会談
「問いの前に本題の時にも関わるであろうから伝えておくが……私は勇者市羽の事は当然、漆 彩ならびに城ヶ崎 月衣、藤井 藍が異界の者である事を知っている。
これに関しては、特定の上層部のみが知る極秘情報にしている為、安心をしてほしい。この場では私とヒューシのみだ。
加えて、眠王がダンジョンマスターである事は、この場に連れてきた部下達は皆が承知している」
つまり、知らぬ存ぜぬで逃げられると思うな……という事ですか。
あぁ、胃がキリキリする。ご丁寧に逃げ道まで塞いで、ペニュサさんは一体何を俺に聞きたいというのだろう。
「分かりました。それを踏まえてお聞きしましょう」
俺は悲鳴を上げようとしている胃に、労いの紅茶を流し込み腹をくくる。
ペニュサさんは、俺の覚悟を察して……という事ではないだろうが、真剣な顔をしてできるだけ響かないように、しかし俺にはハッキリ聞こえる声量で口にした。
「単刀直入に問うが、漆 彩は同性愛者なのか?」
んんんーーー。ぶっこんできたなぁ。この問いの意図が分からねぇなぁ。
仮にそうだったとして、ペニュサさんにどういう問題が生じているのかが、一切想像できない。俺に問う理由も分からない。
ちゃぷん。と胃を労う紅茶の音が不思議と心地よくて、このまま睡魔に拉致されたい所だ……が、まぁ、この後の打ち合わせもあるし、ペニュサさんには何か聞かねばならない理由があるんだろう。
眉間に寄りかかったシワを指でほぐしながら、俺は当たり障りの無いであろうラインを探りながら答えた。
「その傾向はあると思います。ですが、当人の問題であり、俺個人としては否定もしなければ咎めようとも一切思っていません。
中立国としての問題でもないと思いますが……何故、そんな事を?」
国としての切り離しはできた。個人の意見も言ったし、そうだという断定はしていない。ふわふわとした返答ではあるだろうけど、それを突かれる前にこっちとしても話題の核心を見抜きたい。
こういうのはテンポだ。時間が限られている事には変わりはないが、今までのやり取りの感じからしてペニュサさんのテンポなら……。
「国としての問題ではない。初めに私事だと言ったはずだ。
開発地区に屋敷を構え、近場の貧困層を限定的に囲っている報告はあがっているが、今の所は問題ではない。
今の質問は……そのだな……」
まぁ、こうして俺からの質問へと移れる。レゴリア王とか相手だと、もう少し切り替えタイミングをずらさないといけないだろうけど。
しかし俺が知らない事を口にしたな。
限定的に貧困層を囲ってる?前に頼んでいた、自分の戦力集めか?
市羽からも、彩からもそんな報告は受けていないんだがな……。
俺が少し考えていると、言葉を詰まらせていたペニュサさんは、指でちょいちょいっと近寄る様に合図を出してくる。
それに応え、身を乗り出してペニュサさんに近づくと――。
「アタシの縁者が居る。女の子だ」
今までとは少し違う砕けた様なトーンで、本当に囁く様に呟いた。そして俺は頭を抱えた。
色々と聞きたい。
将軍の縁者が何故スラム街に居るのか。
仮に何かしらの問題があったとして、ペニュサさんはソレを知って尚放置しているのか。
それを知っているのは、誰がいるのか。
他にも、根掘り葉掘りとまでは行かずとも、聞きたい事が頭の中で並んでいく。……だが、時間が足りない。
後どれぐらいでリピアさん達が戻ってくるかも分からない訳で。とりあえず優先して聞くべき事を聞くか。
「すみません。答えられなければ拒否してください。
その子の名前と、年齢は」
「'エニア'だ。今年で、七か八のはず」
'のはず。'ねぇ。予想するに、ペニュサさんはエニアちゃんとは長期間会っていない。最悪、一度も会ったことがない可能性がある。
どういう経緯でそうなったかは知らんが、無闇に詮索して首を突っ込むべきじゃないのは確かだな。
俺にとっては、ペニュサ・パラダの過去云々よりも、彩がそれに関わってしまっている方が大問題だ。
頭の中で、彩や市羽、ニャニャムからの報告を思い出して、今聞いた名前を思い出していく。そこから該当しそうな子供……エニア。一人居たな。
スラムチルドレンの中に一人。小さい女の子で、一番最初に彩からスリをしようとした子。
そして何故かショトルが擬態していた箱を持っていた子が、確かそんな名前だった。
「それで、俺は彩に手を出さないよう注意でもすればいいですか?」
引き取らせろ。と言うのなら、是非そうしてくれと言いたいが、今まで引き取らなかった所を見ると、こういう事だろうな。
「察しが良くて助かる。あの子が望むのならば、その時は構わないのだが……その、無理矢理にというのは止めてもらいたい。頼めるだろうか」
「分かりました。それとなく、素性がバレない様に伝えておきましょう」
乗り出していた身を戻し、椅子に深く腰を掛けて紅茶を一口。
もう、なんか、胃袋がもたっ…としてるけど、追い打ちで気を紛らわす様に流し入れていく。
「私もそちら側には理解はある。むしろとも言えよう。だが、あの子はまだ若く、英才的教育をするとしても、やはりだな――。どうしてもと言うのであれば、私が仁義を通そう」
英才教育も分からねぇし、ピンポイント仁義すぎんだろ。そもそもの仁義の定義が分からなくなってくるわ。
口の滑りも軽やかになり始めてくるペニュサさんに頭も胃も痛くなりつつ、早急にこの話題を終わらせる事にする。
「もしもの事があった場合に把握しておきたいので聞きますが、その子の事を知っているのは他には?」
「ゴゴールという王都の工場で働いている者が一人。それと……現死神は知っている。死神の名は、控えさせてもらいたい」
俺の言葉が詰まった。もう、頭痛い。早く話題を変えたい。
まさか、このタイミングでその単語を聞く事になるとは……。というより、聞いておいてなんだが、あまりにもペニュサさんが軽率すぎる。
当人含めて三人しか知らない内容を、こうも俺にペラペラと喋るのはいかんでしょ。
「要件は分かりましたが、内容的に漆本人に言ったほうが良かったのでは?」
「口の堅さや、頭の回転は眠王の方が上だろう?
私は、ここ中立国との取引に関して、ある程度の権限を預かっている。私の信頼は買うべきだと思うがね」
それは脅迫というか、職権乱用になるのでは?と思うけど、ペニュサさんに対して中々に好感が持てた。
エニアちゃんを考えて暴走しているのかと思ったが、ある程度は考えがあっての俺に話した様で少し安心だ。
そういう事なら、俺の知りたい事を聞いても良さそうだな。
将軍の地位を持ち、異界の者の情報を知る権限もあり、何より中立国との取引に関して発言権も得られる信頼をレゴリア王、いやギナビア国はペニュサさんに置いている。
だったら知っているだろう。以前リピアさんにそれとなく聞いた事もあったが、詳しい話は聞けなかった事でも。
「では俺とペニュサさんの個人的な信頼関係構築の為に、一つ俺からも問いがあります」
「いいだろう」
「これは俺の周りでは、一人しか知りません。俺がそうである事は……ログストア国には、二、三人ぐらいですかねぇ……。ログストアが保持する兵器について、俺は知っていて、それを起動する事ができる事は」
「!?」
俺の言葉を聞いて、ペニュサさんの表情は驚愕の色を見せる。
ドンピシャだ。やっぱり、ペニュサさんは知っている。他国がログストア国に攻めあぐねている理由を……その概要を。
兵器であるかは怪しかったが、キーがチーアだという事は知っていた。
モクナさんやウィニさんの反応を見るに、それが何かしらの被害を与えられるモノである以上は、兵器という言葉で通ると思ったが正解だったみたいだな。
「眠王は、鍵を見つけたというのか」
その言い方だと、俺の知っている事は知らない。……だが、俺の知らない事は知っているのも確かだ。
「まぁ、流石にそれは言えません。ログストア国を裏切る訳にもいきませんからね。ただですね、中々情報規制が厳しいと言いますか、起動する事はできるのに、それがどれだけの被害を生むかも知れていないんですよ」
「私に教えろと?」
「ご理解が早くて助かります。いざ…というときに、何も知らない兵器を勢い余って起動なんてするわけにはいかないので、教えてくれますか?
ギナビア国だけではなく、リュシオン国までもがログストア国を大国として認めないといけなかった理由を」
「その前に問いだ。その事を私がレゴリア王に報告すれば、どういう判断が下るか……眠王が分からないわけではないよな?」
俺を利用をしたくなるだろうな。もしくは、ギナビア国に吸収する事を目論見、何かしらの工作をしてくる事もあるだろう。最悪の場合、レゴリア王から他の重役にまで伝われば、戦争の単語を出す者も出てくるかもしれない。
そうなった頃には、当然ログストア国に伝わり、ハルベリア王からのアクションもある。板挟み、針のむしろは避けられないだろうな。……まぁ、知られればの話だ。
「これは俺とペニュサさんの信頼関係構築の話ですよ。国同士の話ではない。それとも、そういう話をお望みで?」
そう。これは個人での会話だ。
もちろん、ペニュサさんがエニアちゃんと言う縁者を切り捨てられる性分なら、これは俺のミスだ。
だがペニュサさんの天秤はコレと釣り合う。ギナビア国に傾くことはない。
エニアちゃんの事をレゴリア王が知っているのなら話さなかったが、知っているのはゴゴールって人と現在の死神のみ。知られたくはないし、知られれば困る事があるのは一目瞭然だ。
「分かった。これは部下が戻ってくるまで時間が余った為の独り言だ」
「目は瞑っておきましょう」
葛藤の末、ペニュサさんはゆっくり口を開いていく。
俺は、目を閉じながら内心で笑みが浮かぶ。
「ソレが起動したのは過去に三回。初めて確認された初回、ログストアという国ができる数年前に一回、そしてログストア二代目国王がギナビア国に国を売ろうとした時に一回だ。
故に私は実物を見たことはないが、確かにソレは存在し、三回目の際にギナビア国は敗走した記述がある。……ソレは、各国の上層部では'神の城'と呼ばれている」
一瞬の迷いで切り捨てらずに、ペニュサさんは話してしまった。
レゴリア王が俺には隠したいであろう情報を……。つまり、これで俺とペニュサさんは共犯者だ。
にしても'神の城'とは大層な名前なもんで。
「'神の城が顕現せしとき 神は怒り 裁きを下す
神の眷属は個を審議し 制裁を下す'
古くからある伝えだが、実物を見た者達は偽りなしと口伝する」
ログストア建国が約三百年前。そこから二代目となれば……二百年から、それより前程度だろう。メニアル辺りは、実物を見たことがある可能性があんのか。
それだけ時が経った今でも、二つの大国は打開策を見つけきれていない。
「なるほど、よく分かりました。もしもが無いように気をつけないといけませんね」
「それを互いに望むべきだ」
本当はもう少し詳しく聞きたい所だが、これ以上は天秤を傾けかねない。
実際の所、俺から情報を引き出すため…だとでも言われれば、レゴリア王は容認する程度だろうしな。
ふと、後ろから扉の開く音がして振り向けば、ラフィが全員を引き連れて部屋へと戻ってき始めていた。
「我が王よ、奴隷の振り分けを終えました。私が九名、リピアに七名就けています」
ラフィから受け取った隷属権限移行書に目を通せば、確かに報告通り移行先の所にリピアさんの名前が七枚、残り九枚にはラフィの名前が書かれている。
フラウエースは……あぁ、なるほど、人間として隷属化させて、調教師のスキル持ちって事で外に待機させてんのか。だから部下の人達が疑問にも思わないと……。
フラウエース――フラセオ資料を見ながら納得していると、ピリッとした感覚が体を走った。
これは俺が何か干渉を無効化した時の……?
感覚に従って視線を向けると、その先ではヒューシさんが驚いた顔で俺を見ている。
「なにか?」
「あ、いえ、自分は念話のスキルを持っていまして……」
ペニュサさんの隣にまで移動して座っていたヒューシさんは、焦ったように立ち上がり自分のスキルを暴露した。
その様子にペニュサさんや武装兵の人達は困惑しているが、俺はヒューシさんの念話を無効化したんだと理解する。
《すみません。少々、特殊な体質で》
《こ、これは、念話……ですか?》
「それは奇遇ですね、俺も念話持ちなんですよ」
手で座る様に案内しながら、ヒューシさんの質問には口で答える。
変に不信感を抱かれても面倒だしな。
《それで、念話の理由はなんですか?》
俺から繋げば、許可しなくても念話持ちとも念話は可能なようで、ヒューシさんは少し焦りながら念話を返してくる。
《フラウエースの件で、一度フラウエースは隷属魔法が消えていた為、本人同意の上で改めて隷属化している事をお伝えしようと思いまして……》
《なるほど。だから人間として隷属権限移行先の発行を出来ていると考えていいんですね?》
《はい》
《わかりました。これ以上はペニュサさんにも不審がられるので、話題を先に進めますね》
まぁ、ペニュサさんは念話をしている事を察しているようだが、武装兵の皆さんがピリピリし始めたので、これ以上の沈黙はね。
「それじゃ、奴隷の件はこれで一旦終了として、次はダンジョンについてなのですが」
「それについてだが、ギナビア国から中立国にヒューシが滞在する予定だ。最終的判断は、私とレゴリア王、そしてヴァジア元帥が行うが、相談と提案はヒューシと共にしてくれ」
「改めて、ギナビア国よりレゴリア王代理として参りましたヒューシ・フォポトリアです。以後よろしくおねがいします」
てっきりペニュサさんが話をするものかと思っていた俺は、説明を聞いてヒューシさんへと視線を移すと、立ち上がって様になっている敬礼を見せてくれた。
立ったり座ったり、忙しくさせて申し訳ないな。
しかし、ヒューシさんがケノンに届けて貰った手紙の人員か。
念話があるから、レゴリア王とも常に連絡を取ろうと思えば取れるし、将軍補佐官として軍部内にも精通してる……と。
「そういう事でしたら、どうぞお手柔らかによろしくおねがいします」
目配せだけになってしまうが、小さく礼を模してヒューシさんを座らせ、リピアさんに合図を出す。
「一応こちらで、今回そちらにお貸しするダンジョンの構造を用意しておきました」
俺が言い終わる前にリピアさんはラフィと協力して、ササッと武装兵を含めた全員に資料を行き渡らせた。
「初めにヒューシさんに確認なのですが」
「なんでしょうか」
「ダンジョン内で死亡者が出た場合、その死体の取り扱いはどちらにあるのでしょうか」
「死亡者が出る可能性があるという事ですか?」
「ダンジョンにどういう方々が入るかを俺は知りませんが、万が一を絶対安全なんて言葉で保険したくないんですよ。
何かの病気を患っていて、ダンジョン内で突然死亡してしまった場合、それが戦闘中に起こってしまったら連携は崩れ、そこから致命傷を置い、ダンジョン外に出るまでに全滅なんて事があるかもしれません。百人入って、一人も死亡しない……なんて保証を俺はできません。
ギナビア国からの要望を聞き入れ、武具などの配置はしますが、二十四時間体制で俺が監視するなんて事はしませんし、できません。
俺は、ダンジョンマスターでもありますが、国の王でもあります。理解はしていただけると嬉しいのですが」
実際あり得る事だろう。ランナーボアだけ見ても、不意打ちであの突進を食らえば、軽傷なり重傷なり負う者が出てきてもおかしくない。
それが一人なら、ダンジョンから出られる確率が百パーセントなんてことは無い。
今まで大国は、自国で確保したダンジョンしか訓練などでも使ってこなかっただろうから、意識が向かなくても仕方のない事だとは思うが、今回は違う。
ダンジョンで死者が出たという事は、ギナビア国の人間がこの国で死亡した事になる。それを陰謀だ作為的だなんだと難癖付けられたらたまったもんじゃない。
「もし死亡者が出た場合、我々ギナビア国が引き取る以外の選択肢をお聞きしたいです」
「ダンジョン側で吸収させてもらいます。スケルトン系が分かりやすいですかね……」
俺は説明の為に、ダンジョンの機能から'スケルトン'という魔物を喚び出す。
突然、俺の隣に現れた自立する人体骨格模型に、ラフィとリピアさん以外が驚きを見せ、武装兵に至っては武器を構えた。
だが、俺は無視して話を進める。
「こういうタイプの魔物を召喚する時、死体などがあれば消費魔力を抑えて召喚する事ができます。それに、吸収した死体を再利用すると、生前のスキル関連を多少なりとも使えたりするメリットがあるんです。
要は、自然発生的するスケルトンを任意で発生させられるんですよ」
実際の所、本当にスケルトンという魔物は、死んだ人間の骨に自然の魔力と複数の残留思念にとって生まれたりする……らしい。
セバリアズが用意してくれた本には、そう載っていた。
「……できれば、死体はこちらで回収をさせていただきたい」
「それは良かったです。もしこちらに譲渡を、という話になるようでしたら、どうにかしてギナビア国に引き取って貰おうと考えていたので」
ヒューシさんにはかなり悩ませてしまったようだけど……本当、面倒な事を考えなくて良かった。
先の事を考えれば、ギナビア国の死者が出た時、こちら側にメリットがあってはならない。ここは明確にしとかないと、レゴリア王はまだしも話したことの無いヴァジア元帥が何を言い出すか分からん。
「では次ですが――」
今度は気を取り直したヒューシさんが資料を取り出し、俺に手渡してくる。
どうやらコレは、ギナビア国が所望する武具の一覧表と個数などを記したもののようで、実に二十枚以上……。
これは話が長引きそうだ……。と思いながら資料に目を通し、途中スケルトン君に紅茶のおかわりを頼んでみたりしながら会議は進んだ。
そして、ラフィとリピアさんがおやつを用意してくれたりして三時間半。やっと、ひとまずは…という形で会議が終わった。
「では明日、大地の爪痕の皆様を交えつつ話を詰めていくと言う形でペニュサさんもいいですか?」
「あぁ。魔物の配置や種類、攻略難易度などは現役を交えた方がいいだろう。部下共や奴隷も疲労の色が見える……これ以上は、あまり有益では無さそうだ」
途中から椅子やら飲み物やらを用意したとは言え、ペニュサさんの言う通り全員に疲れの色が見える。
長距離移動してきて、飯を挟んだとしても意見も言えない会議は疲労がたまるだろうな。これは俺の配慮不足だった。
「気が回らずすみません。どうぞ今夜はゆっくりとしていってください。今日から奴隷は全てこちらで引き受けさせて頂きます。
ラフィ、リピア、手の空いている者を数名呼んで皆さんの案内を。二人は奴隷を連れて食堂に」
「「かしこまりました」」
一礼をした二人は、奴隷達を連れて会議室を出ていく。
「何から何まですまないな」
「こちらこそ段取りが悪く申し訳ない。でも、いい方向で話がまとまりそうで良かった……ヒューシさんも大変優秀な方で、今後も色々とお世話になります」
「自分こそ学ばせていただく事が多いようなので、身が締まりました」
「ハハハ、どうぞお手柔らかに。
ギナビア軍の皆様も、長々と付き合わせてしまいました。また明日もよろしくおねがいします」
ペニュサさんとヒューシさんと握手を交わし、武装兵達にも軽く礼を告げた俺も、専用の控室へと移動する。そして、そこから寝室へ。
「おかえりなさいませ。我が王よ。一つ報告がございます」
「フラウエースの事か」
「その件が報告できなかった事についてです」
部屋に戻ると、ルアールが深々と頭を下げていた。
「報告できなかった理由?」
「はい。精霊魔法を使われていたようで、精霊に監視されていました。彼等は魔力の流れに聡く、ダンジョンの機能でご報告にも感づかれる可能性があったため、遅らせてご報告をと判断しました」
「今、その精霊は」
「我が王が出ていかれ、数分後には精霊魔法が切れた様でダンジョン領域から出ていった事を確認しています」
なるほど……。精霊魔法で監視ねぇ。
ペニュサさん達か、それとも別の誰かか。
「誰が使ったか特定はできそうなのか?」
「誠に勝手ながらケノンを使い、後を追わせています」
「いや良い判断だ。助かる」
「お褒めに預かり光栄です」
それでもまだ特定出来ないとなると、ペニュサさん達ではないか……。
さてはて、何処の誰か気にはなる。だが、今はケノンに任せて明日に備えるかな。
次は、大地の爪痕の皆の視点になると思います。
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