になるほどと頷いて見せる三人に、更にフリムは言葉を続ける。


「ただ、膨大な魔力を持っているのは確かです。私が知る中で、今までで一番多い魔力を感じました」


「抑えるわけでもなくか」


「はい……言える事は、私達の手では負えない相手だという事です」


フリムの言葉を疑う者は三人の中には居ない。魔法や魔力に関しては、四人の中で一番長けているのは確かであり、フリムの使う魔法と感覚には信頼を置いている。


「簡単な依頼だと思ったんだがなぁ。今日は厄日か」


苦笑いで頬を掻きながら呟くゴレアに、残りの三人も似たような表情を浮かべて気持ちを無理矢理落ち着かせていく。


ゴレア達'消えない篝火'が受けた本来の依頼は、最近近辺の魔物の生態がおかしいから。というエルフからの調査依頼だった。調べて、異常があれば報告。追加でエルフからの依頼があれば解決をするか、自分達では無理そうならギルドへ一度持ち帰り、再度依頼する。


そんな依頼だったにも関わらず、来て調査をしてみれば魔族がいきなり現れ、何故か武装した者達もエルフの里を襲おうとする事態に。

咄嗟に対応した四人とエルフ達の協力もあって、なんとか現状維持まで持ち込んだが、そこでフリムの報告。


「エルフの長に報告は」


「まだよ。とりあえず、ゴレア達に報告してからにしようと思ってね」


「なら、俺とファイルアンで長には報告をしてくる。正直、そんな相手が出てきたなら、里を破棄する事も考慮してもらわんとな」


「報告はゴレアだけでしてくれ。俺は、できるだけ生存率の高そうな逃げを考える」


「そうか。頼むぞファイルアン」


「あぁ」


腰を下ろして目を閉じ始めたファイルアンを見たゴレアは、視線だけでキャロの集中に戻ったフリムとファイルアンの二人を頼む。と合図を送り部屋を出ていく。


残された三人に会話はなく、キャロも出来る限り警戒を高めていくと――。


「おや、随分と勝手の悪い魔法をエルフが使うと思ったら、なんだ…人間がいたんだねぇ」


「ッ!!」


無警戒ではなかった。キャロはいつも以上に、ファイルアンも思考に集中しながらも警戒はしていた。更には、感じ落としをしないようにフリムも集中を高めていた。にもかかわらず、部屋に突然現れたフードの人物に気付かなかった。


「そう警戒はしなくていい。私はエルフの味方でね、木々が騒がしく、エルフの里が襲われていると言うから見に来ただけだ」


「いきなり現れて警戒するなって方が無理じゃないかしら? せめてフードを外してからそういう言葉は言うべきね」


「フード無しで君達の前にでると、今よりも君達は警戒すると予想しての事だ。それに、あまり顔を見られるのは好きじゃないんだよ。だから、このままで警戒は解いてもらいたいね」


一層警戒心を高めていく三人に対して、フードの人物は明るい声色で言葉を吐いていく。その様子は、口ではそう言うものの、別に警戒を解いて貰う気は無いとすら受け取れた。


「さっきの魔力も貴方ですか?」


そんな中でフリムが問えば、フードの人物はん?と首をかしげる様な動作を見せて答えた。


「あぁ、さっきのは私ではないよ。ただ私の客人も一人いたようだけどね」


「複数人居たという事ですか?」


「この魔法だと、あんなやり方をしてくる相手をハッキリと把握はできないか。そうだよ、若き娘さん。三人居たが、君の魔法の探知に引っ掛かったのは一人の魔力だけだ」


「言い切るわね」


フリムの質問に答えるフードの人物の言葉に、キャロが疑いの視線と言葉を向ける。


「木々は私の目であり耳だから、知ろうと思えば見えるのさ。さて、私は私でもう少し様子見をするとしよう」


「待て」


「何かな?」


会話を切り上げて堂々と部屋から出ていこうとするフードの人物に、今まで話の流れを聞きながら構えていたファイルアンが呼び止める。

フードの人物も、それに応える様に足を止めてファイルアンの方へ体を向けた。


「名ぐらい名乗ったらどうだ」


「別に君達に名乗っても仕方ないが、そうだね……彼等の為に私を知らせる為に名乗っておこうか。私は'シューヌ'。ついでに、そこの若き娘さんが感じた魔力の相手は、君達の敵にはならないだろうから安心していいよ」


「何故そこまで言い切れる」


「会えば分かるさ。その時は、是非私に出会ったことを伝えておくれ」


そう言い残して、今度こそシューヌと名乗ったフードの人物は部屋を出ていった。


そしてまた部屋には三人だけになる。

だが、先程とは違い、シューヌが居なくなった事で張り詰めすぎていた緊張が解れ、大きく息を漏らす三人。


「一体何がどうなっているのかしらね」


「わかりません。私達が何に巻き込まれているのかも」


「考えても仕方ねぇ。ゴレアが戻ってきたら、もう一度作戦会議をしてまとめよう」


最後はファイルアンの言葉に頷き、滲み出ていた嫌な汗を拭いながらも三人はゴレアが戻るのを待った。

体調崩しました。次、遅れないように早く治します。



ブクマありがとうございます!

更新が遅れがちになる時もありますが、どうぞこれからもお付き合いください!!

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― 新着の感想 ―
[一言] いざ、エルフの里へ で読み終了です。 うーーん、これどうだろう? が多々ありましたがパスして何とか読めました。 しかし、ボロボロに負けたやつが護衛? あり得んだろ!! でギブアップ。
感想一覧
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