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一日目

共有者の8番の声が、言った。

「じゃあ、結果を教えて欲しい。」

すると、女の方の声が言った。

「3番です。いきなりだったので、誰が誰が分からなくて、咄嗟に指を一本出しました。そうしたら、白でした。1番のかたは、人狼ではありません。」

次に、男の落ち着いた声が言った。

「私は、6番だ。2番を占った。結果は白。人狼ではない。」

それなりの歳ではないかという落ち着いた言葉遣いだった。これだけで見ると、印象的に真占い師じゃないかと思わせる。だが、3番の女性も怯えているようでもなく、落ち着いて話していた。こんな場所でいきなり騙りに出ることが出来る度胸があるかというと、疑わしい。なので、要には3番の方が少し人狼を知っている者からなら真目に見られるかなと思っていた。

ただ、真っ暗で相手の顔が全く見えないので、堂々と騙りに出られるということも、考えられなくはなかった。

隣りの2番が言った。

「あの…まだあと20分ありますけど、今日はグレーで話し合ってもらった方がいいのかしら。」

すると、8番のいかつい声が言った。

「そうだな。メモも取れないし見えないから分かりづらいが、占われたのが1番と2番だったからまだ整理しやすいだろう。ええっと、役職も除けたら誰がグレーだ?」

要が、助け船を出した。

「占い先の1、2と占い師が3、6、共有が8、霊能者が9なので残りの4、5、7、11、12、13がグレー位置になります。」

8番の声が、感心したように言う。

「お前、凄いな。真っ暗なのに。」

「真っ暗だからこそ、何も邪魔するものがないんで。それより、今上げた番号の人には話してもらった方がいいんじゃないですか。」

要が言うと、8番は慌てたように咳払いした。

「じゃあ、今言われた番号のヤツは順番にどう思うか言ってくれないか。」

すると、4番が言った。

「4番話します。あの、占い師はどっちも本物に見えてわかりません。二人ともすごく落ち着いてるし、どっちかが嘘ついてるようには見えないから。私は村人だし、何も分からないんです。」

要は、小さくため息をついた。村人が村人と言っても信憑性がない。だから、他のことを言ってアピールしなきゃならないのに。

次に、若い男の声がした。微かに震えている。ここで初めて聞く声だ。

「5番です。あの、みんなどうしてそんなに落ち着いてられるのか不思議で…オレ、さっきの10番の人がどうなったのか気になって。皆さんは、そんなことないんですか?考えようにも、さっきの事があまりにも耳に残っていて、頭が働かないんです。」

8番の声が、ため息をついて言った。

「分かってる。オレは実感がないんだ。見たわけじゃないし、音と状況から撃たれたのかと思うが、でも暗くて確認出来なかった。だから、落ち着いてられのかもしれない。でも、やらなきゃどっちにしろどうなるか分からないだろう。真剣に考えて、ゲームに集中した方がいい。」

そう言われて、5番は黙った。しばらく間があってから、男性の声が言った。しっかりとした、社会人らしい声と話し方だった。

「オレは7番。はっきり言って、どうなってるのか分からない。だが、このゲームをして勝たないと解放されないのは本当のようだから、真剣に考えることにする。占い師は、印象的に6番の方が真占い師のように感じた。まだ最初だから、これから変わるかもしれない。気になってるんだが、霊能者は他には居ないのか?」

暗闇の中、その言葉に答える人は居ない。7番は、息をついた。

「そうか。だったら今一番信用出来るのは9番だな。オレは今は以上だ。」

次に、また男声だった。

「11番だ。オレだってこんなバカらしいこと付き合ってられねぇと思ったが、だが捕まっちまってるんだから仕方ねぇな。なんだか体が重いし、腹も減ってて頭が働かねぇ。占い師は、オレも男の方が真じゃないかって思った。落ち着いてるからな。こんな状況で落ち着いてられるのは、真占い師じゃないかって。それぐらいだ。」

次の声は、明らかに震えて怯えた声だった。女声だ。

「12番です。何があったのか分からない。私も、5番の人に共感です。本当に怖くて、生きて帰れないかもと思うと何も考えられない。人狼の襲撃ってどうなったんですか。あの、吊られても同じなんですか。英語も分からないし、もう私…。」

すすり泣く声がする。本当に生き残りたかったら、そんなことをしていてはいけないんだがな。

要は思ったが、何も言わなかった。8番が言った。

「気持ちはわかるが、泣いてても事態は変わらないぞ。人任せじゃ勝てない。しっかり考えて欲しいな。そうでないと、君が吊られるかもしれない。それで、人狼が勝ってしまったら元も子もないからな。しっかりしてくれ。」

それでも、聞こえて来るのはすすり泣きだけだった。間があって、凛とした女の声がした。

「13番です。私も何も食べてない帰宅途中でこんなことになってしまって、頭が働かないけど勘を研ぎ澄まして頑張ります。占い師は、女の人の方が真じゃないかって思いました。だって、こんな状況で嘘をつくことがパッと出来る女の人って少ないと思うから。声も震えてなかったし、落ち着いていたように思う。ええっと、あえてこう言ったのは、もし私が襲撃されたら、情報にしてほしかったからです。こういうのって、人狼って邪魔な人を噛むでしょう?私が正しいことを言ってたら、きっと私が噛まれると思うから。そうなったら、反対意見の人を疑うなり、考える材料にしてください。」

皆が黙った。

要は、番号なので逆に思考の整理がしやすいと思っていた。この13番の女性は、結構鋭い。人狼慣れしているような考え方をする。彼女が言ったのは、自分が噛まれたら、6番を真占い師だと思っていると言った者達…7番と11番を怪しめと言っているのだ。

しかし、要は思った。この二人を人狼だと決めつけるのは早い。なぜなら、人狼には狂人がどちらか分からないからだ。

一応伏線を張っておくか。

要は、口を開いた。

「…でも、今回の役職は狂人であって狂信者じゃない。だから、人狼からもどちらが真占い師なのか分かっていないはずでしょう。」皆の意識が、こちらへ向いたのを感じた。要は続けた。「今は、自分を占われないようにすり寄る人狼もあると考えた方がいいと思います。真だと思う方を庇うんです。なので、どちらもあると思いますよ。今日は、占い師の真贋を着けられる日じゃありません。」

どこからか、ホッとしたような気が伝わって来たような気がした。隣りの13番が、反論するように言った。

「じゃあ、あなたは私が人狼で、真占い師にすり寄ってるって思ってるんですか?」

要は、見えないのを承知で首を振った。

「いいえ。あなたが人狼だったら、いつまでも噛まれないので分かるでしょう。それに、間違った思考でミスリードしていたら生き残る。あくまで今日は、誰が人狼だと確定出来る日ではありません。それが出来るのは、真占い師が黒を出した時だけです。それでも今日の投票時間は来る。だから、各自とにかく何でもいいので村人ならそれをアピールして欲しいんです。出来れば、村人に投票したくないから。」

チラと見ると、タイマーが残り6分から減って行っている。

隣りの、2番が言った。

「あ、もう時間が五分近くなってます。急ぎましょう。皆さん、誰に入れるのか考えてください。あの、質問があったらどんどんして、村人を吊ってしまわないように考えないと。」

要は、じっと考えた。初日の議論で、何がおかしかったか。だが、初めて会う人ばかりの中で、しかも顔も見えない中判断が着かない。

グレーは、話していることは普通に見えるが、それでもそれぞれ内容が違った。真占い師の真贋の判断の違い、どちらか分からないと迷っている者、そして、怖がっているとのアピールだけで村にまともな意見を落とさなかった者。

要は、それが芝居でなくて本心でも、村にとって有益だと思えなかった。

村人でも、申し訳ないが、雑音になるから切らせてもらう。

要の思考の仕方は、今までの博愛的なものから、変化しつつあった。

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