第1話 人気ゲーム『魔法少女学園』
大ヒットゲームが誕生した。
その名は――『魔法少女学園』。ADVゲームであるのにその売り上げは国内300万本。インフルエンサー、実況者、雑誌がこぞってこのゲームを取り上げた。
ADVの大ヒット作と言われる売り上げ精々5万本。そう考えると空前の大ヒットと言っても過言ではないだろう。
実際やる気はなかったんだが……
買ってしまった……
それもこれも会社で……
――――――
――――
――
「ふぅ、昼休みだ。さてー、何を食べようかなー」
何気ない仕事の昼休み。やはり、息抜きとそして楽しみは昼食だ。
さてと、食べに行こう――
「先輩! 萌えゲーとか好きでしたよね?」
――っと、食事へ行く前に後輩に呼び止められた。
この後輩は俺と同じオタク趣味で、社内で共有し合える存在だ。
よく、付き合いとかでゲームの話やイベントに一緒に行くこともある。
とはいえ、いきなりすぎる。何が何だか分からないままに答えた。
「あぁ、好きだけど?」
待ってましたとばかりに、目を輝かせる後輩――
「でしたら、最近話題になっている魔法少女もののゲームってご存知です?」
あぁ、掲示板なんかでよく聞くあれか……
ここ最近、噂に事欠かない大ヒットゲームのことだろう。
「あれか! たしか…… 魔法少女学園だっけ? めっちゃ売れてるみたいだなぁ」
「そうです。先輩は既に遊ばれました?」
食い気味に後輩が話しかけてくる。しかし――
「いや、遊んでないな。やる気があまりしなくてな……」
「どうしてです? あれだけ話題になっているし、めっちゃおもしろいっすよ?」
面白いという話は聞いている。だが、手を出してないのは明確な意図があった。
「あれはアドベンチャーゲームなんだろ? 俺は効率廚だから、攻略を見てクリアする派」
そう、アドベンチャーなんて選択肢一つでやり直す羽目になる。
社会人たるもの時間は有限! 時間を有効に使いたいから、攻略サイトを見てスタートからゴールまで直線でクリアしたいのだ。
「アレは時間的にしんどそうだからなぁ……」
「あ~~、確かに、攻略がないっすからね……」
そう――、魔法少女学園には攻略が存在しないのだ。
「どうなってんだろうな。全員が全員違うシナリオで感想もまるっきり違うって……」
魔法少女学園をプレイした人は全員例外問わず違うシナリオで感想も食い違っている。つまり、300万通りのシナリオが作られてるということになる。そんなことは果たしてあり得るのだろうか?
「俺もプレイしたっすけど、クリア後にSNS見たら全員と食い違っていて、買うゲーム間違えたと思いましたよ」
「そう―― だからこそ、一からゲームをやらないといけないから、時間を割きたくない。つーか、なんか呪われたゲームみたいで怖くて触りたくない!!」
俺が触らない最大の理由――、時間がかかることも確かにあるが……
ゲームが不気味すぎるのだ。プレイヤー全員、シナリオが違うって普通にあり得ない。まるでゲームが生きているかのよう。縁起でもないが昔はやった映画で出てくる呪いの動画のような――
しかし、後輩は俺とは裏腹に喜んで勧めてくる。
このやろぅ、俺がいまやらない理由を説明したばかりだよな?
今日の後輩は押しが強く、やたらとやらせたがる。
「先輩もぜひやってみてくださいよ! めっちゃ面白かったっすよ!」
「気が向いたらな――――」
後輩からの勧めをそれとなく避けるのだが――
「先輩の大好きなフリフリの魔法少女ですよ」
ピクッ!?
「幼女、フリフリ、真面目っ子……etc」
くっ…… そ、そんな言葉に屈しないぞ!
――――――――
――――
――
そんな後輩の押しの波に屈してしまい……
会社終わりにゲームを購入――
そそくさと、ゲームショップを出て、早々に家へと急いだ。
「……結局買ってしまった」
後輩は俺のポイントをしっかりと理解している。ついのせられてしまった!
しかしー!!
流行りに流されるのは気に入らないが、フリフリの魔法少女と聞いたら手を出さざるを得ないな。
呪いなんて、萌えポイントの前では無意味だ。不気味? 可愛さには勝てないよね?
――と、自分に言い聞かせた。
なんだかんだで楽しみではある。
――――
家に帰り、ゲームを起動する。
おなじみのアドベンチャーのタイトル画面。
「これ、思った以上に普通な内容だな……」
魔法少女もので空前のヒットを呼ぶ作品は昨今では意外性のあるものが多い。
しかし、『魔法少女学園』は魔法少女ものではべたべたな王道なのだ。
しかもゲーム性があるものではなく、選択肢で進めていくストーリー形式。
どこにでもある普通のアドベンチャーゲーム。
これのどこがどうやったら300万通りの選択肢ができるのだろうか?
まぁ、やってみればわかることか。
物語はベターな話だった。
ファンタジーというより、現代ものの異能能力というのに近いかもしれない。
どこにでもいる少女が、魔法適性をもっていて、魔法少女学校へ入学する。
そこは外から見たら普通の中学校に偽装された魔法学園だ。
彼女は魔法の力を育てて、学友と友情を育み、そして苦難へ立ち向かっていく。
外では困った人を助けていき、そして――
真の魔法少女を目指していくというもの。
しかし、一つだけ違和感があった。
魔法少女になれるものはただ一人だけ。じゃあ、他の学生はいったいどこへ?
疑念を浮かべつつもプレイをしていく。
突然――
画面にノイズが走る。
ほんの一瞬だった。画面に表示されるイベントCG。
それはすぐに切り替わり、少女の日常へと画面が切り替わる。
吐き気がする……
一瞬映りこんだCGがサブリミナルのように脳裏に浮かぶ。
そのイベントCGには主人公であるヒロインが立っている。
ただ、足元には学友たちの死体――
そして、ヒロインの魔法少女の衣装にはおびただしい血を浴びている。
なんだなんだなんだなんだ……これ……
『一緒に頑張って、魔法少女をめざそうね! ほのかちゃん!』
『うん! 美緒ちゃんも一緒だよ!』
主人公であるほのかと親友の美緒の仲良く話すシーン。
ほんわかする1シーンなはずなのにさっきのシーンが頭をよぎり、表情の裏に浮かべる不気味な笑みが透けて見える。
そんな作品じゃない!っと思っていてもなぜかそう見えてしまう。
そして――
苦難を乗り越えた主人公は無事に魔法少女学校を卒業――
そして、魔法少女になっていった。
エンドロールが流れ出す。
どこにでもある学園物のオーソドックスなストーリー。どこに300万通りの結末があるというのだろうか……?
感想から言うと無難の一言。
正直、何がここまで大ヒットしたのか疑問だ。面白いのは面白かったが……
やがてエンドロールが終わる。
一つの選択肢が表示された。
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『あなたに魔法少女因子があることが判明しました』
▶ 魔法少女をめざす
全てをやめる
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この選択肢はなんだ……?
ただの選択肢だが、自分の直感が普通ではないとささやく。
選択肢の一つの『魔法少女を目指す』はまだわかる。『全てをやめる』っていうのが妙に引っかかる。
自然と指が『魔法少女をめざす』を選択した。
画面はブラックアウト。
やがて文字が流れ出す。
『縺ゅ↑縺溘?鬲疲ウ募ー大・ウ繧堤岼謖?@縺ヲ荳也阜繧呈舞縺?◆繧√↓鬲疲ウ募ー大・ウ蟄ヲ蝨偵↓蜈・繧句ソ?ヲ√′縺ゅk縲ゅ◎縺薙↓縺ッ縺溘¥縺輔s縺ョ闍ヲ謔ゥ縺後≠繧九□繧阪≧縲ゅ□縺後?√◎繧後?蠢?ヲ√↑迥?迚イ縺?縲ゆケ励j雜翫∴縺滓凾縺ォ隕九∴繧倶ク也阜縲ゅ◎縺薙r逶ョ謖?☆蠢?ヲ√′縺ゅk縲ゅ≠縺ェ縺溘?繧?a繧九%縺ィ縺後〒縺阪↑縺??ゅ≠縺ェ縺溘?驕ク謚槭@縺溘?縺ゅ↑縺溘?鬲疲ウ募ー大・ウ繧堤岼謖?@縺ヲ荳也阜繧呈舞縺?◆繧√↓鬲疲ウ募ー大・ウ蟄ヲ蝨偵↓蜈・繧句ソ?ヲ√′縺ゅk縲ゅ◎縺薙↓縺ッ縺溘¥縺輔s縺ョ闍ヲ謔ゥ縺後≠繧九□繧阪≧縲ゅ□縺後?√◎繧後?蠢?ヲ√↑迥?迚イ縺?縲ゆケ励j雜翫∴縺滓凾縺ォ隕九∴繧倶ク也阜縲ゅ◎縺薙r逶ョ謖?☆蠢?ヲ√′縺ゅk縲ゅ≠縺ェ縺溘?繧?a繧九%縺ィ縺後〒縺阪↑縺??ゅ≠縺ェ縺溘?驕ク謚槭@縺溘?縺ゅ↑縺溘?鬲疲ウ募ー大・ウ繧堤岼謖?@縺ヲ荳也阜繧呈舞縺?◆繧√↓鬲疲ウ募ー大・ウ蟄ヲ蝨偵↓蜈・繧句ソ?ヲ√′縺ゅk縲ゅ◎縺薙↓縺ッ縺溘¥縺輔s縺ョ闍ヲ謔ゥ縺後≠繧九□繧阪≧縲ゅ□縺後?√◎繧後?蠢?ヲ√↑迥?迚イ縺?縲ゆケ励j雜翫∴縺滓凾縺ォ隕九∴繧倶ク也阜縲ゅ◎縺薙r逶ョ謖?☆蠢?ヲ√′縺ゅk縲ゅ≠縺ェ縺溘?繧?a繧九%縺ィ縺後〒縺阪↑縺??ゅ≠縺ェ縺溘?驕ク謚槭@縺溘?縺ゅ↑縺溘?鬲疲ウ募ー大・ウ繧堤岼謖?@縺ヲ荳也阜繧呈舞縺?◆繧√↓鬲疲ウ募ー大・ウ蟄ヲ蝨偵↓蜈・繧句ソ?ヲ√′縺ゅk縲ゅ◎縺薙↓縺ッ縺溘¥縺輔s縺ョ闍ヲ謔ゥ縺後≠繧九□繧阪≧縲ゅ□縺後?√◎繧後?蠢?ヲ√↑迥?迚イ縺?縲ゆケ励j雜翫∴縺滓凾縺ォ隕九∴繧倶ク也阜縲ゅ◎縺薙r逶ョ謖?☆蠢?ヲ√′縺ゅk縲ゅ≠縺ェ縺溘?繧?a繧九%縺ィ縺後〒縺阪↑縺??ゅ≠縺ェ縺溘?驕ク謚槭@縺溘?』
大量の文字化け。気が付くと視界の全てが文字化けで埋まり――
頭に入ってくる……。頭が割れそうだ。やめてくれぇえええええええええええええ!
やがて俺は……
意識を失った。
……………
…………
……
どのくらいだっただろう、意識が戻り重い瞼を見開いた。
視界はぼやけつつも、やがて焦点があってきてくっきりとしてきた。
昨日は散々な目にあった。魔法少女学園なんてゲームのせいなのかわからないが妙に頭が痛い。ふらつきながらもベッドを降りる。
頭痛のせいか、部屋のものが大きく見える。
――って、ここはどこだ?
見知らぬ部屋だった。
確か、自室のワンルームにいたはずが、生活感のある部屋から一風変わり、掃除の行き届いた綺麗な部屋。
全体的にピンク、熊のぬいぐるみ――、完全に少女趣味の部屋だ。
何かの拍子にどこかに侵入したのだろうか。そうだったら家宅侵入罪で捕まってしまう。早くこの場を出なければ――
「しかし、ここはどこなんだ……?」
思わずつぶやいた自分の声に違和感を感じた。やけに高い声。しかも、男の声ではない。
部屋の鏡をふとのぞき込み、驚愕した――
「なんじゃこりゃあああああああああああああああああああ!」
自分の姿が10歳ぐらいだろうか。少女の姿になっていた。




