6
うっかり売り飛ばされた俺は、何だかよくわからない世界に来てしまったことによるおセンチな気分も、ジーニーに対する感謝の念も何もかもすっ飛んでいた。
「ほら、ユウ。ボーッとしてると姐さんに叱られるよ。呼び込み行っておいで」
はい、と返事をして俺は慌てて外に飛び出した。呼び込みってのは読んで字のごとく。そこら辺をフラフラしてるエロオヤ…お兄さんをつかまえて、夜の蝶たちに渡す簡単なお仕事だ。
そう、ジヴァさんが主人としてしのぎを削っているお店は、酒と女と一夜の夢を提供するアダルトなお店だった。しかも店名を出せば百発百中「あぁ、あの店ね」と言われるような有名店。正直、呼び込みとかいらないのではと考えたのだが、ジヴァさんは待つのは嫌いなのだそうだ。見たまんまの肉食っぷりに俺はある意味感心した。
ちなみに俺が夢を提供する側ではなく引き込む側なのは、たんに容姿が平凡だからだ。のっぺりかつ幼い容姿は受けがよくないらしい。実際お店のお姉さん方を見てみると、多少の差異はあれど皆凹凸が激しく、きらびやかな容姿をしている。
俺もそーいう対象は基本的に女の子で、エロオヤジ相手にあんなことやこんなことをするのはゴメンだから、全く不満は無い。むしろ有り難く思っている。
まぁ、とにかく適材適所で日々を重ねるうちに、俺はスッカリ呼び込みやその他の雑用に慣れていった。そして今日も意気揚々と獲物を探していた。
だいたいの獲物たちは、どこかで一杯ひっかけてからこの狩場へと足を踏み入れる。なので気が大きくなって、財布のヒモが緩んでいる奴が多い。上客かどうかは靴や洋服を見れば判断がつく。
そんな女豹ことジヴァさん直伝のあれやこれやで狙いを定め…
「ちょっとお兄さん、よってかない?あれがこれでボインな感じの女の子がいっぱいいるわよ。選り取りみ・ど・り」
と適当に声をかける。するとだいたい、
「お前みたいな平凡がいる店に誰が行くかぁ」
となるのでババーンと店名を出しギャップ萌えを誘いながら、耳元で囁く。
「ちなみに今日はまだみんな処・女・よ」
これで落ちない男はいない、とは女豹の談。実際この獲物さんも、
「おぉ!早く案内しろや!!!」
「毎度!姉さん、ご新規さん一名ごあんなーい!!」
「「「おかえりなさいませー」」」
こんな感じで一丁あがりあ。ちなみにこの界隈では悪目立ちする俺の平凡さを不憫に思い、何も言うなと自ら店に入っていく有難い客もいる。バカとはさみならぬ、バカと平凡も使いよう、というわけだ。
まぁ、どんな客にしろ姉さんたちの手練手管で満足して帰って行くんだからオールオッケイだと俺は思っている。
というわけで、砂漠の街にあるオトコのオアシスに今日も俺はせっせと獲物を運びこむのであった。いい夢見ろよ!!と心の中で呟きながら。