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眠れる王  作者: 慧瑠
見えてくる意思
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一方その頃:眠王の昼食

眠い。眠すぎる。

何処までも寝れる気がする。


「ずっと死ぬほど寝ていたい。心身が朽ち落ちるぐらいまでは寝ていたい……」


シーキー作の'だめ人間製造クッション試作型'に身を沈めている俺は呟いた。ちょっとだけ視線を動かし部屋を見渡して……。


「寝よっか、俺」


部屋を広くしても尚積み上がる紙束を見なかった事にして呟いた。


実は、日に日にジワジワと寝室兼仕事部屋を広くしている。理由は簡単。山積みにされるより横並びにされたほうが俺の気が楽なんです。圧迫感が無いんです。

何が山積みか?言わずもがな、書類ですよ。


最近では、魔族達も狩りをしながら周囲の森の環境などに慣れ始め、地下組もやっとダンジョンの構造を把握し始めている。

ちょこちょことした小競り合いがあるものの、大きな問題に発展する事もなくメニアル達の働きもあって解決も早い。


天空街の施設もそれなりに揃ってきて、今は最終調整段階。リピアさんやセバリアス達には本当に助けられっぱなしだ。


んで次に、律儀でありがたい事に二日に一回ぐらいのペースで各組からの状況報告。

リュシオン組は、鴻ノ森とジーズィ以外周囲に顔も知れ渡り有名人扱いで、先日の一件もあり国民の印象は良好。佐々木と田中も、鴻ノ森監視の元でスキル使用の練習をできているらしい。


ログストア組も大きな問題は今の所無い。

新道達はエマスがついているし、現在はハルベリア王の手伝いを熟しつつ戦闘訓練に勤しんでいる。皆傘一行は、テナントを借りれたとかで花屋を始め、武宮は街の鍛冶屋に弟子入り継続。安藤も、何やかんやでモクナさんの手伝いをしている内にメイドや執事さんと友好な関係が築けているとか言っていた。


そしてギナビア組。

市羽と彩が一代限りの爵位持ちになったのはいい。いいのだが……最近、お見合い話が急増中で困っているとの事。

当然受ける気は一切持ち合わせず、彩に至っては餞別ラインに立つにはまず、令嬢を場に立たせろ!と宣っている始末だ。城ヶ崎も城ヶ崎でチラホラと姿を消すらしいし、藤井だけが安心して見ていられる……とニャニャムが疲れ切った声で言っていた。

ギナビアからの使者が帰る時にでも、少しニャニャムの為に持ち帰って貰って彩か市羽伝いで渡して貰おう。そうしよう。


んで最後は岸達。

二度寝前に聞いた話しでは、ダンジョンの敵にショトルの様な性質持ちが現れたとかだった。これに関しては、現地でもう少し情報を集めてもらう他無い。

ログストア管轄にショトルが居たのならば問題だが、既に知っていた場合の事を考えると、余計に突っ込む前に知れる所までは知っておくべきだと考えた。

まぁ、無理そうなら帰還を優先して欲しい事は伝えてあるし、岸達の判断に任せるしかないな。


などと報告と各組に合わせて書類にまとめていたら、いつの間にか部屋の紙束は減らなくなっていた。


セバリアスやラフィ、シーキーが率先して手伝ってくれているおかげで、承認済みだったり一度目を通したモノもあるんだけども……。


「俺って片付け下手だったんだな」


もはや、どれがどれ系の書類かは俺しか把握していないだろう。散らかっているけど、散らかしてる本人だけは何処に何があるか分かっちゃう感じ。あるある。


一度大掃除の時間でも作るかなぁ……。


頭では予定を作るものの、身体は動かず。

俺は、もそもそと動きながらクッションに身体を一層沈める。


あぁ~……圧倒的フィット感。

起き上がる気力すら奪っていくこの感じ。

こういう状態で、気がつけば寝てしまうのは、寝具で寝るのとはまた別の心地よさがある。起きた時、きっと首やら肩やら腰が痛いんだろうなぁ~と分かっていても抗えないッ!!


「王様~、飯~って何してんの?」


「見てわからんかね」


「クッションに捕食されそうになってる様にしか見えない……かな?」


「なんだそれ。最高じゃないか」


台車を押して部屋に入ってきた中満は、半分ぐらいクッションに埋まっている俺を見て苦笑いを浮かべていた。

言わずもがな、クッションは地面に置いてあり、ソレに沈んでいる俺は中満を見上げる形に。対する中満は見下げる形になるのだが……その苦笑いに含まれる哀れみ混じりの視線を向けるのは止めてくれ。


「ん?中満もココで食うのか?」


その視線から逃れる為に台車を見ると、明らかに俺では食いきれない量の食事が乗っている。


「恭司とシーキーさん、ラフィさんは献立の相談。リピアさんやセバリアスさん達は空中街に行って、こうして食事を運ぶのが僕だけだったしね。

それに、酒造の事で話しもあったから丁度いいかなって」


ルアールがそろそろ使者と一緒に奴隷を連れて帰ってくるからな。迎えの準備をシーキー達には頼んである。それでも尚、俺の世話の係を!と謎の白熱を見せていたから、適当に空いた奴がやってくれと言いつつ仕事を振り分けている。


まだ話した回数自体が少ないダンジョン勢も多いからな。丁度いい機会だわ。


「んじゃ、飯を食いながらその話しとやらを聞きますか」


中満用の椅子を用意し、机を占領していた書類を適当に移動させて、俺もフワフワとクッションごと浮く。


「……え、なにそれ。浮いてるし、勝手に紙が移動しなかった?魔法?」


「魔力操作の応用。こうしてる間にも、クッションを支える為に魔力をゴリゴリ消費してる」


「魔力の無駄じゃない?」


「俺は魔力の消費で楽を買っているんだ……」


だからその哀れみの視線をやめろ。まったく。


流石にクッションに埋まりながらだと食べづらい事に気付いた俺は、渋々椅子に移動して中満の対面に座った。


今日の飯は…焼肉定食か。寝起きだから胃にきっついなぁ。


「しかしコレも弱肉強食。食わなければ、いざと言う時に動けない」


「これは焼肉定食だけど?」


「「……」」


今の返しは中満的にもアウトラインに触れてしまったんだろう。

自分で言ったくせに沈黙に耐えきれなくなった中満は、いただきます!と先に箸を付けながら、誤魔化す様に要件を話し始めた。


「それで酒造の件だけど、やっぱりかなり時間が掛かりそう。僕は経験も知識も無いから、スキルで作った物と近い物を作るにはどれだけの期間が掛かるか分からないかな。

メニアルさんが紹介してくれたお酒作ってる魔族の人が言うには、かなり飲みやすい酒で万人受けするだろうけど、独自の味を求めた方が早いだろうって」


「まぁ、元は調理酒だしなぁ。隠し味のスキルを抜いてだと、近づけるのすら難しいか」


「一からだし、設備だけは王様のおかげで満足してくれてるっぽいけど、材料とかがーってやっぱり言ってたね」


「材料ね。畜産、農作の状況は順調だけど、まだ安定してる訳でもないしな」


「まだ外の森から狩ってきてる方が多い状況なんでしょ?肉に偏ってるって恭司も言ってたし。

なんでこのタイミングで酒造なの?短期間での成果は見込めないと思うけど」


「すぐすぐの成果は望んでいない」


そう。これは中満が居る間に済ませて置かなければならない工程の一つ。

酒の製造をしたことはないが、時間が掛かる事は知っている。機械もなく全て手作業となれば尚更掛かるもんだろう。それこそ、帰還方法が先に確立する可能性すら大きい。


だからこそ、今のうちに中満が用意した酒の味を覚えてもらわないといけない。


「今は失敗して時間が掛かってくれても構わない。とりあえず、一つの完成品を覚えていれば、目標としては十分だろう」


「どういう事?」


「万人受けする酒。メニアルのお墨付きでもある酒は、一種のブランドだ。要は、後にこの国の名産品になればいい。

もう少しすれば、ギナビアの使者の口にも入る。その味がココにあるって状況が俺は欲しくてな。記憶は美化されるが、近付ければ本物に誤認させる事はできる」


「僕が帰った後に必要って事か」


「理解が早くて助かる」


ストライクゾーンど真ん中の酒じゃなくていい。万人受けする安定の酒ってのは、それなりの需要がある。まぁ、これなら安牌だろうって品は何かとね。


「中満が居る間は問題ないんだけどな」


「あれ、結構疲れるから僕的に問題しか無いんだけどね」


「需要があるから仕方なし」


「とんでもない勢いで減っていってるの見ると、億劫になるよ……」


「水と勘違いしてんじゃねーか?って勢いで酒樽開けていくからな……」


「「はぁ……」」


二人とも口から深い溜息が漏れた。

酒の問題もそうだが、実際食糧問題にも先に手を打ちたい所だ。セバリアスの予想より消費が早い……。


それなりに節約をしてくれている現状でも数が数。やろうと思えば、速攻で山が禿げ上がるだろうな。そのうち開拓しようとは思っているものの、今じゃない。

一、二週間で育つファンタジー作物があるから何とかなる目処が立っているのが救いだ。ちゃんと管理しなきゃ即枯れる性質の作物だが……これ、自然に生えてたりするもんなんだろうか。


いやまぁ、最悪の場合はダンジョンで食用魔物を生み出して、その間にそれぞれの大国から買い入れする方法を取るしかないか。安定するまでは、ギリギリの所でローテして凌ぐ手しか無い。


もう少し余裕がある今のうちに、そっち方面も考えていかなきゃならん。


考える事が多いな。

全員の活動状況的には順調。しかし、現状のペースだから順調に見えるだけで、岸達の集めてくる情報次第では一気に進展してしまう。

そっちに追われてしまうと……手が回らないな。


人手が足りない?いや、俺の力量不足だ。俺のイメージでは、もっと人手が欲しい。

だが、ココにはダンジョン勢を除いても魔族が居る。彼等に上手く頼みきれない俺の未熟さが招いている結果だ。


ゆっくりとメッキが剥がれていく幻聴が聞こえる。

寝るのが大好きサボり魔な俺にしては、良くやった方だ。と匙を置きたい……が、俺以上にクラスメイトは良くやっている。それに応えるまでは、手に括り付けてでも置くわけにゃいかない。


「ごちそうさま。何か悩み事?」


「色々とな。正直、一番の要因が拭えない」


俺が考えている間に食事を終えた中満は、俺の視線を追うように壁に目をやった。


部屋を広くしたついでに、壁には大きな地図を貼り付けていた。約三百年ちょい前の地図であり、ギリギリログストア国の王都予定地が書かれている程度だ。


ダンジョンの位置も書き加え、できるだけ最新の情報に合わせて道や開拓状況なども書き加えてある。

そして俺は、その地図に印を書き込んでいる。


「この森の中にある凸はココだよね?他の国の周りにあるバツ印は?」


「魔族の襲撃があった場所だ」


「へぇ~」


中満は地図を見て声を漏らしている。その隣で俺は、先日から続く思考を再開した。


思ったより早くアーコミアは動き出した。それに対して記録を取ろうとしてやっと俺は気付いた事がある。

それは人間の領地の狭さだ。

ギナビア国とリュシオン国の真ん中をぶった切る様に伸びるログストア国。そこはまだいいんだが、ここのダンジョンもそうであり、森の範囲は全てメニアルの領域だった。

何より、地図がそこまでしか表記されていないんだ。


言ってしまえば一つの大陸しか書かれていない地図。

不思議に思ってメニアルに聞けば、海を跨ぎ向こうにも一応'陸'は存在している。その一角はアーコミアの領として国が存在しているらしい。

それでも未開の地も多く、世界の全てを地図にするなんて馬鹿げているとメニアルには笑われた。


海の先に興味があるのか?と言われれば、正直に言って無い。だが、アーコミアの国が存在する大陸の情報すら無いのは意味がわからなかった。

その事を俺はリピアさんに聞いてみる事にした。その結果。


「この世界の陸は変動が多いらしい。過去の記述には僅か一月で島が消えた事もあるとか何とか」


「島が一月で!?」


「あぁ」


更地などでは無い。完全に島としての原型が無くなったんだとか。

過去には海を渡ったことがあるが地図のない理由。世界地図の変化が大きく意味をなさないのであろう。というのが一つ。

そして、現在海軍まで持っているギナビアでも海の外へ行かない理由は、単純に魔族とのイザコザが原因。


外へ意識を向けようものなら、魔族の侵略が始まっていただろう。とリピアさんは答えてくれた。……が、俺はそれを聞いて頭を抱えたくなった。

果たして魔族侵略の危機だけだったか?んなわけがない。ここに召喚された時、隣国との問題が上がっていた。それも戦争を匂わせる程度に。


アーコミアはそれを見ていた。だが、俺達の召喚で事態は変わっていってしまった。

先に対魔族の構図をこっちから創り上げてしまった。

三大国が手を組むのはプラスなことだろう。しかし、三大国に張られたアーコミアの根が一斉に動き出したのはマイナス。


「拭えない要因って、襲撃の?」


「それを見て分かる様に、相手は場所を選ばない。全ての方向に散ったにも関わらず、全員が大国付近での襲撃をされた」


「……。んーと、僕達の動きはバレてるし、いつ大国自体が魔族の襲撃を受けてもおかしくないって事でいい?」


思案顔を浮かべた中満の言葉に、俺は食事の残りを口に運びながら頷いた。


「ごっそーさん。加えてこれ見よがしに魔王アーコミアは動いている。ギナビアは三魔公ニルニーアにより襲撃され、リュシオンは魔王御本人様が登場していた。んで残るは……」


「ログストア」


「可能性の話だがな」


更には、負傷兵や非戦闘民とは言え二百万のメニアルの民を見逃している。それが意味するのは……。


「敵の数が見えてこねぇや」


「まぁ、王様の考えの何処まで追いついてるか分からないけど、敵の方が多いってことだよね?それも、かなり。

それで僕達は、それを覆せる可能性があるから喚ばれた。謂わば、威力バラバラの核兵器」


「そうだな俺達はか…く……」


「王様?」


「あぁ…そうか。そういう事か、あの狸共……」


「いきなりどうしたのさ」


いきなり悪態をついた俺に、中満は驚いた表情で聞いてきた。

それに対して俺は皿を重ね終えてからクッションに沈み、脱力して一息つき答える。


「目的は魔王が持つ領地だけだと思っていたが、中満を話してもう一つ目的が見えてきた」


「大国の?」


「あぁ。'五体の魔王と魔神の討伐'を提示してきたにも関わらず、メニアルは見逃されている。本来ならば規約違反だ。

それを見逃されているのは、メニアルの領地を俺が所有し、メニアルという存在を生かしている事でメリアルの庇護下に居た魔族の反発を抑える為だと思っていた。いや、もちろんそれもあるんだろうが、もう一つハルベリア王達には目的が存在していた」


「勿体ぶるね。お答えを聞いても?」


「間引きだ」


「察した。けど、酷い言い方をするなぁ」


笑う中満に俺も釣られて笑ってしまう。

確かに酷い言い方だったが、間違いではない。


結果としてはそうなる事はあるだろう。だが、それを目的にしてるのであれば多少意味合いが変わってくる。


「張った根を取り除くのには時間が掛かる。間違いなく時間がな。

だが、その首謀者を打ち取れば粗方の根は枯れる。それでも五体の魔王の内、一体でも残ってしまえばソコに集われる可能性がある。その場合最悪大多数の魔族が、また反旗を掲げるだろう」


「その絶対数を削るのまで僕達にやらせる気だったと」


「あわよくば、自分たちの戦力以下になればバンバンザイだろうな」


「ただの高校生にやらせる事じゃないでしょ」


「向こうは俺等の事を'ただの高校生'だなんて思っちゃいないさ。どう思ってるかなんて、さっき中満が言ったじゃないか」


「……なるほどね。ちなみに、それが王様の想像の可能性はどれ位?」


そう。本人達から言質を取れていない以上、俺の想像でしかない。だが、残念ながらここまでトントン拍子に物事が進んだ可能性を考えると、十二分に可能性がある。

やたらどの国も友好的過ぎるとは思っていた。俺がこうして腰を据えた所で、向こうの利益があまりにも薄すぎるとも考えてはいた。


全てが終わった後まで考えれば、この答えがすぐに出てきてもおかしくはないのに……少し目先に囚われすぎてたな。


「半々って事にしておいてくれ」


「自信なさげじゃん」


「というより、知った所で今更大国から手を引く事も出来ないし、どちらにしろ、こうして根城を構えるには、大国の後ろ盾は必要だった。最初に言われた所で現状に大きな変化は無いさ。特に帰りたいクラスメイト達にとってはな。

これが影響してくるのは、帰った後だ」


「ふーん。そういうなら、面倒そうだから僕は詳しく聞かないけど、王様の縛りが増えたって事だね」


「! 本当、察しが良いな中満は…」


「僕じゃなくても、大体皆気付いてるんじゃない?王様は、過保護過ぎるんだよ」


「そいつぁ、知らなかった」


俺の驚く顔を見て満足したのか、中満は食器を台車に乗せて部屋を出ていく。俺はそれを見送り、改めてクッションに身を沈めるた。


縛りね。

中満はそんな風に言うが、別にそんなつもりはない。

ただ、その縛りとやらが達成できないのなら、俺が満足して寝れないだけだ。


どうやら俺の思惑と大国の思惑、そしてアーコミアの思惑は相容れないらしい。


………。

……。


「やぁ!随分とお困りのようだね常峰君」


「まず初めに、俺はDMルームの開放許可を出したっけか?コア君や」


「その事も含めて話しておこうと思ってね。座りなよ」


気がつけば、最近訪れる気力の無かったDMルームに俺は居た。

そして、いつものようにコア君が何杯目かの紅茶を嗜み、俺の分のティーカップまで用意されている。


だがいつもと違う所もある。


「それは、残り二つのティーカップにも関係してくる事なのか?」


俺の視線の先にあるのは、少しだけ水気が残っているティーカップと半分程中に残っている飲みかけのティーカップ。

今までは俺とコア君の分しか無かったはずなのにな。


「なんて言いつつ、もう予想は付いているみたいだね」


予想は付いている。だが、前回の最後に聞いた話では、増えるのは一人だったはずなんだけど。


「常峰君の言いたいことは分かるよ。すごーく分かる。実は、僕もビックリしていたんだよ。まさか――「おぉ、やっと来たのか」「分かってはいたが、若いな」二人同時に出てくるなんてね」


声がした方に振り向けば、コアの記録で見た姿があった。


鎧を纏い、流れる様な金色の長髪をまとめた渋めのイケメン。

古傷だらけの鍛え上げられた上半身を隠さず、紅蓮の髪をオールバックでバッチリキメているワイルドイケメン。


二代目と三代目のダンジョンマスターが、不敵な笑みを浮かべ俺を見ていた。


「先に二人が来たし、常峰君も色々と察しているみたいだから話は少し後にしようか」


「は?何を言っているんだコア君」


「随分とココに来ない内に魔力操作を磨いたみたいだねぇ~……常峰君」


やべぇ。帰りたい。

起きろ俺。今すぐに起きろ!今日は気分じゃない!寝るなら、ココを回避して寝ろ!!

寝起きに焼肉定食打ち込んだ胃で、アレは嫌だ!


「アハハ!やっぱり常峰君は良く頭が回るね!

それじゃあ、食後の運動?ウォーミングアップ?どっちでもいいけど、始めようか!」


振り向けば二代目と三代目以上に不敵な笑みを浮かべているコア君の姿があり、そのコア君がパン!と手を叩くとヤツが現れる。


「そんなに魔力操作を極めたいのなら、ここに来ればいいのに。あぁ、安心して常峰君、シャイな君の為に、今回も五体は雌だよ!」


「あれ?おかしいな……俺の目には六体居るんだけど」


「それは雄だよ」


クソッタレぇぇぇぇぇ!!!!


コア君のいい笑顔と共に、俺を囲んだ六体のローバープラントが一斉にぬめっとした触手を動かし襲い始めた。

私の中の魔法って、詠唱で魔法名!所謂攻撃的な魔法より、指先くるりんってしただけで片付けが出来る様なイメージがありました。むしろ、それだけで片付いて欲しいと子供の頃は夢を見ていました。


後、何故か無性にローバープラントを出したかったんです。

お許しを。



ブクマ・評価ありがとうございます。

そしてココまでお読みいただきありがとうございます!今度とも、よろしくおねがいします。

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