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そのとき、俺は水道を求めて走り回っていた。夢の中で。
ほら、よくあるだろ?遅刻しちゃ行けない日に遅刻する夢を見たり、睡眠中に尿意に襲われてトイレを探し回る夢を見たりとかさ。
そんな感じで、今俺は猛烈に喉が渇いていて、だから水道を求めて走っていた。そして、どの水道からも一滴も水が出ないという。
こういうとき、夢って妙にリアルだよな。しかも、自分の夢なのに融通がきかないときた。
ーもう、このまま渇いていてひからびてミイラになってしまうのだろうか…
夢の中でどうしようもない無力感に苛まれていると、頬に冷たい何かが降ってきた。
はっとして上を見上げると、(いつの間にか現れた)頭上の水道から水が!!
必死になって蛇口に口を当てた。冷たさは足りないが、確かに水だ。無我夢中で飲み込んでいく。
「おいおい、そんなに一気に飲んで大丈夫ぅ?」
「うるさいな。やっと見つけた水だぞ。これが飲まずにいられるか!」
突然夢に乱入してきた声にそう答えようとした瞬間、水が気管支に入り込み俺は盛大にむせた。
「ほらぁ、言わんこっちゃない。本当に君はアホの申し子だなぁ」
さっきの奴といい、今度の奴といい俺は…
「アホじゃねぇ!…たぶん」
「"たぶん"って、少しは自覚あるってことぉ?」
叫ぶと同時に夢から醒めた俺の視界に飛び込んできたのは、先程のイケメンさんだった。