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俺が夜の蝶デビュー(?)したあの夜からシャーさんは三日置きぐらいのペースで店に訪れるようになっていた。そのお相手をするのはなぜか俺。綺麗どころは掃いて捨てるほどいるのにシャーさんは俺がいいという。変な人だ。ともかく、俺はシャーさんが来店する度に仕事を切り上げお酌をする。
こんな言い方をするとシャーさんのことを嫌がっているようにとられるかもしれないが現実はその逆だ。シャーさんの酒の相手をするのは凄く楽しい。
というのもシャーさんは凄く話上手なのだ。この国で起こった出来事や語り部と言われる人たちが話物語をとてもおもしろおかしく話してくれる。ときどき俺がシャーさんの相手をしているのか、シャーさんが俺の相手をしているのかわからなくなるぐらいだ。
「ユウ、何を考えている?」
その声にハッとして視線をあげると、シャーさんの不思議そうな顔が目にはいった。
「すみません…シャーさんは話上手だなって考えていたんです」
話をきいていなかった気まずさを誤魔化すように笑いながらそう言うとシャーさんは照れくさいな、と呟いた。
「面と向かって誉められるのは、何だか照れくさいな…だが、ありがとう…」
「どう…いたしまして?」
どうして疑問形なんだ、と笑い声をあげるシャーさん。つられて俺も笑いながら、なんて穏やかな夜なんだろうとしみじみと思った。