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第5話 入学

あれから2年後――



学校法人インカンシス学園――

これは隠蔽するための学園名で本当の名前は魔法少女学園。


国でも有数の魔法少女たちを育成する機関だ。


大きな講堂に通され、指定された席にそれぞれが座っていく。

おそらく200名ほどはいるか? 1学年の人数はいたって普通の学校と変わらないが、ここにいる生徒全てが魔法力をもったものたちだ。


よくもこれだけの数、調べ上げて集めたものだ。


ひかりは指定された席へと行き、パイプ椅子に腰かけた。


しばらくして、学園長が登壇した。そして、咳払いをして話始めた。


『皆様、よくこの魔法少女学園へ入学してくれました。これからは魔法少女として学び、努力し、そして世の中の人の助けになるような立派な魔法少女へとなっていってくださいね』


学園長の笑顔と聞こえのいい言葉。その姿は気の良い学園長を演じているが、その実、とても醜悪で悪意に満ちた存在。少なくともあの時の私にはそう感じた。


魔法少女学園と言えば聞こえがいいが、その実、政府が作った魔法力を持った少女を育成する機関である。魔法力を持つ者を監視する機関である。


もし、この存在を公にしようものなら抹消されるだろう。実に闇の深い話だ。

魔法少女学園は信用するに値しない。


――とはいえ、ひかりが敵対するのは実質不可能だった。今はちょっと不思議な力が使える少女でしかない。今は素直に従うしかないだろう。


だから、もっと力をつけないといけない。


気が付くとスピーチは終了していた。


ここは全寮制の学校。なるべく魔法の漏洩を避ける為だろう。


たしか……、この先の掲示板にクラスが張り出されているんだったな。


掲示板へ向かい、自分のクラスを確認する。


Dクラス……、|ほのか(主人公)と同じクラス。


否応なしに意識してしまう。


何せ――


彼女こそが真の魔法少女として、この世界を救う存在なのだから(具体的に何から救うかは描かれていないいい加減な世界設定のゲームだが……)


ひかりはMOBとして、そのルートをそれることを防ぐ必要があった。


Dクラスへ向かい、自分の指定された席に座った。


「ひぇー、知らない人ばかりだぁ……」


目の前に緊張している女の子――

まぁ、当然のことだろう。初等部の子たちを抜けば、全員初対面というわけだ。

放っておいた方が良いか……


ひかりは目立たないように席へと座った。


先ほどの彼女がおどおどしながら席に座っていた。


そして――、彼女は後ろを振り返り、ひかりと目線が合ってしまう。


「えっ、っと……」


ひかりは思わず、口が詰まってしまった。


「よ、よよよ……」


「よよ?」


「よろしくっす!!」


彼女の声の大きさに、クラスの全員が視線をこっちにあつめた。


「あははは、ごめんなさいっす!」


彼女がそういうと、皆が視線を外す。


「やらかしたっす……、申し訳ない…… 緊張しちゃってまして~~」


「誰でも最初は緊張すると思うよ?」


ひかりはフォローを入れた。


「そうなんっすけど、私は人と話すのも苦手でして……」


「そう? 今コミュニケーション取れていると思うけど?」


「どうしても初対面は苦手っす。だから――」


「ん?」


「これからも仲良くしてほしいっす!! この通り――」


彼女はひかりに頭を下げる。


「ちょ、ちょっと、頭上げて……」


「うぅ…… また迷惑をかけたっす。もう生きていけない……」


ひかりはどれだけネガティブなんだっと心の中で思った。


「かけてないから!!」


「……ほんとっすか?」


「本当だって!」


「ありがとうっす。あなたは命の恩人っす――」


「大げさだなぁ……」


「いえ、あなたは――」


「あなたじゃない。私の名前は篠原希望(しのはら ひかり)


「あ――、私の名前は青海瑠香(おうみ るか)っす。よろしくお願い致します。篠原さん」


「ひかりで良いよ。気軽に読んで?」


「私の名前もるかでいいっす」


「うん。るかちゃんよろしくね?」


「はい――、ひかり様!!!」


「あはは、そんなに堅苦しくなくていいから!!」


「分かったす。ひかりさん」


「うん!」


ひかりはるかとその後もとりとめのない話をしていた。


るかちゃんは少なくともシナリオに関わる()()()()キャラクターではない。仲良くしていてもさほど影響はないだろう。


ゲームに出てくるネームドキャラクターにはなるべく関わらないようにしないと……

シナリオが破綻しかねない。


ひかりはちらっと教室の中央付近を覗き込んだ。


そこには女子たちの人口密度が高い場所が――


その中心には魔法少女学園の主人公であるほのかの姿があった。


「あははっ、私は|久遠(くおん)ほのかよろしくね……」

「よろしくー! ほのかってめっちゃ可愛いねー!!」

「そんなことないよー……」


ゲームとして見ていたらこれは微笑ましい光景だっただろう。ぜひとも一緒に混ざりたいと考えていたに違いない。しかし、彼女は主人公である。

下手に介入することで物語が狂ってしまう可能性もある。


なるべく関わるべきではないとひかりは考えていた。


だからこそ、俯瞰してみることが必要だ。


「ひかりさんどうしたっすか?」


るかがひかりに尋ねた。


「別に何でもない?」


「そうっすか。てっきり、私なんかよりあちらの女子カースト上位陣(予定)の子たちと仲良くしたいのかなぁっと思いまして……」


「もう、なんでそんなにマイナス思考なの?」


「う~~、申し訳ないっす……」


ひかりがるかの相手をしながら周りの生徒の会話を探っていた。


「私は魔法少女になったら、世界中の困った人たちを救いたいなぁー」

「私の住んでた地域はお年寄りしかいないから、役に立てたらなぁ」


実に良い動機だ。

だからこそ、ひかりは苛立っていた。


おそらくそのような彼女たちの願いを国や学園は踏みにじる。そう感じていたからこそだ。


ひかりは頭を冷やそうとそっと席を立った。


「ひかりさん、どちらにいかれるっすか?」


「ごめん、ちょっとお手洗いに――」


心配そうにひかりを見るるかを後にして、廊下へと出た。


そして、ひかりは廊下の窓越しに空を見つめた。



――――――

――――

――


「おい!」


同じ制服姿の女の子が声をかける。


誰かの怒号が聞こえる。おそらく怒号の先は私だろう。この廊下には彼女と私しかいない。まぁ、相手することもない。


「…………」


「おい!聞こえてるだろ?」


「何か用?」


「ちっ――、これだから下位クラスのやつらは……」


「下位クラス?」


「お前らのようなアルファベットがDクラスは落ちこぼれ集団が集められたクラスが

下位クラスだ」


「あぁ、そうなんだ?」


「そう、お前らは初等部からいる私たちと大きく劣っている。6年間魔法の力が遅れていることになる。もっとも、中等部で魔法力が高いと判定されると上位クラスに入れることがあるらしいがな」


彼女は続きを口にする。ひかりはそんなことどうでもいいっと思いながら自分を静めていた。


「つまり――、Dクラスに配属されたお前は落ちこぼれってわけだ」


「――で、何が言いたいの?」


「喜んでいい。お前はこの霧墨斬留(きりずみ きる)様の下僕として使ってやるよ」


「何で?」


「この学校は弱いやつは強いやつに淘汰される実力主義ということだ。それこそ何をされても文句は言えない」


「ふ~~ん」


「だから、私の下僕となることをおすすめするぞ?」


「下僕になると何かいいことがあるの?」


「なったら教えてやるよ」


斬留はひかりに話を続ける。


「少なくとも殺されることはない? まぁ、私が殺してしまうかもしれないが――、今は死ぬことがない。良い提案だろ?」


つまり、この学園は圧倒的実力主義で、実力者が絶対ということだろうか?


「私はパス。他の人を探してちょうだい」


「この私のお誘いを断ったな? くくっ、これは痛めつける必要がありそうだな」


斬留がひかりへと拳を構え接近――


「私は今、機嫌が悪い」


彼女を睨みつけ、魔法力で圧をかける。


「うっ……」


ひかりは斬留に対して、魔法力を放射して威嚇する。


一瞬、彼女は怯んだ。


清楚な魔法少女を育てる学校――

これがゲームでプレイヤーが見た姿。だが実態はこうだ。魔力の低いものを虐げる。


本当にくだらない……


「ち、調子に乗るなぁああああああああ!」


斬留の魔法力が拳に集まる――


「うるさい!」


ひかりは足に魔法力を溜め、足払い――


斬留がバランスを崩した瞬間――、ひかりはありったけの魔法力を拳に混めて彼女の腹部に叩きつけた!!


「がはっ……」


拳を受け、膝を地面につき倒れるのだった。


ひかりにとって、興味はなかった。ゴミを見るような目で見つめ、やがて目線をずらした。


所詮、上位クラスといってもこんなものか……


さて、教室にもどろう。余計に苛立ってしまった。


上位クラスと下位クラスの関係か……

教師だけじゃなくて、全体的に歪んでそうだな。


これはほのかをストーリー通りに進めるに大きな障害となり得る。


「一筋縄ではいかなさそうね。上等……」



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