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ライフコース  作者: 只野 唯
退職編

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16/41

支援と繋がる

『高齢・障害支援課』と掲げられたプレートを目指して、市役所の中を歩く。

自立支援医療制度の申請のためだ。

相変わらず、体は重い。怠い。

蛍光灯の白い光が、やけにまぶしい。

正直、貯金は多い方だと思っている。

もし働けなくなっても、しばらくは困らない。

病気やけがで会社を休み、給与の支払いがない場合に支給される傷病手当もある。

それでも、ずっと働かないわけにはいかない。

お金は、あるだけあったほうがいい。

安心は、残高に比例する気がするから。

番号札を握る手に、うっすら汗が滲む。

私はまだ、「社会にぶら下がる側」にはなりきれないでいる。

「自分で立っている」という感覚を失いたくなかった。

受付番号を引く。

小さな紙切れなのに、ずしりと重く感じる。

「自立支援医療の申請ですね」

窓口の職員は、思ったよりも柔らかい声だった。

事務的で、でも冷たくない。

私は椅子に座り、必要書類を差し出す。

指先がわずかに震えている。

“自立”という言葉が、胸のどこかに引っかかる。

支援を受けるのに、自立。

矛盾しているようで、でもきっとそうじゃない。

支援は、甘えじゃない。

走るための杖みたいなものだ。

窓口の向こうで、書類にハンコが押される。

乾いた音が、やけに力強く響いた。

「これで手続きは完了です」

その一言で、胸の奥にあった霧が、ほんの少し晴れた気がした。

市役所を出ると、冬の空は思ったより明るい。

体は相変わらず重い。怠い。

それでも、足取りは来たときよりわずかに軽い。

私は、支えられながら進む。

進みながら、支えを減らしていく。

それは敗北じゃない。

戦略だ。

ポケットの中の番号札を、くしゃりと丸めた。

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