後悔
どうしてこんな事になったのだろう。
あの日、王子に呼び出された日
俺は注文していた装飾品を取りに行く予定だった。
店頭での発注しか受け付けない人気職人の品。
僕の一番好きな水色の宝玉を使った装飾品。
ジョアンナならきっと喜んで受け取ってくれるはずだ。
後に予定を控えていた僕はとても焦っていた。
王子との会談をさっさとすませてしまおうと思っていた。
呼び出された部屋に入ると、突然男たちに囲まれた。
その後の事は思い出したくもない。
1人の令嬢が俺にすり寄って来た。
最近、王子と一緒にいる事が多い令嬢だということが分かった。
視界にピンク色の靄がかかっていて、「リリアンヌと呼んで」
という声が繰り返し聞こえた。
婚約者をエスコートしなければいけない王子に代わり、
リリアンヌをエスコートするように命じられた。
離れてみていた時には、お笑い芸人みたいな騒がしい令嬢だと思っていたが…
こうやって俺の腕に寄り添う姿はとても愛らしい。
リリアンヌが、白い服の娘ともめている。
白い服を着ているという事はデビュッタントか。
最近の親はデビューの前に礼儀を教える事も出来ないのか。
みっともない、衣装が汚れている。
ワインをかけようとして誤って自分にかけたのか
自業自得と言うやつだな。
白い服の令嬢が悲鳴を上げて、失神した。
「全く女のヒステリーというやつはみっともない」
というと、リリアンヌが俺を潤んだ目で見上げた。
「リュート!お前何やってるんだ。」
父の声がして、数人の男により後ろから羽交い絞めにされた。
「俺の邪魔をするな。愛しい娘のそばに居たいだけなのに!」
俺は屋敷の自室で目覚めた。夜が明けていた。
ピンク色の靄はすっかり消えていて、何がなんだかわからなかった。
起きたところで声を掛けられて、父に呼び出された。
とにかく婚約者のジョアンナに謝ってこいと言われた。
婚約者のジョアンヌをエスコートせず、他の令嬢をエスコートし、
挙句にジョアンナを辱める言動をとった事に対し、叱責を受けた。
一気に目が覚めて、焦って単騎掛けでジョアンナの家に向かった。
彼女が目覚めるまで待ったが、会いたくないと断られた。
帰りがけ、窓に映るジョアンナの姿を目に入れる事が出来た。
まるで知らない人間を見るような目でジョアンナが見返した。