サムライソード&ナイトブレイド
双刃の侍
宿場町の入り口、揺れる提灯の明かりが石畳を不規則に照らしていた。
「変わった構えだな」
壁に寄りかかった用心棒が、鼻で笑いながら言った。その目は、男の両手に握られた異形な組み合わ、右手の反りのある日本刀と、左手の細身で真っ黒な異国の剣を舐めるような眼差しを向けてくる。、隠そうともしない嘲りを浮かべている。
男は答えなかった。その名は、甚五郎。かつては一本の刀に全てを預ける、どこにでもいる実直な剣客だった。そんな彼の運命を変えたのは、嵐の夜に流れ着いた南蛮船。その近くの浜で出会った、息絶え絶えの異国人だ。
男は最期に、甚五郎の目を見て、黒光りする西洋剣を押し付けてきた。言葉は通じずとも、託された重みだけは、魂の奥底に直接響いた。
「こいつを、使ってくれ。異国で朽ち果てるのは本意じゃない。夢を託させてくれ」
偉人の目から、確かに意図は伝わった。
その日から、甚五郎の孤独な戦いが始まった。
右手のサムライソードは、風を斬り、影を追い、隙を突く残像の柔剣。
左手のナイトブレイドは、大地を踏みしめ、体重の全てを一撃に乗せる重心の剛剣。
右が「押せ」と言えば、左が「引け」と言う様な、その奇っ怪な剣筋に翻弄され、血の滲む夜を幾度越えた。
しかし、いつしか剣の重さを扱える身体へと鍛え上げた。矛盾は調和へと変わった。重さと速さが、一つの呼吸になったのだ。
「両手持ちか。片手ずつじゃ力が半分だろうが」
宿場を囲む三十人の野盗。その頭目が、抜き放った刀を肩に担いで嘲笑う。
ある依頼を受けた甚五郎は静かに息を吐き、腰を深く落とした。
「逆だ」
右手のサムライソードをに影のように低く構える、左手のナイトブレイドを山のように片手上段に。
「こいつは二本で一つの剣なのだ」
最初の男が、怒号とともに斬り込んできた。
甚五郎は動かない。サムライソードが正面からその一撃を受け止めると、その重さを逃がすようにわずかに刀身を傾けた。
男の体が前のめりに流れる。その流れた先には、すでに死神の鎌の如く、ナイトブレイドが待っていた。
音もなく、一閃。
次の男が来る。甚五郎は左手のナイトブレイドをわずかに踊らせた。光を反射しない黒い刃が描く軌道に、男の意識が吸い寄せられる。その刹那、剛剣サムライソードが虚を突いて一閃。右が問い、左が答える。守りながら攻め、攻めながら守る。
暗闇の中で舞う甚五郎の姿は、もはや一人の人間のものではなかった。まるで二人の達人が背中合わせで戦っているかのような、完璧な連撃だった。
阿鼻叫喚が止んだとき、立っているのは頭目ただ一人だった。
「たった一人で……化け物め」
頭目は震える手で刀を握ろうとしたが、甚五郎の眼光に射抜かれ、ついに膝をついた。
「いや」
甚五郎は二本の刃をゆっくりと下ろし、静かに告げた。
「二人分だ」
月明かりの下、甚五郎は左手の西洋剣を見つめた。
あの異国の男が何者だったのか、今も知らない。だが、この刃を通して伝わる熱い鼓動は、右手の刀のそれと同じだった。
まだ、戦える場所がある。
まだ、守るべき誰かがいる。
まだ、この手に握る刃は終わってはいない。
甚五郎は二本を腰に収めると、一度も振り返ることなく夜の街道を歩き始めた。
二人分の魂が、この二本の刃に宿っている。
俺とお前で大剣士。
それが双刃の侍として生きる彼の、唯一の生き様だった。
侍と騎士の戦いが書きたいのに双剣で振るうと、どんなの剣戟になるのだろうか?
と、考えていたら何故か双剣使いの話になっていた。




