婚約解消ですわ
パーティーから3日目、起き抜けに婚約者からの訪問の先ぶれが来た。
断る理由も無いので、諾と返事をする。
婚約者が来る前に兄に相談をする。
正直に、婚約者に関して存在は知っているけど、顔も名前も思い出せない、会った記憶も無い事。
婚約者の義務も果たしておらず、相手の気持ちも離れているであろう事。
これ以上トラブルに巻き込まれる前に、婚約を解消したいと考えている事。
会った記憶が無い事に対しては、兄が眉をひそめた。
侍女が今回の件がそれだけショックだったのでしょう…と補足すると納得した顔をした。
義務を果たしていない件は、相手側のプライドを傷つける可能性もある為言及しない事にした。
侍女が兄が選んだドレス、水色の普段着ドレスを着せた。
乙女ゲームのイメージカラーかよ。と思ったけど黙って着る。
普段着と言う事は、たいして歓迎してないアピールだ。
昼過ぎの時間帯に婚約者がやって来た。
水色の普段着ドレスの私を見て、婚約者が眉をひそめる。
金髪にトビ色の目、猛禽類のイーグルを連想する。
用事があって来たはずなのに、何も言わずにむすっとしている。
これはあれだろう。親に言われて渋々やって来たに違いない。
「君から何も言わないのなら本題にうつって良いかな」
同席していた兄が話を切り出した。
「当家では君と妹の婚約を解消したいと思っているんだ」
彼が目を丸くして兄を見る。
「これ以上、妹の評判が傷つくのは兄として見えていられない。
君だって愛する人と結ばれたいだろう。
手続きはこちらでやっておくから、帰ってくれないかな」
兄がものすごく良い顔をしている。
「そんな勝手に事を進められると思うのか!」
「妹は君の事を何ひとつ覚えていないんだ。名前も顔も、思い出の1つもね」
元婚約者様が、私を凄い形相で睨みつけた。
「訂正しますわ。どなたかは知りませんが貴方の顔は覚えました。元婚約者様」
私がニッコリ笑うと、元婚約者様は呆然とした表情になった。