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第4話 入学の決意

あの事故から一週間が経った。


前の世界でも経験したことのない人の死――

ひかりは自分のせいで助けることができていなかったことに悔いていた。

自分を責め続けた。


家族や友人がお見舞いに来るが、気を遣ってくれるやさしさがぐさりとひかりの心に刺さる。


魔法が使える世界。憧れの魔法少女。魔法少女学園――


すべてが都合よい部分だけが切り取られた世界。私は全てを甘く見ていたんじゃないか? 転生ボーナス? 魔法が使えたら何でもできる? そう思っていたはずなのに……


魔法を得てできたことは結果、友達を守ることが出来なかっただけ……


そうこの世界は前の世界と同じ。人は簡単に命を落とす。


私は…………


ドアをコンコンと叩く音。


しかし、ひかりはそんな音が気にならないほどに心は疲弊していた。


――返事の否応なしにドアが開いた。


「えーと、ひかりさんの病室はここね。ちょっといいかしら?」


見知らぬ年配の女性が病室に入ってくる――

誰だ……?


ひかりに思い当たる人物はいない。警察? マスコミ? 学校の関係者だろうか?


「私はあなたの考えている人じゃない。そんなに警戒しないでくれるかしら?」


「…………誰ですか?」


「そうねぇ、こういうのはどう?」


ものすごい魔法力の塊が部屋を覆った。

それは彼女から発せられたものだとひかりは瞬時に悟った。


魔法少女という年齢ではない…… だとすると誰だ……


ひかりは身構える。


「やっぱり――、あなたは魔法力が分かるのね?」


「あなたは誰……?」


「目つきが変わったわね。この力がどういう扱いか分かっている。聡い子は好きよ?」


「私を殺す気?」


「殺す? 安心しなさい。私は貴方とはなしに来たの」


「はなし?」


「えぇ、この力についての話ね。だから、ちょっとだけ魔法を行使させていただきました。人払いと防音魔法ね」


そういわれても警戒を解くなんてできるわけがない。この世界で魔法が隠されているのは事実。それを知っていて使える人間は警戒対象に値する。


「そうねぇ…… まずは自己紹介をさせていただくわね。私はインカンシス学園の学園長をやっています。ご存知ない?」


インカンシス学園――、市内でも有数のお嬢様学校。全寮制で巨大な敷地に覆われている。


「言い方を変えましょうか。別名、魔法少女学園と知る者からは呼ばれています」


「――――!?」


「あなた……、どういうわけか魔法少女の事をしっているようね」


「………………」


「まぁ、今は詮索はしません。これで私がここに来たことが分かったかしら?」


「……えぇ」


「さて、本題に入ります。今日、私はあなた――篠原希望さんを勧誘しに来ました」


「勧誘……?」


「えぇ、あなたを魔法少女学園の生徒として迎え入れたいと思います」


「……どうして?」


「まず、あなたは自力で魔法を行使している。それは才能の塊であることがわかるわ。普通は自力で能力を開花する生徒は滅多にいません。大体はそうねぇ…… 私たちが才能を持つ子を勧誘して、学園内で使えるようになります。もっとも――、インカンシス学園には初等部もあります。ここまで言えば分かるわね?」


つまりは――、同い年で魔法を行使する生徒も囲っているということになる。


「しかし、あなたのような才能の持ち主をこれまで探し当てれなかったなんて、我が校としても恥ずかしいわぁ……」


探す――おそらく魔法力を潜在的に持っている生徒を探知する魔法でもあるのだろう。


女性はそのまま話し続けた。


「つぎに、私たちというより国の管轄のお話になるのだけど、秘密裏に魔法庁というものが存在しています。全ての魔法を行使できるものは管理下に置かなければいけません。そういう観点でも魔法少女学園は都合がいいのです」


そんな設定はゲーム内にはでてこなかった。おそらくは裏設定というやつだろう。

魔法少女は正規に存在するものはすべて国の管轄下ということになる。


「それと、あなたはその力を人を助けるために使いました。しかも、咄嗟の判断力、精神力は評価に値します。そんな子には魔法少女になって世の中の役に立ってほしいというのが我々の願いです」


「でも…… 私は一人の友達を守れませんでした」


「結果的にはそうね―― でも、他の子たちを守り切ったのでしょう? 犠牲は1人で済んだとも解釈できるわ。あなたの歳でそのショックはさぞ壮絶でしょう。でも―― 今後同じことが起きた時、また1人犠牲にするのかしら?」


「………………」


「あなたにはもっと強くなってもらって多くの人を救ってもらいたいの。それが我が校の為にもなり、国の為にもなり、さらには貴方の為にもなる」


「わたしは……」


女性は指を2本出し――


「あなたに与えられた道はふたつ」


2つ……


「あなたのこれからの人生に二つの選択肢があるわ。一つは魔法少女学院へ入学すること。そうねぇ…… 時期は2年後の中学生のタイミングで中等部から入学してもらいます。それまでは貴方には悪いけど、常に監視をさせてもらいます。これも規定だから悪く思わないでね」


すでに私は監視対象ということか……

国は魔法という力の漏洩、悪用を恐れているのだろう。


「そして、もう一つ。こちらの選択肢はあまりお勧めしません。魔法少女学園の入学拒否――、私たちは魔法に関わる一切の痕跡を抹消しなければならない。ここまで言えば、聡いあなたならわかりますよね?」


拒めば、良くて永久の拘束、最悪は周囲の者も含めた抹消だろう……

実質一択しかないということだ。


「もっとも――、この選択肢を選び我々から逃げ切るという方法もありますけどね」


それは実質この国から追われるということ。

たかが小学生にそんなことできるはずがない。


「考える時間が欲しいなら1日あげましょう」


「行きます―― 魔法少女学園に」


ひかりはその場で即断即決をした。


学園長が脅しをかけるまでもなく、もともと魔法少女学園に行く方法を模索していた。私が見たゲーム内で主人公ほのかがエンディングにたどり着いたと気に見た文章。そこには『すべてのものが魔法少女ほのかの活躍によって幸せになった』と記されていた。しかし、ほのかには無数のシナリオが存在する。その中には世界が亡びるものも含まれている。私はそれを阻止しなければならない。なんとしても、私の見たストーリーへと導く必要がある。



それに――、主人公()()()が見せた不穏なイベントCGの正体が気になった。



利用できるものは利用する。今私の出来る覚悟だ。



「ふふっ、覚悟が決まったようね。あなたのような有望な若者が魔法少女を目指してくれることに感謝するわ。2年後にまた会いましょう」


学園長はそのまま部屋を去り際に口を開く。


「そうそう、今日の事は他言無用よ。消されたくなかったらね。それと―― あなたが魔法を行使したことは皆の記憶から消してあります。あなたは利口そうだから心配はしていないけれど、分かるわね?」


学園長の圧。感じ取った殺気、冷酷な口調、もしかするとこちらが本性なのかもしれない。だが、逆らったことで良いことはない。


ひかりは黙って、コクンとうなづいた。


「いい子ね。それじゃあ、また会いましょう」



――――――

――――

――


魔法少女学園にどうやって通うのか模索しようとしていたが、こちらとしては願ったりかなったりだ。だが、想定外だったこともある。

国の管理下に置かれること――学園長は拒めば抹消とはっきりと答えていた。

思った以上にドロドロした世界観だ。ゲーム内では一切出てこない設定。


あのふんわりした世界観はなんだったのだろうか……


考えが巡っても答えが出るわけじゃない……

だが、選択肢があるとは思えなかった。これが最善だ。


私にできることは2年間、魔法力を高めておくことだ。

今度は力不足で犠牲者を出さないように――


それから2日後の事だった――


ドアをノックする音が聞こえる。


ドアが少し開き、その主が顔をだす。


「ひかりちゃん大丈夫? お見舞いにきたよ」


さやちゃんだ。しかし、さやちゃんを見ると事故の事を思い出しチクリと胸を刺す。


「さやちゃん……」


「私だけじゃないよ。みんな来たよー」


「「「ひかりちゃん、げんきー?」」」


「みんな……」


みんなというのはお買い物に行ったメンバーだ。


みんなは和気あいあいと話していた。


「ひかりちゃんが急に転んで怪我しちゃうんだもん。私びっくりしちゃった…… でも元気で良かった」


どうやら私は自分で転んで怪我をしたことに()()()()()らしい。


「でも良かった。もうすぐ退院なんでしょ? ひかりちゃんが元気になったら、()()()でまた遊びに行こうね」


違和感を感じる。


女の子たちの会話は明るくいつもの通りの話が続く。


気持ち悪い…… なにこれ……


そう、そこにはたった一人の女の子の名前がでてこないのだ。


「しおちゃんが……」


犠牲になった汐という女の子――


しかし、みんなはキョトンとしていて――


「しおちゃんって、だれのことー?」


「――――!?」


まるで初めから()()()()()かのように振舞われているのだ。そう、彼女は魔法によって死すらも消されていた。


何も会話が入ってこなかった……



――――――

――――

――



それから数週間――


ひかりは病院から退院した。


両親によって車で自宅まで乗せてもらった。


その道中――


「お父さん――、車を止めて!!」


「ひ、ひかり、どうした?」


「いいから!!」


「お、おう」


車が止まり、ひかりは車を降りて駆けて行った。


「あの…………」


「君は……?」


ひかりが駆けて行った先にいたのは汐の両親だった。


「しおちゃんのことごめんなさい」


「しお? 何のことだい?」


「ぐすっ……、ごめんなさい……」


「ど、どうしたの? どこか痛むの?」


「違うの……、私のせいで……」


そう、私のせいで死すらの尊厳も彼女から奪ってしまった。


「ごべんなざい……、うわぁああああああああん!」


心から涙した。



――――――

――――

――



あれから2年の月日が流れ――


「ひかりー! 早くいかないと入学式に遅れるわよ!」


「い、今行くー!」


私は|インカンシス学園(魔法少女学園)へ入学する日が来た。


私は誓った。人を傷つけないためには力をつけるしかない。

そして――、彼女のような人間を出さないために、この狂った世界を変えてやる。



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