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サマーポエット

作者: 王生らてぃ

私自身が主催するミニ企画「夏の短篇小説2017」に向けて詩にチャレンジ。

「RIVER」


れる

川の音

せせらぎ

石の丸い色

と草笛の音符

蝉の声は天から

雨し光となり

降り注ぐ青

波打つ白

空翔る

翼の



   〇



「NO TITLE」


ての

世界で

始まりは

無限の群青


草木

海と花

沈む陽と

明けの明星


闇を

見上げ

吸込まれ

そうになる


ふと

自分の

赤い血が

励起される


浜辺

石の壁

魚の影と

凪のにおい


風が

鳴ると

響き渡る

魂の青い波



   〇



「GLASS」


どき

見える

車窓から

雲の切れ間

差し込む陽光

非自然に浮かぶ

文字と色と記号と

それより広く穏かな

緑と青の大地の影

湾曲した川と道

混凝土の蒼碧

赤と黒と白

工場の塔

自動車

ひと



   〇



「烏の羽根」


小さな砂利の敷き詰められた

坂の上から

海が見えました


しとしと雨が降っていて

アスファルトの地面が

ひたひた濡れていました

線路がぶんぶんうなる音が聞こえて

錆び付いた電車が

どこか遠くへ走っていきました


足を踏みしめるたびに

砂利が

ぎりぎりと

悲鳴を上げて

いたい、いたいとわめきました


足を止めて

振り返ったら

海はそこにはありませんでした

白い煙があたり一面を

覆い隠して

そこは異国のようでした


足元には

真っ黒に濡れた

烏の羽が

たった一本落ちていました

それを拾い上げると

ひゅう、と風が吹いて

煙を吹き飛ばしてしまいました


水たまりに羽を浮かべると

つむじ風が

くるくるそれを回して

遊びました

きゃっきゃと嬉しそうな風が

通り抜けていきました


遠いほうから

真っ赤な炎が

燃え上っているのが見えました

白い煙と黒い煤が

混じりあって

天に昇っていくのが見えました


烏の羽は風にのって

どこかへ帰っていくように

姿を消してしまいました

それを見送って

いつまでも

いつまでも


そこに立っていると

また霧のように煙が渦を巻いて

あたりを包み込みました

遠くから潮騒だけが

ざあざあ

ざあざあ



   〇



「飛行機雲」


ちゃっかり夏の季語みたいに振る舞っている

飛行機雲というものが嫌いであまり空を見上

げないようにしている。突き抜けるような青

空にチョークで一本まっすぐに線を引いてそ

の青を台無しにするような飛行機雲はいかに

も夏らしいような気がするけれど、夏どころ

か季語として存在しない。雨が降れど雪が降

れど、飛行機は空を切り裂いて飛んでいく。


たとえば海に真っ白い線が一本引かれている

としたら、誰もいい気分はしないだろう。時

どき雨や雷を落としたり雲で表情を覆い隠し

たりする。とても身近な存在に思えても決し

て触れられない遠い景色だから、みんな何気

なく飛行機雲のことを許している。何が違う

というのだろう。海と空との青の尊さを、い

ったい誰が比べ別けられるというのだろう。

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