一寸先は闇
私は一か月の休職のあと、一か月、また一か月と、期間を延ばしていた。
診断書を書いてもらい、会社に送り、承認の連絡を受け取る。
その繰り返し。
会社の制度上は、最長三年まで延ばせるらしい。
その間、定期的なヒアリング面談が必要になるらしい。新人研修でもらった分厚い資料の中に、小さな文字で書いてあったのを、ぼんやり覚えている。
「休職期間は最長三年」
あのときは、遠い話だった。
自分が使う制度だなんて、思いもしなかった。
三年。
数字にすると長い。
でも、今の私には、途方もなく短くも感じる。
三年休んで、何になるんだろう。
三年後、私はどうしている?
三年後、三十代半ば。
社会に放り出されて、生きていけると思えなかった。
履歴書の空白。
ブランク。
「何をしていましたか」と聞かれて、言葉に詰まる自分。
未来を想像しようとすると、視界が急に暗くなる。
そして、ふっと浮かぶ。
死。
その文字が、静かに、しかし鮮明に、頭をよぎる。
楽になる方法のように。
終わらせる選択肢のように。
でも、それはきっと、病気の声だ。
先生が言っていた。
「調子が悪いときは、思考が極端になります」
ゼロか百か。
成功か失敗か。
復職か退職か。
生きるか死ぬか。
間が、消える。
本当は、そのあいだに、無数の選択肢があるはずなのに。
今は考えない。
三年後のことは、今の私には重すぎる。
とにかく、休まないと。
それだけを繰り返す。
布団に横になり、天井を見つめる。
未来を考えると、崖の縁に立っている気分になる。
だから、見ない。
今日は、今日だけ。
三年後ではなく、三時間後。
私は生き延びることだけに集中する。




