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いつか桜の木の下で  作者: MIRAI
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二章 改革


更新が遅くなりましてすみません。


最後まで読んでいただけると嬉しいです。


MIRAI

二章 改革


次の日は朝から毎週恒例の全校集会だった。


昨日自殺未遂をしたことなんてクラスメイトは知っているはずもなく、今日も私の周りは今までと変わらない嫌な雰囲気に包まれていた。


全校集会が始まり、いつものように壇上に上がる先輩はいつもと変わらないはずなのに、なぜか今日はドキドキするような、不思議な感覚だった。


「…続きまして、生徒会長の小林悠太さんから生徒会の活動報告があります。」


そうアナウンスされ、先輩は一礼してマイクを持つ。


「今週の活動内容は…、以上です。」


いつも通りに活動報告をして拍手でたたえられ、お辞儀をした先輩はなぜかその後も動かず、そして再び、先輩がマイクを取った。


「…規律を乱してしまい申し訳ありません。今回は僕から皆さんにお話ししたいことがあります。」


ざわつく講堂、おどおどとする司会者、しかし先輩はそれに構うことなく話を続けた。


「皆さんにお話ししたいことは一つです。今、この学校にいじめがあります。どの学年、どのクラスとは言いませんが、実際に事実を確認しています。誰がやっているのかもおおよそ見当は付いています。」


さらにざわつく講堂、ちらちらとこっちを見る視線の気配がする。それでも私は先輩から目をはなすことが出来なかった。


「僕はそんなことは絶対にあってはならないことだと思う。たとえいじめられる側に何かしらの落ち度があったとしても、それはいじめをすることの理由にはならない。いじめている人は自分に全く悪いところがないと言い切れるだろうか?答えはNOだ。完璧な人間なんていない。それこそ出来ないものがいたら出来るものがフォローするのが助け合いなんじゃないかと思う。それを学ぶために、僕たちは学校へ来ているんじゃないだろうか?いじめについて、皆でもう一度よく考えてほしい。それでもまだいじめを続けているようなのであれば、生徒会から正式に先生方にいじめの調査を依頼し、行っている者の処分は校則に則って停学処分にすることも考えています。もしそれが嫌ならいじめられている人にはっきりと謝罪をし、二度としないことを約束してください。混乱させてしまいましたが僕の話はこれで以上です。」


一礼してきびきびと壇から降りる先輩を私は茫然と見ることしかできなかったが、私の中で先輩への尊敬する気持ちと、甘酸っぱい何かがいっぱいになって行くのを感じた。






教室に戻るとすでに何人かの生徒が戻ってきているようでちらほらと人がいた。


いつものように一人で席に着くと紺野美紀と遠藤沙耶と安藤恵那の三人が近づいてきて、紺野さんが口を開いた。


「宮野さん、今までずっと知らんぷりしてて、助けてあげられなくてごめんね。もし宮野さんに許してもらえるなら、うちらと友達になってくれないかな?」


三人は申し訳なさそうに頭を下げてくれた。すると教室のあちこちから人が集まってきてクラスみんなが私に謝ってくれた。リーダーを気取っていた女の子もバツが悪そうに一言


「やりすぎちゃってごめん。もう、やらないから。」


と、言ってくれ、いじめ問題はその日のうちに、今まで悩んでいたのが嘘のようにすっきり解決してしまったのだ。


その後私は最初に話しかけてくれた三人と仲良くなり、一緒に行動するようになった。






「起立!礼!さようなら!」


いつもは永遠に続くように感じていた学校が今日は驚くほど早く終わり、私はそのことをなんともこそばゆく感じた。


こんなに学校が楽しいなんて思いもしなかった。


そんな風に考えたら顔に出ていたらしく、三人にからかわれた。


一緒に帰ることも誘われたけど、私は先輩との約束があったのでやんわりと断りを入れて足早に図書室へ向かった。


図書室の扉をあけるとまだだれも図書室には来ていないようだった。


放課後の図書室は、締め切られていたせいか少しほこりっぽく、私は空気を入れ替えようと窓を開けた。


風がふわりとほほにあたって私の髪をかき分ける。


学校でこんなに気分がいいのはいつぶりだろう。


気分がよくなった私はもっと風にあたろうとベランダへ出た。


すると目の前には赤く染まりかかった夕焼けが一面に広がっていた。


今までの私は空を見る余裕すらなかったのだと、今更思い知った。


「桃香ちゃん、何してるの?風邪ひくよ。」


いつの間にかすぐそばまで来ていた先輩が声をかけてくれた。


「先輩!?いつの間に来てたんですか?確かにちょっと寒いかも。。」


慌てて先輩と図書室に戻り図書コーナーのソファーに腰を下ろす。


「そういえば、結局宮野桃香改革って具体的に何をするんですか?」


いったん呼吸を置いて先輩が話し出す。


「勉強して、みんなを見返す。そしたらなめられることもないし、自分に自信がつくだろ? 」


いつも以上に真剣な先輩の眼差しに、私の心臓はどきりと音を立てた。


「えと…じゃあ具体的にどんなことをやればいいですか?教科書は…この間ぼろぼろにされちゃったし。」


昨日のことを思い出してまた自信がなくなってしまう。


そんな私を見透かすようにまた不敵に笑いながら先輩は言った。


「それに関しては俺の昔使ってたやつをあげる。そのかわり、あげるんだからそれなりの成績で返せよ?そーだな。とりあえず学年で三十番以内かな?」


「三十番!?私の学年…百三十人くらいいて…私…いっつも三桁くらいなんですけど…」


驚きと恥ずかしさでついうつむいてしまう。


「君の頭の悪さについては、君のお姉さんから聞いてる。俺はそれを知ったうえで君にできると言ってるんだ。」


先輩は笑いながらそう言った


「もう…頭の悪さって…そんな言い方しなくてもいいじゃないですか。それに、今までできなかったのにそんな急にできるようになるんですか?」


私は膨れながら言った。


「大丈夫。俺の教科書は普通の教科書じゃないから。ちゃんとやれば絶対成績はのびるよ。ちゃんと頑張れる?」


いきなりまた優しくなる先輩にまた動揺してしまうけど、私の事を本当に考えてくれているのは優しくても厳しくても変わらないのだと、少しわかった気がする。


「はい。そんな、わざわざありがとうございます。できるかどうかわからないけど、頑張ってみようと思います。」


ここまで先輩がしてくれたのを無駄にしたくない一心で、私はすぐ答えていた。


「君がこれで変われるなら、いいんだよ。じゃあとりあえず今日は暗くなるから、続きはまた今度。もしよければだけど、明日は日曜日だし一日空いてる?」


「え!?あっ!はいっ!よろしくお願いします!」


私は急な誘いにびっくりしながらも速攻で返事をした。


「じゃあきまり。明日の朝十時くらいに市立図書館前集合。遅れるなよ。」


先輩はまた不敵な笑みをしてその顔がとてもかっこよかった。


その日先輩と帰った帰り道で私は、とても暖かな気持ちと少しの不安とやる気で満ちていた。






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