3
結論から言うと、息子さんはいませんでした。
スラックスの前をくつろげて確認したけれど、いませんでした。
「終わった…」
なにが?とはきかないで欲しい。
ナニが?も駄目だかんな!!
今、確かに何かが終わったのだ…
終わり、それは始まりでもある。
俺は今、未知なる世界へ足を踏み入れたのだった…と、綺麗にまとめて終わろうと思ったけど…
「終われるかー!誰か説明プリーズ!!」
まぁ、もちろん応える声はな…
「何を説明すればいいのぉ?」
ありました。
驚きつつ慌てて声が聞こえた方へ顔を向けると、真っ白なターバンとマントに身を包んだ、イケメン様が立っておりました。
全身が布で覆われているため顔しか仰ぎ見ることができないが、それでも雰囲気イケメンとかではなく本気のイケメンであることが伺えた。
成長期を迎えても未だ170に届かない俺の頭上10cm付近にあるお顔は、タレ目がちな瞳と、向かって右の目の下にあるホクロが印象的な顔立ち。
毎朝こんな顔が鏡にうつったら、同級生のあの子もその子も俺に夢中だったに違いない。
人って生まれながらに不平等だよな。本当。
「っていうか君、そんな格好で死にたいわけぇ?自殺志願者ー??」
そうだった。頭の中がおっぱいでいっぱいだったからスッカリさっぱり忘れていたけれども、ここ砂漠でした。
思い出した途端、人とは厳禁なもので猛烈な暑さが俺を襲った。
少しでも暑さから逃れられればと手を頭にかざすと、すっかり熱をすった髪の毛から熱気が立ち上ってきた。うっかり触ろうものなら、真夏のトタン屋根のごとくヤケドしてしまいそうなほどだ。
「…いや、死にたくはない。死にたくはないんだけれども…なんだか…気が…とおく…」
おぉ、地面が近づいて来るぅー
「おい、ちょっとぉーもう、そんな格好で叫んだりなんだりしてるからだよぉー本当、アホぉ」
「俺はアホじゃねぇ…たぶん」
マントの間から伸びてきた、意外に逞しい2本の腕に抱き留められながら俺は意識を手放した。