孤島エンカウント
今回から岸達です。
実に素晴らしきかな異世界。
仰ぐ空は蒼く澄み渡り、肌を撫でる風は陽の光で温まる体を少しだけ冷ましていく。そして塩の香りは……うん。実に良きかな異世界。
「永禮ぇ、引いてるぞ」
「んお…マジか」
バシッと来る表現が決まらずに寝転がりながら悩んでいると、隣で一緒に竿を垂らしているまこっちゃんが言ってきた。
固まり始めた体を起こして竿先を見てみれば、確かにピクピクと引いているな。
「せいやっ!」
くくっと軽く引いて針を引っ掛け、一気に釣り上げたその先には……な、なんと!!
「またコイツか」
「まぁ、普通に美味いし。いんじゃね」
ここ数日で見慣れてしまったアンコウマグロがビチッっている。
説明しよう!アンコウマグロとは。
頭にアンコウの様な発光するランタンみたいなのを下げ、海中を高速で移動するという……発光ランタンに何の意味をも持たない回遊魚である。
魔物図鑑に載ってはいるが、その実ただの食用魚だ。
「まこっちゃん、今日の調理担当誰だっけか」
「げんじぃだな」
「ぶつ切りブッコミ鍋確定か」
「一応女子陣が手伝ってくれてるから、違うのくるかも知れねぇぞ」
「その女子陣が諦めてるからしゃーない」
「鍋。美味い」
「そうだな」
俺はアンコウマグロに触れて、ユニークスキル'パーフェクトテイマー'の効果にある使役した対象のみを入れることができる特別空間。安直に名付けて'使役空間'にぶちこんで竿を垂らし寝転がる。
我ながら手際良し。
そりゃ、何日も釣ってはぶちこむ作業をしていたら、手際も良くなりますって。
「あー、永禮……上手くいけば、昼飯は鍋じゃなくなるかもしんねぇぞ」
「んあ?」
頭だけを持ち上げ、まこっちゃんの視線を追えば。
「お、おおおおお!陸じゃねぇの!!」
そう陸地。お察しいただけたかな?
そう、我々は今、海上にいる。それも船の上ではなく、平たいエイの様な魚の背の上に。
何を隠そう!このエイは、げんじぃのスキル'黄道十二宮'で呼び出された魚座なのである!
魚寄りではあるが、ある程度の魚っぽい形ならば姿を変えられ、なんと体内には生活空間完備。魚なので水の中をスイスイと進むことが可能。陸では使えないが、水場であれば素晴らしき物件……もとい魚だ。欠点としては、体内はそんなこと無いのだが、こう、背中に乗って釣りをしていると生臭い。
……もっとも、俺は船での航海を期待していたので、ちょっと残念だ。いや、二日目ぐらいまではテンション爆上がりでしたけどね?
「変顔の練習か?」
「脳内ナレーションの練習してた」
「……げんじぃ達にも目的地の島が見えたことを伝えに行くか」
「おいこら、言っとくけどテメェもコッチ側だからな」
「脳内ナレは無いわぁ」
「はぁぁ?俺からすれば、卵焼きに納豆と砂糖とゴマ油ぶっかけて食う方が無いわ!」
「んな!?今それは関係ないだろ!アレうめぇんだぞ!」
「うめぇとしても最早卵焼きじゃねぇだろ!」
「卵焼きver.俺だから卵焼きには変わりねぇ!」
とまぁ、釣り道具を片付け、まこっちゃんとワチャワチャしながら、鱗と肉厚な白身を捲りげんじぃ達の待つ部屋へと足を進めた。
別に部屋まで距離はなく、すぐにたどり着き扉を開けて一言。
「げんじぃ!貧乳こそ神が与え給うた人間の真価だとは思わんか!」
「否、永禮に惑わされるなよげんじぃ!巨乳こそが神が創り出した聖なる癒やしの体現ではなかろうか!」
「は?おー…割りとサイズは気にしない派」
部屋で一人寛いでいたげんじぃの答えに、俺とまこっちゃんは目を見合わせ、大きなため息を吐いた。
「やれやれ、あんなことを言ってますよ。真さん」
「あれはガン見で選別してますよ。そういう目です。永禮さん」
「いきなり戻ってきたと思ったら何だよ。俺は尻派なんだよ」
「んなこと言ったら俺はうなじ派だわ!」
「俺だってヘソ派だわ!」
「知るか!そもそも、なんでそんな話になったんだよ!」
「「卵焼きの話から」」
「なんでそうなったんだよ……」
卵焼きの話をしていたら、必然的にそうなるだろう普通。とは言わずに、うなじ派の俺は部屋を見渡す。
入ってきた時から気付いては居たが、橋倉達の姿がないな。
「まぁ、島が見えてきたから戻ったんだけどさ。橋倉達はどったの?」
「さっきまで訓練してて汗をかいたから風呂だってよ」
「なるほど」
げんじぃの返事を聞きつつ、俺とまこっちゃんも適当に飲み物を用意して時間を潰していると、橋倉達が戻る頃には島に付いたと、げんじぃが魚座から連絡を受けていた。
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「海の次は森かよ」
「まだ歩きそうだから、この辺で一度飯にしようぜ」
ショートソードで雑草を切り落としながら先頭を歩いていた俺に、後ろを着いてきていたげんじぃの声が聞こえ、足を止める。
全員が準備を終え、上陸すること約二時間。
比較的ゆっくりなペースで歩いて進んだが、慣れない足場とかで思った以上に体力を持っていかれているのが分かる。きっと、女子達は俺達よりも疲れているだろうし、ちっと休むかな。
「んじゃ適当に飯の準備頼むわ。俺は一応スリーピングキングに、ダンジョンのある孤島に着いたって連絡するわ。
後、ほれ、アンコウマグロだ」
開けているとは言い難いが、適当に座れそうな所を見つけて休憩を始めたげんじぃ達にアンコウマグロを渡した俺は、マッスルナイトこと安藤から渡された念話用の子機に意識を向けた。
《はい》
どうやらスリーピングキングは起きていたようで、すぐに念話は繋がる。
《アー、アー。コチラ、ナガレ、応答願ウ》
《岸か。元気そうで何よりだ》
《ノリわりぃな》
《良い返しが思いつかなかったんだ。許せ。
それで、念話をしてきたってことは、孤島のダンジョンに着いたのか?》
《いや、ダンジョンにはまだだが、'孤島のダンジョン'がある島には到着した。ギルドで買った地図で確認しながら来たから間違いはないと思うぞ》
スリーピングキングに報告をしつつ、腰に着けているポーチから地図を取り出してもう一度確認をする。
孤島のダンジョンの事をギルドで聞くと、その場所はすぐに分かった。
ログストア国より北に上がり、小国ピエルコという場所から出る船で更に北上すると小さな島が一つある。そこに'孤島のダンジョン'があるらしい。
それを聞いて俺達は、ギルドで説明をしてくれたお姉さんから地図を買い、北へ向かった。しかし王都から小国ピエルコまでは馬車が出ていたものの、ピエルコから孤島へ向かう船が出るのは二週間後とか言われてしまい、魚座で移動するハメになったと言うのがことの流れ。
この事は、事前にスリーピングキングには話している。
《ギルドの情報では、ダンジョンはまだ未攻略なんだっけか》
《あぁ。だから攻略できた際は、コアを持ち出してダンジョンの機能を停止させてほしいってよ。後は、現地のギルドが解析をして、有効に使えるかを検討するとかなんとか》
《そういや孤島と言っても無人じゃないとか言ってたな》
《前に同伴してくれていたキャロさんが言ってた島国ってココの事だろう》
《キャロさんを知らんけど、ギルドで絡まれたとか言ってた時の人か》
《そそ。チーム'消えない篝火'の一人だ》
あの一件以降、ゴレアさん達とは少しだけ付き合いができている。俺達とは違い、依頼の報酬金で生計を立てているから、あんまり会う事は無いんだけど、顔を見れば世間話ぐらいはする仲だ。
今回'孤島のダンジョン'を攻略しに行くと一言伝えようと探したのだが、どうやらどこかに依頼に行っているらしく、一応ギルドの受付の人に覚えていたら伝えていて欲しいと頼んでいる。
本当は、孤島の事を知っている様な素振りだったから少し話しを聞きたかったんだが、まぁ仕方がないよな。
《なるほど。まぁ、仲の良い人ができ始めたようで良かったよ。とりあえず、孤島に着いたのは分かった。また進展があったら連絡頼むわ》
《任せとけ。バシッとダンジョン攻略してくっからよ》
《無理しない程度にな》
《おk》
スリーピングキングへの報告を済ませた俺は皆が待つ場所へと戻り、まこっちゃんの隣に腰をおろして一息つく。
「結局鍋になったのね」
「しゃーない」
「でも今日は現地直産のデザート付きだよー」
俺達の中央でぐつぐつと煮られている鍋の隣には、古河の言う通り、折りたたみできる木製の大皿の上に盛り付けられた見たことのない果物があった。
それはそれは毒々しい色をしている果物が。
「これ、食って平気なのか?」
「私の目に狂いはないよ。レパパって言う果物で、毒は無いし、味はさくらんぼに近いって視えてるから平気」
'鑑眼'を持つ並木が言うなら大丈夫だろうけど……パッと見、握り拳サイズなのに味はさくらんぼなのか。視覚と味覚が困惑しそうだな。
個人個人で持っている折りたたみの小皿を取り出し、レパパという果物を少しだけ取ってから口に運ぶ。すると、これがなんとも甘くて美味い!
「やべぇ、うめっ。これどうしたんだ?」
「妃沙が移動途中に見つけていたの。私の目で食べれそうだって分かったから、適当に回収してたのよ」
「お手柄だな!橋倉!」
「あ、えっと……ぅん……」
何時も通り、てれてれっとして顔を俯かせる橋倉の隣では、並木がニヤニヤしている。
あんまりつるんでるイメージは無かったんだが。こっちに来てから下の名前で呼び合っているし、元から仲良しだったんかねぇ。
なんて思いつつ、げんじぃ作の鍋が出来上がった様なので皆でつついていると、俺以外の箸がピタリと止まった。
「どうしたんだ?」
「「「「「……」」」」」
声を掛けても反応はなく、仕方がないので全員の視線を辿ると……食後のデザートとして食べるつもりで置いていたレパパが乗っている小皿が、フラフラと宙に浮きながら移動しているではありませんか。
「……いやいやいやいや」
よたよた、ふらふら、と揺れて離れていく小皿を目で追っていた俺だが、それは俺のだと思い出して慌てて手を伸ばし掴もうとした。
したのだが、小皿はビクッと跳ねて、数切れのレパパを落としながら加速し始めた。
「ちょ、まて!こら!」
「岸君!それ、ミストスパイダーって言う魔物が持っていってるっぽいから気をつけてね!」
「気がついていたなら言ってくれやぁぁ!!」
追いかければ追いかける程に加速していく小皿を捕まえようと走り出すと、後ろから並木がそんな事を言ってきやがった。
分かっていたならもっと早く言ってくれと思うが……。
「何がミストじゃ!せめて霧っぽいエフェクトぐらい出して動けや!」
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「ぁ……」
おそらく魔法でミストスパイダーを束縛をしようとしていた橋倉は、小さく声を漏らしながら走り去っていく小皿と岸を見送りオロオロとしていた。
「まぁ、落ち着きなよ妃沙。岸君一人じゃないんだし、大丈夫でしょ」
「ぇ?…でも…」
「でしょ?長野君」
「んぐっ」
突然名前を呼ばれ、口に魚の切り身を入れていた俺はとりあえず頷いて返しておく。
別に話を聞いていなかったわけじゃない。本当に永禮は問題ない。なにせ、俺の牡牛座が永禮の後をしっかりと着いていき、問題があれば俺に報告をしてくれるだろう。
多分、永禮もそれを理解していて追っかけたんだと思うし。
それに、何だかんだスキルに頼りすぎない様に毎日訓練も欠かさずにやっている。安藤考案とリピアさん監修の筋トレ式戦闘トレーニングをだ。
勝てない相手でも、咄嗟に逃げてくるぐらいはできるはず。
「長野君と佐藤君って、岸君の事信頼してるねぇ~。王様と安藤君みたいな感じ?」
「信頼はしてるけどアレと一緒にはせんでほしいわ」
「そうなの?」
「安藤とスリーピングキングの信頼関係は、ちょっとぶっ飛んでるんじゃねぇかな。俺達は、互いに背中合わせで戦えても、多分百パー任せるとかできない。
だからこそ互いに補っていられるってのもあるんだけどなぁ。安藤ってか、スリーピングキングの場合はちょっと違うんじゃねぇかなアレ」
「アタシには同じに見えちゃうなぁ~」
俺は、まこっちゃんと古河の会話を耳に食事を進める。……ちなみに、俺もまこっちゃんと同じ意見だ。
安藤はスリーピングキングに命をくれた。と言っていたけど、それを俺等はできないだろう。永禮もまこっちゃんもできないと思うし、それを互いに望まない。
命を預けた背中わせじゃなくて、命をくれるなんて無理だ。普通に考えて、死ぬタイミングぐらい自分で決めたい。
だがあの二人はちょっと違う。
命をくれた対価をスリーピングキングは用意するだろう。どういう風に用意するかは知らんけど、そうそう用意できるもんじゃないし、見合うもんなんて浮かばねぇって。
リヴァイブアーマーを持っているからってのも考えられるけど、安藤の場合、無くても普通にくれてやるとか言いそうだから怖いわ―。
信頼ってか依存に近い気もすっけど、多分個々でも平気だから分からねぇよなぁ。まぁ、だからこそ、俺等とは一緒に考えられねぇ。
「なんつーかなぁ……前に市羽が言ってた'無条件の信頼'ってのだけど、あれをスリーピングキングは俺等に向けてる。例外なく安藤にも向けてるだろうけど、安藤側もそれをスリーピングキングに向けている訳で。
んー、説明しようとすっと難しいわ。考えれば、安藤側も大概おかしいしな」
「アハハ~。実は、そんなに王様達も考えてないかもしれなくない?」
「それでも多少は実績があって、頭で考えてんだろ。マジで感覚だけでやってたら、頭のネジ飛んでるんじゃねぇか?って疑うわ」
「アタシにとっては、こっちに来てからあんなにすぐに行動起こせてるだけで、結構ヤバイって思ってるよぉ。勿論、すぐに受け入れてた岸君達も。
まぁ、そのおかげで、こうしてアタシも受け入れられてるってのは確かなんだけどねー」
「ズバッと言ってくれるねぇ」
「結構一緒に居るからセーブラインが見えてきたー!って感じ」
ケラケラと笑う古河に、まこっちゃんも釣られて笑っている。その後は、俺と同じ様に話を聞いていた並木や橋倉も混ざり会話をし始めた。
ちょっと俺は食うのに忙しくて適当に相槌で合わせてるけど、こうしてみると俺達も結構まとまってきて良いグループになってきたと思うわ。
「そういや、永禮の奴どこまでいったんだ?」
「んぐっ。もーきちが見てる限りでは、追っかけっこしてるみたいだぞ」
「レパパならまだあるに」
まこっちゃんの質問に俺が答えると、並木が新しいレパパの皮を向きながら用意していく。そろそろもーきち伝いで永禮を呼び戻した方が良いかもな。
大丈夫だろうとは思うけど、騒ぎすぎると何を呼び寄せるか分かったもんじゃ……。
「あ、やべぇ、頭の中でフラグ立てたっぽい」
「どした?」
「速攻で回収された。永禮が戻ってくるけど、なんかヤベーの引き連れてる!
橋倉は焚き火消してくれ!!永禮が戻り次第ってか、一緒に逃げる準備!」
もーきちからの連絡で、永禮がデカイ蜘蛛に追われ始めたとの連絡が入った。
しかも、特大のが一匹、デカイのが三匹、中位がうん十と群れでだ。
「くっそ飯が!」
「俺なんて食いすぎて腹がキッツイ!」
俺等が食いかけを鍋に戻して蓋をしている間に、橋倉が焚き火を消して、並木と古河がレパパを布で包んでカバンに投げ込んでいる。
どれ位森を彷徨うか分かんねぇ今、食料を削りたくはないが……逃げ切れるか分からねぇなぁこりゃ。
もーきちの報告を脳内で処理しつつ苦笑いをしていると――。
「おおおおおおおおお!!!やべぇ!ドジッったあああああああ」
肉体強化でもしてるんだろうな。煮えたぎる銑鉄に溶けた液体金属も爆笑するレベルの形相でコチラに向けて走ってきている永禮の姿と。
木々の隙間を抜けたり、薙ぎ倒したりしてゴゴゴゴゴゴゴと地響きで威嚇までして追っかけている蜘蛛の群れ。
「ひぃぃぅ…」「うわぁ…」「あー、アタシ蜘蛛は大丈夫な方だったけどこれは…」
その様に女子達はドン引きしている。ちなみに俺とまこっちゃんは。
「永禮!全部触れてたりするかー?」「巻いてから戻ってこい!」
なんてヤジを飛ばしてみるが……。
「んなわけあるかボケェ!!!!できたらしてるわボケェ!!!」
永禮のボキャブラリーが減ってきている。これは、あれだ…結構真面目にヤバイかもしれん。
「おおおおおおおおおおお!」
「皆、とりあえず作戦が決まるまで逃げるぞ!」
走り抜けようとする永禮と共に、俺達も一緒に走り始めた。
「ちなみ知性はありそうだったか?」
「知らね!」
俺は永禮と並走をしながら聞いてみたが、期待する答えは返ってこない。ただの魔物なら良いけど、実はこの島の何かです。とかだったら攻撃できねぇ。
獅子座を使ってしまって、森を焼き尽くして良いのかも分からねぇしなぁ。
「そういや、もーきちから特別デカイのが居るって聞いたんだけど」
別の質問を永禮にしながら後ろを振り返り確認してみるが、俺達の腰ぐらいのデカさの蜘蛛が大量に見え、奥に一回りぐらいデカイのが三匹見える。
もーきちの報告では、特大が一匹居たはずなんだけど。
「あー…アレね。多分、げんじぃでも一目見ただけで何か分かると思うわ」
「じらさんでいいわ!」
なんかしみじみとした表情を浮かべる永禮に、少しイラッとしていると、永禮が答えを言うよりも早く並木からヒントが与えられ。
「皆!上!」
並木の声に従い上を見上げると、頭上を覆う様に糸が張り巡らされていて、その糸が何なのかを理解する前に、並木の口から答えが告げられる。
「アラクネの糸ってやつで、相当粘着性あるから気をつけて!」
並木の言葉を聞いた俺とまこっちゃんの視線は、岸に集まった。
「アラクネってマジ?」
「マジマジ」
俺の問いに真剣な顔で頷いている永禮に、俺もまこっちゃんも大きなため息を返すしかできない。これは相手の出方によっては本腰をと思うが……すでに、本腰を入れて対処しなければいけない事態のような気がしてならない。
「なんでアラクネに追われる事態になってんだよ!!」
呆れながらもまこっちゃんが聞くと、少し考える素振りをみせた永禮は、あっ…と声を漏らしやがった。どうやら心当たりがあるらしいな。
「怒らないから言ってみ」
永禮の反応に顔が引き攣り始めたまこっちゃんの優しい言葉。それに対して永禮は、えへへ。とキモい笑いかたで返して答えた。
「実はこっちの世界に来る前に、ネットでさ。ちょっと色々あって姫とその囲い煽ったんだわ。特定食らっちゃったかな?」
「「一人で対処してどうぞ」」
「ひでぇ!」
「お止まり人間。逃げるから子等が興奮してしまっている」
一瞬だけ頭上を何かが通過したと思った矢先、上から声が聞こえ、至って真面目な俺等の行く手に身長四メートル程の上半身が女の蜘蛛が立ち塞がった。
やべぇ、何も作戦考えてねぇ。
もう12月。早いものですね。
もっと上手に場面の切り替えもできるようになりたいです。できるように頑張ります。
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