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企画(お願い)のお知らせが後書きにありますのでよろしくお願いいたします。

活動報告にも書きましたが、お願いいたします。

「……死んだと思ってた。金も包んだのに」


 驚愕を抑えつけて、敢えて平然とショックを受けていない口調でパインは喋る。相手の出方が分からない。というより、基本的に今起こっていることの意味が分からない。弱みは見せられない。


「それは悪いな。後で返す」


 肩を揺らして笑うシアムは正気ではないようにも見える。


「それで、どうして?」


 どうして、の後に何が続くのかはパイン本人にも分からない。どうして生きているのか、かもしれないし、どうしてここにいるのか、かもしれない。


「……俺を殺したのはビファーザだ。それは知ってるか?」


「え、そんな、嘘だろ」


 愕然とした振りをするが、実際にはパインに衝撃はない。ビファーザならやりそうな気もするし、シアムの死自体には何らショックを受けていない。大体、以前はパインがシアムを殺してやろうと思っていたくらいだ。


「信じられねえ奴だ。兄貴分に手を出すとはな。そうだろ、パイン」


「ええ、まあ、そうだね」


 歯切れが悪くなるのはしょうがない。


「大体のことは知ってるのか?」


 喋りながら、シアムは表を窺う。誰かに聞き耳を立てられていないか心配なようだ。


「俺の知ってることは、あれだよ。伝聞だけど、兄貴がいなくなって、色々探したけどどこにもいない。組織の人間が兄貴名義の辺鄙な土地を探しに行ったら、そこに腐った死体があった。シュガーと一緒に。で、しかもそこの土地にはいくつも人が埋まっていた。だから兄貴はシュガーの取引に手を出していて、トラブルが起きたら殺してそこに埋めてた。だけど今回は反撃を食らって自分が死んだ。そんな話になってるけど」


「へっ、そうだろうな。だが、俺を殺したのはビファーザだ。ビファーザに、あの場所で殺されかけたんだ」


 怒りを込めて吐き捨てるシアムに、


「どういう経緯で?」


 とパインが訊くと、途端に狼狽える。


「あ? ああ、まあ、そこはいいんだ。そこは本題じゃねえ」


 いかにも怪しいが、咳払いして、シアムは続ける。


「とにかく、俺は殺された。いや、ビファーザが俺を殺したと思い込んでただけだ。溺れさせられて、気絶しただけだ。しばらくして俺は息を吹き返した。だけどよ、その状態でのこのこと戻ったってどうなる? またビファーザに殺されるだけだ。あいつは金を持ってるし、ヤオの奴は兵隊を持ってる。そうだろ?」


「ああ、そうらしい」


 実際には組織を離れて久しいから、噂程度しかパインは知らない。


「だから死んだことにしようと思ってよ。ほら、そこは死体をたくさん埋めてるだろ? ちょうど、少し前に俺と似たような体つきの奴を埋めたのを思い出してな、そいつを掘り出して、俺の服を着せた。顔だけは潰しといたが、川に顔つけといたら腐ったから、あんまり意味なかったな」


「へえ」


 このアホにそんな知恵があるとは。パインは本気で感心する。


「よくそんなことを思いつくもんだ」


「直前に、劇を見に行ってな。知ってるか、今度できた新しい劇場だ。あそこでやってる劇が、そういう筋書きだったんだ。身代わりを使って死んだように見せかけて、裏で復讐を企むってな」


 直前に見た劇の筋書きが頭にあったのか。納得するが、別のところが気にかかる。


「兄貴、劇なんて見るのか?」


「うるせえな、招待されたんだよ、劇の支配人に。付き合いだ。あそこの支配人は、知り合いの知り合いだ。しかし、くそ、劇はくそ面白くないし、周りは貴族ばっかりだしと嫌で嫌で仕方なかったが、まさかこんなところで役に立つとはな」


「なるほどねえ。でも、似た体格で顔が腐って判別できなかったからって、服装だけで兄貴だって判断したのかな?」


「したんじゃねえか? 調査したのは組織の連中だろ。あいつらは慎重とは程遠いじゃねえか」


 確かに。だが、それだけではないだろう。パインは内心思う。おそらく、そこでシアムがいつもシュガーの取引をしていたのも、トラブルが起きれば殺して埋めていたのも、組織の何割かは薄々知っていたのだ。だから、シアムが行方不明になった時、組織はあの土地でシュガー絡みでシアムが死んでいることを予測していたのだ。そして、見事にあの場所にシュガー絡みの死体があってシアムの服を着て体格も同じ。だから、シアムの死体だと結論付けた。


「……おまけに、ヨモウの親分も全部俺に押し付けてやがる。信じられねえ」


 パインが考えに沈んでいる間に、シアムは長々と愚痴を口にしている。


「俺は親分が言うことだから、歯を食いしばって従ったんだ。ええ、おい? 親分のためだったんだ。シュガーに手を出したのもよ。それが、こんな仕打ちがあるのか?」


 興奮してきたシアムは立ち上がり、パインの両肩をがっしりと掴み揺さぶる。


「跡目はあの外様のくそ獣人。片腕は兄貴分の俺を殺そうとしたビファーザだぞ。ありえない。組織も終わりだ」


 お前が頭になっても終わりだけどな。そう思うが、もちろんパインは言わない。


「おい、俺に力を貸してくれよ、パイン。兄弟だろ?」


 思いもかけない厄介ごとが自分の身に降りかかっているのを感じて、パインは身震いする。


「ちょ、ちょっと待ってくれよ。俺はただの店のオヤジだ。力なんてない。組織の仲のいい奴に頼めよ」


「組織の、ヤオ派でもビファーザ派でもなかった連中は全員、端っこに追いやられている。それがヤオの馬鹿なところだな。不満が溜まっているから、俺が生きていて反旗を翻すとなればそいつらが俺につくはずだ。とはいえ」


 冷静になったらしく、シアムは手を離すと再び棚に腰かける。


「逆も考えられる。そうだろ? 俺が助けを求めたら、俺をヤオに売って、それで返り咲こうとする卑劣な奴もいるかもしれねえ。慎重にならないとな。誰が味方か見極めなきゃならない。意味が分かるか? 俺を匿って、それから俺の味方を見極める役目をして欲しいんだ。ある程度味方が分かったら、そいつらのとこに移るからよ、それまで力を貸してくれ」


 冗談じゃあない。


「兄貴、悪いけど俺は――」


「兄弟分を殺そうとするなんて許せん。ビファーザの奴には死んでも落とし前をつけてもらう。兄弟分の絆は絶対だからな、それを破るなんてのは鬼畜の所業だ。パイン、お前は違うよな?」


 取り繕いもしない、完全な脅しを口にしてこちらを睨みつけるシアム。


 一方のパインの頭は冷えていく。冷静にいくつもの道を考える。目の前のシアムを殺せるか? 殺せる。死体を処分できるか? 難しい。なら殺した後、正直に届け出るしかない。そうするとどうなる? 死んでいたはずのシアムが殺されたということによる混乱。この店で殺したともなれば、義兄弟だったということもあって自分にも疑いの目がかかるだろう。それに組織のシアム派の連中が復讐に来ないとも限らない。ビファーザはどうだ? 奴がシアムを殺した、殺そうとしたのだということを自分は知ってしまった。自分の口を封じるか? いや、あいつはそんなことをしない。そう思うが、絶対ではない。


 結論。非常に忌々しいが、この場では穏便に済ませるべきか。


「……分かった。ちょうど今、嫁さんもいないしな。寝床としてなら使ってくれ。けど、敵味方を見極めるってのは――」


「ありがとうよ、パイン。お前は男の中の男だ」


 喋っている最中だというのに、シアムはがっしりとパインの両手を握る。


「ああ、ちょっと待ってろ。手紙を書く。その手紙を、まずは、そうだな、俺の舎弟がいるんだ。その舎弟に届けてくれ。そいつだけにこっそり渡してくれ。まずはそこからだ」


 いそいそと周囲を歩き回り、


「ああ、悪い、そうだ、紙とペンを貸してくれ。どこだ?」


 張りつめていたのが一気に解放されたのか、聞いたことがないくらいに陽気な声を出すシアムにパインは辟易する。


「貸すよ、寝床だろうが紙とペンだろうが。兄弟分だからな、仕方ない」


 ため息と共に、棚から紙とペンを取り出すと飛び跳ねんばかりに機嫌のいいシアムに渡す。






 翌日。


 しばらく手紙を読んでから顔を上げたビファーザは開口一番、


「悪かったな」


 と謝って来る。


「まったくだ。ちゃんととどめをさしておいてくれ。俺だったら心臓を抉ってる」


「確かに、所詮僕は荒事に関してはアマチュアだからな……痛感するよ、甘かった」


 二人きりで会える場所、ということで呼び出したトリョラ郊外の何もない荒野、そこに転がっている空き箱に腰を下ろしているビファーザは手紙を返してくる。


「そういうわけで今、俺のところに兄貴がいるんだ。もうすぐ子どもと一緒に嫁さんが帰って来る。それまでに引き取ってくれ」


「部下を使って迎えに行かすのか? 悪いが、難しいな」


「何で?」


「表面上は、シアムは謎の死を遂げた組織の幹部、だ。シュガーの件があったとしても。部下を使って連行しても、奴の申し開きを聞く場は絶対に開かれる」


「ああ、そうすると、あれだ、お前にとって都合の悪いことを言われる可能性もがあるってことか」


「そう。僕がシアムを殺そうとしたことがな」


 それを聞いてパインは舌打ちする。


「おい、言うなよ。俺、シアムから聞いていないフリしようと思ってたのに。口封じするなよ?」


「分かってる。二人で協力して乗り越えるとしよう、パイン……金で動く連中や、口の堅い部下だけでお前の店に行って、今度こそシアムを始末する。それでいいかな? 多少、後で『掃除』が必要になるかもしれないが」


「ええー、それは、ちょっとな……うちの店で死人を出したくない。まあ、どうしてもそれしかないっていうなら、それでいいけど、俺も嫁さんも子どももちょっと遠出している間とかにやってくれ。絶対に関わりたくない」


「……わがままだな。僕にどうしろと?」


「知恵を出して何とかしてくれよ、ビファーザ。兄弟の中で唯一の切れ者だろ。俺は『狂犬』だし、シアムはぼんくらだ」


「そんなことを言われても……まあ、それなら、仕方ないか」


 ビファーザは座っている木箱を指でノックする。


「じゃあ、パイン。シアムの言う通りにしてくれ。この手紙も舎弟に渡すといい」


「え? いいのかよ」


「それでシアムが別のところに転がり込むまで待つとしよう。そうなれば、適当な理由を付けてそいつのアジトに乗り込む。そこでドンパチやって奴の息の根を止めればいい。そうなれば、パインは何も関わりがないまま終わる」


「そりゃあ、ありがたいけどよ」


 あまりにも甘いその申し出に戸惑う。


「それだと、シアムが逆襲するチャンスを与えることになるぞ」


「その前に潰すさ。だからなるべく早く、シアムを匿ったのが誰なのかは教えてくれ。それまで一緒に住んでいるんだから探れるだろう?」


「もし、探り出せなかったら?」


「僕がシアムに殺されるかもしれない。そうなると、パインもまずいんじゃあないかな? シアムは僕と違って平然と、そして雑にパインを口封じする可能性がある」


「確かにやりそうだな……分かった、分かったよ。それから、もう一ついいか?」


「どうぞ」


「いい物件紹介してくれないか? シアムが出ていくまで嫁さんと子どもは別のところに住まわせなきゃならないし、どっちにしろそろそろ店とは別に家を借りようとは思ってたんだ。そんなに贅沢は言わないけど、店に徒歩で通える距離でそれなりに広くて、ああ、教育に良さそうな環境の場所だったらいいな。周りが役人とか資産家が住んでる綺麗な地域。あと小さくてもいいから庭があるといいな。自然が子育てにはいいらしい。それから――」

どうもどうも。


さて、復活して、ペテン師の方はいいとして、名探偵の方は、全く、完全に、欠片も何もありません。プロットのプロットのプロットすらありません。

3か月ミステリのことを考えていなかったからなのか、何も出てきません。


というわけで、もしよろしければ読者の皆さんに名探偵の次の事件について、何かお題をいただければと思います。

例えば

・料理対決

・被害者三人以上

・ホラーテイスト

・アリバイ崩し

等々……

「この要素を入れろ」というようなものがあれば是非是非いただければと思います。連絡手段は何でもいいです。これのコメントでもメッセージでもtwitterでも。

複数いただいた場合は、なるべく全部無理にでも詰め込んでやろうと思っております。

よろしくお願いいたします。

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