7話 「到着!」
話がどんどん変になっていってる気が…
「まさかこんなにくれるとはなぁ……」
王都に旅立つことになった俺達に街のみんなは優しくしてくれた。食料をくれたり、旅に必要な物や、テント、簡易的な魔法が使える石などだ。
「なぁ、リンシア〜。この石ってどう使うんだ?」
貰ったのは良いんだが、使い方がいまいち分からない。響は絶対知らないし、脳筋のノースさんも分からないだろう。ならば魔法が使えているリンシアが適任だろう。だが、俺の思っていたこととは違うことが起きた。
「お兄ちゃん! ちょっと貸してみて! なんか私出来る気がするの!!」
響は半ば強引に俺の手から奪い取ると、石を両手に持った。その瞬間、
「ボッ……」
小さめの焚き火などに使えそうな炎が俺達の前に姿を現したのだ。
「おぉ! 響、よく分かったのぅ。 多分タクミは分からないだろうから教えるが、これはな、魔力を通すと発動する仕組みになっておるんじゃ。 いやーそれにしても、響がそれに気付いたのは凄いのぅ」
俺が思ったよりもリンシアと響は仲良くなっていた。 今この状況も、リンシアは凄い凄いと響を褒めている。響も褒められてまんざらでもなさそうだ。
「ま、まぁ俺もなんとなく分かってたし! 一応教えてもらいたかっただけだもん!! ノースさんも使い方分かるのか?」
俺は自分だけ知らないのは嫌で、ノースさんも知らないだろうなと思いながら聞いてみた。
「俺か? そんなの知ってるに決まってるじゃないか。俺も普通に魔法使えるしな」
そう言いながら、ノースさんは俺の前で少し詠唱し、炎を出してくれた。
「なんだと……!? 俺一人だけ分からなかったのか……」
俺は一人愕然とし、少しショックだった。その光景をリンシアは笑い、響とノースさんは励ましてくれた。
と、まぁ、こんな感じで王都 への旅は順調に進んでいたのだが、陽の光が落ちて、辺りが暗くなった。
そして、周りが妙に静かになり、ノースが警戒しだしたのだ。
「お前ら、楽しい話は終わりだ。 俺達の前に、10人ばかしの野盗が居るぞ。気を引き締めておけ」
ノースは大剣に手をかけ、もう片方の手で俺達に魔法をかけてくれた。
「お、ありがとう。ノースさんは自分に掛けなくても良いのか?」
ノースは俺達にだけ魔法をかけ、自分には掛けなかったのだ。それほど余裕なんだろう。
「まぁな。あの程度だと、俺一人でも正直余裕だろう。さらにその防護の魔法があれば、あの野盗程度だと一切ダメージを与えられない。安心して戦うといい」
ノースはそう言った後、真正面に突撃して、すぐに三人を切り捨ててしまった。
「ふむ。我も参戦するとするかのぅ。とりあえず雷系の魔法を試すとするか」
リンシアは一人魔法を詠唱しだし、次の瞬間には辺りに雲が生まれ、周囲一帯に雷が落ちだしたのだ。俺は魔法防護に守られているのでその様子を安心して見ることが出来るのだ。もちろん隣で響は怖がっている。
「まぁこの程度の魔法なら余裕かの。のぅ、響よ、どうじゃ?我も凄いであろう?」
リンシアは誇らげに俺の抱きついてる響に話しかける。だが、響は怖がってしまい、リンシアのことを無視してしまった。
「そうか、我は怖いかの……ウッ……」
リンシアは怖がられたのがショックだったのか分からんが、俺の袖を掴んで泣き出してしまったのだ。
リンシアと響を泣き止ましている最中、なんとノースは一人で全滅させていたのだ。
「ノースさん、悪いな。 俺達全く使い物にならなくて……あと倒してくれてありがとう」
俺は申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。
「いや、問題ないぞ。実際に俺が倒したのは初めの三人だけだからな。 他は全員そこの嬢ちゃんの魔法を見て、逃げていったからな」
ノースさんはそう言って、リンシアの頭を撫でた。そこからは野盗も襲ってこなかった。リンシアと響は泣き止んだ途端寝てしまい、俺とノース2人きりになってしまった。
「なぁ、ノースさん。あとどれくらいで王都に着くんだ?」
王都への道のりを全く知らない俺は、ノースに訪ねてみた。
「うーむ、あと1日もあれば余裕で着くはずだろう。俺が今日は寝ずに見ておくから、お前はもう寝ろ」
ノースさんはやっぱり優しい。俺はちょうど眠かったので、言葉に甘えて寝ることにした。
次の日の朝、
「いやー。今日もいい朝! 」
俺が起きた頃にはみんな起きていて、もう出発する気満々だったのだ。
「ちょ、ちょっと待て。まさかもう行くのか? 俺は何も支度してないが……」
「寝起きで悪いけど、お兄ちゃんの荷物はノースさんが持ってくれてるから、行くよ!!」
響はいつもの朝みたいに、俺のことを引っ張り出した。響はもうこの世界に慣れたのか知らんが、普段通りになったようだ。安心している矢先、ノースさんが皆を背負い、勢いよく出発した。
数時間後…
「よし!着いたか。ここが王都だ。 俺は何回か来たことあるが、お前らは初めてだろう」
「ノ、ノースさん……は、速すぎるよ……」
ノースさんのおかげで早く着いたのは良いんだが、走るのが速すぎて俺以外は気絶してしまったのだ。
順調に王都の門から入り、手頃な宿屋で響とリンシアを休ませることにした。
リンシア達が目を覚まし、街を歩いてると、王国兵に引き止められた。
「おい、お前ら。 ドラゴンを討伐した者か? 王がお呼びだ。着いてこい」
王国兵に半ば無理やり連れてかれ、俺達は恐る恐る王城に行くことになった。
「お兄ちゃん! 私達どうなっちゃうの?」
「我も流石にこの状況は把握しておらんぞ!? どうするんじゃタクミ!」
「な、なぜ。 あんな最下級ドラゴンを倒しただけで王に呼ばれるんだ」
俺はというと、
「王様って優しいのかなぁ……?」
一人だけこの状況を理解出来ていなかったのだ。
俺以外の皆はただ困惑して、連れていかれるのだった。