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EPISODE 1 Askew

 人生が壊れる音がした。誕生日の日に学校から帰ってくると、両親が首をくくっていたから。大変驚いて、「あー! あーっ!」というような奇声をあげるしかなかった。


 隣人がやってきてくれなければ、俺はぶらさがる両親を助けることもできなかったし、普通に間に合わなくて、俺は孤独になった。


 俺は親戚に拾われた。


 両親が死んだのは、借金が膨らんだから──らしい。


 みんなびっくりしていた。確かに裕福ではなかったけれど、そんな借金があるほどの家には見えていなかったらしい。俺も驚いた。確かに裕福ではなかったけれど、そんな借金があるほどの家とは思っていなかったから。ちなみに両親がのこした借金は俺を拾ってくれた親戚が一括で返済しちゃった。


 この感情を何処にしまっておけばいいのか分からなくなった。


 とても楽しい思い出だけで生きていこうと思った。悲しいことは思い出さない方針で行こうと思ったけど、一挙手一投足に過去画家はなるから、やりたい生き方とできてる生き方が整合しない。魂が腐れていくような気がしてならない。ままならない。


 俺はとっても悲しくなってしまった。


 どうしてもこの悲しみの消し方が分からなくて、意味もなく大声で歌うようなことが増えた。歌うとなんだか気が紛れるような気がしたから。そうすると、声が嗄れちゃって。声変わりの時期と重なって、嗄声がかった声になった。喉を壊しすぎたんだろうと思う。


 普段は声を出さないようにした。だってこんな声してるやついたら笑われちゃうから。なんでこんなにつらい思いをしてる時にバカにされなくちゃいけないのか、マジでまったくわかんないっちゃ!


時島(ときしま)くん」


 クラスのうるさいグループのひとりが声をかけてきた。学校では声が出ない系男子として通っているので、目を向けるとそれが返事になっちゃう系男子でもある。そういうこともあって「さすがに無口くんじゃまずいよな」って思って久しぶりに声出してみたらマジで声でなくなってて笑っちゃうにゃん。こえがでなくなりました。気が向いたら喉病院行こうと思う。


「ハンカチ、落としたよ」

「!!」


 クラスのうるさいグループのひとりに手渡されたハンカチをズボンのポケットにしまって、サムズアップ。これが感謝の印。そいつもサムズアップを返してくれる。陽キャラって好きだな、根が明るかったりすんのかな。俺には到底そこまでいけそうにないから、陰ながら彼らの人生に幸せのあらんことをって応援しちゃう系男子になっちゃう。俺の人生は、この影。


「あっ‥‥‥あと!」

「??」

「前、うちの猫見つけてくれてありがと」


 これにもサムズアップ。そういえばそんな事もあったなあと思った。言われるまで忘れてたけど、なんかそういう事があった。俺がバチ力で貯めた小遣いでギターを買いにお外に出ると、こいつがなんか泥棒みたいな腰の低さで何かを探しているから「どったのー?」の表情で近付いたら猫がいないってんで、猫探しのプロとして手伝った。


 プロとして────


「えっと‥‥‥じゃあ、また明日」


 これにもサムズアップ。なんかこう、手話とかじゃないけど、もうちょっと、感情をうまく伝えられたらいいなっていつも思う。コミュニケーションってフィーリングみたいなところがあるってよく聞くけど、まぁよく聞いたことないんだけど。でも、サムズアップとニコニコ顔だけじゃいつか限界がカムしてきちゃいそう。


 ということで、思い立ったがピクピク。

 俺は帰り際に文具店に立ち寄って画用紙を購入し、その画用紙を懐におさめられるサイズのカードにして、それに「いいよ!」「ありがとう!」「うん!」「たのしみ!」「がんばれ!」「がんばる!」「がんばろう!」「えっちじゃん」とそれぞれ書き込んでいく。ラミネート加工すれば、俺のひみつ道具「おへんじカード」が完成。


 翌日、それを実践してみた。「考えたな」と言われたので、エッヘンの顔で「うん!」を提示。


 広島県あるある百個いいます。

 えっと‥‥‥えっと‥‥‥レモン‥‥‥と‥‥‥あの、お好み焼き‥‥‥。


「やっぱりグッドサインとさわやかスマイルだけじゃ限界だったんだ」

【うん!】

「ある程度の会話できんだな」

【うん!】


 むしろこれがあればピロートークもできる。


「しっかし、分厚いじゃん。どんくらい用意したんだ?」


 いいよ!×二十五

 ありがとう!×三十

 うん!×二十

 たのしみ!×二十

 がんばれ!×二十

 がんばる!×二十

 がんばろう!×二十

 えっちじゃん×百二十

 シークレットもあるよ。


「いや【えっちじゃん】そんないらんだろ」

「なんで使い捨て前提なんだ」

「ラミネートまでしておいて使い捨て‥‥‥!?」


 この際制作裏話を教えてあげようと思った。


【制作途中ゾーンにはいって、無心で作ってたら『えっちじゃん』が百枚超えてあとに引き返せなくなったÓ╭╮Ò】

「引き返せる引き返せる」

「むかつく顔文字書きやがって」

「物作りに向いてなさすぎる」

【がんばれ!】

「お前が頑張れよ」

「いまそれじゃなさすぎる」

「もうちょっとバリエーション必要じゃない?」

【うん!】

「やっぱり自分でも思ってんだ」

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