1/28
1
「おっぱい…」
そのとき俺の頭ん中は、おっぱいでいっぱいだった。
待ちにまった放課後、友人とゲーセンに行った帰りのはずなのに何で砂漠にいるんだ、とか。
日射しが強い、とかそんなレベルじゃなくこのままだと干からびてしまいそう、だとか。
紺色のブレザーで砂漠にいるなんて自殺行為なんじゃないか、とか。
そんな自分の命と直結しそうなことが、夜ごと母さんから聞かされる“ご近所の噂話”と同レベルでどーでもいいことのように思えた。
そう。とにかく今は、“おっぱい”なのである。
「おっぱい…とは何か?」
ある意味究極の命題に考えを巡らせてみる。
赤ん坊の食料源。
脂肪の塊。
女性の象徴。
性欲の対象。
憧れ。
見たい…
揉みたい…
吸いつきたい…
「ついでに、はさまりたい…っじゃなくて!!」
頭をふり、あらぬ方向に突っ走った思考のリセットを試みる。
お題は“おっぱいとは何か?”だ。
願望を語ってどうする俺!!
おっぱいとは“俺から思考能力を奪うもの”である。
これも答えの一つだな。うん。
まぁ、もともと思考能力なんて無いに等しいんだけれども。悲しいことに。
石橋を叩かずに渡るタイプです。