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神殿は、緑王国の王宮、玉緑宮の奥の森の中の更に奥に行った場所に存在すると云われている。巫女やその関係者、巫女の能力をどうしても借りたい者しか、足を踏み入れたことはなく、神聖すぎるその場所は、いつからか、神隠しにあうだとか、邪な心の持ち主が足を踏み入れた途端、呪われるなど、得体の知れない場所という噂が独り歩きしている状態になっている。
もちろん、緑王国でも優秀と知られている武官である、偉裂翔が呪いなどという、迷信じみた話は全くといっていいほど、一切信用してはいないが、一度も行ったことのない場所、どんな人物が住んでいるのかもほとんど謎に包まれている、あの場所に、いつも通り、平常心で行けるほど肝もすわっていなかった。更に今回は仕事の報告ともあって、巫女の能力研究の為、どのような質問が自分に向けられるのかも、謎とあって、幾ばくかの緊張を伴って神殿に向かおうとしていた。
神殿に入るにはある門をくぐらなくてはならないとなっている。王宮務めではないものが入る場合は、様々な面倒な手続きをふまなくてはならないが、王宮務めで、尚且つ、武官という身分の保証がしっかりとされている者は、身分書の提示という簡単な手続きで入ることができる。
初めて門をくぐり、開けた先に広がった景色に思わず息をのむ。そこは想像以上に美しい自然が広がり、まさに、神聖という言葉がピッタリと当てはまるようなそんな空間が広がっていた。
神殿までの道筋がわかるか、若干不安だったが、舗装された一本道が奥まで伸びている為、ためらわずその道を歩きだした。