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「誰もいない夜道に靴の音が響きます。コツ…コツ…コツ…」
言うは易し行うは難し、ならぬ聴くは易し行うは難し。まさに今そんな状態。ジュンジーを真似して効果音に強弱をつけつつ怖い話を語る俺。聴いているときは感じなかったけれど、これが結構難しい。そうだな、いつも聴いていた洋楽をカラオケで歌う感じに近い。イメージどおりに口が動かないのだ。
そんな拙い俺の語りをシャーさんはそれはもう真剣な顔で聴いてくれている。ちょっと申し訳ない気分。
今俺が話しているのはオチで叫んでビックリさせる系…って長いな。序盤からずっと淡々と語って、最後に大声だしてビックリさせる勢いだけの怖い話。正直、筋もクソもない。
だが俺はこれが苦手だ。始めてきいた翌日、塾の帰り道でうっかり思い出してしまって恐ろしくなり電話で母さんを呼んだほどだ。
「あなたのお母さんは?…お前だっ!!!!!」
どうだ、とシャーさんの様子を伺うと、
「ユウ、そんなに大きな声が出せたんだな」
これ、どう受け止めればいいんだろう。失敗?