表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライフコース  作者: 只野 唯
退職編
27/37

好きのかたち(過去)

一時期、男性アイドルにハマっていた。

正確には、ハマっている“ふり”をしていた。

クラスの女の子たちは、放課後になると目を輝かせてスマホを囲んでいた。

新曲の話、ライブの話、推しの尊さ。

彼女たちはキラキラしていて、世界の中心に好きな人がいるみたいだった。

私はその輪の中に入りたかった。

だから覚えた。

メンバーの名前。

誕生日。

代表曲。

口に出せば、それっぽく聞こえる言葉。

「私も◯◯くん好き」

そう言えば、仲間になれた。

でも、心の奥はどこか静かだった。

高校生のとき、三人でライブに行った日。

人混みと熱気。

ペンライトの海。

ステージに立つ彼らは、たしかに眩しかった。

トイレに行った友達を待っているとき、

隣の子がぽつりとこぼした。

「グッズも買わないのにオタク名乗らないでほしいよね」

軽い調子だった。

でも言葉は鋭かった。

ひゅっと、喉の奥が締まる。

あの子のことを、そんなふうに思っていたんだ。

そして同時に、思う。

私はどうなんだろう。

CDは買った。

ライブにも来た。

ペンライトも振っている。

でも——

私は“ちゃんと”好きなんだろうか。

彼女たちみたいに、

寝ても覚めても考えて、

お金も時間も惜しまず、

人生の中心に置くほどの熱量はない。

同じ人を好きでも、好きの形は違う。

でも、好きの形が違うと、

ときどき分かり合えない。

“オタクらしさ”という見えない物差しがあって、

それに足りないと、資格がないみたいな気持ちになる。

私はずっと、何かを“ちゃんとやれているか”を気にしてきた。

ちゃんとした友達。

ちゃんとしたファン。

ちゃんとした人間。

でも本当は、

好きに正解なんてないと思いたかった。

静かな好きもある。

遠くから見ている好きもある。

ハマっている“ふり”から始まる好きだってある。

あの日のライブの光を思い出す。

眩しかったのは、彼らだけじゃない。

夢中になっている友達たちも、同じくらい眩しかった。

私は、その光の中で、

自分の居場所を探していただけだったのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ